風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

来月の松竹座って・・・

2015-06-29 22:24:46 | 歌舞伎

仁左さん、悪役だったのね

絵本合法衢って観たことがなかったから知らなかったわよ!にゃんてこと
しかも南北ですって?(さっき知った)

先日の歌舞伎座で「ニザさまの悪役がもっと見たい」と書いたばかりで・・・・・そんな・・・・・。
どうせ大阪まではいけないしぃーーーと詳しい演目の中身はスルーしていたら、こんなことになっていたとは


・・・観たい・・・・・


が、
私の手元には今アテルイと世界バレエフェスのチケットがぁぁぁぁぁぁぁ
まだ上半期が終わっただけで、すでに今年一年分の観劇予算をオーバーしかかってるというのに・・・・・・・・
何が痛かったって、年末のマリインスキーのロパ様が予想どおりの激戦で、一般参戦の私はいつもの最安席がゲットできなかったのよぉぉぉぉ

そういえばAdamもRaminも来日するのですよね(これも最近知った)。
幸か不幸かどちらも作品が好みなタイプじゃなかったのでチケットは買っていないのだけれど、Colmさんのときのように格安チケットが出たら買おうかなーとは思っていたのだが・・・。

てか松竹座いつのまにか値上がりしてるし
昨年の寺子屋みたいに、秋に歌舞伎座でもやってくださらないかしら・・・・・・・・・・・・・・。

――てさらに調べたら、2012年に国立劇場でやってるのね(cookieさん歌舞伎復帰の1年前)・・・。
さすがに3年しかたっていなかったら、同じ配役で東京ではやらないかしら・・・。
でも愛之助の鯉つかみの例もあるしっ
てかニザさま国立劇場も出演したりされてたのですね。

Comments (2)
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坂本屋のかすてら @東京四ッ谷

2015-06-26 00:34:59 | 日々いろいろ



突然ですが、四ッ谷の坂本屋さんの「かすてら」です
好きなんです、かすてら。
この手前の糖がじわぁ~なところが特に好き♪
底のザラメも懐かしい味わい。
ラップでしっかり包まれています。



この包装紙もいいですねぇ。箱なしは半斤550円。箱ありより少しお安いのです。
子供の頃近所にあった和菓子屋さんも、こんな感じの包装だったなぁ。

特別に吃驚する美味しさ!とか斬新な味!というわけではないけれど、飽きのこない素朴で優しいお味です。
どこの街もそうですが、こういう昔ながらのお店がどんどん少なくなってきているのは残念。
どこに行っても同じお店があって、同じものが買える状況を一概に否定するつもりはまったくないけれど、一方で私達が失っているものも大きいと思うのです。。

※ちなみにこちらのすぐ近くに有名なたい焼き屋さん「わかば」もあります。常に行列ができているのですぐにわかります笑。そちらも美味しいですよ^^

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六月大歌舞伎 @歌舞伎座(6月13日&21日)

2015-06-24 00:08:33 | 歌舞伎




こんな月末にその月の興行の感想をあげて、はたして読んでくださる方はいるのだろうか。
と毎月思いつつ、今月も書くのであった。

詮議&夜の部を6月13日(中日)に、昼の部&合腹を21日に観てまいりました。
しかし新薄雪の大顔合わせ、超豪華ですね~。杮落しが終わってこういう配役は二度と観られないのだろうなぁと思っていたので、嬉しかったです。これからもこういうの、いっぱいやってほしいな。


