A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ザ・シャロウズ/ザ・サイクロンズ/サロメの唇/モンドダイアモンドetc.@新宿JAM 2012.7.29 (sun)

2012年07月31日 00時31分09秒 | ロッケンロール万歳!


門馬(ザ・シャロウズ)presents カルトGSコレクション 新宿JAM編 vol.1
新世代GSの騎手ザ・シャロウズのベーシスト、ブローノ門馬氏初の自主企画。出演はザ・シャロウズ/モンドダイヤモンド(高松)/ザ・サイクロンズ(京都)/サロメの唇/ザ・ヤンマーズ/フラワーミュール/ラブ&レボリューション(vo田渕純 gtナポレオン山岸 bsサリー久保田)の7バンド。5時間に亘るイベントだ。どのバンドも2000年代GS/ガレージ/昭和歌謡を代表するバンドで、FUJI ROCKに行か(け)なかった若者でJAMは超満員。つけマツゲにキノコヘアーの60's少女が多い。年齢層が高い男性も目立つ。

私がグループサウンズに興味を持ったのは高校の時読んだ鈴木いづみさんの文庫本「恋のサイケデリック」だった。B級ロック小説を思わせる表紙とサイケデリックというタイトルにつられて買ったのだが、文中に登場するゴールデン・カップスを始めとする数々のGSの名前に心ときめかせた。当時GSといえばタイガースやワイルドワンズ、ブルー・コメッツなど懐メロとして捉えていたので、主人公の破天荒な生活を彩るサイケなGSの世界は新鮮だった。当時は鈴木いづみさんが阿部薫さんのパートナーだとは知らなかった。

1980年代半ばにネオGSが勃興し20hitsのカセットや380円のザ・ファントムギフトのシングル「ジェニーは嘘つき」などを聴いて、ネオGSのライヴにも通った。ミニスカートの女の子がゴーゴーダンスで絶叫するのが面白かったが、GS=Garage Soundと解釈したワイルドなサウンドやファズ・ギターの応酬に嬉々としたのである。その頃GS研究家の黒沢進氏の「熱狂!GS図鑑」が出版され、「B級GS(=カルトGS)」「一人GS」といった知られざるGSが多数紹介され奥深いGSの世界に惹かれていったのである。

1990年代に黒沢氏監修で各レコード会社から「カルトGSコレクション」シリーズがリリースされ、名前とジャケットしか知らなかったB級GSが気軽に聴けるようになった。ネオGSブームはとっくに終わっていたが、"イカすビートにシビれるサイケ"というキャッチコピー通りのサウンドを耳にした若者たちが次々GSの影響を受けたバンドを始め、老舗のJAM、UFO CLUB、Red ClothといったライヴハウスでGSイベントが定期的に開催されるようになった。新陳代謝の盛んなシーンでバンドの変遷は激しいのだが、現在はザ・シャロウズが最も人気・知名度共にリードしているようだ。

私は所用で開演時間に遅れ2番手のザ・ヤンマーズの最後から参戦。10年近いキャリアを持つガールズ・ガレージ・バンドフラワーミュールを観れなかったのは残念。キャリアの割にライヴの回数は少ないので貴重な機会だったのだが。ザ・ヤンマーズはゴーグルエースの影響濃いコミカルなノリですでに会場は温まっている。

各バンド25分間のステージなのでテンポよく進行する。DJはCHERRYBOWIE(神戸・HAPPYEND / 日本発狂)/セルジュ ハヤティーヌ アンジーン/ブローノ門馬(ザ シャロウズ)でGSや歌謡曲、70年代アニメソングなどで盛り上げる。

次に主催者のザ・シャロウズが登場。ファンの女の子がステージ前に殺到する。数年前にキノコホテルの対バンで観て以来何回も観ているバンドだが、その度に人気の高まりと演奏のカッコ良さが増していく。ヴォーカルの奥山恭一氏は長髪をマッシュルームに変えてよりアイドルっぽさを演出。イベントの趣旨に沿ってカルトGSナンバーを演奏。「I'm Just A Mops」(ザ・モップス)、「恋はもうたくさん」(ザ・ダイナマイツ)、「メラ・メラ」(ザ・スパイダース)。どの曲もファズ・ギターを活かしたパンキッシュなアレンジがいい。新曲も披露した。デビュー・アルバム「シャロウズの世界」リリースから1年半近く経ったのでそろそろニュー・アルバムを期待したい。



続いてサロメの唇。橘京子嬢(vo)、水のさとし氏(b)の二人を中心としたバンドで観るのは2度目。まつげパッツンのダンサー二人が踊りまくる楽しいステージ。妖艶な京子嬢のあで姿に年配男性ファンが身を乗り出してカメラを構えている。基本的にGS歌謡で京子嬢の歌がとても上手い。ムード歌謡/演歌全盛期ならば間違いなく人気スターになったであろう。激しいアップビートのバンドが多い中、しっとりしたバラードも聴かせる彼らの存在感が光った。



続いて個人的に楽しみにしていたプロジェクト、ラヴ&レボリューション。ムード歌謡の創始グループ「和田弘とマヒナスターズ」の最年少かつ最後の歌手としてデビュー、現在はソロで活躍する田渕純氏、元ファントムギフトのナポレオン山岸さん、同じくサリー久保田さんによるアシッド・フォーク・ユニット。この日が初ステージで、フルート奏者(名前は失念したが有名な人らしい)を加えたドラムレスの4人組。女装の田渕氏、ファントムギフト時代のトレードマークのグヤトーンのシャープ5モデルと丸いサングラスが嬉しい山岸さん。久保田さんはウッドベースをプレイ。ジャックス、加藤登紀子/長谷川きよし、タイガースのカヴァーを演奏。まだレパートリーが4曲しかないのでMCで田渕氏が大沢悠里や永六輔の物真似を披露。歌は抜群に上手く演奏も素晴らしいので今後の展開が楽しみである。



結成13年目の京都のベテラン・トリオ、ザ・サイクロンズ。6枚のアルバムをリリースしているだけに人気も高く会場は大盛り上がり。関西ならではの熱い(暑苦しい?)MCとロケンロー魂溢れる演奏で客を煽る。GSのカヴァーは「チュッ!チュッ!チュッ!」(ザ・カーナビーツ)、「銀色のグラス」(ザ・ゴールデン・カップス)、「御意見無用」(モップス)。イベントのエンディングへ向けてアゲアゲの演奏。



トリは高松の歌謡ヘヴィ・サイケ・トリオ、モンドダイアモンド。ゴングのデヴィッド・アレンを思わせる風貌のギターのホリチヒロシ氏はこのブログを読んで連絡をくれて以来イベント情報をメールしてくれる。ベースの紅一点トモール嬢、坊主頭のドラマー、コウガミ氏、3人それぞれがキラビやかな衣装で爆裂ファズ・ロックを展開する。リフは60'sサイケや70'sパンクのおいしいところをパクリ、歌は美空ひばり、黛ジュン、中尾ミエ、タイガース、スパイダース、妖怪人間ベムなど歌謡曲やGSやアニソン。この組み合わせの凄さはGSを超えて全ロック・ファンにおススメである。最前列で観たのだが後ろから押されて何度かステージに倒れ込むほどの盛り上がり。久々に汗をかいた演奏だった。終演後ホリチ氏に話を聞くと、高松での灰野さんのライヴを何度か企画したことがあるとのこと。この日はメンバーの都合で即日帰らなければならなかったが次回はゆっくり話をしたいものだ。



