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『吉田野乃子 Nonoko Yoshida / Lotus』
CD 2015 Nonoya Records Nonoya 01
Nonoko Yoshida (alto sax)
1. Take The F Train
2. Desert Island
3. Taka 14
4. Lotus (improvisation)
5. Uru-kas
6. Ecerpt from 15 Lunatics (for my mother)
7. East River
all compositions by Nonoko Yoshida
produced by Nonoko Yoshida
recorded, mixed and mastered by Joe Plourde
tracks 1 to 5: recorded at The Silent Barn, Brooklyn, September 2015
tracks 6 and 7: recorded at GSI Studios, New York, April 2015
mixed and mastered at Standard Candle Sound, Brooklyn, September 2015
cover illustrations by Tamino Hiroyuki
photos by Mayuko Nakatsuka
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無限大の愛情に溢れた、即興演奏家ならではの抒情曲集
本誌「Jazz Right Now」の連載「よしだののこのNY日誌」でお馴染みの女性アルトサックス奏者、吉田野乃子の初のソロ・アルバム。昨年から取り組みはじめ、今年6月のカナダ・ソロ・ツアーや、7月の来日時にも披露されたソロ・プロジェクトの完成型である。
ループステーションを使って、その場で発した音をサンプリングし、フレーズを幾重にも重ねて奏でられる分厚いアンサンブルは、グループによる合奏とは異なり、ひとりの人間の「個性」という周波数が強調され、他の誰とも異なる透徹した魂の音響の集積体である。いわば「ののこの想い」が「∞(無限大)」に拡大・凝縮されたサウンドが、銀盤の回転にあわせて螺旋構造となり、オーディオ装置から溢れ出すのである。
もし自己顕示欲の過ぎる表現者による演奏だったら、聴き手は余りの我の強さに、疲弊し辟易して、例え34分でも耐え切れないに違いない。しかし、このCDは安心して聴いていい。離れて住む家族への想いや、生まれ育った北海道、現在の住処ニューヨークの生活をテーマにした哀感たっぷりのメロディーと、雪崩か猛吹雪のように荒々しいフラジオの嵐が交錯する音世界は、何処か心和む包容力に満ちていて、トボケた中に味のある「ののこ」という名前の響きに相応しい。
抒情的コンポジションの真ん中に置かれた7分間の壮絶極まりない即興演奏をアルバム・タイトルと同じ「ロータス」(蓮の花/ギリシャ神話で、その果実を食べると、楽しく、忘我におちいり、故郷に帰ることも忘れるという植物)と名付けたことで分かる通り、無限大の「ののこ」の中心にあるのは、禁断のロータスを食べて我を忘れた心の寂しさを“潤(うる)かす”、望郷の想いに溢れた桃源郷なのである。
Nonoko Yoshida - Sax Solo Album "Lotus"
心底を
掘って潤す
治癒の音楽
アルバムの完成後間もなく、11月10~15日ジョン・ゾーンがオーナーのライヴハウス「The Stone」でレジデンシー公演(アーティスト自身によるプログラム企画)を成功させて、12月にNYを引き払い帰国するという。今後は故郷の北海道をベースにした活動が期待される。『ロータス』の魔法が永遠に続くことを祈る。