【天保遊俠録(てんぽうゆうきょうろく)】
真山青果の新歌舞伎(と備忘録のために書いておく)。初見です。
『花見』の幕見を買おうと10:30に歌舞伎座に着いたら上演開始が12:50と知り、どこかで時間を潰すなら一幕目から見ようかしら~と。1,000円だし。
正解でした
出ている役者さんがここまでピッタリ役に嵌るとこうも気持ちのいいものなのですね~。
なにより橋之助さんの小吉がこれ以上ない嵌り役 短気で学もなく女にだらしないダメ男だけど、あったかい心を持ってて、しかもカッコイイ。台詞回しといい動きといい、表情もいい表情されてたなぁ。
芝雀さんの八重次がまたすごくよくて。こういう気が強めな役の芝雀さん、大好きです。
さらに児太郎(芸者)、魁春さん(阿茶の局)と、ことごとく皆さん役にピッタリ。児太郎くん、こういう役をやると福助さんに似ていますね。彼はこの後の薄雪姫もとてもよかったです。魁春さんも、こういう高貴で凛とした役をされると右に出る人はいないのではなかろうか。
さらにさらに麟太郎役の子がまた聡明そうで、よくぞここまでピッタリな子役がいたものだなぁと。「ちちうえ?」ってダメな父親に言い聞かせる言い方(でも親をバカにしてる感じは全くないの)、客席みんな微笑んでしまっていました 子役が上手だと安心して筋に集中できるから有難い。
廻り舞台もちょっと変わっていて素敵だった。茶屋の座敷の場面で入口の門の奥まで広く見えていて、最後にそのまま舞台が廻って表になる。麟太郎がご奉公に上がるため駕籠で城に去って、散る桜が涙雨に変わって、悲しみに沈む小吉に八重次が優しく傘を差し掛けるラスト、とてもとても美しかった。
今月の歌舞伎座は、夕顔棚以外は、親が子を思う物語なのだなぁ。


【新薄雪物語 ~花見~】
時蔵さん(籬)&梅枝(薄雪姫)の主従役は見ていて楽しい。籬が薄雪姫をじっと見てるときとか、顔は笑顔だけど実は厳しくチェックしてたりするのだろうか、とか想像してしまう
こういうお茶目でクールビューティーな役の時蔵さん、大好きです。それにすっごく色っぽい 今月は芝雀さんといい、好きな女方さん達を好きなタイプの役で見られて幸せです~。
仁左衛門さん(秋月大膳)&吉右衛門さん(団九郎)の悪役コンビ、大きくて見応えありました 大膳は国崩しの迫力たっぷり。お二人とも、悪い役をもっと見たいなぁ。仁左さま、もう色悪はやってくださらないのかしら…。唯一観られたあの伊右衛門@四谷怪談の物凄さが忘れられない私は一体どうすれば。。
菊五郎さん(妻平)も色気があって、この役が“色”奴であることがよくわかりました。一昨年の愛之助&七之助のテンポのいい二人も大好きでしたケド^^ 最後の水奴との立ち廻りは一昨年と同じく、今回も飽きてしまった。。。(得意じゃないのです・・・)


【同 ~詮議~】
仁左衛門さん(園部兵衛)、この役は似合うだろうなぁと想像していましたが、思ったとおりすんごく似合う
そして前回の花形でもそうだったのだけど、私は『合腹』と同じかもしくはそれ以上に『詮議』の場が大好きなのである。
聡明で立派なパパン達と、自分達の浅慮が起こしたともいえる事態にオロオロ狼狽えてばかりの子供達。
父親が入ってきたときにはっと腰を浮かせる左衛門を手だけで制する兵衛とか(相変わらず体の動きの一つ一つがほんっと綺麗・・・)、薄雪姫の恋文が読み上げられたときの伊賀守の微かな表情の変化とか、遠目からはただ座ってるだけに見えるパパン達の抑えた仕草や表情が物語るものの見事さといったらアナタ
花形でさえ楽しかったのに、大御所お二人の名演をつぶさに見られるこの至福。。。
とはいえパパン二人は横に長~い歌舞伎座の舞台の両端っこにおられますから、一回の鑑賞ではとてもじゃないが観きれないのである。なので二回通いましたよ。
だって仁左さまってば、膝の上に軽く置かれた片手の拳からでさえ兵衛の気持ちが伝わってくる(ように私には見える)のだもの。さらに時折交わされる左衛門とのアイコンタクトやら何やらと加わるものだから、目が離せない。
誰かの陰謀だと訴える左衛門を組み伏せる場面、父もそのことはわかっているのだなあ。でもここで騒ぎ立てても決して事態は好転しない、その辛さが仁左衛門さんの抑えた演技からひしひしと伝わってきました…。
が、幸四郎さん(幸崎伊賀守)もとてもよくて。実直で厳しくも、男の子ではなく女の子の父親らしい優しい感じがよく出ていらっしゃいました。
花道で相談するパパンズも大好き(3階下手の私の席からは仁左さまのお顔しか見えなかったが)。同時に政敵に嵌められて、それぞれが子供と家を守るために、顔に出さずに限られた時間で頭をフル回転させて、今とりうる最善策を必死に考えて。
互いの家に子を預けようという提案に伊賀守が同意してくれたときの仁左衛門さんの「ご承諾いたされるか!」(だっけ?)の心からほっとした表情(13日の方がよりはっきりと表現されていた気がするが)、印象的だった。
どちらもこの段階から既に自分達が命を捨てることになるかもしれない覚悟をしていることが、お二人の抑えた演技から強く伝わってきました。

