※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。
----この映画も今年の賞レースに絡んでいるよね。
監督はデヴィッド・クローネンバーグだっけ」
「うん。彼にしては珍しい家族ドラマと言われているけど、
いやいやどうして。
トリッキーな映像や彼の十八番とも言うべき肉体の変貌こそないものの、
これはいかにもクローネンバーグらしい映画だ」
----ふうん。どういうところが?
「“日常を脅かす不穏な空気”、
そしてその中にいったん取り込まれると
そこは“逃れられない迷宮”に変わるというところかな。
『ヴィデオドローム』のSM暴力ヴィデオしかり、
『イグジステンズ』の仮想ゲーム世界しかり。
もっと言えば『ザ・フライ』だって
物質移動と遺伝子組み換えの研究という世界に、
深く入り込みすぎてしまって抜けられなくなった男の悲劇。
『スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする』も
記憶と妄想の迷宮から抜け出れなくなった男の話だ。
この『ヒストリー~』はその取り込まれ抜けられないものを
過去に自らが犯した<暴力>と置き換えると分かりやすい」
-----ニャるほどね。まずは物語を話してよ。
「インディアナ州の小さな田舎町で静かに暮らす
トム(ヴィゴ・モーテンセン)とその家族。
ところが夫トムが営むダイナーが
二人組の男に襲われたことからすべてが変わる。
突然銃を突きつけられた彼は、一瞬の隙をつき逆襲。
強盗二人を射殺し、店の客や従業員を救う」
----うわ~っ。大活躍。ヒーローだね。
でも、なぜ彼はそんなスゴい銃の腕前ニャの?
「そこなんだよね。
その危機一髪のときにトムが見せる身のこなしに、
観客はだれしもが『あれっ?』。
でも実はここが重要なポイント。
この事件でトムはヒーローとして
メディアで祭り上げられるんだけど、
彼のことをジョーイと呼ぶ黒づくめの謎の訪問者(エド・ハリス)が出現。
男は『なぜ、あんなにも人を殺すのがうまいのか、
ジョーイに聞いてみろ』と妻エディ(マリア・ベル)にけしかける。
果たして夫の過去に何があったのか?
信頼と不安の間で揺れ始めるエディ。
かくして静かな生活は音を立てて崩れはじめてゆく…」
----そうかミステリー的な要素もあるんだね。
これはオモシロそうだ。
「ぼくがこの映画をいいなと思うのは、
主人公の家族をきっちり描いているところ。
トムの息子ジャックは学校で虐められているんだけど、
いつも言葉で交わして暴力事態になることを避けようとする。
この彼の身の処し方に<平和>を重んじるトムの教育方針が伺える。
ところがそんなジャックが
ガールフレンドの名誉を傷つけられたことから暴発。
相手を容赦なく叩きのめす。
それまで彼はいかにも弱虫であるかのように描いていただけに、
ここは事態を見守るクラスメートのみならず
観客にも強いインパクトを与えずにはおかない」
----mmmm。
「このシーンは、
トムが強盗を射殺して以降の時制に配置。
つまり父親の暴力が<連鎖>したってことだね。
しかしこの息子の正義の鉄槌に対しても
トムは非暴力を主張して彼の行為を諌める。
このあたりは、
訪問者とトムの関係についての観客の混乱を誘う巧い筋書きだ。
謎野訪問者は人違いしているのではないか……とね」
----ふうむ。お話の方は分かったけど、
映像はどうなの?
クローネンバーグらしさってあった?
「映画のテーマとなっている暴力の描き方かな。
全ての暴力は突発的に起こり、
しかも銃が発射された瞬間、ピクリともしないで死んでしまう。
これはいままで多くの映画の中で
撃たれて苦しむ姿をイヤと言うほど見てきた目にとっては衝撃。
だって生命が絶たれ、
一瞬にしてモノと化してしまうんだもの」
----俳優の演技も話題になっているよね。
「エディを演じたマリア・ベルの評価が高い。
トムと『10代の頃に知り合いたかった』と
無邪気にベッドでじゃれていたのに、
夫の暴力的本質が分かってからは
そのセックスは、拒否しながらも応じてしまう荒々しいものへと変わる。
片目をつぶされ顔に傷のある男を演じるエド・ハリス、
見るからにエキセントリックなウィリアム・ハート。
俳優たちもその異様な風貌によって
映画の<異形性>を際立たせている」
----あれっ?トム役のヴィゴ・モーテンセンは?
「彼はカーク・ダグラスに似てきたね」
----誰それ?
「マイケル・ダグラスのお父さんだよ」
----よく知らないけどスゴそう。
それも<異形性>?
