ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ハンティング・パーティ』

2008-03-08 13:33:09 | 新作映画
(原題:The Hunting Party)

----「アメリカを出しぬいたのは、
わずか3人のジャーナリストだった」。
思わず観たくなるキャッチコピーだニャあ。
この映画、実話に基づいているんだって?
「うん。
紛争終結後、2000年のボスニアで
実在のジャーナリスト3人が
『民族浄化』の名の大虐殺を行なった戦争犯罪人カラジッチを追跡。
その過程で、彼ら3人はCIA工作員に間違えられたというんだね。
そこでのいきさつは『エスクワィア』誌に掲載。
映画は、この事実に裏打ちされたドラマがスリリングに進行。
伝説の戦場レポーター、サイモンにリチャード・ギア、
カメラマンのダックには、テレンス・ハワード。
そして放送局の副局長の父を持つ若い青年ベンにジェシー・アイゼンバーグ。
おそらく実際は、
こんなうまく3人のバランスは取れていないんだろうけど、
この組み合わせがいかにも映画的にドラマに絡み合っていく」

-----どういうこと?具体的に言ってよ。
「戦場レポーターの頂点に立つサイモン。
ところが彼は、ある生放送でのレポートの最中、
たったいま目にしたばかりの悲惨な光景のショックから立ち直れず、
放送をめちゃくちゃにしてしまう。
以後、坂道を転げ落ちていくサイモンに対して、
彼の相棒のダックは対照的に出世街道を駆け上っていく。
そんなダックの前に5年ぶりに現れたサイモンは
『ぶっ飛ぶようなネタがある』と、
重要戦争犯罪人フォックスの潜伏先をダックに教える。
NATOやCIAが500万ドルの賞金をかけて
必死になって探しているフォックスに
単独インタビューすることで
サイモンは自分の再起を賭けようとするんだ」

-----ニャるほど。そこに野心的な若者もついていく…。。
「うん。ベンは自分を子供扱いしている父親を見返したいわけだね。
一方、いまは裕福な生活を送っているダックも、
もともとは戦場カメラマン。
最初は『ギリシャで女と待ち合わせしている』と渋る彼を
誘うサイモンの言葉が実にいい。
『危険に命をさらすのが生きるってこと。
それ以外はテレビドラマだ』」

-----おおっ。渋いニャあ。
「しかし、さらなるサイモンの目的が明らかになるにつれて、
ダックもベンも唖然。
その目的とは、なんとフォックスを生け捕りにすること」

-----そ、それは…?
「まあ、おそらくここはフィクションだろうね。
でも、それによって映画は
社会性を持つ反面、かつての第二次世界大戦を舞台にした映画同様、
アクション・エンターテイメントの側面を見せ始める。
そう、ナチを相手にした特攻作戦ものという感じかな。
ただ、そういう映画の場合、
ユダヤ人差別のような問題にはあまり言及せず、
純粋な戦争アクションとなっていた。
この映画、実は
フォックスのモデルとなったセルビア人指導者カラジッチは
まだ捕まっていない。
ムスリムやクロアチア人に対する虐殺、民族浄化。
これらは『あなたになら言える秘密のこと』
『サラエボの花』でもその傷が深く描かれているだけに、
このようなカタチでエンターテイメントに仕上げているのは
少々複雑な気がしたね。
ネタバレになるから詳しくは言及しなかったけど、
サイモンがフォックスを捕まえようとするのも個人的な動機だし。
映画では、彼ら戦争犯罪人が捕まらない理由を
『オサマ・ビン・ラディンで忙しいから』と揶揄はするものの、
明確な答は出していないからね。
ただ、終幕近くで
<事実>と<フィクション>を明らかにすることで
ある意味、作家たちの真摯な姿勢を示してはいたけど…」

----でも、もしかしたら
そういう大物戦犯をかくまう社会に対する
これは告発映画ニャのかもよ。


        (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ニャんて悪い人なのニャ」ご不満

※オモシロいけど、ちょっと複雑な気持ちになる度

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