GSは
今を生きる
ロケンロー

ザ・シャロウズ次回は8/4(土)新宿JAMでの"That's a NO NO!1st album「YES or NO?」RELEASE PARTY”に出演。我が愛するsixも出演するのでまた汗をかきに行こうかと思っている。
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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第6回「マーキー・ムーン・ソノシート編」

2012年07月29日 00時27分46秒 | 素晴らしき変態音楽


地引雄一さんの著書「STREET KINGDOM 東京ロッカーズと80'Sインディーズ・シーン」を読んでいたら、テレグラフ・レコード創設のくだりでカトゥラ・トゥラーナの話が出てきて、当時購読していた音楽誌「マーキー・ムーン」のことを思い出した。”AVANT-GARDE MAGAZINE FOR 'ARS-NOVA'”と銘打っていた同誌は、「フールズ・メイト」や「ロック・マガジン」に若干遅れて登場し、私は1981年7月発行のVol.5から愛読していた。当初は同人誌っぽさの残る装丁で、ライヴ告知フライヤーが挟まっていて猥雑なイラスト満載の秘密結社めいた雰囲気があった。プログレ、フリージャズ、前衛音楽、現代音楽、中世音楽などの知られざるアーティスト/作品を特集し読み応えがあったが、何よりも嬉しかったのは付録のソノシートだった。Marquee Moon Distributionというレーベルを立ち上げ、それが後にBell Antiqueというプログレ専門レーベルになり、目白にWorld Disqueというレコード・ショップを開店することになる。

その第1弾のカトゥラ・トゥラーナは女装のヴォーカリスト広池敦氏、斎藤千尋氏(b)、斎藤史彦氏(p)、渡辺聡司氏(ds)、大串喜孝氏(cello)の5人組で、広池氏の造語による歌唱、リコーダーやチェロを駆使した室内楽サウンドはクリス・カトラーが設立したレコメンデッド・レコード一派に負けないオリジナリティ溢れるもので一発でノックアウトされた。ライヴでは女性ダンサーも交え華麗なステージを展開したというが、徐々にピアノを中心としたエレガントなサウンドに変貌し、テレグラフで2枚、Switchレーベルで12インチを1枚リリースしている。どれもユニークな内容だが、私にとってはマーキーのソノシートが最も衝撃的だった。後に本誌に広池氏が寄稿し、ソノシート音源は過去のものとして葬り去りたい旨の文章を書いたが、私としてはこの路線を追求してほしかった。



1981年10月発売のVol.6にはパイディアとジル・ド・レイの2バンドのソノシートがついた。
パイディアはマッドジミーこと清水誠氏(vo)、目黒多加志氏(g)、坂本理氏(syn)、山本達也(ds)、塗谷ひでこ嬢(p)の5人組。シンセのうねる電子音とクリムゾンを思わせる変拍子サウンドがカッコいいプログレ=ニューウェイヴ・バンドである。1984年にドラムに吉田達也氏、ギターに河本英樹氏(ex-Ruins,YBO2)が加入しオート・モッドと並ぶポジティヴ・パンクの代表バンドとして人気を博す。坂本氏は現在カンタベリー系を中心としたプログレの評論家として活躍中。



ジル・ド・レイはMar氏(vo.syn)、S氏(vo.g)、244氏(vo.per.rhythm box)、Emi嬢(b)、Gin氏(key)の5人組。横須賀出身で1981年9月にゼルダや水玉消防団のソノシートを出していたインディー・レーベル、アスピリン・レコードからシングル「吸血鬼」でデビュー。リズム・ボックスとキーボードの上に悪魔的なヴォーカルが乗るサウンドは当時のバウハウスやジョイ・ディヴィジョン、オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークといったダーク・エレクトロ・ロックの影響を感じる。因みに同名のヴィジュアル系バンドとは別モノ。



1982年1月発売のVol.7にはリビドーとプネウマを収録。
リビドーは成田ミウ氏(vo.b)、青山綾氏(g)、小林トマ氏(ds)、吉原弘子嬢(p.syn)の4人組で1980年9月吉祥寺マイナーでデビュー。耽美的なサイケデリック・サウンドはとてもユニーク。80年代にいくつかのインディー・レーベルから作品をリリースし、ポジティヴ・パンク/ニューウェイヴに分類されるが、実音は音響系のさきがけ。白塗り白衣の衣装も含め、成田氏の私的世界を展開した。残念ながら1990年成田氏の急逝により解散。



プネウマはジャーマン・エレクトロに大きな影響を受けたシンセ奏者Pneuma氏のソロ・ユニット。ここではゲスト・ヴォーカリストを2名迎え幽玄な電子音響ワールドを展開している。ライヴではクラウス・シュルツェばりに10数台のシンセを操って壮大なサウンドスケープを産み出していたそうだ。



1982年4月発売のVol.8にはロストとカレイドスコープを収録。
ロストは田村寿一氏(vo.syn)、田村磯夫氏(vo.g)、佐藤雅史氏(b)、坂本徹氏(key.p)、島崎和志氏(ds)の5人組。メンバーの志向はそれぞれ違うそうだが、バンドとしてはユーロ・ロックの影響濃いプログレで、日本ではアウター・リミッツやネガスフィアといったバンドと共演していた。このソノシートの音源はニューウェイヴ風のサウンドを取り入れた新機軸とのこと。このソノシート以外に音源は残っていないようだ。



カレイドスコープは山崎慎一郎氏(ts)、山崎薫氏(key.p)、伴田宏氏(b)、石垣秀之氏(ds)の4人組ジャズ・ロック・バンド。Marquee Moon Distribution傘下のL.L.E.レーベルはプレグレ寄りのレーベルで、インストのジャズ・ロック・バンドもリリースしていた。宇江須文左衛門グループというバンドがぎゃていにも何度か出演したことがあり、意外に本格派のジャズ・ロックを聴かせお気に入りだった。カレイドスコープとのカップリング・アルバム「Dual Cosmos」はよく聴いた。L.L.E.レーベルは派手なスターはおらず真摯に音楽を追究するバンドばかりの地味なレーベルだが、是非ともCD化してもらいたいものだ。



1982年6月発売のVol.9にはマジカル・パワー・マコとタイム・ユニットを収録。
ジャップ・ロックの生ける伝説マジカル・パワー・マコさんは70年代に3枚のアルバムを出した後1981年に4年ぶりの4th「Welcome To The Earth」をリリース、続いて1982年Marquee Moon Distributionから限定500枚のクリアLP「Music From Heaven」をリリースすることになり、その先行音源がソノシートに収録された。当時彼の音を聴いたことはなかったので、ヴァンゲリスやマイク・オールドフィールドを思わせる宅録ミニマル音響が印象的だった。クリアLPを買おうかどうか迷って結局買わなかったのが悔やまれる。10年程前偶然マコさんにお会いして新作のCDRを頂いたのだが、相変わらず曼荼羅チックなサイケデリック・トランスを展開していて感動した。今年新レーベルCHILLRERU(チルレル)を設立し精力的に活動中である。



タイム・ユニットは関口孝氏(g)、春成恵一氏(key)、久野真澄氏(b)、長沼武司氏 (ds)からなるインスト・バンドで余り表立った活動はしていなかったようだ。現代音楽、ジャズ、ロックを融合したサウンドは美狂乱やKENSOの登場で一部で活性化していたネオ・ジャパニーズ・プログレの流れに位置づけられる。



