飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

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プーチン大統領の「政敵」釈放の真の理由は何か?

2013年12月24日 11時44分38秒 | Weblog
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   プーチン大統領の政敵と言われたホドルコフスキー元石油大手ユコス社長が大統領の恩赦で釈放された理由についてロシア・メディアは様々な見方を紹介している。「ソチ五輪成功のため」「人権批判回避のため」などだが、大統領が政権掌握に自信を深めてきたことが最大の理由とみられる。

   プーチン大統領は3期目の就任前から反プーチン運動にさらされ、昨年5月の就任後も長期政権を嫌う中間層からの厳しい批判を受けていた。このため大統領の支持率も第一次大統領期に比べ、大幅に低下していた。

   だが、就任直後からデモ規制法やNGO(非政府機関)取締法などの法律を矢継ぎ早に成立させ、反プーチン派指導者を中間層から切り離す作戦をとってきた。その結果、今秋の地方選挙ではモスクワなど大都市を除いて野党側を押さえ込むことに成功した。

   民主派の政治学者、トレーニン・カーネギー財団モスクワセンター所長は「モスクワ市長選で反プーチン運動の指導者ナバリヌイ弁護士が得票率27%を得たが、それほど大きい数字ではない。勝者はプーチン大統領だ」と英字紙モスコー・タイムズのインタビューで答えている。今回の恩赦は、政敵に寛大な措置を取れるほどに政権側の支配が強いことを示す大統領のメッセージだと分析している。

   さらに、プーチン大統領はシリア紛争で化学兵器廃棄を実現させ、ウクライナのEU加盟問題でも加盟の第一歩となる「連合協定」締結を延期させるのに成功している。ペトロフ高等経済学院教授は「ウクライナとシリアの国際的勝利で、プーチン大統領は不敗を信じるようになり、ホドルコフスキー元社長に対する措置をガラリと変えたのだろう」と分析している。

   釈放後、ホドルコフスキー元社長は今後政治活動をしないと述べているが、民主派の間では、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長(当時)によって流刑を解除された反体制派の物理学者サハロフ氏(故人)のような民主勢力の精神的指導者になるのを期待する声も上がっている。

   その一方、「いかなる政治的脅威もないから釈放された」とのクールな見方もあるが、「どんな場合でも世論を指導する立場になることは明らかだ」と見る人が少なくない。ミンチェンコ国際政治研究所長は「彼は何よりもまず民主勢力に影響力を持つだろう」と分析している。

   いずれにしろプーチン政権に投獄され、10年も獄中で罪を認めず闘ってきた人物が、政権に対する恨みを忘れるわけがない。当面はドイツで生活するにしても、近い将来ロシアに戻ってきて、プーチン政権への反旗を翻すに違いない。その時こそ、プーチン大統領との本当の戦いが始まるだろう。(この項終わり)

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