錦之助さん(園部左衛門)&児太郎(薄雪姫)、役にピッタリで雰囲気ありました。特に錦之助さん、情けないけど育ちがいい左衛門そのもの~。
芝雀さん(松ヶ枝)、娘を心配する母親の気持ちが表れていて切なくて、とてもよかった。
菊五郎さん(葛城民部)も、公平で冷静な、でも情がある、そんな裁き役がとてもお似合いでした。

ところで国行の死体の人形は、花形のときもあんなにちっさかったっけか?


続いて、こっからが夜の部↓↓↓
詮議と合腹をあえて昼夜に分けたのは誰得デスカ…?

【同 ~広間・合腹~】
前回あれほど「長い・・・・・・・・・・・」と感じた広間合腹が、今回は全く長く感じませんでした。まぁこのテンポのゆったりさを予め知っていたせいもあるかもですけど。
仁左衛門さんと魁春さん(梅の方)の夫婦は、新鮮で嬉しい。
一見亭主関白だけど妻への愛情もしっかり感じさせる仁左衛門さんの兵衛。伊賀守から届いた刀の意味するところに気付いて「料は同罪とはよく言った!」と言うときの悲しくも晴れやかな表情、素晴らしかったなぁ…(もうパパン達立派すぎよー…
腹を切った後、扇子を持ち上げるのにつー…と床に這わせるのも覚束なかったり芸が細かいのに技巧的に見えないのも流石でございました。

三人笑は、三人とも花形以上にリアルだ・・・!意外!というより、この場面の意味するところがよりはっきりと伝わってきて、今回の三人笑を見てこの『新薄雪~』という作品がより腑に落ちた気がします。
魁春さんは、13日に観たときは、悲しみよりも(男達の)武士の世界に対する怒りのようなものを強く感じました。子供を救って死にゆく夫をただ黙って送り出すことしかできない女という立場の歯がゆさ、そんな想いを全て抑え込むしかない女の辛さのようなものを感じた。でも21日は、もう少し優しい感じに見えました。梅の方が笑った後にうんうんと優しく頷く兵衛と気持ちが通じ合っているように見えた。13日はこんな状況で妻に笑えだなんて仁左さんヒドイわ;;とちょっと思ってしまったのだけど、21日は「ああ、兵衛は一人残される梅の方のためにも、一緒に笑えと言ったのかな。悲しみだけじゃなく笑って自分を送り出してほしいと思ったのかな」と。そしてそんな兵衛の想いを梅の方はわかっているように見えました。勝手な想像ですけれど。

この笑いって、不思議ですよね。
意地でも開き直りでもやけっぱちでもなく、つきぬけた笑いともちょっと違う。
肉体の痛みや苦しみと、妻や子と別れて死に行く悲しみ(死にゆく夫を見送る悲しみ)と、大膳への怒りや恨みも全てを腹に飲み込んで(この怒りの部分が花形のときはあまり伝わってこなかったのです)、笑う。子供達を無事に逃がした心安さを悦ぼうと、六波羅への出仕は六道への門出だと言って。
帰りの電車の中でふと、勘三郎さんが人工呼吸器を外したときにされたという最期の笑いを思い出しました。ご家族はそれを松王丸の笑いではないかと仰っていました。
息子の小太郎が笑って死んだと聞いたときの、松王丸の笑い。涙を流しながらの笑い。
歌舞伎の笑いって不思議。
仁左衛門さん、魁春さん、幸四郎さんによる三人笑い。観ることができてよかったです。