1982年10月発売のVol.10にはイギリスのアンビエント・ミュージックSEMAを収録。
1982年12月発売のVol.11にはドイツのフリー・ミュージック界の大物ハイナー・ゲッベルス&アルフレッド・ハースを収録。

1983年4月発売のVol.12には中潟憲雄氏(key)、浜田龍美氏(g)、桜井良行氏 (b)、竹迫一郎氏(ds)からなるプログレ・バンド、アクアポリスを収録。UK、ブラッフォード風のテクニカルなインスト・サウンドは悪くはないのだがこの頃からマーキー・ムーン誌自体がプログレ/ユーロ・ロックに特化するようになり初期の前衛性を失っていった。



1983年夏発売のVol.13には最後の付録ソノシートとなったMamoru Fujiedaを収録。現代音楽家藤枝守氏のソロ音源で、リリカルなピアノ・サウンドにマーキー・ムーン最後の煌めきが残る。この頃ユーロ・プログレ中心のレコード販売システムWorld Disqueを発足し、通信販売や自主制作を行うようになる。



1984年のVol.14以降は読むことはなくなった。版型が大きくなり「marquee」と誌名を短くしてからも90年代半ばまではアンダーグラウンドな音楽を取り上げていたが、1997年「MARQUEE」としてピチカート・ファイヴを表紙にしたオシャレ系音楽誌に大変身、かつての面影は全く無くなってしまった。ゆらゆら帝国や中田ヤスタカ氏を取り上げるセンスは嫌いではないが、80年代の前衛カルト誌時代が懐かしく思い出される今日この頃である。

マーキー・ムーン
由来はテレヴィジョンの曲

「フールズ・メイト」と並んでマイナー系プログレ・ファンには忘れられない雑誌であろう。




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プロト・パンクの潔さ~ドクター・フィールグッドとパブ・ロック特集

2012年07月28日 00時49分44秒 | ロッケンロール万歳!


遅まきながらドクター・フィールグッドの3CD+DVDセット「All Through The City (with Wilko 1974-1977)」を購入し、久々にウィルコのカミソリ・ギターとリー・ブリローのワイルドな歌声に痺れている。昨年4月にジュリアン・テンプル監督の「ドクター・フィールグッド~オイル・シティ・コンフィデンシャル~」というドキュメンタリー映画を観て、関係者のインタビュー中心の映画で正直肩透かしだったのだが、このアンソロジーBOXではウィルコ在籍時の4作のアルバム「ダウン・バイ・ザ・ジェティー」(1975.1)、「不正療法 」(1975.10)、「殺人病棟」(1976.9)、「スニーキン・サスピション」(1977.5)と未発表デモ&ライヴ音源、そして1975年のテレビ出演やライヴ映像を集めたDVD+未発表写真満載のブックレットでたっぷりソリッドなロケンローの世界に浸ることが出来る。当時はとにかくウィルコのギターに注目が集まったものだが、こうして通して聴くとドクターズが60'sブリティッシュ・ビート/R&Bをダイレクトに継承し優れた音楽性を開花させたバンドだったことが実感できる。

1970年代半ばロックは一大ビジネスとなり大規模なスタジアム・コンサートが次々と開催されロック・ミュージシャンは雲の上の存在というスターダムが形成されていた。それを草の根から改革し、ロックを再び隣のあんちゃん的存在に引き戻したのがドクターズを始めとする"パブ・ロック"だった。その名の通り街のパブで演奏し、ライヴ終了後はお客に交じって酒を飲み交わすという身近なロック・ミュージシャン。その音楽性は古き良きロケンローとソウル。誰でも知ってる曲に観客が踊りだすこともしばしばだった。このシーンからより若い世代のパンクが生まれた訳だ。

折しも10月にウィルコ・ジョンソンダックス・デラックスそれぞれの来日も決まり、パブ・ロックの香り立つ季節を待ち望みつつ、代表バンドを紹介しよう。

まずはドクターズ。とにかくカッコいい演奏には惚れ込むばかりだ。



10月に来日を果たすダックス・デラックスは1972年シーン・タイラ(vo,g)マーティン・ベルモント(vo,g)を中心に4人で結成、74年RCAからデビュー。翌75年キーボードが加入しパブ・ロックの名作『タクシー・トゥ・ザ・ターミナル・ゾーン』を発表し、同年解散。その後メンバーはモーターズ、ルーマーなどでそれぞれ活動。



ダックスと共に来日するブリンズリー・シュウォーツ(g)が在籍したブリンズリー・シュウォーツはニック・ロウ(vo,b)を擁するパブ・ロック・グループ。クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングやザ・バンドを思い起こさせるアメリカのルーツ・ロックを展開した。



ウィルコに多大な影響を与えたミック・グリーン(g)が在籍したジョニー・キッド&ザ・パイレーツは1960年代から活動する老舗バンド。リーダーのジョニー・キッドは1966年に交通事故で亡くなってしまうが、1977年にバンドは復活、80年代まで活動を続けた。ザ・フーがカヴァーした「シェイキン・オール・オーヴァー」のオリジナルでも知られる。



チリ・ウィリ&ザ・レッド・ホット・ペパーズは60年代からサヴォイ・ブラウン~マイティ・ベイビーで活躍したマーティン・ストーン(vo,g)が結成したパブ・ロック・バンド。後にレジデンツと活動を共にするギタリスト、フィル・"スネークフィンガー"・リスマンが在籍し、アメリカン・ルーツ・ロック色の強いカントリー/ボードヴィル・サウンドを聴かせる。



パンク~ニューウェイヴ時代が到来するとそれまで知る人ぞ知る存在だったパブ・ロックの名手達が注目を浴びメジャー・シーンで活動するようになる。70年代初期にキルバーン&ザ・ハイローズでデビューしたイアン・デューリーはザ・ブロックヘッズを率いて「Sex & Drugs & Rock & Roll」をヒットさせ、英国ロック界の首領として人気を集めた。



デューリー同様、ソウルフルなロック魂を歌い上げるグレアム・パーカーもザ・ルーモアと共に「怒れる若者」の象徴として人気を博す。彼の成功が続くエルヴィス・コステロやジョー・ジャクソンの世界的ブレイクのきっかけとなったことは間違いない。



デビュー当時はパンク・バンドとして紹介されることが多かったエディ&ザ・ホットロッズはアルバムの邦題こそ「十代の爆走 」というパンキッシュなものだったが、サウンドはブリティッシュ・ビートの伝統に根ざした正統派ロケンロー。初期メンバーには先日来日予定だったのが過去の犯罪歴の為にビザが下りず中止になったルー・ルイス(vo,harmonica)も在籍していた。



インメイツは1979年デビューという遅れてきたパブ・ロック・バンドだったが、60'sアメリカン・ガレージ・パンクのスタンデルズの名曲「ダーティ・ウォーター」をカヴァーし、80年代のガレージ・リバイバルの元祖的存在となった。当時東京FMで「ライヴ・フロム・ザ・ボトムライン」という15分番組があり、ニューヨークのライヴハウス、ボトムラインのステージをオンエアしていたのだが、エアチェックしたインメイツのライヴはワイルドなロケンローの塊で今でも大切な宝物である。



ここで紹介した以外にもデイヴ・エドモンズ、ニック・ロウ、エルヴィス・コステロなどパブ・ロックから世界的スターに躍り出たアーティストも多い。パブ・ロックの歴史的詳細は「パブ・ロック・ガイド」というサイトを参照のこと。

