褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 気狂いピエロ(1965) ゴタール監督らしさが満載です 

2019年10月05日 | 映画(か行)
 1930年代から1940年代にかけてのフランス映画は名作が多くまさに黄金時代。しかし、第二次世界大戦を終えてフランス国民の価値観が大きく変化したのか1950年代半ばに突入した頃にはすっかりマンネリ化ムードが漂う。そんな時に1950年代後半からヌーヴェルバーグ(フランス語で’’新しい波’’の意味)と呼ばれる映画運動が起こり、若い映画監督達が多く現れた。彼らの作品はそれまでの映画の文法、形式といった既成概念をぶっ壊し、斬新な作品が多く生み出されることになる。そんなヌーヴェルバーグを牽引し、その中でも際立った個性を発揮したのがジャン=リュック・ゴタール監督。今やヌーヴェルバーグの生けるレジェンドである彼を敬愛する映画人は現在においても多く存在する。
 そんな彼の映画監督としての集大成的な作品が今回紹介する気狂いピエロ。実はゴタール監督の映画を観たことが無い人が本作をいきなり観ると、頭の中が?だらけになってしまう可能性が大いにある。特に今どきの人は映画に求めることはスリル、サスペンス、迫力、笑い、感動といった気分を高揚させること。しかしながら本作にそのようなことを期待してはいけない。なぜなら本作はゴタール監督の自己満足の映画。きっと彼の頭の中に観客を楽しませようという気は全くないように思えるからだ。

 とりあえずは有って無いようなストーリーを簡単に紹介しておこう。
 金持ちの女房と結婚していたフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)だが、仕事はクビになりパリでの退屈な毎日に飽き飽きしていた。そんな時に偶然出会ったのが5年前に知り合った元カノのマリアンヌ(アンナ・カリーナ)。一夜をともにした2人だったのだが、フェルディナンが朝起きたら見知らぬ男性が首にハサミが突き刺さった状態で死んでいるのを見てビックリ。何事があったのかとフェルディナンはマリアンヌに問い質すのだが、彼女は何も気にすることなく飄々としている。
 とんでもない事件に巻き込まれたことを悟ったフェルディナンだったが、退屈な生活を抜け出す絶好の機会だとばかりにマリアンヌを連れて逃亡。犯罪を繰り返しながらも憧れていた楽園のような生活を手に入れることができて充実感を得るのだが・・・

 所々で哲学的な台詞が出てきたり、絵画が出てきたり、有名な人が作ったらしい詩が引用されていたりで、どうもそれらが何かを象徴しているらしいということは感じさせるのだが、それらをハッキリさせようと考え出すと面倒くさい映画。そして、ゴタール監督のインテリ的な趣味が垣間見えてイラっとさせられる。
 何だか小難しいネタを小出しにしてくるので難解な映画のように思えるのだが、ジャン=ポール・ベルモンド演じる男性主人公の微笑ましい馬鹿っぷりが逆に本作を明るい雰囲気の映画にしている。名前はフェルディナンなのだが、一緒に逃亡する元カノからはピエロと呼ばれて腹を立てているのだが、確かに扱いはピエロ同然だ。しかし、案外世の中の男は女性から観ればピエロに見えてしまうのかも?なんて真面目過ぎる俺は大いに考えさせられたりした。特にこの男の猛烈な馬鹿さはラストシーンで観ている者を驚愕させる。
 しかし、本作はラストシーンだけでなく色々と驚く場面を見せてくれる。いきなり死体が出てくるシーンや、突然ミュージカルみたいに歌い出したり、主人公が観客に向けて話だしてきたり、突っ込みどころ満載の編集だったり、アメリカへの風刺が描かれていたり等など、これぞゴタール監督というシーンが多く見られる。しかし、個人的にはそのようなシーンはニヤリとしてしまうのだが、今の人は何かと映画の撮影技術の凄さを目の当たりにしているので、どこまで驚けるのか正直なところ疑問だ。
 そして、マリアンヌ役の主演女優のアンナ・カリーナだが、非常に魅力的。実はこの人はゴタール監督の初期作品を支えたミューズ的な存在であり、元嫁。本作は2人の離婚直後の作品だということを知って観るとなかなか興味深く観ることができる。
 ジャン=リュック・ゴタール監督という名前を聞いたことがある人、ヌーヴェルバーグという言葉に興味を持った人、ゴタール監督の勝手にしやがれは観たことがある人、映画とは何なのか?なんて永遠に答えが出てこないような質問にずっと考えられる人、作者の自己満足に耐えられる人・・・等などに今回はイチかバチかで気狂いピエロをお勧めしておこう

気狂いピエロ [DVD]
ジャン=ポール・ベルモンド,アンナ・カリーナ,グラツィエ・カルヴァーニ
KADOKAWA / 角川書店


気狂いピエロ [Blu-ray]
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 監督は前述したジャン=リュック・ゴタール。映画の常識を変えたと言われる長編デビュー作品である勝手にしやがれは一度は観ておいた方が良い。そして、何かとやりたい放題のウイークエンドはインパクトがあってゴタール監督の作風が合わないと思っている人にもお勧めです。



 
 
 
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