ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『マン・オン・ワイヤー』

2009-04-13 13:27:06 | 新作映画
(原題:MAN ON WIRE)

----これって、この前発表されたアカデミー賞
最優秀長編ドキュメンタリー賞に輝いた作品だよね。
「そうだよ。
これ観ると、いわゆるドキュメンタリーも
これまでとはずいぶん変わったということが分かるね」

----それってどういうこと?
「う~ん。どう説明したらいいんだろう。
ここに描かれているのは事実、つまりノンフィクションなんだけど、
どこまでが生な、いわゆるドキュメンタリーで、
どこからが作られた、つまりは再現フィルムなのかが
ちょっと見では分からないんだ」

----それって『アライブ-生還者-』もそうだったよね。
「うん。いわゆる過去のことを扱っているわけだから、
その頃のことを描くには、
フィルムや写真を含む当時のものが残っていない限り、
あとはインタビューや再現フィルムが必要となるからね。
ただ、この映画が素晴らしいのは、
そういう技術的なことを横に置いておいても、
この偉業を成し遂げたフィリップ・プティという人の人間的魅力と、
彼を描きながら、
あの時代とその空気を再現し、
結果的に現代への批評となっているところにある。
あとは、さっき技術的なことは横に置くと言ったけれども、
その構成が、まるで犯罪映画を観ているかのように
ドキドキさせられるところかな」

----う~ん。何言っているのか、よく分からないニャあ。
まず、これは何を描いた映画ニャの?
「ごめんごめん。
このフィリップ・プティというのはフランスの大道芸人。
なんと、今はなきニューヨークのワールド・トレード・センター、
そのツインタワーを綱渡りした人なんだ」

----そ、そんなことできるの?
高所恐怖症のえいがよく観られたね。
ていうか、どうやってそんなところに綱が張れたの?
セキュリティはどうなってたの?
「だから、それが時代なんだね。
今から考えると、なんておおらかで幸せだったんだろうって感じ。
彼らはビルが工事中ということをうまく利用して、
最上階に1トン以上もの機材を秘密裏に運び込む。
ここがまず、一種の犯罪だよね。
いまだったらなんと言われるか?
だから人はこれをこう呼ぶ。
『史上、最も美しい犯罪』と。
もとより彼は権力を軽蔑していた。
通っていた学校のすべてを辞めさせられ、
スリやストリートジャグリングの罪で500回以上の逮捕歴があったらしい。
で、行き着いたのがこの綱渡り。
パリにあるノートルダム大聖堂の二つの尖塔間、
また、シドニー・ハーバー・ブリッジの鉄塔などを経て
このツインタワーに行き着く。
実行に及んだのは1974年8月7日。23歳の時だ」

----そうか。その模様を写しただけじゃ
とてもオスカーには届かない。
そこで、その過程を再現したわけだ。
「そう。そこが実にスリリング。
警備員の目をかすめ、
じっと隠れながら、時を待つ。
これってまるで銀行強盗だ。
金を盗むのか、みんなの目を奪い、
魂を盗むのかの違いはあるけどね。
そこがこの映画のハラハラドキドキするところ。
なみの犯罪映画より、よっぽどスリリング」

----へぇ~っ。監督は誰ニャの?
ジェームズ・マーシュ
一般には『キング 罪の王』が知られている。
しかし、最近はこういうドキュメンタリーとドラマを
どちらもこなせる監督が増えてきたね。
『ラストキング・オブ・スコットランド』
ケヴィン・マクドナルドもそう。
『運命を分けたザイル』を始め、
たくさんの傑作ドキュメンタリーを生んでいる。
このジェームズ・マーシュは途中、
『時計じかけのオレンジ』を思わせる
セックス・シーンを入れるなど、遊び心満載。
これも、あの時代を意識しての表現法だろうね。
そう、時代の空気。
反権力な生き方がみんなに受け入れられたあの時代の…。
でも、最終的にはやはりこのフィリップ・プティという人の魅力に尽きるだろうね。
どんなことでも、それを極めたその道のトップの人がやることは
多くの人を感動させる何かをもっている。
それはおそらく言葉にはできない、
その<才能>だけが放つものだと、ぼくは思うね」


           (byえいwithフォーン)



フォーンの一言「しかしカッコいいことやる人がいるものだニャ」身を乗り出す

※まるで犯罪を覗き見しているみたいだった度

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