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一日/一生   「道順庵」のつれづれ草 水琴窟に癒されて

死体から見た葬儀社さん その⑥

2008-10-10 15:23:49 | お別れのエピソード
湯灌やさんは丁寧に身体を清めてくだされ

頭髪も洗髪し、不精な髭もきれいにそり落とし

末期のお水とりを身内が順番に済ませ

さてと、棺の中に皆さんに抱きかかえられて・・・

と思ったら、身内の一人が掛け声宜しく「せぇ~の・・」と

声を出し、オマケによろめいて「ドスンと」あたまが棺の底に当たり

「いて・・」と死体の私は言ってしまいました・・・

もちろん声も出ませんが、声が出ないのが情けなかったの

にらんでも見ましたが、顔は湯灌のあとの美顔のままで

もちろん眉間のしわなど見えません

そして、旅装束の真っ白な帷子を纏い

手甲脚絆と杖を脇に添えられ、

「いっぱしの死人のようです」

棺を覗き込んだ身内の人たちが

「こんなにきれいになって・・」「やつれた感じがしないね」

などと、湯灌やさんに深々とあたまを下げておりました

「ほうら・・湯灌はよかったでしょう」とほくそ笑んだ私は

なんとなくまじまじと顔を眺める身内の視線が

照れくさくも感じました。

ものの数分ののち目の前が暗くなりました

棺の蓋が下ろされたのです、

孤独感と「暗いじゃないか、本も読めない」とワガママを言っては見たものの

すたすたと、線香を上げて身内は帰り、

例の葬儀社さんも礼儀正しく手を合わせて、ぱちんと部屋の明かりを

落とし、こつこつと靴音が小さくなっていきました

「あ~ぁ・・とうとう棺の中だぁ」この静けさと、妙なるまでの

孤独感・・そして「やっと眠れる」幸福感・・・

なんだか入り混じりの感情のごった煮みたいな・・・

でも、それも薄れていく・・・

いろんなものが薄れて・・・・いく・・・

死んでいるのに生きている感覚も薄れていく・・・


・・・・なんか、向こうにぼやぁ~とした・・

温かい明かりが見えてきました・・・・

あの世の入り口かな・・・

又の機会につづく・・・・
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