A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

割礼@吉祥寺 MANDA-LA2 2017.1.29 (sun)

2017年01月31日 08時22分20秒 | 素晴らしき変態音楽


~ワンマンライブ~
割礼

宍戸幸司(vo.g) 山際英樹(g) 鎌田ひろゆき(b) 松橋道伸(ds)
open18:00/start19:00 ¥3000/3500+drink



1/22新宿JAMでの「金子寿徳10周忌」で久々に観た割礼に、最近すっかりアイドルソングのBPMの速さに慣れてしまい「遅さ」への感受性が鈍っていたことを思い知らされた。それ以来、心の底に渦巻いていた「遅さ」を求める欲望が目を覚まし、夜な夜なベッドの中でオレを責め立てるようになった。その重圧から逃れようと、救いを求めたアイドル現場で、ネクロ魔の新曲「HEXENNACHT(ヘクセンナハト)」がBPM60(推定)のスローモナンバーであることに気付き、時代がスローモーションを求めていることを知った。時代の風を読むには究極の「スローモーション」を体験しなければならない。同じ日の推しの2現場を干して、割礼ワンマンライヴに参戦する決意を固めた。


ネクロ魔瑳里生誕@渋谷チェルシーホテル

MANDA-LA2は3年ぶり。電車の都合で開演ギリギリに到着し、6年前の雪の日に割礼5時間ワンマン・ライヴに来た時滑って転んだ急な階段を用心しながら下り、料金を払って店内に入ると丁度客電が暗転して演奏が始まるところだった。ステージ前に並べられた椅子は満席。立見もかなりいて、割礼の遅さを求めるトレンドが決してオレだけのマイブームでないことが分かった。1曲目「光り輝く少女」からスタートし、眩惑的な歌と催眠的な演奏が繰り広げられる。途中に挟んだ松橋の物販告知MC以外は黙々と演奏に没頭しっぱなし
割礼@吉祥寺 Manda-la2 2011.2.11 (fri)


(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています)

この日に発売開始の最新ライヴCDのタイトルの『スローモーション』とは、物理的なスピードのことだけではなく、演奏者と聴き手の心の動きのユルさと、時間の意識のネジれ具合をも意味している。実際の演奏時間は3時間半に亘ったが、終った時のオレの意識の覚醒具合は、長時間の立見の疲労感と満足感と共に、人生の一瞬に訪れた天国疑似体験をもっと味わいたいという、飽くなき欲望と希望の間に浮遊する宙ぶらりんなアンビバレンツそのものであった。個人的にはリハビリにも似たこの日の記憶を血肉に変え、日常生活のスピード狂の快楽に身を委ねる所存である。

割礼「ゲーペーウー」2012.12.22 吉祥寺MANDA-LA2


セットリスト
1. 光り輝く少女
2. 散歩
3. 緑色の炎
4. ルシアル
5. キリスト
6. ソフティ
7. ネイルフラン
8. Into
9. LOVE?
10. G.P.U.
11. 新曲
12. オレンジ
13. 溺れっぱなし
ENCORE
14. リボンの騎士

割礼の
スローモーション
スピードジャンキー

次回。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陰猟腐厭/蔦木俊二+吉本裕美子/橋本孝之@大久保ひかりのうま 2017.1.28 (sat)

2017年01月30日 01時45分10秒 | 素晴らしき変態音楽


陰猟腐厭 (増田直行 guitar, 大山正道 keyboard, 原田淳 drums)
蔦木俊二 (guitar) from 突然段ボール + 吉本裕美子 (guitar)
橋本孝之 (alto sax, etc.) from .es(ドットエス)

2017年1月28日(土)
7:00pm 開場 7:30pm 開演
チャージ 2,000円 + ドリンク
音楽と珈琲 ひかりのうま



1977年結成の突然段ボール、78年結成の陰猟腐厭、大阪出身の.esの橋本孝之。一見共通点がなさそうな三者を結びつけたのは、企画者でもある吉本裕美子である。2006年からエレクトリック・ギターの即興演奏を開始した吉本は、現在東京で最も精力的に活動する即興演奏家のひとりと言っていい。リスナーとしても足繁くライヴ現場を訪れ、様々な表現者と交流しながら、共演の場を創り出す吉本の熱意が新たな出会いを生む。特定の会場に限定されないが、これもひとつの「場」の創出に違いない。筆者にとって『地下音楽への招待』の影の主役と言える陰猟腐厭のフルメンバーの演奏を経験できる奇跡に感謝したい。20人も入れば満員のひかりのうまは、突段や陰猟の世代の年配者と30代前後の若手のファンが同居している。3年前に陰猟腐厭の出演イベントを企画したReiko A.の隣に席を見つけた。

●橋本孝之


「大阪」や「.es」の枕詞が不要なくらい東京のシーンのお馴染みとなったアルトサックス奏者・橋本孝之のソロ演奏でスタート。3年前に東京へ移転してきた頃はソロ演奏の経験は殆ど無かったが、昨年半ばから自覚的にソロ演奏に取り組み始めたという。グンジョーガクレヨンや長谷川裕倫のkito-mizukumi rouberをはじめ、数多くの共演を重ね逞しさを増した橋本がカッと目を見開いて奏でる堂々としたアルトサックスは、1stソロアルバム『COLOURFUL - ALTO SAXOPHONE IMPROVISATION』の"気配"の演奏ではなく、空気中に太い線を描き物体としての"音"を彫塑するように削り出す。しかしそこに過度のエモーションが付随していない様は、.esや『COLOURFUL』と全く同一性を維持している。