そうそう、合腹の芝雀さんも素晴らしかった。兵衛と梅の方に「娘を助けていただいて忝い」と頭を下げるところ、心からの思いが伝わってきて、もう四人の姿を見ているだけで泣きそうになりました。

以上、念願の大顔合わせの新薄雪が見ることができて大・満・足でございました(まだ正宗内が残ってるが)。
ただ・・・・・・贅沢を言うなら・・・・・、吉右衛門さんの伊賀守も見てみたかった・・・・・・・・・・。
一昨年からの私の悲願だったのです・・・・・・・。多分もう二度と見られない、のだろうなぁ。。

ちなみに一昨年、花形にお稽古をつけた先輩達は下記のとおり。
染五郎(兵衛)←仁左衛門さん
松緑(伊賀守)←幸四郎さん
菊之助(梅の方)←玉三郎さん
海老蔵(葛城民部)←吉右衛門さん


【同 ~正宗内~】
吉右衛門さん、あなたはなぜそこにおられるのか・・・。
正宗(歌六さん)に手を斬られてぜーはーしながらの台詞。熱演でございました。
が、その演技を私はこのひとつ前の場でやっていただきたかったのよぉぉぉぉ…(結果的には幸四郎さんの伊賀守に大満足ではありますが。ワルい吉右衛門さんが見られたのも嬉しいですが)。
話としては、この正宗内が滅多に出されない理由がわかったといいますか、たとえば団九郎の改心などひどく唐突な印象であった(歌舞伎とはいえ)。
三津五郎さんが「同じ演目ばかりやっていてはお客様に飽きられてしまうが、傑作といえるものの数は決して多いわけではない」と仰っていた意味がわかったというか。
それでも、こういう埋もれてる?作品の上演はやっぱりマッチウェルカムでございます。
米吉の薄雪姫はとても品があって可愛らしかったですけれど、いつもの米吉くんというか、感情表現薄めのサッパリ姫でございました。。


【夕顔棚】
夏の夕べのセットが素敵
でもって私が初めて生で観る菊五郎さんの女方(というのか?)だったり^^;
丸出し乳を持ち上げて拭いちゃったり、はずれた入れ歯を酒で洗って嵌め直したりな人間国宝サマ(近くのおばさま方が「演技が細かいわね~」「こういう人いるわよね~」とそれは楽しそうでございました)。でも下品にならないところが流石。のほほん、ほんわり。さすがに昼の部からずっとのせいか時々お疲れ気味なお顔にも見えたけれど、そこは(この作品が今月唯一の出演でもある)左團次さんが完璧にカバー。
左團次さん、表情がとっっってもよかった。特に菊五郎さんを見ているとき。それはそれは優しそうで
里の若者たち(梅枝巳之助)による盆踊り場面はちょっと長く感じたけれど(私も半日以上の観劇に疲れていたので)、菊五郎さんがとても楽しそうに若い二人の姿を眺められてて、そんな菊五郎さんの表情になんだか清々しい温かい気持ちになりました。
笑いあり、老夫婦のゆったりとした時間あり、夏の夜の風情ありな、どこか懐かしい気持ちになった、いい打ち出しでございました。
ブタさん蚊取り線香ほしいなぁ~

来月の歌舞伎座は、とりあえずは牡丹燈籠を幕見予定です。
思わず世界バレエフェスのチケットを購入してしまい、金欠になってしまったのです。。。
てか松竹座行きたい。にざさん&時蔵さんが観たい。

※過去の上演記録を調べたところ、仁左衛門さんは兵衛を平成9年に一回やられてるだけなんですね。そして魁春さんの梅の方は今回が初役。幸四郎さんの伊賀守は何回目かですが。
・・・・・舞台は一期一会なことは重々承知しておりますが、もう二度と見られない顔合せなのかなぁ・・・。歌舞伎以外の舞台ならそんなことは普通のことなのに、歌舞伎だとこうも切なくなってしまうのはどうしてでしょう。。