パブで聴く
ロッケンロールに
酔い痴れて

日本にもシーナ&ザ・ロケッツ、ルースターズ、The ピーズ、ザ・クロマニヨンズ(ヒロト&マーシー)、ミッシェル・ガン・エレファント、THE BAWDIESなどパブ・ロックの影響を受けたロックバンドは多数存在する。




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レゲエの神様の素顔~映画ボブ・マーリー「ルーツ・オブ・レジェンド」

2012年07月27日 00時48分54秒 | 映画やDVDのこと


正直言ってレゲエには余り思い入れがない。確かにエリック・クラプトンがカヴァーしたボブ・マーリーの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は知っていたし、ザ・クラッシュがデビュー・アルバムでリー・ペリーの「ポリスとこそ泥」をカヴァーしたり、レゲエ・パンクと呼ばれたザ・ポリスやデニス・ボーヴェルがプロデュースしたザ・ポップ・グループやザ・スリッツなどを聴きレゲエ独特のリズムには馴染んでいた。1979年にザ・スペシャルズやマッドネス、セレクター、ザ・ビートなどの2トーン・ブームでスカが流行った時はそのスタイリッシュなファッションも含め夢中になったものである。その年ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズが来日し、ラジオや雑誌でレゲエ特集が組まれた。特有の2・4拍目を強調したリズムに乗せて政治的メッセージを歌うレゲエは正にパンクに通じるスピリットがあり、特にジャマイカ移民の多いイギリスでは両者はとても近しい存在だった。

しかし2トーンやダブなどパンクを通過した白人発信のレゲエは理解できたが、本場ジャマイカのレゲエは日本人には相容れないユルさやレイドバック感が苦手で、ラスタカラーやマリファナを施したデザインはいいが、音楽として積極的には聴かなかった。1981年に36歳でマーリーが早逝した時も特に大きな感慨はなかった。それでも偉大な音楽家/活動家としての功績は認めていた。

ジャマイカ独立記念作品として「ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド」という映画が公開される。試写状を貰ったので観に行ってきた。試写会は「ドキュメント灰野敬二」を上映しているシアターN渋谷の1Fにあった。最終試写ということで補助席が出る盛況振り。時間ギリギリに現れた派手な数人組は有名なミュージシャンか。

映画は西アフリカでの奴隷港野様子から始まる。ジャマイカの電気も通ってない田舎町にアメリカ軍人の白人の父とジャマイカ人の黒人の母の元に生まれたロバート・マーリー。彼がハーフだということを初めて知った。ハーフ故の差別と孤立感の中、音楽を支えに育ち、1960年代半ばウェイラーズというコーラス・グループを結成。政治的動乱に揺れるジャマイカの社会で成功を収めるにつれて銃撃されたり、コンサート中に催涙弾を打ち込まれバンドも観客も避難する中ひとりステージで歌い続けたり、対立する政党の党首をステージで握手させたり、7人の女性との間に11人子供を授かったりと、文字通り波乱に満ちた36年間が本人のインタビューや貴重なライヴ・シーン、関係者の証言で明らかにされる144分。エチオピア帝国最後の皇帝ハイレ・セラシエ1世を「ジャー (現人神)」と崇めガンジャ(大麻)を手放さないラスタファリアンの生態を知れるのも興味深い。そして全編に流れるマーリーのレゲエが映画全体のトーンをラスタカラーに染め上げており、孤高のアーティストというよりひとりの男としてのボブ・マーリーを身近に感じることが出来る。私のようにレゲエがイマイチ苦手という方にこそ観ていただきたい映画である。
映画のオフィシャル・サイトはコチラ



レゲエには
大麻の香りと
燃える闘魂

映画「ドキュメント灰野敬二」が大ヒットにつき上映延長および地方上映が決定したとのこと。地方の方、お待たせしました!
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アーバンギャルド vs ぱすぽ☆@恵比寿 LIQUID ROOM 2012.7.23 (mon)

2012年07月25日 00時32分28秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


『病めるアイドル』リリースパーティ
アーバンギャルドの病めるアイドル五番勝負!!!!!
最終話:病めるアイドルは僕を好きになる
アーバンギャルド VS ぱすぽ☆

7月3日から5回に亘って開催されたアーバンギャルド vs 本物のアイドル対決もいよいよ最終回。最後の対決相手は「みんなでつくるアイドルユニット」がコンセプトで、旅と空の世界観をテーマにしている9人組ぱすぽ☆。昨年5月のメジャー・デビュー曲「少女飛行」が女性グループのデビュー・シングルとしては史上初のオリコン初登場週間首位を記録した人気アイドル・グループだ。リキッドルームを埋めた若者はアーバンギャル&ギャルソンとぱすぽ☆のパッセンジャー(ぱすぽ☆ファンの呼称)が半々。水玉&セーラー服+顔面流血メイクのアーバンギャルと蛍光ライトを手にした男性ファンが入り交じり場内は仮装パーティーの雰囲気。

このシリーズはでんぱ組.incとバニラビーンズの2回を観たが、ぱすぽ☆は一番正統派アイドルという感じ。9人色違いのひらひらスカートで揃いのダンス&歌。曲調は前者二組がテクノ・ダンス・ビートだったのに比べ、ヘヴィメタ・ギターが唸りを上げるロック。曲だけ聴いたらプリプリやSHOW-YAのようなギャルバンと間違えそう。そこに8人(ひとり足の怪我のためにパフォーマンスには不参加)の可愛らしい踊りと元気一杯の歌が乗るのだから、ロック・ファン向きのアイドルと言える。MCがまた賑やかでおニャン子クラブ以来のグループ・アイドルの伝統を継承している。ファンをパッセンジャーと呼ぶのに加えて、メンバーをクルー、リーダーをキャプテン、ライヴの事をフライトと称する世界観が徹底されている。ノリのいいロック・ナンバーにアーバンギャル達もキャーキャー歓声を送る。アーバンギャルのメイクに驚きながらもメンバーもこのイベントを楽しんでいるのがビシビシ伝わってきて嬉しい。8月15日リリースの新曲「夏色HANABI」で演奏終了。7/31フジテレビ夏の恒例イベント「めざましライブ」、8/11「a-nation musicweek Charge Go! ウイダーinゼリー」IDOL NATION 追加公演(昼)、8月半ば「ぱすぽ☆ 東名阪zeppツアー」、8月下旬にレコ発ライヴ「夏空HANABIフェス」、9/15イナズマロック フェス 2012@草津に出演、とアイドルは超多忙。



アーバンギャルドは「病めるアイドル」仕様の黒の水玉&カラー・ネクタイ、よこたんは赤いドレスで登場。この衣装もこの日が最後と言うと会場から「え~っ!辞めないで~!」という声が上がる。「堕天使ポップ」「スカート革命」と盛り上がったところで毎度のコール&レスポンス。パッセンジャーも心の底から叫んでいた。今までが2~300人のライヴハウスだったので、リキッド・クラスの大きなホールだとこれまで以上にショーアップされたノリの良い演奏を聴かせる。"近藤、向かって来い"の「オギノ博士の異常な愛情」やよこたんが眼帯をして"巨人兵が見えます"と幻視して始まる「保健室で会った人なの」、「傷だらけのマリア 」などインディー時代の人気曲も披露。やはり彼らはメジャーで活動する最高の「病めるバンド」であることを実感した。