●蔦木俊二+吉本裕美子


2004年7月に蔦木俊二とJOJO広重のギターバトルを観たことが、当時ロックバンドをやっていた吉本が即興演奏に興味を持つきっかけだったと言う。それから10数年経って実現したある意味"師弟"共演は決して幸運や偶然ではなく、自覚的な音楽演奏を鍛えてきた吉本の実力である。ほぼノンエフェクトで通奏低音を鳴らす吉本と、対照的に定規や電光板など小道具とエフェクターを駆使してユーモラスな非音楽音響を生み出す蔦木のキャラクターの違いが際立つ共演。実直にノン・イディオマティック演奏を続ける吉本が、蔦木のフレーズに反応してリズムレスな奏法に切り替えたエンディングが印象的だった。

●陰猟腐厭


これまで2度観た陰猟は、増田(g)と原田(ds)のデュオ演奏だったので、大山正道(key)が入ったオリジナル・トリオを体験するのは初めて。大森のプリセット・シンセサイザーからの反復フレーズが空間を拡大し、縦横無尽の原田のドラムはもちろん、増田のギターも雄弁に語り始める。大森が復帰して2度目のライヴとのことで、まだ完全とは言えないそうだが、三つの肉体が同時に音を鳴らすことで生み出される錬金術を目の当たりにして、地下音楽の神髄に触れる想いがした。

地下音楽
繋ぐライヴの
フライヤー












コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ザ・クロマニヨンズ@TOKYO DOME CITY HALL 2017.1.24 (tue)

2017年01月27日 02時01分24秒 | ロッケンロール万歳!


ザ・クロマニヨンズ TOUR BIMBOROLL 2016-2017
2017年1月24日 (火) 18:15/19:00
@TOKYO DOME CITY HALL (東京都)



でんぱ組.incの古川未鈴は武道館公演で「でんぱ組.incを諦めません」と語り8500人の観客(ファン)に感動を与えたが、オレとしては「ロケンローをあきらめられない」と宣言するしかない。地下音楽や地下ジャズや地下アイドルにゾッコンに見えるが、心の種子を覆う表皮を一枚一枚剥がして行って最後に残る林檎の芯には<ROCK'N'ROLL>と刻印されているに違いない。いや、この日のTokyo Dome City Hallで<BIMBOROLL>と遺伝子が組み換えられたかもしれない。それほどまでに強烈で濃厚で凝縮された90分だった。
最高のライヴレポートはコチラ⇒ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE ROCKER 2012@渋谷公会堂 2012.5.23 (wed)



彼らはこの90分のロケンローを10年間楽しみ続けている。ヒロトとマーシーに至ってはTHE BLUE HEARTS〜THE HIGH-LOWS〜ザ・クロマニヨンズと30年も続けている。オレが初めてTHE HIGH-LOWSのライヴを観たのは確か1997年か98年だから、オレも20年間続けている訳だ。計算すると90分×年2回×20年=3600分つまり2.5日間ロケンロー以外に何もない瞬間(とき)を過ごしたことになる。二日半のロケンロー 長すぎるか 短すぎるか オレの心の転がりかた次第さ。生きる歓びとスリルを最も実感できる現場は此処しかないと悟りを開いたのも束の間、帰りの電車で推しのアイドル=えいたそ☆成瀬瑛美の生誕イベントに想いを馳せるオレの煩悩人生に涅槃の境地はまだ見えない。

ザ・クロマニヨンズ / ペテン師ロック (2016.9.16)


セトリ
1. おれ今日バイク
2. 光線銃
3. マキシマム
4. デトマソパンテーラを見た
5. ハードロック
6. もれている
7. モーリー
8. グリセリン・クイーン
9. ダイナマイト・ブルース
10. ナイアガラ
11. 焼芋
12. ピート
13. 誰がために
14. ペテン師ロック
15. エルビス(仮)
16. 突撃ロック
17. エイトビート
18. 雷雨決行
19. ギリギリガガンガン
20. 大体そう
アンコール:
21. 笹塚夜定食
22. 紙飛行機
23. ナンバーワン野郎!



ロッケンロー
目指せラモーンズ
ナンバーワン

ラモーンズ(1974年 - 1996年)活動22年 オリジナルアルバム14枚 総ライヴ回数2,263回 List of Ramones concerts

ヒロト&マーシー (1985年 - ) 活動32年 ツアー公演数1,456回

THE BLUE HEARTS(1985年 - 1995年)活動10年 オリジナルアルバム8枚 ツアー公演数357回
1987年 10月1日、初の全国ツアー「ドブネズミツアー」スタート(全40公演)。
1988年 10月3日 「TOUR'88 PRETTY PINEAPPLE アンコール パイナップルの逆襲」(全国40公演)スタート。
1989年 9月6日7日 京都会館 第一ホール 「ON TOUR 1989-1990全国版」スタート(全国56公演)。
1990年 11月7日・8日 横浜アリーナ「EAST WASTE TOUR'90」スタート(全国19+2公演)。
1991年 3月22日 九州厚生年金会館「全日本EAST WASTE TOUR'91」(全国34公演)スタート。
1991年 12月14日 グリーンホール相模大野「HIGH KICK TOUR」(全国40公演)スタート。
1992年 11月25日 平塚市民ホール「PKO(PUNCH KNOCK OUT)TOUR」スタート(全国33公演)。
1993年 3月30日 四日市市文化ホール「STICK OUT TOUR」(全国32公演)スタート。
1993年 10月27日 千葉市文化会館「凸凹TOUR」前半戦(全国29公演)スタート。
1994年 4月5日 茨城県民文化センター「凸凹TOUR」後半戦(全国31ヶ所32公演)スタート。