※魁春さんインタビュー(朝日新聞より)
6月の歌舞伎座で、時代狂言の名作「新薄雪物語」が昼夜に分けて通し上演中だ。役者がそろわないと上演できないという〈合腹〉は、片岡仁左衛門の園部兵衛、松本幸四郎の幸崎伊賀守、中村魁春が初役で兵衛妻・梅の方。夫婦となった子どもを救うため腹を切った父親2人と残される母親、その3人が全てを心に収め痛切に笑う場だ。 父、中村歌右衛門中村芝翫の舞台が「目に残っている」という魁春。自分は「まだやらせて頂けると思っていなかった」と言う。「子どものことばかりを思っているから、夫たちが腹を切っていると思わなかった」母親が全てを知り、泣く。「3人のバランスだと思います。難しいですね」女形の人間国宝が相次いで世を去り、気づけば後輩ばかりに。「最低限、教わってきたことは伝える。後はご自分の解釈だから」

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生きもののうちでは人間がいちばんきらいだった

2015-06-12 00:54:16 | 日々いろいろ

というのは『銀の匙』(中勘助の方ね)の少年時代の主人公の言葉ですけれど、私の子供時代もまったく同じでございました。

と、今頃は過去形できっぱり言い切れる大人になれていたらよかったのですけどね。。。

きらい、ではないんですよ。ただ苦手、なんです。。
40歳を不惑だなどと誰が言ったのかしら。
私はきっと“四十にして惑ふ”、死ぬまで人生修行、、、だろうなぁ、、、 

というわけで、がんばって会社の飲み会、行ってまいります・・・(そんな悩みかい!って?ええ、そんな悩みですよ)
社会人になってから何十回と参加しておりますが、いまだに慣れませぬ。
みんな本当に心根の良い人達ばかりなんですけどね。でも、慣れない。もう慣れることはないであろう。
誘われなくなってしまうよりは誘われる方が自分のためにもいいことはちゃんとわかっているので、行ってまいります。
人間のいない国は人間のいる国より遥かに住みにくいことは実感済みでございますから。
遠くから応援していてくださいまし。

もっともっと深刻な悩みを抱えている人達が世の中には沢山いるだろうに。
我ながらチッサイ悩みだとわかっておりますが、これはこれで結構毎日大変なのよ。。。

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追悼文 ~漱石から子規へ

2015-06-11 00:06:32 | 



 水の泡に消えぬものありて逝ける汝と我とを繋ぐ。去れどこの消えぬもの亦年を逐ひ日をかさねて消えんとす。定住は求め難く不壊は尋ぬべからず。汝の心吾を残して消えたる如く、吾の意識も世をすてて消る時来るべし。水の泡のそれの如き、死は独り汝の上のみにあらねば、消えざる汝が記憶のわが心に宿るも、泡粒の吾命ある間のみ。

 淡き水の泡よ、消えて何物を蔵(かくさ)む。汝は嘗て三十六年の泡を育ちぬ。生けるその泡よ、愛ある泡なりき信ある泡なりき憎悪多き泡なりき■しては皮肉なる泡なりき。わが泡若干(いくばく)歳ぞ、死ぬ事を心掛けねばいつ破るると云ふ事を知らず。只破れざる泡の中に汝が影ありて、前世の憂を夢に見るが如き心地す。・・・・・・

(和田茂樹編 『漱石・子規往復書簡集』)

明治36年2月、ロンドンから帰国した漱石は子規の墓まいりをし、この追悼文を起草しました(中絶)。
8年前にここでこの文章をご紹介したときは、どうして漱石は途中で書くのをやめてしまったのだろう・・と思ったのです。
でも今は、このときの漱石の心の状態がなんとなくわかる気がします。

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没後50年 谷崎潤一郎展 ―絢爛たる物語世界― @神奈川近代文学館

2015-06-10 00:05:23 | 美術展、文学展etc



最終日の24日にようやく行くことができました。
この文学館の特別展は毎回中身が濃くて、今回も満足度200%でございました。

しかし文学展(というのか?)は見るのに時間がかかるので疲れますー。。
草稿の訂正箇所などはもとより、手紙もただの手紙じゃなく作品に密接に結びついた内容だったりするので、それを一つ一つ読んでいるとほんっとーーーーっに時間がかかる
幸い?ワタクシは草書が読めませんので、早々に解読を諦めた書簡もたくさんありましたケド。

