ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『博士の愛した数式』

2006-01-30 00:19:47 | 映画
----「ぼくの記憶は80分しかもたない」。
これってどういうこと?
「正直、ぼくにもよく分からないんだ。
この映画では家政婦としてやってきた女性(深津絵里)と
その記憶障害を持つ博士(寺尾聡)、
そして√ルートと呼ばれるその女性の息子が過ごした大切な時間を
成長して数学教師になった√ルート(吉岡秀隆)の回想で描いてゆく。
最初、このプロットを聞いたときには、
80分経ったら、会った時のことまで忘れて
最初の挨拶からやり直すのか…と思った。
しかしよくよく考えると、
80分しかもたないということは、
80分前のことは忘れたとしても、
新しい80分は覚えていると言うことになるし…。
前提が<80分しかもたない>だから
その意味だけはクリアにしてくれないと」

----翌朝になったら前のことを80分だけしか覚えていないとか?
「いや、そういうのでもなかった。
これがまったく覚えていないだと、
『50回目のファースト・キス』になるんだけどね」

----あ~、そうか。
じゃあ、お話は、その記憶を持続させようとする
家政婦さんの奮闘を描くわけ。
「(笑)それも違うな。
むしろ博士の家政婦への数学の説明、
あるいはそれを教室で生徒に話す√ルートの話の中から、
数字の持つオモシロさが浮かび上がる映画となっている。
そういう意味では、
(これは本を読んだだけだけど)『ダヴィンチ・コード』を思い出したな。
もっとも、あちらはサスペンスミステリー。
この映画はそれとは対極ののどかな作品になっているけどね」

----キャスティングもそんな感じだよね。
「監督が晩年の黒澤明に助監督としてついていた小泉尭史。
しかも出演が寺尾聡、吉岡秀隆。
映像のテイストもどことなく昭和的で懐かしい感じがした。
よかったのは季節が春に限定されていること。
早春の淡い日だまり的なあたたかさを感じる。
たとえ記憶は続かなくとも
その時間その時間を慈しむように生きる…
こういうことなのかな…」

----そう言えば浅丘ルリ子も出ているんだよね?
「あっ、これは少し違和感を感じたね。
彼女は博士の義理の姉の役で、
博士と過去に関係を持っている。
その描き方がなぜかメロドラマ風なんだ。
なかでも不思議なのは彼女が川面を見つめるシーンで
彼女の奥にあるはずの水面のさざ波が
頬の上に映っていること。
これって合成したとしか思えない。
浅丘ルリ子の持つ日活ムードアクションの記憶が、
このようなメロドラマ的手法になったのかも知れないけど、
全体の流れには合わなかった気がするな」

               (byえいwithフォーン)

※春は近い度
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