THE HIGH-LOWS(1995年 - 2005年)活動10年 オリジナルアルバム8枚 ツアー公演数562回
1995年 12月12日-12月27日 !TOUR (全国6大都市で公演)
1996年 3月31日 – 7月21日 THE HIGH-LOWS TOUR '96「KING BISCUIT TIME」(全国34ヶ所36公演)
1996年 10月13日 – 11月10日 ザ・ハイロウズのゆきゆきて女子大 ㊙女だらけのハリケーン!!(女子大学園祭ツアー6公演)
1997年 3月22日 – 7月11日 Tigermobile Tour (全国40ヶ所48公演)
1997年 7月26日 FUJI ROCK FESTIVAL '97
1998年 5月28日 – 10月30日 THE HIGH-LOWS TOUR メイン☆ロブスター '98(全国44ヶ所58公演)
1998年 11月2日- 11月22日 THE HIGH-LOWS TOUR メイン☆ロブスター合コン '98(全国5公演)
1999年 4月1日 – 12月24日 THE HIGH-LOWS TOUR BAUMKUCHEN '99(全国61ヶ所78公演)
2000年 5月9日 – 8月22日 THE HIGH-LOWS TOUR 2000 Steamin'(全国7ヶ所7公演)
2000年 6月9日 – 12月24日 THE HIGH-LOWS TOUR 2000 Relaxin'(全国64ヶ所83公演)
2000年 8月23日&26日 that summer feeling(野音2ヶ所2公演)
2001年 9月6日 -翌年8月22日 THE HIGH-LOWS TOUR 2001-2002 WELCOME TO THE HOTEL TIKI-POTO(全国69ヶ所80公演)
2002年 7月28日 FUJI ROCK FESTIVAL '02
2002年 10月26日 -翌年7月13日 THE HIGH-LOWS TOUR 2002-2003 angel beetle(全国65ヶ所75公演)
2004年 9月1日 -翌年5月22日 The★MUSTANG 04-05(全国66ヵ所76公演)

ザ・クロマニヨンズ(2006年 -)活動11年目 オリジナルアルバム11枚 ツアー公演数537回(更新中)
2006年9月20日 -12月24日 初の全国ツアー「ザ・クロマニヨンズ 出現!! ツアー」(全国33公演)開催。
2007年 9月19日 -翌年1月18日 ツアー「TOUR CAVE PARTY'07-'08」(全国43公演)開催。
2008年 10月29日 -翌年2月13日 ツアー「FIRE AGE'08-'09」(全国43公演)開催。
2009年 11月11日 -翌年3月21日 ツアー「TOUR MONDO ROCCIA'09-'10」(全国49公演)開催。
2010年 11月21日 -翌年4月23日 ツアー「ザ・クロマニヨンズ2010-2011 ウンボボ月へ行く」(全国59公演)開催。
2012年 2月9日 -6月30日 ツアー「ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE ROCKER 2012」(全国57公演)開催。
2013年 2月20日 -11月2日 ツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」(全国67公演)開催。
2014年 10月10日 -翌年3月21日 ツアー「ザ・クロマニヨンズ TOUR ガンボ インフェルノ 2014-2015」(全国60公演)開催。
2015年 11月7日 -翌年4月30日 ツアー「ザ・クロマニヨンズ TOUR JUNGLE 9 2015-2016」(全国70公演)開催。
2016年 11月17日 –翌年4月22日   ツアー「ザ・クロマニヨンズ TOUR BIMBOROLL 2016-2017」(全国56公演)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Su凸koD凹koi/THE STEPHANIES/THE PATS PATS@渋谷 Milkyway 2017.1.23 (mon)

2017年01月26日 01時37分55秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


2017!新年会!

Open/Start 18:30/19:15
Adv ¥0 / Drink Only ¥600

出演
THE STEPHANIES
Su凸koD凹koi
THE PATS PATS


インターFM「WTF?」Taro &Mike主催の新年会インビテーションライブ



新宿JAMで地下音楽イベントを堪能した翌日は渋谷Milkywayで女子バンド3マンイベント。Inter FMで歯に衣を着せないテークとイカレた選曲で人気のDJチームTaroとMikeが呼び込む無銭ライヴ。ドルイベの聖地Milkywayが女子バンヲタに占拠される様は、誰かが特攻隊になって潜入し、何が起こっているのか逐一報告されて然るべき。女子バンイベントに行く回数はめっきり減ったが、生まれついての女子好きにとってアウェー感はない筈である。

●THE PATS PATS


昨年夏サザナミレーベル主催イベントで新宿JAMで初見した幸せ系女子ロックトリオ(ドラムは男子)。半年経って成長したかどうかは正直分からないが、彼女たちの魅力は成長よりも幸せそうな笑顔にあると言っていい。”未熟さが最高の武器”とは褒め言葉。筆者がアイドルや女子バンに惹かれるのは、完璧さではなく不完全さを自らの魅力にしているからである。間もなくデビューアナログ盤をリリースする歓びが全力で筆者を落としに襲いかかる。

THE PATS PATS ドーナツの歌 The Donuts Song

THE PATS PATS公式サイト


●THE STEPHANIES


昨年サザナミレーベルからCD『Baby, I LOVE YOU』で全国デビューしたガレージ女子トリオ。揃いのグレーのスーツは遠目に私立女子高の制服に見える。小柄な少女がギターを持つとイナセなロック姐チャンに変身するから面白い。サザナミレーベルらしい60'フレイバーたっぷりのスリーコードR&Rと男前のヴォーカルがカッコいい。ルックス的にはキノコヘアーのベースの娘が気になった。チェキ会があったらロケンロー話で盛り上がれそう。

【MV】 THE STEPHANIES - Baby, I love you

THE STEPHANIES公式サイト


●Su凸koD凹koi


「すっとこどっこい」と読む色物感たっぷりの名前にお下劣な動画で以前から気になっていた女子トリオ。ちょっと嘘つきバービーを思わせるベースヴォーカルの娘が妖怪ぽいが、MCや歌詞の世界は彼氏の性癖に一喜一憂する思春期女子の現実を描写している。言葉に嘘がないのが無性に意地らしい。アイドル担当のギターがえいたその髪型を真似ていて不覚にも萌えてしまった。川柳コーナーは男子よりも女子ファンが驚喜しそうな倦怠期カップルあるある。一方演奏力の高さは特筆もの。

Su凸ko D凹koi (すっとこどっこい) 「元カノ地獄」MV ※3rd MA『セックスレスピストルズ』

Su凸koD凹koi公式サイト

女子バンド
チェキ会あっても
恥ずかしい



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

金子寿徳10周忌:灰野敬二(THE HARDY ROCKS)/ザ・スートンズ/割礼@新宿JAM 2017.1.22(sun)

2017年01月24日 23時52分26秒 | 灰野敬二さんのこと


金子寿徳10周忌
KANEKO JUTOK 1958-2007
"HE IS ALREADY LIVING,WHILE WE ARE STILL DEAD."