会場入口で『痴人の愛』のナオミのモデルとなったせい子さん(谷崎の最初の妻千代の妹)が横浜の街を歩きながら谷崎について話している映像が流れていたのは、おおっと思いました。よく撮ってあったなぁ。
※谷崎自身の映像は今回展示されていなかったので残っていないのかと思っていたら、NHKアーカイブスで見ることができました。

谷崎がライカのカメラで松子(三番目の妻)、恵美子(松子の前夫との間の娘)、重子(松子の妹)、信子(松子の妹)の四人を平安神宮の桜と一緒に写した写真もアルバムの一頁として展示されていて、『細雪』の花見の場面そのままでした。
となると貞之助のモデルは谷崎となるわけですけど、位置関係だけですよね。性格は違う、と思う。
他にも、中絶手術後の松子が夜中に泣いたり(幸子は流産ですが@細雪)、恵美子(悦子@細雪)がお箸に何度も熱湯をかけて消毒するくだりが書かれた谷崎の書簡などもありました。

当時の新聞も色々展示されていて、震災後に神戸に引っ越しただけで記事になったり、大谷崎は違いますねぇ。
とはいえ細君譲渡事件のような一作家の私生活にすぎない出来事などは、今だったら「新聞」には載りませんよね。太宰の心中事件レベルならともかく。昔の新聞って今よりも週刊誌的というか、ユルい感じだったのかしら。

細君譲渡事件のときの離婚挨拶状。一体世の中の常識ってなんだろ?という気分になりました^^;
「我ら三人、この度合議をもって千代は潤一郎と離別し春夫と結婚することになりました。今後ともよろしく。谷崎潤一郎、千代、佐藤春夫」(一部意訳) この手紙をもらってしまった人はオメデトウと言うべきか、残念だったねと言うべきか、反応に困ったことであろう。

千萬子さん(松子の連れ子清治の嫁)。幾度も「あなたの沓(くつ)で踏まれたいという手紙を送ってくる義理の父親と笑顔で同じ写真に納まれる強さ、凄いです^^; 大谷崎の親類はそれくらいじゃないと務まらないのですね。。

1931年に発行された『吉野葛』の限定版の装幀が素敵でした。本物の葛の葉を薄紙にすき込んであるのです。欲しい~。
谷崎潤一郎は電子書籍じゃなく絶対に紙で読むべき作家だと私は思います。

余談ですが、源氏物語の現代語訳の中では、私は谷崎源氏が一番好きでございます。

更に余談ですが、片岡秀太郎さんが舞台『春琴』を観に行かれた際のブログにこんなことを書かれていました
「休憩無しの1時間50分でしたが、演出面ではドラマに乗ってきたところで水を注されたりしました。私は子どもの頃谷崎潤一郎先生には何度もお会いしているのですが、今回舞台に登場した谷崎先生とはキャラクター的にも品格的にも随分かけ離れたものでした。勿論「お芝居」の事であり、私がお目にかかっていたのは晩年の先生でしたが…、品格、男の色気をかねそなえた、とても素敵なお方でした。」

谷崎潤一郎が亡くなったのは1965年で、私が生まれる11年ほど前。漱石と時代が被っているので私などはつい歴史上の人物のように思ってしまうのだけれど、実はさほど昔の作家ではないのですよね。
ちなみにワタクシ、この舞台は観に行っておりません。興味があって公式HPを覗いたところ、こんな紹介文が載っていたからです。「日本では、日本近代文学の中では夏目漱石のほうが文豪として位置づけられ、お札の顔にまでなっている。が、日本以外の国ではほとんど話題にされていない。谷崎のほうが西洋の読者達に受け入れられ、共感されている(Dr. Stephen Dodd)」。・・・だから?西洋の読者に受け入れられる作家がイコール良い作家だとでも言うのか。これって漱石だけじゃなく、谷崎のことも理解していない言葉だと思うが、いかがか。こんな褒められ方をされても谷崎は全く嬉しくないであろう。
前述の秀太郎さんのブログ記事は、次のように続きます。
「それと出演の老優さんが七回忌(しちかいき)を「ななかいき」 と云っていたのは、こう言う作品だけにとても残念でした。最近は「七代目」が「ななだいめ」であったりします。ちなみに「一段落(いちだんらく)」を「ひとだんらく」と言うアナウンサーがいたりすると悲しくなります。言葉は時代によって変化していくのは是非もないことですが、守るべきところは守って欲しいと思います。…、これって「老いの繰りこと」なのでしょうか …。」
日本語の格調の高さに拘りをもった谷崎ですから、その作品を舞台化するのならこういう部分は大事にしていただきたいと私も思うのです。