▼セックスなう


アンコールではコレが最後の「病めるアイドル」の"踊ってみた"パフォーマンス。見事に調教された(?)アーバンギャル&ギャルソン+パッセンジャーの掛け声が一体となった素晴らしい演奏。このパフォーマンスは出来ればPVとしてYou Tubeにアップして欲しい。コレも最後のひとりづつのメンバー紹介(ひとりづつに掛け声付き)が終わり、ぱすぽ☆のメンバーを呼び込む。登場したぱすぽ☆メンバーの顔を見て観客が大騒ぎ。全員血の涙を流したメイクでアーバンギャルに変身していたのだ。天馬氏がぱすぽ☆に楽曲提供した「ピンクのパラシュート」を初披露。曲調はアーバンギャルド風だがとてもポップで天馬氏の作曲の才能が光るナンバー。「もう1曲やってもいいかな?」「いーとも!」と続けてシングル「病めるアイドル」のカップリング曲でぱすぽ☆をフィーチャーした「萌えてろよ」。会場全体が萌え上がる熱狂のパフォーマンスで「病めるアイドル五番勝負」は幕を閉じた。



▼7月3日第一話~BiSとのコラボ



▼7月17日第四話~バニラビーンズとのコラボ



しかしアイドルのコンサートはこれで終わりではない。ファンとの交流会があるのだ。最終回はメンバーと記念撮影が出来る「チェキ会」。よこたんはブログで「私は写真写りが悪いので...」と書いていたが、ファンにとっては一緒に写真が撮れるのは天にも昇る気持ちだろう。ホール内ではアーバンのチェキ会、ロビーではぱすぽ☆の握手会とファン大喜びのイベントはいつまでも終わることがなかった。

▼お楽しみのチェキ会


五連続
ライヴで萌えた
病めるアイドル

ライヴ終了と同時にTwitter経由オフィシャル・サイトでアーバンギャルドの次の予定が発表になった。9月19日にニュー・シングル「さよならサブカルチャー」リリース。10月下旬から全国ツアー『アーバンギャルド 病気の再来ツアー(仮)』開催。天馬氏の野望はまだまだ続く。
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愛のために死す/アニス&ラカンカ@吉祥寺リンキーディンク 2nd 2012.7.22 (sun)

2012年07月24日 00時39分04秒 | ロッケンロール万歳!


愛のために死す presents "SUMMER NIGHT KISS"
シベールの日曜日がvo.gの坪内和夫氏以外全員メンバー・チェンジをして2011年夏に新メンバーでスタートして以来のベースとドラムは"愛のために死す"という奇妙な名前のバンドのメンバーである。友人からこのバンドが2006年に「LIVE' 418」というCD-Rをリリースし、サイケデリック・ロックの傑作として高い評価を得たことを聞いた。100枚限定だったので入手が難しい幻の作品で、アメリカでLPリリースもされたとのこと。その音源を聴かせてもらったが、ニルヴァーナのカヴァーを含む11曲はベースレスで破天荒に爆裂するノイジーな2本のギターが印象的なジャンク・ガレージ・ロックだった。2007年PSFのサイケデリック・サンプラー「Tokyo Flashback 6」に参加、2010年にはギューン・カセットからCD「部屋と夢」をリリース。リーダーの大口弦人氏以外はメンバー・チェンジが激しかったが、2012年より弦人氏(vo)、シマ氏(ds)、早川洋平氏(b)、 内田芳尚氏(g)の4人に落ち着き、隔月企画"Frame Out "を主催するなど定期的に活動をしている。

この日は吉祥寺の音楽スタジオ、リンキーディンクスタジオの1室を借り切っての文字通りのスタジオ・ライヴ。地元だが商店街のファミレスのビルの3Fにあるこのスタジオは知らなかった。大きな鏡がある20畳くらいの広いスタジオに20人くらいの観客が機材を囲むように座り込んでいる。若い女性の姿が多い。

対バンはアニス&ラカンカという女性二人組。どこかで見た顔だな、と思ったら、埋火の見汐麻衣嬢とシンガーソングライターmmm(ミーマイモー)嬢のデュオだった。昨年9月に割礼/ロバQ/埋火を観た時のオープニング・アクトがmmm嬢だった。ニュージャージーの牧場育ちの16歳と18歳の姉妹という設定。曲調は穏やかなアシッド・フォークあり、ヒルビリー風の賑やかなナンバーありで二人のハーモニーが美しく、洒落っ気たっぷりのトークも面白い。ラスト・ナンバーではmmm嬢がドラムを叩く。彼らは年末までスケジュールが埋まっており、デュオだけではなくバンド編成でのライヴもある。7インチ・シングルをリリース済。CDも近々リリース予定とのこと。



スタジオなので15分ほどで手早くセットチェンジ終了、愛のために死すの4人が登場する。以外に小柄な弦人氏だが、歌い始めると激しいアクションで魅了する。デビューCD-Rの音に比べると驚くほど正統派のロッケンロール。シンプル&タイトでエネルギー溢れるパフォーマンスを観ていて、30数年前に同じ吉祥寺のDACという電気店のイベントホールでの「ZOOアナーキー・ギグ」で観たスピードや、大好きで吉祥寺マイナーや荻窪ロフトに観に行ったSYZEを思い出した。彼らのスタイルは東京ロッカーズを髣髴させる。会場が明るいスタジオということもあるが、当時S-Kenスタジオで行われていた東京ロッカーズのライヴもこんな感じだったのだろう。スピードのライヴでパンク・ロックのノリ方を知らず突っ立ったままの観客に「リズムを取れよ!」とヴォーカリストが激を飛ばしていたことも思い出した。懐かしくも最近珍しくレアなロック魂がとても新鮮だった。バラード・ナンバーも悪くない。草の根からのロッケンロールの復権に期待したい。動画は映画「ROCKERS」を意識してモノクロで撮ってみた。



シベールの日曜日の坪内氏(メガネをかけていたので最初分からなかった)、壊れかけのテープレコーダーズのゆさ嬢も観に来ていた。このようにライヴハウスやホールやステージ以外の場所でライヴを体験するのも新鮮な気分である。

火がついた
ロックが生まれる
スタジオで

ジャンルは違うが8月にフェスティバルFUKUSHIMAの一環で開催されるノイズ電車&ノイズ温泉も楽しい体験になるだろう。
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組原正 レコ発@南池袋 ミュージック・オルグ 2012.7.21 (sat)

2012年07月23日 00時33分33秒 | 素晴らしき変態音楽


【組原正・ニューアルバム『inkuf』発売記念ライブ】
先日UFO CLUBでお披露目ライヴをやった新生グンジョーガクレヨンのギタリスト組原正さんの新作発売イベント。企画は牧野琢磨氏(NRQ/湯浅湾)。以下ミュージック・オルグHPでの紹介文。
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【企画者から】
元グンジョーガクレヨンのギタリストである組原正【くみはら・ただし】さんが、5/23にニューアルバム『inkuf』を発表します。これを機会に、私・牧野の個人的な欲を実現させるべく、発売記念ライブを企画させて頂きました。

組原さんはかつてグンジョーガクレヨンというバンドのギタリストでした。グンジョーは、舞台の上にとにかくただ五人の人間がいる、という面白みに満ちた誠に稀有なバンドでした。

組原さんがやっている音楽には本当に驚かされます。我々は何かを聴いたとき、それを形作っているものを自身の経験に参照しがちで、是か非ではなくそれはあたりまえのことです。ですが、組原さんの演奏の前だとこれが意味なくなるのです。何にも・何処にも参照できない音楽。例えば過去という記憶にも、未来という想像にも。組原さんの演奏を聴くたびに私はそう思います。そして毎回驚き、嬉しくなっちゃうのです。

