風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

榎木孝明 『この今を生きる』

2006-04-29 00:50:10 | 


 人は今の時代をつまらないと愚痴をこぼし、同時にこの時代の面白さを口にする。とかく人間とは勝手なものでその時その時に感じたことで、責任の所在も問わず自分の意見をのたまうものである。
 自我に目覚めよ、自分の意見を持てと言いながら、これはしてはいけません、あれはモラルに反しますなどと、いつの時代にかどこかのだれかが作った社会のモラルと法に照らし合わせて、裁く人、裁かれる人。同じ人殺しでも平和な時代には殺人者が、戦争になれば英雄にもなれる。つまり社会通念とは時と場所と場合によって常に移ろうものである。
 そこで私は今に生きることにした。過去を振り返り懐かしむでもなく、未来を思い煩うでもなく、ただこの今を全身全霊ひたすらに生きようと思った。すると面白いことに、過去も未来も今に内在することが分かってきた。私の新しい常識を私が創ってもよいのだと思えてきたのである。そうして自分への旅が始まった次第である。 
(俳優 榎木孝明 『この今を生きる』)

ご結婚前は休暇がとれると世界各国を一人旅されていたという榎木さん。
そんな彼の人、世界、自然、旅に対するおおらかな眼差しが好きです。
以前ある小さなイベントでお会いしたことがありますが、とっても気さくで素敵な方でした^^。

写真は、成田からポートランドへ向かう飛行機の窓からみた朝陽です。
座席は通路側の方が何かと便利なことはわかっていても、やっぱり毎回窓側を希望してしまいます。地上からは決してみることのできない雲の上の風景は、どんなに見ても飽きることがありません。

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尾崎のポエトリー・リーディングアルバム

2006-04-26 19:26:28 | その他音楽

今度は逆さまになって歩いてくる緑色の少女が、向こう側から歩いてきた。
スカートが時々、マンホールの蓋にひっかかった。
靴の中に入った小石を取るために、少女は世界中を脱ぎ捨てながら、首をかしげた。
この世の中の全てのものとの繋がりがあなたを必要としているのです。
今ここにあるはずのものがないと言って、事実さえも否定するとすれば、そこには何
も生まれません。
(『
坂の上の星屑』)

正直私は尾崎のMCはあまり好きではなかったし、須藤プロデューサーがまたもや自分の息子さんを起用していることも気に入らず、このリーディングアルバムには殆ど興味がなかったのですが。
Yahoo!BBで何気なく視聴してしまったら、、、う、、、なんか、、、良いかも。。。

なんていうのか、ほんと紙一重なんですよね。
一歩間違えばすごく陳腐でただのナルシーな作品になりかねないのに、尾崎のは決してそうならない。
これが才能というものか、と改めて痛感しました。
言葉がニセモノじゃない。本物なんですよ。それがちゃんと伝わってくる。
しかもそれは単なる心の叫びではなく、アートになっている。
ただでさえ尾崎は良い声してますしねぇ(朗読が上手なのは意外だったけど)。
これでまだ10代なんだものなぁ。。。
もっと生きて、さらに色々なものがそぎ落とされていったら、どんな詩を生み出してくれたのだろうと思うと、残念でならない。
でもこれはこれで、そのちょっとだけ素人くささを残したところが、ありのままを伝えたいというような見え隠れする必死さが、10代のくせに妙に教祖っぽいところが(笑)、良くも悪くも尾崎ならではで、この作品の一番の魅力になっているのかもしれない。
難を言うとすれば、バックの音楽がうるさいです。。。尾崎の声だけの方がよかったな。あるいはもう少し控えめな音楽にしてほしかった。。。

いずれにしても、詩人としての彼のファンでもある私は、もしや聴かない方がおかしいようなCDなのかしら、、、?これ。。。
とりあえずレンタル開始したら借りてみようかな。
でも、一般受けはしないだろうなぁ、このCD。。。(苦笑)

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旅に出よう 2

2006-04-24 00:29:44 | 旅・散歩


自分が楽なことばかりだと、どうも人間は心から満足できないようです。人間は、ちょっと悲しいことや、不便なことが本当は好きです。物を与えられたり、決められた簡単なことだけをするより、自分で苦労して物を作ったり、迷ったりする方が断然喜びが大きいのです。