次回の神奈川近代文学館の企画展は中勘助ですよ~。7月20日まで開催中。



今回の図録。
王朝風の表紙がステキ

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谷山浩子 放課後の音楽室~倫典先生と~(revenge!)  @東京文化会館小ホール(5月30日)

2015-06-02 00:03:43 | その他観劇、コンサートetc




行ってきました、初・生浩子さん
初・文化会館小ホールでもあったのですが、いいですね~このホール。ちょい反響しすぎ?な感もあったものの、音がとっても綺麗に聞こえました。特に倫典さんのギターの音の美しかったこと。
二歳違いのアラカンなお二人(by浩子さん)による大人な音楽会。世の中には素敵な大人がいっぱい♪
今回は、客層の男性率の高さに驚きました。倫典さんだからかな(終演後にサイン会されてましたし)。隣に座った男性は明らかに倫典さんお目当てな様子だったわ。
そして、小さなお子ちゃまたちも。みんなのうたからかな。
ご夫婦で来られている方も多かったです。


【第一部】
「まっくら森の歌」
まっくら闇のなかのザワザワした感じ、いいですよねぇ。。。そしてギターの音がホントに。。。
後で浩子さん曰く、このときはすごく緊張されていたそうです。なんでrevenge!なんてつけちゃったんだろ~、またちゃんとできなかったらどうしよう~って。今回の音楽会は、浩子さんの声の調子が悪かった2年前の音楽会のrevengeなのです。倫典さん「revenge!って最初に聞いたとき、俺何かした!?って思った」と笑
「Lady Daisy」
初めて倫典さんがアレンジした曲とのこと(表に名前は出ていないようですが、「でも実際は・・・」と浩子さんが仰っていた)。優しい穏やかな気持ちになれる曲
続いては、倫典さんが「なんでこんな曲順にするかな~」とボヤいた二曲。どちらも難しい曲なのだそうです。浩子さん「リンちゃん、よく間違えてるよねー^^」 倫典さん「こんなことになるならあんなアレンジにしなかったのに。。。」
「恋するニワトリ」
初めて倫典さんの名前が編曲者として正式に表に出たのがこの曲。
これは一人で子供を産んだ女性の曲ではないかという解釈をどっかで読んで以来、そうとしか聞こえなくなっちゃったよぉ~~~。みんなのうた曲なのに^^;
「しっぽのきもち」
ギター、たしかに難しそうだ(よくはわからんが)。でも聴いてて楽しかった!

ここで浩子さんは一旦退場され、倫典さんのソロ。
「大地の輝」
北海道をイメージした曲とのこと。
「トトラの島」
南米のチチカカ湖をイメージした曲。先住民族が湖の上に葦のような草で浮島を作って暮らしている、電気も水道もない暮らし。目を閉じて聴いていたら、行ったことのないその場所の空気や風景が鮮明に瞼の裏に浮かんでくるようでした。ギター一本の音でこんなに“世界”を表現することができるんですねぇ~~~。感動しました。
「河のほとりに」
浩子さんの曲。演奏後、袖から出てきた浩子さん、「別の曲みたいに美しく聞こえた。この曲リンちゃんにあげる。歌いにくいんだもん」。倫典さん、「自分がつくった曲でしょ笑」。
「Thanks my dear」
倫典さんのオリジナル曲(中国でした同名のツアーのタイトルでもあったそうです)で、浩子さんはピアノで参加。