とはいえ、それは決して難解なものではなく、思わず吹き出してしまうようなおかしな身体性、必死さ、真剣さ、人間味、人懐っこさ、そのようなものが溢れていて、そこに私はまた強く惹かれるのです。

組原さんの音楽をご存知の方にとっては、私のような人間がいくら言葉を重ねても「知ってるよ」という話ですよね…すみません。とはいえ、すでによくご存知の方々、加えてまだそれを聴いたことがない方々、あるいは過去聴いてうっすらとしか覚えていない方々、どのような方であっても、皆様全員に7/21はオルグへお越しいただきたいのです。

当日は三組の出演を予定しています。オプトラム、T.美川さん、中尾さん、そして元グンジョーのドラマーである宮川さん。どの方も、組原さんの強いご希望のもとブッキング致しました。

あまりライブをやる方ではないので、またとない機会かと存じます。何卒ご来場のほどを宜しくお願い申し上げます。

牧野琢磨(NRQ/湯浅湾) 拝
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ミュージック・オルグは初めてだったが、池袋駅から徒歩5分のビルのB2にあるライヴハウスというより幡ヶ谷 Forest Limitや武蔵小金井アートランドのようなイベントスペース。横長に機材がセッティングしてある。最近いろんなところで会うイベント企画者のやんてら氏やノイズ系ライヴ友達のK氏も来ている。開演時間が近づくにつれ次々と観客が押し寄せ予備の椅子が並べられ、立見も出る満員御礼。先日のUFO CLUBは正規料金で入場したのは私ひとりという閑古鳥状態だったというのにどうしたことか?宣伝力の違いだろうか。

最初はOptrum。ここ数年伊東篤宏氏(Optron)のソロやセッション活動が多く進揚一郎氏(ds)とのデュオOptrumとしての演奏を観るのは数年振りになる。開始前に伊東氏が「客席がかなり近いのでかなり眩しいと思うので前列の方は視線を外して下さい」とMCしたが正に目の前で明滅する蛍光灯の光に目が眩んだ。伊東氏はエアシンセを使ったりエフェクターの種類を増やしたりして音色の幅を広げている。そこに進場氏の強力なフリージャズ&ハードコア・ドラムが絡み迫力たっぷりのノイズコア・サウンドを展開する。25分の演奏だったがちょうど良い長さで楽しめた。



続いて主役の組原さんが登場。非常階段/IncapacitantsのT.美川さんとのデュオの予定だったが、グンジョーガクレヨンのベースの前田隆さんが飛び入り参加しトリオ・セッションに。組原さんはトレードマークのナチュラルボディのテレキャスターにPCを繋いだセッティング。ヴォーカルにハーモナイザーをかけた奇妙な声のヴォーカリゼーションでスタート。ギターのネックを愛撫するように上下に駆け回る独特のフィンガリングから産み出される音は楽器の音というより雨音や雷鳴、家が軋む音など環境音に近い。そこにうねる前田さんのベースと美川さんのハーシュノイズが絡み付き情緒を排除した冷徹な音響空間が生まれる。グンジョーの時も感じたが組原さんのプレイは即物的なドライ感が濃く、テクニックや情念を超えた次元のものである。時にピョンピョン飛び跳ねるアクションが面白い。30分弱のセッション。



最後は組原さん+宮川篤志さん(ds/グンジョーガクレヨン)+中尾勘二さん(as,tb)のトリオ。時間になっても宮川さんが到着していないというアナウンス。このユルさが彼らならでは。それほど待たせず宮川さんが到着。ドラムをセットするとすぐに演奏開始。さすが長年活動を共にする二人だけあり、即座にギアがハイに上がる。中尾さんは最初トロンボーン、半ばでサックスに持ち替え。今回はドラムがあるのでよりタイトに音が締まった演奏。中尾さんのとぼけた味のホーンが強固なg+dsの演奏にユーモラスな色をつける。こちらも30分弱の演奏。



終演後、組原さんがマイクでMCをしたのだがエフェクターがかかっていて何を言っているのか判らない。企画者の牧野氏から「レコ発にも関わらずCD販売がないのは販売レコード店の担当者が来なかったから」とお詫びが入る。私は持参したCDにサインを貰った。

組原氏
ギター講座を
やってケロ

今後の予定は決まってないそうだが、せっかく再結成したグンジョーガクレヨンにはさらなる活躍を期待したい。

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Bo Ningen/下山 Gezan @ 東高円寺 UFO CLUB 2012.7.20 (fri)

2012年07月22日 00時42分36秒 | 素晴らしき変態音楽


Bo Ningen来日公演
<Bo Ningen x 下山(Gezan)2マン!>

2011年2月に初めて観てド肝を抜かれて以来、来日する度に通っているロンドン在住のサイケデリック・ロック・バンドBo Ningen の2012年サマー・ツアー初日は、大阪のジャンク・ロック・バンド下山(Gezan)との長髪バンド対決。灰野さんが映画「ドキュメント灰野敬二」の中で「ロック・バンドは長髪じゃなきゃいけない」とい語っていた通り、ロングヘアーのバンドには相当の覚悟と気合いが感じられる。現在のアンダーグランド・シーンの最注目バンド二組の対バンなのでチケットは早々にSold Out。彼らは2011年8月に大阪で共演しているが、東京での対バンは初めて。観客には若い女性が多い。

会場に入るとステージのカーテンが開いたままになっている。マイク・スタンドがステージ下にセッティングしてあるからだ。下山(Gezan)の激しいアクションのためにステージを少しでも広くしようということだろう。UFO CLUBでの定位置、ステージ右手のソファに居を定める。恒例のラジオ風のテーマSEに乗って下山のメンバーが登場。全裸&アフロがトレードマークのカルロス・尾崎・サンタナ氏(b)がこの日は女物のドレスで登場。穏やかなバラードで始まるが2曲目以降はステージ狭しと暴れ回るマヒトゥー・ザ・ピーポー氏(vo.g)を中心に爆音が炸裂する混沌のステージ。マヒトゥ氏はMCで「東京の奴らはバカばっか」と挑発、集中豪雨のように激烈な混乱の中、他のメンバーのシールドを引き抜いたりドラマーが叩いたシンバルを手で押さえたり、意味不明の傍若無人ぶりを発揮する。「ドラッグやればサイケデリックなのか、バーカ」「お前らには判らないだろうな、バカだから」と悪態をつきまくる。最後は前回観た時と同じく1stアルバム「かつてうたといわれたそれ」のラスト・ナンバー「春の膝」の叙情的なバラードを歌い上げ終了。毎度の客席への乱入パフォーマンスはなかった。フライヤーを見ると、彼らはこの夏から拠点を東京に移すそうで、8月20日(月)から東京都内16ヶ所、16日連続ライブ「侵蝕の赤い十六日」を敢行するとのこと。関西の狂人バンドが東京に殴り込み、一体どうなるのだろうか?



