ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

2005年ベスト10 A面(「これはいいよ編」)

2006-01-02 21:30:48 | 映画
----うん。A面ってどういうこと?
「ベスト10って基準が難しくって。
『だれにでもおススメ。これはいいよ』なのか
『おススメはしにくいけど。でもぼくはこれが好き』なのか…」

----つまり主観か客観かってこと?
「まあ、おおざっぱに言えばそういうことだね。
ということで、
今回はまず「2005年ベスト10 A面(「これはいいよ編」)」から。
あっ、これは公開順ね」


『パッチギ!』
(one comment)「帰れ。帰ってください」……笹野高史に助演男優賞をあげたい。
「風に吹かれていた」あの時代。「悲しくてやりきれない」。
『エレニの旅』
(one comment)「もう、思う人が誰もいなくなった」エレニの慟哭。
水上の葬儀、白布の丘での別れの演奏、見せしめに吊された大量の羊、
そして圧巻の水没の町。
あまりにも贅沢なアンゲロプロス映画芸術。
『ミリオンダラー・ベイビー』
(one comment)「これは自分の娘との疎遠な関係に苦しみ、
必死でボクサーとして 名を挙げようとする若い女性の中に自分の娘の姿を見出す
一人の人間のラブストーリーだ」(イーストウッド)
「映画はある瞬間から変化していく。思わぬ方向にね」(ヒラリー・スワンク)
『マラソン』
(one comment)キーワードは<足>ではなく<手>。
彼の片手はコーチとつながれ、もう片方の手は草をなぜてゆく。
映画はセリフで語るものでなく<画>で語るもの。
幻想の中を走り抜けるチョウォンに熱い拍手を。
『ヒトラー~最期の12日間~』
(one comment)戦争は負けた側の視線から写すことでその本質に迫れる。
ベルリン包囲網を抜け出すユンゲと少年。
自転車という小道具に託されたものは…。
『リンダ リンダ リンダ』
(one comment)映画とは、俳優という<素材>の中から、
その人だけが持つ固有の<輝き>を掬いあげ
フィルムの中に封じ込めようと言う 大胆な野心。
『亀も空を飛ぶ』
(one comment)「これは子ども時代を持たないまま、
大人にならざるを得なかった若者たちについての映画なのです」
(ゴバディ監督)。
『キング・コング』
(one comment)髑髏島で、そしてエンパイアステート・ビルで……
ふたりで見つめた紅の水平線。
いつまでも続いてほしい時間。
スローモーションで捉えられた氷上のスケーティング。
『天空の草原のナンサ 』
(one comment)「 広大な空と地平の草原で家族だけで生きる彼らが、
孤独の入り込むすきのない濃密な時間を生きていることに私は涙をこぼした」。
詩人・佐野洋子さんの評がこの映画の奇跡を解き明かす。

※番外特別賞
『スター・ウォーズ エピソード3・シスの復讐』
(one comment) タトゥイーンで養父母に預けられるルーク。
それは銀河宇宙にとって『新たなる希望』であった。
彼らの上に輝いているのは、あのルークが見つめた二つの太陽。
1976年の始まりの時へいまぼくらはワープする。
ルーカス、すてきな29年をありがとう。

----はいはい。酔わない酔わない。
次はB面(ベスト10「ぼくはこれが好き編」)だね。

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猫ニュー

『キング・コング』

2006-01-01 22:47:43 | 映画
----いやあ、ついに行ったニャあ。
「はい、ついに行きました(笑)」
----ようやく観れただけに感慨もひとしおってとこ?
「そうだね。3時間超える長さも苦にならなかった」
----なんで、そんなに観たかったの?
これって、昔の『キング・コング』のリメイクでしょ?
「だって、あの『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督が
『王の帰還』で頂点を極めた次の作品。
しかも彼が映画を志すきっかけになったのが
オリジナルの『キング・コング』だと聞けば
これは観ないわけにはいかないじゃない」

----『タイタニック』のジェームズ・キャメロンが
あれで気力を使い果たしたかのように
以後、長い間何も撮ることができなかったのに比べたら、
スゴく精力的だね。
「そうなんだよね。まずそこが驚きだ。
この映画、すでに公開されているし、
オリジナルもあまりにも有名。
ストーリーを語るのは止めにして、
見どころを少しだけ話そうかな」

----でも、それは想像つくニャあ。
オリジナルが作られた頃に比べて特撮技術は発達しているし、
大スペクタクルになっているんでしょ?
「いや、そればかりじゃないんだ。
ワンカットワンカットがすべて無駄がなく
ひと続きの絵画を観ているかのよう。
隅々まで神経の行き届いた丁寧な画作りには
それだけで心揺り動かされる。
しかも映画の根底に流れるのは美女を愛した野獣の悲しみ。
『美女が野獣を殺した』の名セリフは忘れがたい。
もちろん緻密に再現された30年代のニューヨークや
CGによるコングとクリーチャーのバトルは
最大の見ものではあるけれどね」

----美女を愛した野獣かあ…。
「そう。
けっこう泣けるポイントが多いこの作品、
最初にグッとくるのが、
髑髏島でコングが美しい夕景を
彼女アン・ダロウに見せようとするところ。
テクニカラーを思わせる絵画的色調で捉えられた
その雄大な自然もさることながら、
コングの姿があまりにもさみしそう。
そう、この夕景をコングはずっとひとりで見てきたわけだ。
あのシーンでぼくは
手塚治虫の『火の鳥・鳳凰編』の我王を思い出したよ」

----ふうん。この映画って、泣けるんだ。
「うん。
ニューヨークの凍った池で滑る二人も素敵だった。
このシーンはスローモーションで映し出され、
その幸福な時間を観客に引き伸ばして見せることで
情感をより盛り上げる。
しかしピーター・ジャクソンってほんとうに
スローモーションの使い方が巧い。
コングの元から戻ってきたアン・ダロウ。
ところがそこでは船のクルーたちが
コングを捕らえることに余念がない。
そう、彼らはコングで金儲けをしようと
そのことで頭がいっぱいなわけだ。
そしてここでもやはりスローモーションが使われる」

----でもそんなところに使って意味あるの?
「欲にかられた人々を目にしているのは、
命からがら生還を果たしたアン・ダロウ。
彼女の目から見れば、
彼らはすっかり違う人間に変わってしまったようにしか見えない。
そしてそれは
自分とは異なる時間が動いていることにも等しい。
その違和感をビジュアル化するべく、
ピーター・ジャクソンはスローモーションと言う形で
映画の中の時間をいじって見せるわけだ。
ここが強烈に印象に残るのは、
彼女の受難のすべてを手に汗握りながら見守ってきた観客も
またアン・ダロウと同じく
彼らに同じ違和感を感じているからなんだ」

----はあ、分かったような分からないような。
「じゃあ別の見どころを…。
先日話した 『PROMISE』
暴走する猛牛の大群に驚かされた話をしたけど、
ここでは首長竜を始めとする恐竜がやはり暴走。
ほぼ同じカメラアングルだったあの作品に比べて、
こちらはスリルを盛り上げるべく
めまぐるしくそのポジションを変える。
いやあ、こういう映画を作らせると
やはりハリウッドはたいしたものだね」


              (byえいwithフォーン)

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