褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 約束の土地(1975)  3人の若者達の野望を描く

2023年08月20日 | 映画(や行)
 19世紀のポーランドの工業都市ウッツを舞台にした映画が今回紹介する約束の土地。しかしながら、多くの日本人にはあまりにも馴染みの少ない地方だろう。よって、少しばかりこの当時の時代背景及び舞台設定を説明しておこう。ポーランドという国は歴史上において何回も消滅しては復活している国家。ちなみに当時はソ連、プロイセン(今のドイツ)、オーストリアによる分割統治されていた頃。本作においてもルーブルやマルクといったロシアやドイツの通貨が流通している。そして当時のウッツだが繊維工業が盛んで、多くの工場が立ち並んでいた。ちなみに本作でも工場が立ち並んでいる景観は当時の様子を感じれるし、工場での作業もド迫力の映像を見せる。
 物語は旧態依然としたウッツがこのまま続けば未来はないだろうと、資本家達に反乱する若者達の姿が描かれる。

 さて、若者達の野望とその成れの果てを描いたストーリーの紹介を。
 ウッツでは、経営困難の煽りを受けた資本家の中には保険金目当てで工場を放火する者が続出したり、自殺する者も出ていた。そんな状況下であるウッツに未来は無いと3人の若者が新しく工場を作ろうと画策する。その3人とは300年間も続く士族の末裔カルロ(ダニエル・オルブリフスキ)、商才のあるユダヤ人モリツ(ヴォイツェフ・プショニャック)、父は繊維業を営むドイツ人のマルクス(アンジェイ・セヴェリン)。彼らは古い資本家の抵抗に遭いながらも、資金集めに翻弄する。
 ある日のこと、カルロは婚約者がいながら工場主の妻ルツイ(カリーナ・イエドルシック)とも密会を重ねていたのだが、ルツイからある情報を聞かされる。それは輸入される綿の関税が近い内に引き上げられること。彼らはこのチャンスを捉えて大量に綿を買い込み、それを同業者に売り込み大金を手にする。その甲斐もあり彼らは念願の新しい工場を手に入れる。しかし、何かと敵を多く作ってしまうカルロのおかげで・・・

 ストーリー紹介だけなら登場人物が少なく思われるかもしれないが、けっこうロクでもない人間が多く出てくる。そいつ等のおぞましいエピソードのおかげで3時間の大作になっている。俺から見ればカルロが登場人物の中でも1番ダメな人間に見えたのだが。3人の新しく工場を建てるという夢が次第に私利私欲の欲望に変わっていく、と言うか最初から私利私欲だけだったように思えなくもないが、けっこう古い時代を描きながらも強欲資本主義がこの世をダメにしている現在にも通じるテーマが描かれている。しかし、その様な内容の映画を1975年というソ連の影響下にあった社会主義国家のポーランドで制作されたことに驚きと、先見の明を感じさせる。
 けっこう強烈な描写があったり、ちょっとこのタイプの映画にしては時間が長すぎると感じたり、最初の始まりがせっかく綺麗な風景で始まるのに、それを台無しにするようなピンク色を使ったタイトルバックがセンス無さすぎたり、見たことも無い登場人物達が一斉に喋り出したり等で観ていてけっこう辛く感じる部分もある。
 しかしながら、国籍も宗教も異なる者同士(ドイツ人のマルクスが大して頑張っているように見えなかったのは深読みしてしまいそうになるが)が目標へ向かって突き進むというストーリーは見所充分。ポーランドの歴史をほんの少しでも知りたい人、自らの成功のためには手段を選ばないような主人公が描かているストーリーが好きな人、何はともあれ忍耐力のある人に今回は映画約束の土地をお勧めに挙げておこう

 監督はポーランド映画界の伝説アンジェイ・ワイダ。祖国に対する想いが描かれている映画が多い。名作灰とダイヤモンド地下水道カティンの森、フランスの政治家をジェラール・ドパルデューが演じるダントンがお勧め





 

 
 
 
  

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