Bo Ningenを観るのは7回目になるが、観る度に完成度の高い曲構成と激しいエネルギーを発散するパフォーマンスに圧倒される。ロングヘアーに女物のドレスや破れたジーンズという不遜なルックスの割に普段は気のいい好青年揃いである。ミュージシャンに限らず海外で活躍する日本人は概して礼儀正しい人が多い。異国の文化に囲まれて活動する中での日本人としてのアイデンティティを大切にしている証拠だろう。その代わり自分を表現するときは情け容赦なく徹底的に自己主張する。それが異境で認められるための唯一の方法なのである。それはBo Ningenのステージングに見事に表れている。イギリスは勿論ヨーロッパ各国でツアーやフェスティバル出演を重ね百戦錬磨の彼らである。そのテクニックとサウンドの安定感は他の日本のバンドとは格が違う。凶暴に暴れ回る激しいプレイは下山に共通するが、演奏が乱雑になることは一瞬たりともない。vo.bのTaigen氏はしばしばベースのストラップを外し抱きかかえて演奏するのだが、サウンドの要である重低音を外すことはない。精神力・気合いが根本から違うのだ。プレイの激しさに息も絶え絶えのMCで自分たちのライヴは毎回少しの手抜きもない全力投球だと語る。曲名が決まっておらず「いち」と呼んでる新曲も、まさにココだ!というところできめのフレーズやテンポチェンジが来て、心の底から気持ちいい。60分を超える本編に続くアンコールでは最後にドラムのMon-chanがドラムセットの上で逆立ちしそのまま崩れ落ちる。エクスタシーに溢れたステージに満員の観客全員が大熱狂。



終演後物販コーナーに長い列が出来る。下山もBo Ningenもメンバー自ら手売りしファンと交流している。Taigen氏はこのブログを愛読してくれているので話が弾む。地方公演も気をつけて、と伝えて別れた。

憧れの
ロングヘアー
断髪式

そういえばBo Ningenのメンバーは灰野さんの映画を観たのだろうか。
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アーバンギャルド vs バニラビーンズ@渋谷 Take Off 7 2012.7.17 (tue)

2012年07月19日 00時52分19秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


アーバンギャルドの病めるアイドル五番勝負!!!!!
第四話:北欧の風、心の風邪   
アーバンギャルド VS バニラビーンズ

「病めるアイドル」リリース・パーティ5連続イベントの第4夜。Take Off 7は学生時代に出演していた老舗のライヴハウスで、当時は公園通り沿いのビルの上階にあったと記憶しているが、2009年11月に移転し現在はクラブクアトロのあるBOOK OFFの隣のビルのB1にある。以前よりもかなり広くなり、天井が高く気持のいいホールである。チケットは当然ソールド・アウト。

今回の対決アイドルは"北欧の風にのってやってきた、清楚でイノセンスな雰囲気を持つオシャレ系ガールズユニット"バニラビーンズ=通称バニビ。キノコ頭担当のレナ嬢、外はね頭担当のリサ嬢のデュオである。前回観たでんぱ組.incはバリバリのアキバ系で熱狂的なヲタ・ファンが多かったが、バニビのファンは草食系の普通の男子が多く、同じアイドルでもこうも違うのかと感慨しきり。アーバンは前日に渋谷CHELSEA HOTELで新潟のアイドル・トリオNegiccoを迎え「長ネギに死す」と題するイベントをやったので二日連チャン。アーバンギャル&ギャルソンには両日、っていうかこのシリーズ全てに参戦している人も多い模様で、でんぱ組.incの時に見かけた顔もチラホラ。

軽快なBGMにのせて水玉のアーバンフラッグを振りながらバニビのふたりが登場。野太い雄叫びが飛び交ったでんぱ組.incの時とは違い観客は礼儀正しい拍手で迎える。白のワンピースに北欧の風を感じる。ポージング(バニビは踊りの振りをこう呼ぶ)を揃えてオシャレなテクノ・ソングを歌う。二人組アイドルといえばピンク・レディやWINKがいるが、バニビの歌で思い出すのはザ・ピーナッツ。ダンスではなく主に手のポージングで観せるパフォーマンスが上品でいい感じ。「今日は北欧の風vs心の風邪であるとともにキノコ頭頂上決戦でもあります。この対決には負けません」と挨拶。結成7年、マネキン・パフォーマンスや着せ替えイベントなどユニークな活動で知られる彼女たちのファンのお約束は元気な手拍子だ。キメ部分は両手のポージングを真似てあとはひたすら手拍子大会。いよいよ後半、7/4リリースの新曲披露というところでバック・サウンドのCDが作動しないハプニングが発生。「北欧の風が心の風邪に侵されてしまいました」とひとこと。レナ嬢は「実は私もレキソタンを・・・」とビョーキ系であることを告白。前列を占めるアーバンギャルの奇矯なメイクに驚嘆してみせる。そういったハプニングがありながらも60分のステージが終了。キャッチ・フレーズ通りの爽やかなスタイルに好感が持てる。音楽的にも聴きどころが多く単なるアイドルではなくヴォーカル・デュオとして評価したい。何とレッド・ツェッペリン「天国への階段」のカヴァーをリリースしている。



さてアーバンギャルドの登場。ステージ前のスクリーンが上がると前列から「お~っ」というどよめきが上がる。何事かと思ったらメンバー全員がマッシュルーム・カットの鬘にボーダー・シャツの渋谷系ファッション。特に楽器の3人は普段と全く違ったイメージ。よこたんは金髪に赤いベレー帽が似合っている。「キノコ頭頂上決戦」とはこういうことだったのか。一昨年にアーバン、バニビ、キノコホテルでイベントをしたとのこと。当時とっくににキノコノトリコだったのに見逃していたのは残念。ピアノにのせた大人しめのバラードで始まり、一気にアーバン流ロックに突入。毎度のコール&レスポンスには客席後方を占めるバニビ・ファンの男性客も「大好きでーす!」と唱和。キーボードの谷地村啓氏はおばさん、この日31歳の誕生日を迎えたドラムの鍵山喬一氏は神聖かまってちゃんのの子、ギターの瀬々信氏に至ってはまんだらけの店員、と紹介され大ウケ。天馬氏得意の下ネタ・トークも「北欧風のオシャレなイベントだから」と封印。「近藤、向かってこい」もなかったが、この異常なルックスで彼らの変態性が余計浮き彫りにされたのが面白かった。

▼7/16 渋谷CHELSEA HOTELでのNegiccoとのコラボで筋肉少女帯のカヴァー!



アンコールは前回同様「病めるアイドル」のダンス歌唱だが、驚いたのは観客のノリ。前回でんぱ組.incのファンがその場でつけた「よーこたん!よーこたん!」とか「フゥーフゥー」という掛け声や腕を振りあげての「Oi! Oi! Oi!」という叫びを観客全員が覚えて大盛り上がり。アイドル五番勝負の回を追うごとに観客の反応が病めるアイドル的進化を遂げていることに驚嘆した。最後はバニビを迎えてのコラボ。バニビが出演したロートリフレアTV-CMの腕を上げて腋の下を見せるポージングを生で披露し天馬氏が大喜び。渋谷系オシャレナイトということでバニビがカヴァーしているピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」を演奏し、上品かつ異能的なステージは終了。

ライヴ後のお楽しみは第一回がビンタ会、第二回がハイタッチ会、前日の第三回がナデナデ会ときて今回は肉球チュパチュパ会という謎の企画。よこたんの愛猫ソレイユがおねだりする時の仕草を真似てメンバーが参加者の胸にタッチしてくれる。観客のほぼ全員が参加してアーバン、バニビ両者との交流会を楽しんでいた。

ふたりとも
とってもおしゃれな
バニビです

来週の最終回がどういうことになるのか楽しみでならない。

7月23日(月)恵比寿LIQUID ROOM
最終話:病めるアイドルは僕を好きになる  
アーバンギャルド VS ぱすぽ☆
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チャールズ・ヘイワード V4 VICTORY@高円寺 HIGH 2012.7.16 (mon)