会場新宿 JAM
時間 開場 午後6時30分/開演 午後7時00分 
料金 前売/当日共 3000円(+ドリンク)

出演
灰野敬二(THE HARDY ROCKS)
ザ・スートンズ(工藤冬里g.vo,西村卓也b,高橋幾郎ds)
割礼



70年代末東京の地下音楽の担い手のひとり金子寿徳が急逝してから10年。晩年の金子のお気に入りだった新宿ゴールデン街のバー裏窓主催で追悼コンサートが開催された。命日の1月24日「寿徳忌」前後で開かれた裏窓主催の追悼コンサートは筆者の記録に依るとこれが5回目。前回から5年経った。裏窓のオーナーの話では金子への追悼ライヴ企画は今回で最後になるらしい。
追悼 金子寿徳様(2007.1.29記)
金子寿徳追悼コンサート@新宿JAM 2007.4.30(mon)
橄欖と塋窟~或る廃墟の思い出に 金子寿徳を偲ぶ会@新宿JAM 08.1.24(thu)
寿徳忌@新宿JAM 2009.1.24 (sat)
金子寿徳/光束夜トリビュート kaneko jutok 1958-2007」@新宿JAM 2012.1.24 (tue)

●割礼


割礼を観るのは約2年ぶり。初めて観てから15年経つが、ルックスもサウンドも全く年を取らないように思える。「Into」「ゲーペーウー」「リボンの騎士」といった定番曲の間に新曲を混ぜた40分のセトリは、意識の底を塗り潰すような濃厚で甘美な香りで空気を満たす。個々の音は決して特殊なものではないが、四人のアンサンブルになった途端に世界が変わる様を目の当たりにして、バンドの魔術に絡みとられた。割礼の宍戸幸司は金子寿徳の飲み友達で、ライヴの打ち上げで翌日の夜まで飲み続けることがしばしばあったという。

●ザ・スートンズ


シェシズのベーシスト西村卓也は工藤冬里とはジャズコンボ「シジキ」でも共演する等長年のパートナー。金子寿徳バンドや割礼でもプレイしていたという。筆者と同時期に吉祥寺ぎゃていで働いていたというが、シフトが違うので当時は会うことはなかった。工藤や高橋幾郎(青蝕器、あけぼのいず、ハイライズ、光束夜、マヘルシャラルハシュバズ、渚にて、シェシズ、不失者、LSD March、カスミトリオ、血と雫)に比べて派手な注目を集めることは余りないが、地下音楽シーンの土台を成す重要な存在である。この日はマヘルのファゴット奏者・長谷川真子が急遽加わり、4人版ザ・スートンズの演奏だった。金子寿徳の曲を中心に、その場で指示を出して即興的に演奏されるナンバーは、最近の工藤にしては珍しくロック的な感覚に貫かれていた。最後の英語の曲はヴェルヴェット・アンダーグラウンドを彷彿させた。

●THE HARDY ROCKS


THE HARDY ROCKS=灰野敬二(vo)、川口雅巳(g)、なるけしんご(b)、片野利彦(ds)(山崎怠雅は都合により不在)の2017年初ライヴ。「Summertime Blues」「End Of The Night」「Money」「Strange Fruits」等洋楽ナンバー加え、金子寿徳のカヴァーを披露。英語の曲では絞り出すようなシャウト中心のヴォーカルが、金子の詞では深いクリアヴォイスになり、天国で荒ぶる魂を鎮める慈愛を解き放つ。川口のギターのシャープなカッティングもさることながら、歌と対峙する竹を割るようなドラムと野太い豪放ベースがバンドの核を形作っているように思えた。その意味では光束夜のトリビュートとして最も相応しかったかもしれない。

死してなお
魂を呼ぶ
歌の中

最後に光束夜のベーシストにして金子のパートナーであるミックの感謝の言葉で10周忌ライヴは終了した。BGMで流れる光束夜の生々しいライヴ音源が金子寿徳の魂を転生させる祈りとなって響き渡った。

光束夜 / "Multiple Maniacs" Excerption, September 4, 1987. part 1
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【地下アイドルの未来を担う二つの在り方】ネクロ魔・瑳里個展@原宿DFG 2017.1.17-19/でんぱ組.inc@日本武道館 2017.1.20 (fri)

2017年01月23日 03時12分29秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


夢眠が「でも『今日はいいライブだったなー』と思っても、寝て起きたら別の若いアイドルのことを……」と不安を口にすると観客の一部は苦笑い。最上も思わず「金髪ショートだったらなんでもいいんだろお前らー!」と叫び、数分前に嗚咽を漏らしていたメンバーも観客もすっかり笑顔になった。-------音楽ナタリー2017.1.21/「でんぱ組.incを諦めません」でんぱ2度目の武道館で未来への決意 2017年1月22日 10:00投稿。より引用

