ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『休暇』

2008-03-19 10:28:18 | 新作映画
----最初に確認したいんだけど、
これってどこの国の映画?
「(笑)。日本映画だよ。
確かに、このタイトル、
一昔前の中近東か東欧の方のイメージあるよね。
でも原作は『魚影の群れ』『うなぎ』(原作:「闇にひらめく」)の吉村昭。
なかなか奥の深いお話だったよ」

-----どういうお話ニャの?
「主人公は刑務官・看守部長の平井透(小林薫)。
未婚のまま年を重ねた彼に結婚の話が舞い込んでくる。
母が亡くなり、すでに有給休暇を使い果たしているため
新婚旅行をあきらめていた彼だが、
その挙式前日に死刑囚の金田真一(西島秀俊)の刑の執行が決まる。
晴れの日を前にした部下に嫌な気持ちを起こさせまいと
平井を処刑執行の担当から外そうとする三島副看守長(大杉漣)らの思惑をよそに、
平井は自ら支え役を務めることを申し出る」

----??
「なんと処遇部長・執行指揮官(利重剛)からこの支え役を務めれば
一週間の休暇が与えられるという通達があったんだ。
『お前、人のだ命をなんと思っているんだ』
平井に詰め寄る三島。
『主任だって、この仕事で飯を食ってるんじゃないですか』----
周囲は騒然となって…」

-----うわあ。あまり聞いたことのない内容の映画だニャあ。
それにしても、その支え役ってニャに?
「絞首刑で上から落ちてきた受刑者を支える、
いわゆる死刑執行補佐。
執行後、ときに受刑者はまだ生きているときもあるから、
これは壮絶だ。
映画は、その平井が新婚旅行に向う列車の中から始まり、
お見合いから結婚式に至るまで、そして拘置所での死刑執行までの日々を
中に挟み込みながら描いていく」

-----ふうん。
やはりキツそうな映画だニャあ。
見どころはどこ?
「一つは、なかなかその心の内が覗けない平井の日常。
何を考えているのか、
その表情からはいっこうに窺い知れない彼を
小林薫が見事に表現している。
『歓喜の歌』など映画への出演が相次いでいるけど、
これは近年の彼のベストアクトだと思う。
それと西島秀俊。
いつもながらの寡黙な演技。
でも、その神経が鋭く研ぎすまされていることが
ちょっとした表情の変化から窺い知れる。
看守たちの微妙な言葉の変化、
そして足音の違いなどで、
ついに訪れたその日が分かってしまうんだ。
それに気づいたときの感情の爆発、絶望の慟哭には
ふだんおとなしい役が多い彼らしからぬ
凄まじい激情が溢れていた」

-----そうか、刑執行の日は
あらかじめ教えないんだよね。
しかし、知られないようにするのも気を使いそう。
「うん。
そのとき、受刑者に何が起こるか予測がつかないからね。
しかし、この映画で初めて知ったけど、
この看守たちというのは厳格な階級社会。
絶対に逆らえない上命下服となっている」

-----ふうむ。人の命を終わらせることを仕事とするんだものね。
一方で、主人公は新しい生活を築くというわけか。
「そうなんだよね。
妻となる美香役には大塚寧々。
映像的にはそれほど凝ったことをしているわけではないけど、
この撮影にあたっては
おそらく徹底した取材を重ねたんだろうというのは窺える。
とにかく緊迫感で1時間55分を見せきる。
あっ、その連れ子と死刑囚にある関連性を持たせているところも
もしかしたら、これは映画としての脚色かも…」

----それってニャに。
あっ、簡単には言えないか…。

        (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「死刑って、人間だけだよニャ」複雑だニャ

※スゴい小説に目を付けた度

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