~10分間の休憩~

【第二部】
「あたしの恋人」
21歳のときに作った曲とのこと。「21で作るような曲じゃありませんが・・・」と。うん、たしかに笑。客席のお子ちゃまたちにはどんな風に聴こえてるのかな。
「僕は鳥じゃない」
「さよならのかわりに」
「ピヨの恩返し」
今年2月3月に「みんなのうた」で流れた曲。
「ジャズの川村竜さんにアレンジいただいたので無駄に難しい曲になってて・・・あ、これはツイッターとかに書かないでくださいね!」(スミマセン、書いちゃった♪でもとっても素敵なアレンジでしたから♪)。

演奏が終わって。
「ちょうど同時期に楽曲提供したAKBの方ばかりニュースになってくそーっと思ったんですけど笑。この曲は我ながらよくできたなー、と」。岩尾潤子さんに「可愛い曲を作ってください!」と言われて、「可愛い曲といったらニワトリだな!って」笑。「最初は若い奥さんのつもりで書いていたのに、どういうわけか『あしたで50年♪』となっちゃって、自分でも「ええ!?50年?」とビックリ。50年ということは大体70歳以上ですよね」。
私はこの曲を今回初めて聞いたので、歌詞のどんでん返しに新鮮に驚いて、楽しかった&感動しちゃいました。

で、「え、もう次で最後?何かとばしてないよね?」という話から、「歳を重ねると時間が経つのが早いよね、、、」という話題へ。「若い方と話すと時間の流れが全然違うんだなと感じる。『古い曲なんですけど・・・』と小さな魚をリクエストされたり。私には90年以降は最近です!」笑。「年々早くなってくるから、若い方も油断しない方がいいですよ。たとえば今20歳の方、今までの感覚でいったら人生は28で終わりですよ!」。うん、すごくよくわかる。。。。。

ラスト連続2曲は圧巻でした 浩子さんの歌もピアノも、倫典さんのギターも迫力満点で格好いいこと。
「笛吹き」
『ハーメルンの笛吹き男』をイメージした曲。
「向こう側の王国」
『不思議の国のアリス』をイメージした曲。生で聴くことができて嬉しい。。。大好きです

【アンコール】
演奏前のトークのときにグラグラと大きな地震が。照明も点灯。でもステージも客席も皆さん落ち着いていました。
「まあ、とりあえずおさまったみたいなのでやりましょう」となり、照明が再び落とされた辺りでスタッフの方がステージに来て、浩子さんに耳打ち。「曲の途中でも大きな地震が来たら止めますから」という内容だったそうです。
浩子さん「まあ大きな地震が来たらね、それはそうですよね笑」。
倫典さん「まあお客様のためにはね。でも僕は地震に限らず、これからもどういうことが起きても、ずっと演奏していきたい」と。
「あかり」 
不遇の青春時代を送った作家、アンデルセンを励ますための歌。
きっと君は「帰ってくる」というところがとても好きです。新しい場所に行くわけではない、新しい自分に変わるわけではない。ただ元いた場所に、本来の自分に帰るだけ。

【客席からの拍手に再登場】
浩子さん「用意してきた曲は全部やってしまったんですけど、本当にありがとうございました。地震があったので、気をつけて帰ってください」
倫典さん「(浩子さんへのメッセージとして)素敵なメルヘン婆さんを目指してください笑」
浩子さん「もうすぐになる予定です笑」

以上。
浩子さんのあの世界に初めて生で触れられて、本当に幸せでした。倫典さんもすっごく素敵なオジサマだった!
はぁ、幸せ。。。。。
秋の猫森集会も行きたいな
その前に、まだ持ってないアルバムを買い揃えねば。
浩子さんの曲はニコ動やyoutubeにいっぱいあがっているので(どうやらご本人サマ公認のようです)、聴いたことのない方はぜひ♪ そして気に入ったらぜひ購入してくださいね♪

風のたてがみ、いつか生で聴いてみたいなぁ。私が初めて聴いた浩子さんの曲で、大好きな曲なんです。

※NHKみんなのうたコラム:ピヨの恩返し
私は奥さんは本当にヒヨコだったんだろうなと思ってます♪





☆番外☆
今回の曲じゃありませんが、綺麗な動画だったので^^ これも生で聴いてみたい曲。



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