この言葉を聞いたとき、オレの心を何人かの推しアイドルの顔がよぎった。デビュー当時もがに似てると話題になった金髪ショートのあの娘、4日前に二十歳になったばかりの緑髪のあの娘、最近金髪を黒に戻したポストパンクな名前のあの娘、暗黒系新メン姫毛のあの娘やオルタナ系ツインテのあの娘、パンク系ショート&マスクのあの娘などなど。しかし「若い」とか「金髪」は推しメン基準の上位ではない。あくまでもオレのNo.1はえいたそこと成瀬瑛美さんである。それは間違いないけれど推し増しだけは赦して欲しい、そんな気持ちを込めてブログを書きました

NECRONOMIDOL Live at AN-NIGHT (Shinjuku LOFT, Jan 7, 2017)


●NECRONOMIDOL ネクロ魔


瑳里成人記念個展
「愛憎」

2017年1/17(火).1/18(水).1/19(木)

原宿DESIGNFESTAGALLERY
スペースWEST 1-C
11:00〜20:00

絵と寫眞の小さな個展🌹



ネクロ魔・瑳里ちゃんが昨年に続き生誕記念個展を開催した。原宿デザインギャラリーは集合アパートを改造したアートスペースで、小さな部屋で様々なアート展が開かれている。原宿という街がらか女子アーティストが多いように見受けられた。瑳里の個展「愛憎」は入り口を入って正面の部屋で開催。キャンパスのドローイング数点とはがきサイズのイラスト、ポートレイト写真が展示してある。「愛憎」のタイトル通り、彼女の心の中の「LOVE(愛)」と「HATE(憎)」のアンビバレンツ(葛藤)を絵の具で塗り込んだ絵画は、幻想的かつ情念的で少女の成長過程の一瞬のスナップショットに思える。



しかし絵画に負けず作品として最も印象的なのは瑳里本人の姿であろう。彼女が白塗りを始めたのはここ原宿だったという。曾ては原宿に白塗りが集まり交流していたらしいが、最近はみんないなくなった、と瑳里は嘆く。「どうせ人生見せ物よ」という口上のルーツに於ける個展で、ネクロ魔のデビュー・アルバム『NEMESIS』のジャケットに絵を描いてもらった。ネクロ魔の新メンバー月城ひまりの生首と血糊を舐めるネコ2匹、おめでたい日の丸の旗を加えてポップセンスがアップした。


●でんぱ組.inc


でんぱ組.inc 幕神アリーナツアー2017
in 日本武道館
〜またまたここから夢がはじまるよっ!〜

追加公演:日本武道館
2017.1.20 Fri 18:00 open / 19:00 start SOLD OUT!



2017年1月6日・8日・9日(幕張イベントホール)、1月14日・15日(神戸ワールド記念ホール)の5日間開催されたアリーナツアーの最終公演。3年前の初武道館では、アリーナはオールスタンディングでヲタ芸エリアも設置されたが、今回は開演前にディアガールがサイリウムの移動販売を行う他は、通常のレイアウトとあまり変わらないが、会場内のワクワク感はお祭り好きなでんぱファンならでは。いや、でんぱ組のライヴは会場前から始まっていることは間違いない。夢眠ねむが強調する通り「ここにいる全員ででんぱ組」なのである。



「でんでんぱっしょん」冒頭の「大丈夫、みんながいるし仲間だもん」という成瀬瑛美の台詞も印象的なでんぱ組だが、後半一人一人ファンに向けて語ったメッセージには、そもそも「みんな」という概念に馴染めず「ひとりぼっち」を生きてきた少女たちが、でんぱ組になることで徐々に心を開き、「みんな」や「仲間」が如何に素晴らしいか学んだことが明言されていた。同じメンバーで5年以上活動するでんぱ組にとって自分たちに関わる「みんな」こそが、自分たちが生きる存在意義と言っていい。しかしながらこの先も同じ言葉/気持ちを伝えるだけでは物足りない。成長に相応しい言葉を探して、各メンバーが生きる決意を新たにしたのだ。アイドルだから絶対に人前で泣き言を言わないと決心していた成瀬瑛美が、8500人の前で「応援してください!」と本心を言えたことがオレ的ハイライトだった。

推す基準
オレの心が
潤うこと

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヤなことそっとミュート/おやすみホログラム@渋谷La.mama 2017.1.18(wed)

2017年01月20日 00時42分52秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


『Re:Re:Re:Party vol.5』
おやすみホログラム / ヤなことそっとミュート

OPEN/START 19:00/19:30
ADV/DOOR ¥2,500+2D/¥3,000+2D



1月5〜9日の5日連続ドルイベで萌え尽きたかの如く、暫くドル現場から遠ざかっていた。もちろん推しメンのことを忘れたわけではなく、SNSのTLで常に動向をキャッチしていた訳で、次の現場をどうするか鵜の目鷹の目で品定めをしていた次第。その中でひと際目を惹いたのは、82年に筆者の地下音楽ユニットOTHER ROOMで初めて出演し、それ以来何度も出演するとともにゲルニカ、EP-4、JOJO広重、渚にて、ヒカシュー、キノコホテル、アーバンギャルドなど地下ロックのライヴを観に通った渋谷道玄坂の地下倶楽部ラママでの推しアイドルの2マンライヴであった。前回訪れたのは2012年だからはや5年ぶりの来訪である。地下アイドルシーンの人気グループ二組揃い踏みだが、平日なので6-7割程度の入り。ステージが横に広いので余裕で前列で観戦できる。比較的年齢層が高いのは、老舗のライヴハウスの客筋だろうか。

●ヤなことそっとミュート


先日の新宿ロフトの最前2列目で非人道的な圧迫の中で観たヤナミューを再びほぼ最前で、しかもゆったりと余裕を持って観戦できる幸せに、推しメン観るなら平日に限ると再認識した。ステージが低く目線の高さが演者と同じなので、レスがビシバシ来る。それ以上に激しいフォーメーションダンスでステージ前まで迫る動きが多く、目の前30cmで延ばす腕と腕が交差するニアミス状態をドキドキしながら慈しんだ。新曲「Morning」を含めダイナミックなオルタナロックと伸びやかなハモリに昇天寸前。推しメンなでしこのツインテがライヴが進むに連れてだんだん乱れてゆくのが萌えポイントである。ラママの音響システムだとガレージロックっぽく響く。リバーヴのかかり具合が、82年の筆者のライヴ音源に酷似している気がした。



