ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ハチミツとクローバー』

2006-07-23 21:09:47 | 新作映画
----これって昨日公開されたばかりの映画だよね……。
「うん。メイン館がシネマライズ。
ここで公開された映画はほとんどがヒット。
まあ、時代の風にあっていると言うことなんだろうけど、
これって鶏が先か卵が先かに似ていて、
シネマライズでやるから
そのブランド力の元にみんなが観に行くのか、
それとも観賞に堪えうる映画だからこそシネマライズでかかるのか?
どうもいま一つはっきりしない」

----ニャるほど。この映画なんて
原作が少女コミックで、
監督もこれがデビュー作だしね。
「そういうこと。
少し斜に構えて観てしまった。
でも、気がつくといつのまにか映画の中に引きずり込まれていた。
それは、この映画が単にぼくの好きなジャンルの
<青春映画>だからというだけではない。
この映画の持ついろんなファクターが
吸引力として作用していたと思うんだ。
まず、感心したのはそのキャスティング。
ヒロインの天才少女・はぐみ。
もし彼女を蒼井優以外の女性が演じていたら、
とても観られたものではなかったと思う。
社会的な協調性よりも
<自分の世界>に入り込むことが許されるはぐみのような不思議系キャラは、
どっちかと言うと同性に嫌われやすいタイプ。
それをギリギリのところで避けている彼女の演技はまさに賞賛に値する。
たとえば、疲れ果てて寝込んでしまうはぐみ。
無垢な寝顔をここまで見事に演じた女優をぼくは他に知らない。
自分の顔の皺一つひとつがもたらす効果を熟知。
まるで名優・三國連太郎のようだ」

----スゴい絶賛だね。あれ、この栗山千明似の女性は?
「あっ、関めぐみね。
彼女もいい。加瀬亮扮する青山への切ない恋を
そのしっかりと見開かれた目で好演する」

----しっかりと見開かれた目?
「うん。この映画は悪く言えば、
どこにでもあるような片思いの青春映画。
そのどれもが一方通行で交わることはない。
でも、映画的に観れば、
思いの対象を見つめ見守る<視線の映画>となっているんだ。
映画とは本来、興味のある対象物を見つめ記録したいという
強い思いから生まれた媒体、
ここでは、登場人物それぞれの思いから発する<視線>が
映像として焼き付けられている。
この映画の主人公たちは美大生と言う設定。
彼らも自分の描きたいものを
自分のその目で絵画や彫刻にしてゆく。
その意味でも主人公に櫻井翔を持ってきたのは大正解。
実際には存在しないような汚れなき澄んだ<目>が
観る者の心に強く残る。
さっきも言ったように
この映画は正直言ってお話としてはありふれたもの。
ある意味、テレビドラマの延長と言えないこともない。
しかしそれを<視線のドラマ>としたことで、
少なくともぼくの<青春映画アルバム>の1ページに
長く記憶に残る映画になったね」


            (byえいwithフォーン)


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