日本政府は、メドベージェフ露大統領の北方領土初訪問の判断を誤った河野雅治・駐ロシア大使を更迭する方針を決めた。事態打開に向けたこの人事をひとまず歓迎したい。だが、大使交代だけでは不十分だ。領土問題に本格的に取り組むには、もっと思い切った人事を断行すべきだ。
大統領の北方領土初訪問の話は、今年9月から出ていたのに、それを放置したのは河野大使だけの責任ではない。それを指導・監督すべき本省の幹部が「大統領が訪問するわけがない」と決めてかかり、出先に対し十分な調査を命じなかったからだ。まさに同罪といわなければならない。
そもそもロシア側と日本側との意思疎通がうまくいかなくなったのは、鈴木宗男衆議院議員(当時)が2002年、あっせん収賄罪などで逮捕された事件を巡る日本政府の措置にロシア側が不信感を抱いたからだ。この事件に関連して当時の東郷和彦欧州局長らロシアン・スクールの幹部を一掃し、それまで築いてきたプーチン大統領ら政府要人との信頼関係をご破算にしてしまったといっても過言ではない。
そのうえ外務省は、当時鈴木議員“追い落とし”の尖兵だった小寺次郎ロシア課長を、対露外交の責任者である欧州局長に昇格させている。これでは、ロシア側が外務省を信頼して情報を流すわけがない。しかも、小寺局長は11月の大統領北方領土訪問直前まで「訪問はありえない」と新聞記者らに公言していたという。
大統領の北方領土訪問以来、ロシア側は北方領土の実効支配を強めている。プーチン首相は今月6日、ハバロフスクで演説し、極東・シベリア地域のインフラ整備を急ぐ方針を表明した。それを受けてロシア政府は金融危機で減額していたクリル(千島)諸島社会経済発展計画の予算を元通りに復活させることを決めた。こういう動きをみていると、ロシアは北方領土交渉を完全に打ち切るのでは、と思えてくる。
だが、その一方で、日本側に領土問題を含む対露政策を刷新し、交渉のテーブルに就くよう求めているとの声も聞こえてくる。今回の一連のロシア側の措置は、そのためのショック療法だというのである。ロシアのこれまでのやり方を見ていると、強硬な姿勢を示してきたときこそ、こちら側のチャンスであることが少なくない。
今回の事態を深刻に受け止め、「過を転じて福となす」には、日本側も肉を切らせて骨を切るくらいの気概をもって事に当たらなければならない。この際、日本政府は大使の首のすげ替えだけに終わることなく、さらなる人事異動を含む抜本的な態勢立て直しを進めてほしい。
大統領の北方領土初訪問の話は、今年9月から出ていたのに、それを放置したのは河野大使だけの責任ではない。それを指導・監督すべき本省の幹部が「大統領が訪問するわけがない」と決めてかかり、出先に対し十分な調査を命じなかったからだ。まさに同罪といわなければならない。
そもそもロシア側と日本側との意思疎通がうまくいかなくなったのは、鈴木宗男衆議院議員(当時)が2002年、あっせん収賄罪などで逮捕された事件を巡る日本政府の措置にロシア側が不信感を抱いたからだ。この事件に関連して当時の東郷和彦欧州局長らロシアン・スクールの幹部を一掃し、それまで築いてきたプーチン大統領ら政府要人との信頼関係をご破算にしてしまったといっても過言ではない。
そのうえ外務省は、当時鈴木議員“追い落とし”の尖兵だった小寺次郎ロシア課長を、対露外交の責任者である欧州局長に昇格させている。これでは、ロシア側が外務省を信頼して情報を流すわけがない。しかも、小寺局長は11月の大統領北方領土訪問直前まで「訪問はありえない」と新聞記者らに公言していたという。
大統領の北方領土訪問以来、ロシア側は北方領土の実効支配を強めている。プーチン首相は今月6日、ハバロフスクで演説し、極東・シベリア地域のインフラ整備を急ぐ方針を表明した。それを受けてロシア政府は金融危機で減額していたクリル(千島)諸島社会経済発展計画の予算を元通りに復活させることを決めた。こういう動きをみていると、ロシアは北方領土交渉を完全に打ち切るのでは、と思えてくる。
だが、その一方で、日本側に領土問題を含む対露政策を刷新し、交渉のテーブルに就くよう求めているとの声も聞こえてくる。今回の一連のロシア側の措置は、そのためのショック療法だというのである。ロシアのこれまでのやり方を見ていると、強硬な姿勢を示してきたときこそ、こちら側のチャンスであることが少なくない。
今回の事態を深刻に受け止め、「過を転じて福となす」には、日本側も肉を切らせて骨を切るくらいの気概をもって事に当たらなければならない。この際、日本政府は大使の首のすげ替えだけに終わることなく、さらなる人事異動を含む抜本的な態勢立て直しを進めてほしい。