旅をすれば、そのことが本当によくわかります。自分とまったく異なる価値観の世界に入っていくのですから、何事も思うようにはいきません。やりきれないこともたくさんあります。でも、そうした経験をしたからという理由で、もう二度と旅に出ないと思う人はあまりいないのではないでしょうか。

旅先では多くの人や風景に出会いますが、その瞬間ごとに本当に出会っているのはもう一人の自分なのです。  
狭い日本に閉じこもって、狭い部屋に閉じこもって、狭い自分の心に閉じこもって、自分とは何か、自分は何のために生きているのか、などと自問するばかりだと、いつまでも何もわからないし、何も見つかりません。  

外の世界を見ずして、自分は見えてこない。だから自分に行き詰まったら、旅
こそが最良の薬なのです。
(ユーラシア旅行社の宣伝コピーより抜粋)


写真は、アラスカ鉄道の車窓から。
壮大かつ美しいアラスカの秋です。

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旅に出よう

2006-04-23 01:00:52 | 旅・散歩

人生って、神様が私に「思いっきり楽しんでおいで」って与えてくれたロングバケーションなんだと思う。
いつか終わる、長い長い夏休み。
(女優 山口智子さん)


この地図は、World66というサイトで作成しました。
私が今までに旅した国は赤色部分、14ヶ国(全世界の6%)だそうです。
意外と多いような少ないような?
それにしても、みごとに北半球に偏っていますねぇ。
ニュージーランドとかアフリカとか、行ってみたいなぁ。

旅に出るたびに思うのは、まだまだ私の知らない世界があるということ。
まだまだ私の知らない私がいるということ。
日本にいる間に知らず知らず自分にこびりついてしまった余分なものががらっと壊され、裸の自分に戻れるあの感覚。
これがあるから、旅することをやめられません。

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ひとつくらいは。

2006-04-18 18:48:22 | 英語

こーーーんなにどうしようもなく未熟者の私ですが、信じられないことに今年の秋にはめでたく三十路になってしまうのですよ。国や時代によっては晩年といわれてしまったりするのです。
あまり年齢にこだわりはありませんが、それでも少しは思うところもあるわけで、あと半年、20代のうちにあと一つくらい「これをやりました!」と言えることをしたい、とふと思いました。
願望は色々あるけれど、とりあえず一人で今日からでも始められること(彼氏がほしい!と願っても一人じゃどうにもならないもんねー・・)。
そこで、まぁありきたりですが「英語をマスターする!」ことにしました。
目標は、秋までに『TOEIC850点』
といっても、実は今の自分の点数も把握していないのですが(8年前に一度受けたきりだから)。。。
たぶん650点位はあるのではないかと。。
いずれにしても、半年後の850点獲得をめざしたいと思います。
今日はさっそく某語学学校のTOEIC半年コースと5月28日の試験を申し込んでまいりました。
がんばります(*^^*)!!!
英語の勉強をされている方、一緒にがんばりましょうね!

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鷺沢 萠 『葉桜の日』 3

2006-04-15 23:24:45 | 


 どちらに向かって流れているのかさえも判然としない淀んだ流れの中に、ママも健次もルーさんやダクマもジロさんさえも、沈んだりしながら身を委ねているのだという気がした。小さく不安定な舟に乗って―――。 
 庇もない舟に乗って雨に濡れたり波に揺られたりしながら、止まっているようにも見える流れはそれでも確実にみんなを海まで運ぶだろう。
 「それで何が悪い」

(鷺沢 萠『
葉桜の日』)

葉桜が今とても綺麗ですね。
この「果実の舟を川に流して」の舞台となった川沿いの桜
も、今日見ましたら新緑一色でした。
春は、私にとってすっかり「別れの季節」 となってしまいました。けれど、花が散った後に青々をした若葉を一杯に茂らせる樹々をみていると、春はやはり「はじまり」の季節なのだな、と感じます。
私はまだ、生きている。
すこし立ち止まって深呼吸をしたら、さぁ、前へすすもう。

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鷺沢 萠 『葉桜の日』 2

2006-04-14 22:22:47 | 

 ジロさんは、欠けたグラスなのだと健次は思う。割れてしまったグラスはそれが寿命だったのだとあきらめることができる、けれど少なくとも透明に光る部分をのこしたふちの欠けたグラスは「たまンない」のだと、これはママ自身が言ったことばだ。 
 そうしてそう考えてみれば、ジロさんだけではなく、健次も、そしておそらくはママも、ふちの欠けたグラスなのかも知れない。「たまンない」というような日々を、ママも健次もずっと過ごしてきていて、今では「たまンない」と思うことすら煩わしくなってしまっているだけなのだとも言える。  
 ―――割れちゃった方がよかった......。 
 そのつぶやきに、健次は深く頷く。けれど自分自身に対してそう言ってしまうことは、やはり健次にはできないのである。 

