風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

小松成美 『仁左衛門恋し』

2013-08-05 23:59:47 | 歌舞伎



 僕は、若い世代のお客さまに足を運んでいただくためにはとにかく新しいことをやらなければいけない、とはあまり思わないんです。どんな世代でも、男性であろうが女性であろうが、役者の「芸」によって常にお客さまには新鮮な気持ちで観ていただけるはずだと信じています。
 僕ね、よくこう思うんですよ。芸を洋服にたとえたとき、通勤ラッシュの中で真っ赤なスーツを着ていれば、人目は引けますよね。皆さん通勤のためのスーツを着てるんですから。でも僕は、真っ赤なスーツを着なくても、みんなと同じようなスーツを着ていても、人込みの中を同じ歩調で歩いていながら、それでも人を引きつけるような、そんな役者になりたいなと思ったんですよ。毎日、同じダークスーツでもいいわけですよ。目新しい服を着て目を引くことに頼るより、今着ている古い服をいかに新鮮に見えるように着こなすかなんですよね。そんな役者になりたいと思ってきた。これもひとつの生き方じゃないかな、と考えるんだよね。

(2002年 小松成美『仁左衛門恋し』より)


仁左衛門さんらしいですね。
以前youtubeで、襲名披露の前日に新橋の料亭で勘三郎さん&團十郎さんと三人でお酒を飲まれている映像を観たことがありますが、襲名後にどんなことをやってみたいかという質問に「目先のことでめいっぱい」と答えられていたのは、こういうお気持ちもあったのかなと思います。
それにしても、孝夫ちゃん、夏雄ちゃん、ノリちゃんと呼び合いながら楽しそうに話しているあの映像を今観ると、泣けてきます。。。おおらかで神経質じゃない團十郎さんと、笑いながらもとっても心の細やかな勘三郎さん。
仁左衛門さん、寂しいだろうなぁ。。。

ところで、この本の題名――。
これほど図書館のカウンターに持っていくのに勇気のいった本はございませんでした。。
ツ〇ヤでAVを借りる性少年よりよっぽど恥ずかしいと思うの。。
まるで仁左さまへの情熱を試されているよう。。。
だけど頑張りました! ←購入してないくせにエラそう

私という人間は、矛盾点も多く、短気でのんびり屋で、理屈っぽくて理屈が嫌いで、また大雑把な性格と緻密な性格等々、とにかく相反するものが同居しているのです。

ええ、とてもよくわかる気がいたします、笑。

歌舞伎役者さんの裏話って、面白いですね。
玉さまとのケンカのエピソードとか、へぇ~というお話がいっぱいでした。
吉右衛門さんの本も借りてみたいです。

何度も言いますが、血縁を持っていても偉いわけじゃないんですよ。でも、それ(血縁)が歌舞伎の大きな楽しみのひとつであることは確かなのかもしれません。
歌舞伎というのはありがたいことに、いろんな楽しみ方ができるわけです。「だんだん親に似てきたな」という楽しみもあれば、下手だった役者が少しずつ芸を磨いていく過程も楽しんでいただける。だから、凄く下手な子役でも、その子がだんだん大きくなってきて「ああ、だいぶしっかりしてきたな」というのがうれしくなったりするんですよ。もちろん、妥協を許さない厳しい目も絶対に必要なことも事実ですけれど、お客さまがそんな風に思ってくださったら役者はうれしいですよ。

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