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「いびつだニャあ」
※抜けられない度
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※画像はアメリカのオフィシャルwallpaperより
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。
----この映画も今年の賞レースに絡んでいるよね。
監督はデヴィッド・クローネンバーグだっけ」
「うん。彼にしては珍しい家族ドラマと言われているけど、
いやいやどうして。
トリッキーな映像や彼の十八番とも言うべき肉体の変貌こそないものの、
これはいかにもクローネンバーグらしい映画だ」
----ふうん。どういうところが?
「“日常を脅かす不穏な空気”、
そしてその中にいったん取り込まれると
そこは“逃れられない迷宮”に変わるというところかな。
『ヴィデオドローム』のSM暴力ヴィデオしかり、
『イグジステンズ』の仮想ゲーム世界しかり。
もっと言えば『ザ・フライ』だって
物質移動と遺伝子組み換えの研究という世界に、
深く入り込みすぎてしまって抜けられなくなった男の悲劇。
『スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする』も
記憶と妄想の迷宮から抜け出れなくなった男の話だ。
この『ヒストリー~』はその取り込まれ抜けられないものを
過去に自らが犯した<暴力>と置き換えると分かりやすい」
-----ニャるほどね。まずは物語を話してよ。
「インディアナ州の小さな田舎町で静かに暮らす
トム(ヴィゴ・モーテンセン)とその家族。
ところが夫トムが営むダイナーが
二人組の男に襲われたことからすべてが変わる。
突然銃を突きつけられた彼は、一瞬の隙をつき逆襲。
強盗二人を射殺し、店の客や従業員を救う」
----うわ~っ。大活躍。ヒーローだね。
でも、なぜ彼はそんなスゴい銃の腕前ニャの?
「そこなんだよね。
その危機一髪のときにトムが見せる身のこなしに、
観客はだれしもが『あれっ?』。
でも実はここが重要なポイント。
この事件でトムはヒーローとして
メディアで祭り上げられるんだけど、
彼のことをジョーイと呼ぶ黒づくめの謎の訪問者(エド・ハリス)が出現。
男は『なぜ、あんなにも人を殺すのがうまいのか、
ジョーイに聞いてみろ』と妻エディ(マリア・ベル)にけしかける。
果たして夫の過去に何があったのか?
信頼と不安の間で揺れ始めるエディ。
かくして静かな生活は音を立てて崩れはじめてゆく…」
----そうかミステリー的な要素もあるんだね。
これはオモシロそうだ。
「ぼくがこの映画をいいなと思うのは、
主人公の家族をきっちり描いているところ。
トムの息子ジャックは学校で虐められているんだけど、
いつも言葉で交わして暴力事態になることを避けようとする。
この彼の身の処し方に<平和>を重んじるトムの教育方針が伺える。
ところがそんなジャックが
ガールフレンドの名誉を傷つけられたことから暴発。
相手を容赦なく叩きのめす。
それまで彼はいかにも弱虫であるかのように描いていただけに、
ここは事態を見守るクラスメートのみならず
観客にも強いインパクトを与えずにはおかない」
----mmmm。
「このシーンは、
トムが強盗を射殺して以降の時制に配置。
つまり父親の暴力が<連鎖>したってことだね。
しかしこの息子の正義の鉄槌に対しても
トムは非暴力を主張して彼の行為を諌める。
このあたりは、
訪問者とトムの関係についての観客の混乱を誘う巧い筋書きだ。
謎野訪問者は人違いしているのではないか……とね」
----ふうむ。お話の方は分かったけど、
映像はどうなの?
クローネンバーグらしさってあった?
「映画のテーマとなっている暴力の描き方かな。
全ての暴力は突発的に起こり、
しかも銃が発射された瞬間、ピクリともしないで死んでしまう。
これはいままで多くの映画の中で
撃たれて苦しむ姿をイヤと言うほど見てきた目にとっては衝撃。
だって生命が絶たれ、
一瞬にしてモノと化してしまうんだもの」
----俳優の演技も話題になっているよね。
「エディを演じたマリア・ベルの評価が高い。
トムと『10代の頃に知り合いたかった』と
無邪気にベッドでじゃれていたのに、
夫の暴力的本質が分かってからは
そのセックスは、拒否しながらも応じてしまう荒々しいものへと変わる。
片目をつぶされ顔に傷のある男を演じるエド・ハリス、
見るからにエキセントリックなウィリアム・ハート。
俳優たちもその異様な風貌によって
映画の<異形性>を際立たせている」
----あれっ?トム役のヴィゴ・モーテンセンは?
「彼はカーク・ダグラスに似てきたね」
----誰それ?
「マイケル・ダグラスのお父さんだよ」
----よく知らないけどスゴそう。
それも<異形性>?
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「いびつだニャあ」
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※画像はアメリカのオフィシャルwallpaperより