2012年07月18日 01時07分06秒 | 素晴らしき変態音楽


CHARLES HAYWARD presents V4 VICTORY
クワイエット・サン~ディス・ヒート~キャンバーウェル・ナウとカンタベリー系、ポストパンク、レコメン系バンドを渡り歩いてきた名ドラマー、チャールズ・ヘイワードがニュー・バンドで来日するという情報は実は3月上旬に知っていた。招聘元のVinyl Japanの中谷さんとはFacebookの友達で、中谷さんから「チャ―ルズ・ヘイワードのニュー・バンドの来日公演を7月にやるのだが、いい対バンはいないか?」との問い合わせをいただいたのである。それは素晴らしいとばかり、灰野さんは勿論、吉田達也さんのルインズ・アローンやROVO、PARAなど山本精一さん関係、ウンベルティポ、アルタード・ステイツ、ヘア・スタイリスティックス、パニックスマイル、狂うクルー、ZENI GEVAなど思いついたバンドを動画と共に紹介した。

その後忘れかけていた頃にTwitterやネット・ニュースで「チャールズ・ヘイワード来日決定」と発表された。東京公演は二日間で初日のサポート・アクトは吉田達也さん、ナスノミツルさん、鬼怒無月さんの是巨人だという。私の情報が少しは役に立ったのかどうかは分からないが、彼らはユニヴェル・ゼロのサポートも務めたので妥当な線ではある。私はサポート未定の二日目に行くことにした。

二日目は開場が17:00と早めである。予想通りTAKE’s Home Pageのタケダさんが来ている。初日も”当然”観たそうで、大阪から観に来たという女性を紹介された。初日はかなりの動員だったらしく、この日は客の出足が遅いとのこと。タケダさんは”当然”整理番号一桁。私は37番だったので前列は無理かなと思ったが、ステージ右手柵前の隙間に潜り込み最前列を確保。予想外に30~40代のニューウェイヴ世代が年配のプログレ・ファンより多かったのはディス・ヒート・ファンが多勢だった故か。この手のライヴにしては女性客の姿も多い。

チャールズ・ヘイワードは1996年以来4度目の来日公演だが、過去3回がソロ+日本のミュージシャンとのセッションだったので、バンドを率いての来日は初めてである。私は観るのは初めてだが、初来日時の灰野さんやペーター・ブロッツマンと共演したライヴ盤「Double Agent(s)~Live in Japan Volume Two」は愛聴している。そこで聴かれる丁々発止のインタープレイは緊張感とスリルに溢れていて素晴らしい。また、歌モノのソロ作品はカンタベリーらしい独特の幻想感があり味わい深い。

告白すると個人的にはディス・ヒートの1stはイマイチのめり込めなかった。リリース当時プログレ/オルタナティヴ系のメディアやレコード店では大絶賛で青と黄色の印象深いジャケットと共にポストパンクを象徴するアルバムと評されていたので、日本盤が出た時には狂喜して購入したが、そのサウンドは、悪くはないのだが当時好んでいたレジデンツやポップ・グループ、スロッビング・グリッスル、キャバレー・ヴォルテール、ペル・ウブなどに比べると比較的地味で難解で、それほど革新的だとは思えなかった。2ndの「偽り(Deceit)」はヴォーカル中心のロック・アルバムでカッコいいと思った。その印象は今聴いても変わらない。

この日のサポート・アクトはジム・オルークだと中谷さんから聞いていたが、一般にはギリギリまで発表されず、2,3日前になってVinyl Japanのサイトに「ジム・オルークとタイムスリッパーズ」と発表された。ステージに登場したのはジムと男性メタル・パーカッション奏者、ヴァイオリンの男女、フルートの女性の5人で全員サングラスなので顔が分からない。ジムは渦巻状の金属を叩きエフェクターを弄りながらぼそぼそと唄う。彼が関わっていたイギリスのドローン・ノイズ・ユニット、オルガナムや古くはタージマハル旅行団、7年くらい前にアストロ氏がやっていたAstral Travelling Unityなどを想わせる幻惑的なドローン/アンビエント演奏が45分続く。これはスタンディングとはいえ睡魔との闘いだった。立ったまま何度も意識を失いかけバランスを崩して倒れそうになった。Astral Travelling Unityと灰野さんの共演を観た時も大半眠ってしまい、目が乾いてコンタクトが外れて辛い思いをしたことを思い出した。家でリラックスして聴く分にはいいが、この手の音のライヴは厳しい。決して悪いということではなく、個人的な趣味&体調の問題であるが。メンバーは不明だが、パーカッションの男性は山本達久氏、ヴァイオリンの女性はtriolaの波多野敦子嬢だったことは判明した。石橋英子嬢は参加していたのかどうか?



タイムスリッパーズの機材が少なかったのでセットチェンジはスムーズ。15分くらいでV4 VICTORYの4人が登場。左から紅一点のカテリーヌ(DJ BPM)(pc,cdj,key)、ヴァーン・エドワーズ(g)、チャールズ・ヘイワード(ds)、ニック・ドイン=ディトマス(b,フリューゲルホーン)。カテリーヌのアンビエントな電子音にニックの深いリバーブのフリューゲルホーンが絡み、まったりとスタート。チャールズが8ビートを叩き出しヴァーンのスライド・ギターがフリーキーなフレーズを奏でる。幻想的なホーンが北欧フューチャー・ジャズのニルス・ペッター・モルヴェルを想わせる演奏。ニックがベースに持ち替えファンキーなチョッパープレイを繰り出しチャールズのドラムと相まってタイトなファンク・ビートを産み出す。グラクソ・ベイビーズやサートゥン・レイシオ、EP-4など80’sアヴァン・ファンクを髣髴させるノリにあわせて観客も身体を揺する。時々ドラム・パターンが変わり曲調が変化するが、基本はファンク+音響系インプロである。チャールズのヴォーカルがない代わりにカテリーヌがPCでヴォーカル・トラックを乗せたり、鶏の鳴き声を出したりユーモラスな要素もある。ディス・ヒートともキャンバーウェル・ナウともソロとも違う新しいスタイルを模索していることを実感する。先日アルトー・ビーツで来日した小柄なクリス・カトラーに比べ大男のチャールズだが、クリスと同じように「過去の演奏の再演ではなく、常に新しいサウンドに挑戦する」という前向きな姿勢がビシビシ伝わる演奏が素晴らしい。80分余りの本編に続くアンコールでは、ROMPというバンドで初来日時に対バン歴のある大阪のギタリスト豊永亮氏がゲスト参加、DNA時代のアート・リンゼイばりの破壊的なノイズ・ギターでエキサイティングに絡む。2回目のアンコールではチャールズがバナナを持って現れ「バナナ、ピアニカ」と紹介してピアニカを吹く。ダブ風のビートにデニス・ボーヴェルやニューエイジ・ステッパーズを思い出すが、なかなか斬新な演奏を聴かせてくれた。のべ100分に亘る熱演だった。しかしバナナは何だったんだろう?



ディス・ヒート
キャンバーウェル・ナウ
過去にして

中谷さんが、ニックがポスト・パンクの隠れた名バンドPinski Zooのメンバーだと教えてくれた。検索してみてもPinski Zooのメンバーに彼の名は無く真偽のほどは不明だが、30年ぶりにPinskiの名前を聞いて懐かしかった。翌日はメンバーを浅草観光に連れていくとのこと。

▼フライヤーと物販で購入したバッジ

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