飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアの超国家主義がプーチン大統領の復帰につながる!?

2010年12月27日 11時09分01秒 | Weblog
 モスクワ中心部で12月11日に起きた、サッカーファンの若者らによる暴動は、ロシアの今日的な問題をあぶりだした。ブレジネフ・ソ連共産党書記長当時の「停滞の時代」に匹敵する社会の閉塞感が、若者を超国家主義あるいは排外主義に向かわせているからだ。こうした雰囲気が12年の次期大統領選まで続くと、強権主義のプーチン大統領復帰につながるとの見方も出ている。

 11日の暴動は、クレムリン脇のマネージ広場を中心に起きた。サッカーファンら約5500人が、サッカーファンとカフカス地方出身者とのけんかで死亡した事件の不公正な捜査に抗議する集会だったが、若者たちは「ロシア人のためのロシア」「モスクビッチのためのモスクワ」などと排外主義的なスローガンを叫びだしたのだ。これを押しとどめようとした治安部隊との間で乱闘になり、30人以上が負傷、60人以上が拘束された。

 この暴動をメドベージェフ大統領は「ポグロム(集団的な迫害)であり、罪を起こしたものは罰せられる」と非難し、国民の不安感を煽る結果になった。これに対し、野党指導者のネムツォフ元第一副首相は「こうした暴動はロシアの崩壊につながり、ロシアには“強い手”が必要だという声が強まる。結果的にプーチン大統領復帰の道を開くことになる」と警告した。

 今回の事件について民主派のラティニナ女史はモスコー・タイムズ紙への寄稿文で、超国家主義的暴動はカフカス・ファシズムとロシア・ファシズムの源流があり、ロシア・ファシズムに関しては「プーチン大統領時代の8年間に日常化した」と指摘している。その理由として女史は、プーチン体制のイデオロギーがファシズム的だったことをあげている。

 ロシア国内に超国家主義的な雰囲気が広がっていることは、世論調査の結果からもうかがえる。昨年9月に世論調査機関ネバダ・センターが調査したところ、「ロシア人のためのロシア」のスローガンを支持する人は調査対象者の56%にのぼったという。さらに、ロシア系住民とカフカス地方出身者とのけんかやリンチ事件が多発していることも指摘されている。

 ロシアには160以上の民族が住んでいる。ロシア人は約80%を占めるが、そのほかにタタール系、ウクライナ系、カフカス系などの民族がいる。多民族国家で超国家主義や排外主義が高まると、秩序維持が難しくなる。次期大統領選を巡り、メドベージェフ大統領とプーチン首相の争いが水面下で進む中、国内の治安をいかに維持するかが双頭体制の重要な問題になってきた。

 
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