ヤなことそっとミュート 『Re:Re:Re:Party vol.5』 2017.1.18 渋谷La.mama


●おやすみホログラム


おやホロの音源は余り聴かないが、ライヴだと毎回楽曲の良さに惚れ惚れする。ヤナミューのギターロックとは正反対の打ち込みクラブビートだが、パフォーマンスの奔放さで強力なロックフィーリングを放つ。壊れかけのテープレコーダーズの小森氏がゾッコンなのも頷ける。振り付けのないダンスは、現場のノリにガソリンを注ぐ放火魔の如く、萌え上がる炎に昂奮するヲタ連中を煙に巻き込み窒息ならぬ満足の溜め息が、会場のあちこちで同時多発する。カナミルの暴れっぷりは70年代パンクよりも90年代オルタナの極初期を彷彿とする。グランジが誕生した頃のシアトルはこんな感じだったのだろう。



170118_01 “Re:Re:Re:Party”vol.5【おやすみホログラム】


アイドルの
共同体幻想
極まれリ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【私のポストパンク禁断症#1】MX-80 SOUND『Out Of Tunnel』『Crowd Control』〜ポストアートロックの電磁力

2017年01月19日 01時58分01秒 | 素晴らしき変態音楽


BiSの再結成とペリ・ウブ萌えに端を発するペル・ウブ熱は長く尾を引き、悪性腫瘍のように身体のあらゆる部分に転移している。それに輪をかけるようにレジデンツの32年ぶりの来日公演が発表になり、オレの大脳皮質には、ポストパンクとオルタナイティブの蕁麻疹がポツポツと浮き出ているに違いない。そんな「ぷよぷよとまるで病人のように立つ」2017年はアイドルイベントとレコ買いで幕を開けた。フリージャズや地下音楽は年末セールで買い捲った余波で既に食傷気味。代わりに感染したように80年代ニューウェイヴコーナーを掘る日々。同時に2013年の震災で傾いたままの自室のレコード棚から当時のLPを引っ張り出してはターンテーブルに取っ替え引っ替えし続けている。ペル・ウブと並んで心に引っかかっていたバンドがMX-80 SOUND。レジデンツのラルフ・レコードからリリースしたので、日本でもかなり知られているだろう。
【ペル・ウブに萌ゆ】愛好家の異常な愛情 またはヲタクは如何にしてBiSを心配するのを止めてペリ・ウブを愛するようになったか



インディアナ州ブルーミングトンで1974年にギタリストのブルース・アンダーソンを中心に結成。現代音楽とキャプテン・ビーフハートなどの前衛ロックの影響を受け、75年にEPを出した後、76年にデビュー・アルバム『Hard Attack』をヨーロッパだけでリリース。78年にサンフランシスコに移りレジデンツの手引きでラルフレコードと契約。オムニバス・アルバム『Subterranian Modern』(79)にレジデンツ、クローム、タクシード・ムーンと共に参加したあと、二枚のアルバムをリリース。それが『Out Of Tunnel』(80)と『Crowd Control」(81)。<オルタネイティヴ>と呼ばれた当時の非主流派の中では、真っ当なギターバンドのMX-80 SOUNDは余りに普通のロックっぽく聴こえ、レジデンツのレーベルメイトにしてもスネークフィンガーやアート・ベアーズ、同期のタクシード・ムーン等に比べて古色蒼然としたファズギターはオールドウェイヴなイメージがあった。だから今ひとつ評価が低く、中古盤は500円以下で投げ売りされていた。

MX-80 SOUND man on the move 1977


今改めて聴いてみると、ポストパンクというよりポストアートロックやポストアシッドロックと呼ぶ方がしっくり来る。性急なドラムやメロディ感の低い歌メロは、パンク/ニューウェイヴよりもヴェルヴェット・アンダーグラウンドやストゥージズの影響大。バンド編成はありきたりだが、各楽器が持ち場を離れて脱線しあうような有機的なアンサンブルは極めて独特。スワンズやソニック・ユースの元祖と呼ばれるのも納得のノイズと楽音の同居する作曲センスは、ラルフレコードに相応しい変態バンドと言える。

Mx-80 Sound - Why Are We Here


84年にラルフから離れた直後、マネージメントと名称の所有権で揉めて、その結果バンド名の半分(SOUND)の権利を失ったため「MX-80」名義で活動を続ける。2015年に元マネージャーが亡くなった為に和解が成立し、30年ぶりに『MX-80 SOUND』と名乗れることになったという。2016年にラルフレコード時代の2作がアナログ再発され、今後の展開が楽しみでしょうがない。結成43年を迎えて未だに活動を続ける変態ロックと激情派プログレの元祖に敬意を表すると共に遅過ぎた再評価を期待したい。

MX 80 Sound Live Boarding House 12:3:79 (Ralph Records record release party)


MX-80 SOUND公式サイト

80回
宣言しよう
アートロック

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【サックス天国】山口正顯/フランソワ・キャリエール/SOON KIM/ジュリー・キアー/クリス・ピッツイオコス

