ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『カポーティ』

2006-07-17 23:51:15 | 新作映画
----これってフィリップ・シーモア・ホフマンが
賞を総ナメにした映画だよね。
カポーティ本人そっくりって話題になっているけど?
「そうらしいね。
でも本当に似ているかどうかなんて
ぼくたちには分からないよね。
そのことはともかくとして、
オスカーが全部ソックリさん大会になってしまったら、
それはそれで、ちょっと問題だと思う」

----おや、少し辛口だニャ?
「ただね、
この映画は良きにつれ悪しきにつれ
彼の演技に負っているところがとても多い。
と言うのが、この中での彼の声色が
他の映画ではとても聞くことのできない
神経質なまでのかん高いトーン。
人によっては耳障りなこの声が、
映画のトーンをも決定してしまう。
結局、この声にノレるかノレないかで、
この映画はオモシロくもなるし退屈にもなる」

----ニャるほど。
お話は伝記ニャんでしょ。
どこに比重が置かれているの?
「カンザス州の田舎町で起こった
一家四人の惨殺事件に興味を抱いたカポーティ。
彼はノンフィクションの新たな地平を切り開くと言う野望の下、
捜査に当たった保安官や事件の発見者を訪ね歩き、
現場や遺体を見て回り、ついには犯人との接触に成功する。
そこからついに彼は
傑作『冷血』(※映画にもなりました。これは必見です!)を生み出す。
ノンフィクション・ノベルと銘打たれたこの本は
一大センセーションを巻き起こすものの、
以後、カポーティは本格的な作品を書けなくなってしまう。
果たしてそこで何が起こったのか?」

----おっ。ミステリーが少し混じっているわけだ。
「うん。
少しネタバレ気味になるけど、
カポーティは犯人の一人ベリー・スミスの信頼を得るものの、
肝心の犯行の詳細に付いては聞き出すことができない。
しかもカポーティとしては
小説を完結させるには犯人たちが死刑になってくれないと困る。
つまり、彼はベリーの死刑の執行を待ち望むようになるんだ」

----それはひどいニャあ?
「ある意味、悪魔だよね。
この映画は創作というものが
そのような悪魔的側面を持っていることをいやと言うほど見せつける。
もちろんカポーティは血の通った人間だから、
彼に信頼を寄せている男の死を待ち望む自分を
そのまますべて受け入れるわけではない
そのためカポーティは次第に精神的バランスを崩し始める。
フィリップ・シーモア・ホフマンの演技賞受賞と言うのは、
そのソックリさんぶりよりも、
むしろこの内面苦悩演技に対して与えられていると言えるんじゃないかな」

---おや、賞賛に変わってきたニャ?
「うん。彼の演技の素晴らしさは十分に認めたい。
ただ、その人間関係がとても分かりにくい。
彼が電話で相談したり報告したりしている男、
その中の一人がゲイだったカポーティのパートナーなんて、
そんなのアメリカ人にとっては自明の理かも知れないけど、
ぼくには分からなかった。
また、チラシなんかには、
カポーティが犯人に対して
自分と同じ孤独で傷つきやすい心を持っていることを感じとり、
心を通わせる……とも書いてあるけど、
これもぼくには読み取れなかったな。
もっともこれはぼくの読解力不足かも知れないけど……」


            (byえいwithフォーン)

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※クールな映画でした。

※そりゃあ、とんでもない声だ度
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