(鷺沢 萠『
葉桜の日』)

 鷺沢さんが亡くなったのは2年前の4月11日、葉桜の季節でした。ニュースを知ったときは、悲しさよりも、寂しい気持ちで一杯になりました。
「あの時この人の存在があったから、今生きていられるのかもしれない」と私が思う存在は決して多くはないのに、どうしてかみんな、とても早く去っていってしまいます。
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鷺沢 萠 『葉桜の日』 1

2006-04-13 21:14:11 | 

 判っていたのだ。きっとかなり以前から。ダークスーツで武装して徒党を組んでやって来るおやじたちの「まっとうさ」に健次がときどき唾でも吐きかけてやりたくなるのは、健次自身がそれに対する執着を捨てきれずにいるからだ。膜に覆われて何にも気付かないふりをしながら、けれど膜のいちばん敏感な部分では、健次はいつも思っていたのではなかったか。俺はここにいるはずじゃないんだ、と。
 「まっとう」な奴らが、結局は勝ちだ。けれど健次は、連中は不戦勝なのだと声に出して言いたい。行きたくても行けなかった奴だっているのだ。お前たちはラッキーだったのだと、心臓の鼓動の熱さでもって叫びたいと健次は想う。 
 火照った頬を、健次はグラスの氷で冷えた指で叩いた。こうなってしまった自分を考えると涙が出そうになった。それはけれど、誰のせいでもない。言ってみれば、深緑に混濁した汚れた川の苔むしたコンクリートの岸に、しがみついていられる強さを健次が持っていなかったせいであるかも知れない。 
 
オールも持たずに下流へ下流へと流されていけば、舟はやがて海へ出て沈む。
「だから何だってンだ」

(鷺沢 萠『葉桜の日』)

 いつも何かが足りないような焦りや苛立ちを感じていた10代の頃、鷺沢さんの本をよく読みました。彼女の本の中で一番好きだったのがこの『葉桜の日』です。表題作も好きですが、上の文章はこの本の最後に収録されている「果実の舟を川に流して」より。この作品は当時の自分の心情にとても重なっていて、初めて読んだときは涙がとまりませんでした。そして、すごく気持ちが楽になったのを覚えています。あれから10年以上たち、今は当時のような気持ちで読むことはありませんが、葉桜の季節になるといつも思い出し、読み返したくなる一冊です。

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中原中也 「春宵感懐」

2006-04-12 18:35:00 | 

 春宵感懐

雨が、あがつて、風が吹く。 
   雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、の宵。 
   なまあつたかい、風が吹く。

なんだか、深い、溜息が、 
   なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、掴めない。 
   誰にも、それは、語れない。 

誰にも、それは、語れない 
   ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢやないですか、 
   けれども、それは
、示(あ)かせない……

かくて、人間、ひとりびとり、 
   こころで感じて、顔見合せれば
につこり笑ふといふほどの 
   ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがつて、風が吹く。 
   雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、の宵。 
   なまあつたかい、風が吹く。

(中原中也『在りし日の歌』より)

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そよそよと……

2006-04-09 22:44:48 | 日々いろいろ



その日は雲をみていたい……
そよそよと去ってしまうものを
見送れるだけの私がほしい
さみしいとばかりはいえない
美しい刻

まえぶれの刻』より(詩/青木景子)


外はもう夕暮れ
今日という一日が 静かに終わろうとしている
今朝までたしかにここで生きていた存在が一つ いなくなっても……
本当に今朝までは 
今日も何も変わらない一日になると 疑いもしなかったのに
こんな一日になるなんて 誰が想像しただろう

君やあの子が 私に教えてくれる
同じ一日なんて 決してないのだと
私だって 彼だって 彼女だって
明日の夜 ここにいないかもしれない
だから世界は こんなにも儚くて 愛しいのだと

あの日 そして今日
君とあの子の この世界での最後の日が
こんな気持ちのいい春らしい日で 本当によかった
それだけが 本当にただそれだけが 私の救いなのです

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