2017年01月18日 01時44分29秒 | ネコ動画


筆者がサックスを始めた表向きの理由はナベサダこと渡辺貞夫のラジオ番組にあるのだが、心の底に沈殿した記憶の泥を落としてみると裏の理由のサム“ザ・マン”テイラーの「ハーレム・ノクターン」のメロディが聴こえてくる。幼少の頃、父のクラシックのレコードコレクションの中に一枚だけ金髪のお姉さんが下着で佇む写真のレコードを見つけて、見てはイケないものとわかっていたが、親のいない隙にそっと取り出して眺めてはドキドキしていた。レコード棚を勝手に触ったら怒られるので、そっと元の場所に戻しておいたが、並べる角度のちょっとした違いでバレやしないかと、これまたドキドキしたものだ。当然ながら聴くことも適わないので、どんな音楽が入っているかは知る由もなかったが「サム・テイラー」という名前だけはしっかり心に刻まれた。小学4年生の頃だっただろうか、昼のFMラジオでサム・テイラーの曲が流れた。直ぐにあの下着のお姉さんを思い出したが、咽び泣くサックスの調べは、白いランジェリー以上にスケベでヤバい音楽に聴こえた。その頃学校の男子の間で「セックス」という言葉が囁かれていて、奥手な筆者でも何か途轍もなくいやらしい意味だと悟っていたこともあり、響きの似た「サックス」もエッチな楽器というイメージを抱いたのかもしれない。

サム・テイラー/ハーレムノクターン


渡辺貞夫に憧れて中学のブラスバンドでサックスを吹き始めた頃は、経験はないがセックスの夢想は広がる一方だった。しかし不思議とサックスに色っぽい妄想を感じることはなかった。高校でバリトンサックス担当になり、同学年のアルトサックスの女子に儚い恋心を抱いたことはあったがプラトニックどころか手を繋ぐこともなく散って行った。一浪して大学に入学したときは自分のサックスを手に入れてフリージャズをやることを心に決めていた。それは異性や性欲とは関係のない(深層心理ではあったかもしれないが)、純粋な自己表現の欲求だった。並行してやっていたロックバンドでは女子にモテることを意識していた(モテるためにやっていたのではない、と思う)が、吉祥寺の地下倶楽部でサックスを吹くときは、そんなことは露ほども思わなかった。そもそもぎゃていに女子は滅多に来なかったし、来たとしても相当変わった女ばかりで、話についていくだけでも大変だった。



それから35年経った今もサックスを愛し続けているのは、幼少期の儚いエロスへの憧憬か、それとも二十歳前後にストイックを気取って童貞を貫いてしまったことへの後悔か。いずれにせよサックスを聴くことと下着のお姉さんを愛でることは全く別の時間軸の出来事であることだけはよく分かった。そんな2017年に聴くべきサックス演奏家を紹介しよう。

●山口正顯・渡辺生死 duo 『砂山』


山口正顯 (tenor.sax, clarinet, bass-clarinet)
渡辺生死 (drums, percussions)

1961年生まれの山口正顯(やまぐち しょうけん)は菊地成孔および津上研太に師事、テナーサックスとバスクラリネットを中心に様々なリード楽器を扱う。New Jazz Syndicate参加以降、フリージャズのステージに立ってきた。1950年生まれの渡辺生死(わたなべ しょうじ)は、学生時代に山崎弘にドラムを師事、米軍基地における演奏などのプロミュージシャンとしての活動後、10年ほどのブランクを経てフリージャズを中心に活動するドラム/パーカッション奏者。長きにわたって東京のフリージャズのメッカのひとつである高円寺グッドマンへのレギュラー出演を続けているこのデュオ、フリーフォーム特有の圧力と速度感を保ちながら、「砂山」「赤蜻蛉」「Danny Boy」「Summer Time」「You don't know what love is」などの古い歌音楽のメロディを織り交ぜ、独特の詩情をたたえる音を奏でる。2016年10月13日録音。

CD "Yamaguchi Schoken & Watanabe Shouji duo / sunayama" PV



●François Carrier, Michel Lambert, Alexey Lapin『Freedom is Space for the Spirit』


François Carrier フランソワ・キャリエール (sax)
Michel Lambert ミシェル・ランベール (perc)
Alexey Lapin アレクセイ・ラパン (p)

カナダのアルト・サックス奏者フランソワ・キャリエールとドラマーのミシェル・ランベールはここ6年間に4回ロシアを訪れ、セント・ペテルスブルグのピアニスト、アレクセイ・ラパンと共演を重ねてきた。最初のトリオ三部作を2012年にリリース、続いて2014年にFMRレコードから『The Russian Concerts Vol. 1 & Vol. 2』をリリースし広く評価された。そして2017年にこのユニークなトリオの6作目『Freedom is Space for the Spirit(自由は魂の余白)』をFMRよりリリースした。人類は興味深く魅惑的。無限の可能性とポジティブは創造性に満ちている。また人生を自然な形よりも難しくしてしまうことで知られる宇宙で唯一の存在である。旅は開放感を刺激する。 開放感は驚きを目覚めさせる。 その後、音楽が発生する。 音楽はいつもここにある。 注意力は、インスピレーションと創造性への道である。

Francois Carrier, Michel Lambert, Alexey Lapin - GEZ 100



●Soon Kim・井野信義・ 北陽一郎『Hotel the Strasse』


Soon Kim (alto sax)
井野信義 (bass)
北陽一郎 (trumpet, piccolo tp)

日本をはじめ、アメリカ・カナダなどの北米、ドイツ・フランス・イタリアなどのヨーロッパで活躍するSoon Kim(a.sax)、井野信義(bass)、北陽一郎(tp)の3人によるフリー・インプロヴィゼーションという形式の音のコミュニケーション。 ときに現代音楽風、ときにフリージャズ風、
ときに民族音楽風と音楽が次々と移り変わり、一方向のみの音楽感ではなく広がりのある音楽感を出している。これから多くの可能性を互いに出し合って行く意気込みが感じられ、今後の活躍が期待される。2012年2月&2013年3月録音。

KIK Live 2nd Stage #1 (2015/6/11)



●Julie Kjær 3 ft. John Edwards & Steve Noble


Julie Kjær ジュリー・キアー/ alto saxophone
John Edwards ジョン・エドワーズ/ double bass
Steve Noble スティーヴ・ノーブル/ drums

デンマーク出身の女性サックス奏者ジュリー・キアーはジャンゴ・ベイツやポール・ニルセン・ラヴのラージ・アンサンブルのメンバーとして世界中をツアーする。イギリスのニュージャズ界を代表するジョン・エドワーズとスティーヴ・ノーブルの夢のリズムセクションが、キアーの創造性溢れる楽曲に鮮やかな色と影を加える。表面的な技巧だけでなく微細に内観し、トリオは馴染み深いフックや軽快なリズムに満ちた別世界のランドスケープを描き出し、祝祭的な空気を生む。2015年1月12日ロンドン・Cafe OTOでのライヴ録音。

Julie Kjær 3 feat. John Edwards & Steve Noble - part 1 @ Jazzhouse, Copenhagen (28th of April, 2016)


サックスの
セックスアピール
プロテクト

●Chris Pitsiokos CP Unit


忘れてはいけないNYシーン最注目のクリス・ピッツイオコス。盟友ウィーゼル・ウォルターと組んだCP Unit初のプロモーションビデオが完成した。20年代のシュールリアリズム無声映画を彷彿させる実験映像が、有機と無機を攪乱するパラノ演奏と妖艶にマッチして、心の隅の暗い部分をサーチライトのように照らし出す。ピッツイオコスの音楽は21世紀の精神分析音楽療法を誘発するプラズマイオン現象と呼んで然りである。

Chris Pitsiokos クリス・ピッツイオコス: alto saxophone/compositions
Brandon Seabrook ブランドン・シーブルック: electric guitar
Tim Dahl ティム・ダール: electric bass
Weasel Walter ウィーゼル・ウォルター: drums
Music video by Richard Lenz

CP Unit: Guillotine
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【海賊盤の禁断の嗜み】セックス・ピストルズ/ザ・フー/ギャング・オブ・フォー/テレヴィジョン/トーキング・ヘッズ/裸のラリーズ

2017年01月17日 01時41分08秒 | 素晴らしき変態音楽


海賊盤(ブートレッグ)に目覚めたのはいつ頃だったろう。初めて買ったブートレッグはセックス・ピストルズの『100 CLUB SEX PISTOLS PARTY』だった。吉祥寺のF+Fというショッピングビル1階の名曲堂は普通のレコードチェーン店だったが何故かブートレッグ・コーナーが充実していた。パンク雑誌『ZOO』で紹介されたこのアルバム見つけて即座に購入したのは1978年高1の秋だったと記憶する。モノラルの客席録音で、グラスの音が混じる粗悪な音質だが、当時既に解散していたパンク・ヒーローの荒々しい演奏は、酷いサウンド故に逆に迫力があった。

新宿西口の輸入レコード店街にKINNIEというブートレッグ専門店があった。後にプログレ/ユーロロック専門店も併設されたこの店は、ロックの深みに徐々に足を踏み入れつつあった高校生にとって正に天国だった。ビートルズ、ストーンズ、ツェッペリン、クリムゾンなどロックレジェンドの海賊盤に心弾ませたが、値段はかなり高く試聴も出来なかったので、少ない小遣いを工面して一枚選ぶのは賭けに近い気持ちだった。オールカラーのジャケットに惹かれて買ったザ・フーの『TALES FROM THE WHO』は74年ワシントンでのQuadropheniaツアーのライヴで、映画『さらば青春の光』の元になった『四重人格』のナンバーを生演奏で聴けることに大昂奮した。ザ・フーは他にもモンタレーポップやウッドストックのライヴ盤、未発表デモテープ集など何枚も購入した。



ニューウェイヴ系のブートレッグはKINNIEよりもディスクユニオンや吉祥寺TONYレコードのような中古盤店で見つけることが多かった。ギャング・オブ・フォーの『ANTHRAX MARXISTS』は84年にTONYレコードで購入。彼らの1stアルバムの硬質なカミソリギターを完コピしていたので、この80年ドイツでのライヴ盤もプレイヤーに乗せてスイッチを入れたらライヴ・アット・マイルームの始まりだった。ひとりでジャンプして騒いでいたらマンションの下の階の住人から苦情が来た。

トーキング・ヘッズの透明レコード『TALKING HEADS and RHYTHM SECTION』は84年に大学生協の中古レコードセールで購入。年二回くらい開催される生協レコードセールは貴重盤や珍盤が驚くほど安価で買える穴場だった。当時の筆者のギターヒーロー、エイドリアン・ブリューの変態ギターが堪能できるこのライヴ盤は絶品。トーキング・ヘッズの作品はこれ以外は正規・ブートともに所有していない。



テレヴィジョンの『DOUBLE EXPOSURE』は91年に新宿ディスクユニオンで中古で購入。ハーフオフィシャル風のジャケットだが、ブライアン・イーノ・プロデュースのスタジオデモと75年のCBGBでのライヴを収録した非公式盤である。オリジナル・アルバムより初期デモの方がいい、と言われるのはストリート出身のロックバンドの常識といえる。

90年代以降のブートはレコードからより簡便で安価なカセットテープに代わり、さらにCDやCDRになるに至っては、曾ての「一か八か」のギャンブル性が減り魅力が失せてきた。またオフィシャルで未発表のライヴやデモ音源がリリースされることも増え、非合法の罪悪感やスリルも無くなった。そのため暫くブートを買うことは無かったが、敢えて言えば2000年代の裸のラリーズのブートの乱発には心を痛める一方で、裏腹の罪深い悦楽に耽溺しもした。特にアナログ盤ブートはCDよりも遥かに愛着が沸き、折に触れてターンテーブルの上で愛でながら禁断の快楽に身悶えする日々である。

海賊盤
犯罪だけど
憎めない
  


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする