風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 第三部(4月27日)

2013-04-27 23:33:51 | 歌舞伎

千穐楽前日の今日、ようやく杮茸落四月の第三部に行ってまいりました(盛綱は先日一度、幕見で観ています)。
例によって、3階B席からの鑑賞。

【盛綱陣屋】
今夜の仁左衛門さんはまるで盛綱がのり移ったような、息をするのも憚られる迫力でした。
今日は観客の方々のお行儀も素晴らしく、首実検のときなど、3Bに座る私の唾をのみ込む音が舞台まで届いてしまいそうな静寂で、こっちが緊張してしまった。お腹が鳴っちゃったらどうしよう、とか。いや、冗談じゃなく本当に。小刀を拭う懐紙の微かな音まで響き渡っていましたから。
今日気付いたのですが、「高綱の首に相違ない」という言葉、盛綱ははっきりと小四郎に対して言っているんですね。泣けた。。。
はじめて舞台写真というものも買ってしまいましたよ。素晴らしすぎて鳥肌の立つ、あの最後の見得の場面の。
それにしても仁左さま、あまりに神がかり的な全力演技に、このままもう来月はないのではないかと心配になってしまうほどでした。。。
首実検の後の見せ場の長台詞なども、聞き惚れるなんてレベルじゃなかった。
先日購入した仁左さまDVD(←さらりと告白しましたよこの人)の盛綱とも違っていて、今回の方がより深い哀しみが伝わってきたように思います。舞台って本当に一期一会のものなのだなぁ、と改めて実感。

あ、思わず仁左衛門さんのことばかり書いてしまいましたが、吉右衛門さんも同じくらい素晴らしかったですよ!
特に最後の場面のあの感動は、お二人揃ってこそ。熊谷と同じく、もうこのお二人以外の盛綱は観たくない、と思ってしまいました。
こういう風に思う舞台に出会うことは、はたして幸福なんだろうか。。
やっぱりこれ以上ない最高の幸福なんだろうな。

あと、金太郎くんが前回よりも上手になっていて、おどろきました。前回笑うところじゃないのに笑いが起きていた「この裃には紋がございませぬ」の場面も、今回は上手に言っていたから笑いも起きなかったし。もちろん誰かが教えているのだとは思いますが、ちゃんとやれていて、すごいなー。


【勧進帳】
以前もすこし書きましたが、、、私は幸四郎さんの演技が苦手でして、アレルギーと言ってもいいくらいなのです。
歌舞伎ではない『アマデウス』も、まったく受け付けず。。。なんといいますか、ご本人は熱演されているのですが、観客は置いてけぼりにされているような、そんな気分にさせられる俳優さんだったのです。私にとって。
で、今回の勧進帳。幸四郎さんの弁慶を観るのは初めてですが、最初は想像していたとおりで、台詞はただの音として耳から入ってくるだけで、勧進帳読み上げと山伏問答の場面も緊張感を感じられず、義経との「ついに泣かぬ弁慶も」も淡々と過ぎていってしまいました。
ご本人は熱演されているのだけれど、私の心に響かないのですよ…。
菊五郎さんの富樫も、梅玉さんの義経も、なにより四天王(左團次さん、染五郎、松緑、勘九郎)が最高に素晴らしかったので、「ああ、これで弁慶さえよかったらなぁ。。。」と一人ヤサグレておりました。
「弁慶以外は完璧でした」と、ここに書く気満々でおりました。
途中までは――。

しかし、です。

富樫の振る舞い酒あたりから、まさかの変化が起こったのですよ、奥さん。
「あれ?どうしたの幸四郎さん・・・?なんか雰囲気が、、、良い感じなんですけど、、、」となり。
延年の舞になると、「ちょ、、、なんかすごく、良い・・・」となり。
そして迎えたラストの花道。
はっきり言います。
感動いたしました。
NHKで観た初日のぜぇぜぇヨロヨロ弁慶と全然違う、すごく、胸に迫ってくる弁慶だった。
今日の観客は本当にお行儀がよかったので、幕が引かれた後のしぃんとした静寂から飛び六法の拍手まで、全体の空気も素晴らしかったです。
心配していた手拍子も、まったくなし。というよりも、手拍子しようなんていう気持ちを起こさせない迫力が、今日の弁慶にはありました。
お一人だけ一階席の女性客が「弁慶日本一!」と間の抜けた掛け声を掛けておりましたが、そんな掛け声ぐらいではびくともしない素晴らしい好演でした。
歌舞伎座の神様が突然幸四郎さんに下りてきちゃったみたいに感じられました。
前半と後半のギャップが驚くほど大きかったですが、結果的にとても大きな感動をくれた勧進帳でございました。
終わりよければ全てよし。
こういうことが起こるから、観劇って面白いねぇ。


この一ヶ月間は、本当に本当にたくさんの感動を歌舞伎座からいただきました。
なんというのか、役者の方達の歌舞伎に対する覚悟のようなものと、それをしっかりと受け止めたファンの方々の歌舞伎への強い愛情をひしひしと感じた、そんなひと月でした。
歌舞伎素人の私にしてみれば、どちらにも感謝感謝感謝です。
そして来月ももちろん、通いまくりますとも!

※そうそう。先日私が盛綱の幕見をした日はとても空いていて立ち見が1~2人で、あとは全員座ることができたのですが、今夜は立ち見も満席でした。平日と土日って、こんなに違うんですね。それとも、もう千穐楽だからでしょうか。
もっとも一部&二部の方は、平日でも満席でした。

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歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 『熊谷陣屋』(4月25日)

2013-04-25 23:26:37 | 歌舞伎

本日は15時からシネマ歌舞伎のチケットを買ってあったのですが、どうしてももう一度キッチー熊谷&仁左さま義経の二人並んだお姿を拝みたい(><)!と思い立ち、「熊谷陣屋」の幕見にチャレンジしてまいりました。
といっても私は長時間並ぶのが大嫌いな人間なので、発売25分前の10時50分に歌舞伎座に到着。
ダメだったら美術館でも行って3時まで時間をつぶせばいいやと思っていたところ、幸い、立ち見で入ることができました。
きゃーーー、うれしい!!

玉さま、なんか前回よりも良かった気がする。気のせいかな。
相変わらず母性はあまり感じられなかったものの、熊谷との“夫婦”がとってもよかったのです。本当に、夫婦に見えた。
相模が小次郎の首を抱えて泣き崩れているときの吉右衛門さんの辛そうな表情も、良かったなぁ。
そもそも、吉右衛門さん&玉さまの夫婦が、絵にならないわけがないのです。
さらにそこに仁左衛門さんの義経が加わっちゃうのだから、絵的にこれ以上のものがあり得るだろうか。いや、ない。
パーフェクト。
あと一人の菊之助は、、、うーん、やっぱり今回も前回と同じ印象でした。どうも、薄いというか…。
もっとも今は他の三人と比べる方が酷なわけで、こういう先輩達との共演を重ねて、これからどんどん成長していけばそれでいいのだと思います。
そういう意味で今回の四人の組み合せは、あえて大御所だけで揃えることをせずに未来の可能性も含めた、とても“杮茸落らしい”配役だったのではないかなと、今日の舞台を観て感じました。
それにミーハーな見方をすると、吉右衛門さんの両側に玉さま&菊という構図は、最高に美味しいのです。
「お騒ぎあるな!」、、、もう美味しすぎてクラクラした。。。
首実検のための首を手に持つ熊谷に二人が両側から袖を摘まんで「せめて最後のお別れを…」と縋るところなんか、もうたまらなく絵になりますよね。こんなに可愛い二人に、こんなに可愛らしく袖を摘まんでお願いされて、よく拒否できたなぁ、熊谷(って、ここでデレたらサイテーですが)。

仁左衛門さんは、本日も絶好調でした。
この義経を観て、やっぱり今日もう一度来てよかった!って心から思った。
筋書の中で「動きが少ない中で颯爽と見せる、難しい役」と仰っていますが、まさにそのとおりの義経でした。
ところで今回は義経にオペラグラスをロックオン状態だったのですが、梶原景高の登場場面の義経が、大変ツボでございました。景高は「見たぞぉ~」と鬼の首をとったように意気揚々と現れるのに、義経は(もちろん予想していたことなので)「おや、来たな」という風にちょっと視線をやり、のんびりと眺めているだけ。一人で意気込んでいる景高が気の毒になってしまう^^;
そして景高が弥陀六に倒された瞬間も、驚いた風でもなくその方向に首を動かして「おや、景高が倒れた」という風に僅かに眉を上げ、あくまでのんびり。いいなあ、好きだなあ、この義経。仁左さま義経は梅玉さん義経と比べて、重みはないかもですが、その分どこか飄々とした愛嬌がありますね。
そのくせ弥陀六に「もしまた敦盛生き返り、平家の残党かり集め、恩を仇にて返さばいかに」と聞かれて、「うむ、そのときこそは義経や兄頼朝が助かりて、仇を報いしそのごとく、天運次第、恨みを受けん」って、、、もう爽やかすぎです。最高。

歌六さんの弥陀六もとっても素晴らしかったのだけれど、前回も思ったんですが、鎧櫃を持ち上げるとき重そうにしすぎではないかと・・・。
あんなに重そうでは、数メートルも歩けないと思うのです・・・。

ラストの素晴らしさは、もう何度観ても、たまりません。
熊谷の「君にも益々ご安泰」から幕引きまでの吉右衛門さん&仁左衛門さんは、もうこのお二人以外の熊谷陣屋は観たくないと本気で思ってしまいました。
本当に本当に、こんなに素晴らしい舞台を観させていただき、心から感謝します。
そして願わくばいつの日か、ぜひまたこの配役でお願いいたします!!

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ラファエロ展 @国立西洋美術館

2013-04-24 12:33:06 | 美術展、文学展etc


『大公の聖母』 1505-06年

先週金曜日の夜は仕事帰りに友人と待ち合わせ、国立西洋美術館で開催中のラファエロ展に行ってまいりました。
夜とはいえ、思いのほか空いていてびっくり。
目玉の「大公の聖母」だけでなく全ての作品を、目の前で心ゆくまで見ることができました。
一つ一つの絵を通して、その絵を描いた画家とたっぷりと時間をかけて対話できることは、その画家の絵が好きな者にとってはこの上ない至福です。
しかも今回の企画展は、ラファエロ作品だけで23点。
日本でこれだけのラファエロを一度に見ることができるなんて、信じられません。

しかし、ラファエロはいいねぇ。
彼の絵に流れる優しく静かな時間に、胸の中のあらゆる負の感情がふうわりと消えていくような気がします。
ヨーロッパを旅しているともう美術の教科書に出てくる絵のオンパレードで、気力&体力が追いつかずにぐったりとしてしまうのですが、そんなとき、ラファエロの絵にほっと癒されたものでした。
この「大公の聖母」を所有していたフェルディナンド3世は、この絵を寝室に飾り、旅行中は携帯していたそうです。
わかるなぁ、その気持ち。
黒の背景は後世に塗りつぶされたもので、制作当初は窓や建物などの背景が描かれていたことが近年のX線による調査で判明し、そのX線写真も展示されていて興味深かったです。

こちら↓は、なんと17~8歳の頃の作品ですよ。緑色の羽が素敵。


『天使の断片』 1501年

「大公の聖母」や「聖母子と聖ヨハネ」の素描もよかった。
素描って、
油絵よりも身近にその画家の体温を感じられる気がして、なんか好きです。
16世紀のイタリアで、ラファエロはどんな状況でこれを描いたのだろうか?と想像するだけで楽しくなる。
ちなみにラファエロが亡くなったのは、37歳のとき。
私ももうすぐ37。
同じ37年の人生で、こうも成し遂げたものの大きさが違うものか。。。。。


美術館を出ると、前庭に置かれたロダンの彫刻「地獄の門」がライトアップされていました。
イタリアの詩人ダンテの叙事詩『神曲』に登場する地獄への入口の門です。
目をとめない方も多いですが、これも正真正銘の本物ですよ(“オリジナルな鋳造”と言った方が正しいかもしれませんが)。
素晴らしい作品なので、国立西洋美術館にお立ち寄りの際はぜひ足をとめてみてくださいね。
特に夜に見る地獄の門は格別です。

そうそう、この西洋美術館、9月にはなんとミケランジェロ展も開催しちゃいますよ。
東京都美術館では昨日からレオナルド・ダ・ヴィンチ展が始まりましたし、今年の上野はルネサンス祭りですね。一体どうしちゃったの?!って感じです。
500年の時を超えたルネサンス(←この言葉だけでワクワクする)の美の世界へ、皆さまもぜひ♪

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情熱大陸 ~尾上菊五郎~

2013-04-22 01:19:45 | 歌舞伎



怖いのはオッケーって思ったときだよね。ああ、見えた!とかね。ああ、これなんだ、掴んだ、なんて思ったときが、ほんとに落ち目の第一歩ですよね。
いや違うだろう、いや違うだろう、と。

(4月7日放送「情熱大陸」より)

菊五郎さん、かっこいい!素晴らしい役者魂!
なんだか今回の杮茸落でこの世代の役者さん達の圧倒的な舞台を連続で観せつけられて、これからは花形では満足できなくなりそうで怖い。。もちろん花形には花形の良さが、ちゃんとあるわけですが。
それにしても、さよなら公演以降、歌舞伎離れしていた私のばかばかばかーーーっ(><)!!!

さて、そんな菊五郎さんの36歳の時の舞台映像↓を発見。
与話情浮名横櫛』(1978)
色っぽいですね~~~~。
ちょうど今の菊之助と同じ年頃なわけですが、顔はそっくりだけど、ずっとずっと色っぽい。
先日テアトルの海老蔵の美しさを絶賛した私ではありますが、彼も確かにとってもとっても美しいのだけれど、こういう“淫靡な色気”がどうにも足りないように思うのです。
海老蔵や菊之助だけじゃなく、今の花形世代は、彼らのパパ達世代に比べると、纏っている空気がさっぱりとしすぎている気がするのは(の割に演技は理屈っぽい気がするのは)、やはりそれぞれの育った時代の違いなのでしょうか。
それが決して悪いわけではないのだけれど、やっぱり私は歌舞伎にはこういう色っぽさが欲しいのです。
もし時代が役者を作るのだとしたら、今後も彼らがこういう色気を身に付けるのは、難しいのだろうか。。
仁左衛門さんも、38歳ですでにこの色気↓だものなぁ・・・。
桜姫東文章』(1982)

あぁ、この時代に生まれたかった!
そして若かりし菊パパや孝夫ちゃんの舞台が観たかった!
いや、生まれてることは生まれておりましたが。
ほんの幼児だっただけで。。。。(泣)
それでもまだ彼らがご健在なうちに歌舞伎の素晴らしさに気付けたことが、せめてもの救い。
今のうちにいっぱいいっぱいこの人達の舞台を観ておこうと、心の底からそう思います。
でもって、花形も心から応援しているので、ほんとに、ほんとに、パパ達世代を追い抜くくらいにがんばってほしいです。

というわけで。
猿之助の襲名披露(巡業)のチケットを買いましたよ^^
歌舞伎座に比べてお値段が手頃なのが、ありがたいです。新春と同じ2500円♪

※名前に敬称が付いていたり、いなかったりするのは、自分と同世代以上か以下かでなんとなくそうなっているだけで、とくに深い意味はありません。どうぞあしからず^^;

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歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 『盛綱陣屋』(4月11日)

2013-04-11 23:50:49 | 歌舞伎

【盛綱陣屋】

で、二部の玉さまにうっとりしながら外へと出た私。

・・・・・あれ?・・・幕見の列、さっきよりも更に短くない・・・?

思わずスタッフのお兄さんに「今から並んで座れますか?」と聞いてみると、答えはYes。
三部の一幕目は、盛綱。今朝あんなに感動した仁左衛門さんが主役。。
三部は千穐楽直前にチケットを確保してあるのですが、思わず・・・購入してしまいましたよ、一幕見券。。
通しではなく、盛綱のみで。

もっとも、突然の思いつきで観てしまったため、作品についての予備知識はほぼゼロ状態(私にとって歌舞伎は“間”も重要なので、その邪魔をされるイヤフォンガイドは好きではないのです)。
なので最後まで、和田秀盛が盛綱を訪問した本当の理由が、わからずじまいでした。
そんないい加減な知識で観ていたにもかかわらず、自分でもびっくりですが、泣いてしまった盛綱陣屋。
何が良かったって、まずは小四郎役の金太郎くん。初めて歌舞伎で子役に泣かされました。。。
金太郎くんが誰かも知らなかった私ですが、「高麗屋!」の掛け声でわかりました。染五郎の息子さんか。なるほど、美少年なわけだわ。
切腹をした後に朦朧とした意識のなか「そんならわしが死ぬるので、ととさまの軍(いくさ)が勝ちになるのか」って…(泣)
地面に両手を彷徨わせながら「婆さまはどこにぞ」って…(泣泣)
「伯父さま、伯母さま、かかさまにも逢うて死ぬるは嬉しいが、たった一つ悲しいは、ととさま――…」って…(泣泣泣)!!
高綱、あんた息子に何てことをさせんのよ(怒)!!

そして、仁左衛門さんの盛綱。
所作や見得がことごとく絵のように美しくて、もう見惚れっぱなしでした。手もとっても綺麗~。指なが~い。
本当になんなのでしょう、この69歳。自分の父親より上の年齢にもかかわらず、微妙に縋る場面なんか、思わずときめいてしまったじゃないの…(>_<)

すみません、マジメな感想をします。。。

仁左衛門さんの盛綱は、とても優しい盛綱でした。
微妙に「小四郎を切腹させてくれ」と頼むときもとても辛そうですし、ラストで父親の計略のために見事に切腹してみせた小四郎に対する哀れみと優しさも、とてもはっきりと表現されています。
私のような素人にもはっきりと盛綱の心情が伝わってくる、“わかりやすい”お芝居でした。
首実検の一連の演技も、とってもわかりやすいですよ。
まず、首を自分の正面に向ける。それが弟の首ではないと知り、ほっと小さく息を吐く。そして時政から顔を隠すようにして、可笑しそうに笑みを浮かべる。これは影武者の首をとらせた相変わらず計略家な弟に対して、思わず漏れた笑みだと思います(ここにも盛綱の主君に対する思い入れの少なさが現れていますね)。
しかしすぐに、はっと目を見開いて倒れている小四郎を見る。そして小四郎が切腹した理由、つまり高綱の計略を一瞬にして悟り、苦悶し、決意し、「高綱の首に相違ない」と言う。
この一連の流れをはっきりと観客に示すにもかかわらず、演技が全く安っぽく見えないのは、仁左衛門さんの上手さでしょう。
そして時政が去ったことを確かめた後、隠れていた篝火を呼び、篝火と微妙に「(小四郎を)褒めてやれ、褒めてやれ」と畳み掛けるように言うその言い方が、暖かくて……悲しくて……。ここ、もう一気に「う、わぁ…っ」ってきました……(号泣)
小四郎の顔に手をあてる姿、本当に本当に美しかった。こういうシーンでああいう絵を見せる歌舞伎って素晴らしいなぁと、改めて歌舞伎という芸術に感心いたしました。

長くなってしまったので、後は簡単に。
時蔵さんの篝火は、母親らしくて良かったです。
我當さんの時政も、冷徹で抜け目のない武将らしさが出ていて迫力がありました。
松緑の息子さんの大河くんも、頑張っていました(花道の見得、よかった)。
吉右衛門さんの和田秀盛も、さすがの一言。熊谷のような役も素敵ですが、こういう豪快な役もとっても似合いますね。
そして盛綱と秀盛が二人並んだ、最後の見得の美しさ。仁左衛門さんって吉右衛門さんよりも細いのに、同じくらい大きく見えた。
このお二人の見得、最高にかっこよかったです!!!
あとは、盛綱が時政を迎えるときに着ていた黒地に金糸と白地に銀糸の刺繍の衣装が、美しくてよかった。ああいう色合い、大好きです。仁左衛門さんにとてもよく似合っていました。
また千秋楽直前にチケットを買ってあるので、楽しみです^^


今回一部~三部までを通しで観て、吉右衛門さんの頑張りが半端じゃないことがわかりました。
四月の一~三部でずっと主役や準主役をやることになったのは團十郎さんの代役をされているからですが、あの全力演技で朝から晩まで一ヶ月間、一日の休みもなくぶっ通しって、、、決して若くはないのに大丈夫なんだろうか。。。
「6月まで体がもってくれるか心配だけど、命がけでやる。そういう姿をこれからを担う若い人達が見て、自分はもっと頑張ろうと思ってもらえれば」って、歌舞伎座開場時の記者会見で仰っていたけれど。。。
仁左衛門さんも決して丈夫ではなさそうですし、菊五郎さんもがんどう返し&富樫をひと月間だし、幸四郎さんも弁慶って超ハードだし、みなさん本当に心配。。。
せめて一週間に一日くらい休演日を入れることはできないのだろうかと、歌舞伎を観るたびにいつも思います。。。


※2回目(4月27日)の感想

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歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 第二部(4月11日)

2013-04-11 23:25:49 | 歌舞伎

というわけで、一部を満喫して外へと出た私。
そこで見たものは――。

・・・あれ?なんか前回来たときよりも幕見の列が短い・・・?もしかして、二部イケる?

それなら将門をもう一回観たい!と、近くにいたスタッフの方に「将門の幕見が観たいんですけど」と言うと、「将門はこの列の後方に並んでください。弁天は完売です」とのこと。お目当ては将門なので、かまわないです。発売までの30分くらいは待ちますよ。
で、列はどんどん進んでいき、スタッフのお兄さんが順に「将門でいいですか?」と聞いている。
ん?聞くってことはまだ弁天もOKってこと?と「弁天も買えるんですか?」と聞いたところ、「はい。立ち見ですが」と。「通しで買うと、将門は座れます?」と聞いたら、窓口まで確認に行ってくれてYesとのこと。
どうせ将門まで時間を潰すためにカフェでケーキセットでも食べていたら千円以上は使っちゃうし、それなら二千円でもう一度弁天も観たい、と急遽第二部を通しで購入することに。
はじめての幕見&立見体験です。
4階の女性スタッフの方に「将門」の席をとるときはどのタイミングで動くべきか?と聞いたところ、「一幕目が終わったらすぐに席を確保してください。荷物の置かれていない席はとってしまって構いません。とにかくまずはお席を確保すること。お手洗いなどに行かれるのはそれからで」とのこと。おかげで、ばっちりな席をとることができました。ありがとうございました、親切なスタッフさん^^


【弁天娘女男白浪】

まったく同じ演目&役者さんの2回目ですが、4日に比べて、全てが良くなっていることにまず吃驚。
4日でも十分大満足だったのに、前回より皆さん慣れてきたのか、すごくいい感じ。
何より驚いたのは、吉右衛門さんの日本駄右衛門がとても良かったこと。ちゃんと吉右衛門さんらしい個性が出てる!声も前回よりずっと出てるし。
でもって菊よ、藤の方よりこの若旦那役の方がずっと色っぽく見えるのは何故なのか。。。
三津五郎さん、声がいいなーと今回気づきました。
菊五郎さんの極楽寺屋根での立ち回りも、今回の方が迫力があった気がします。
そして今回は吉右衛門さんがとってもよかったので、山門の場で顔(というか胸から上)がまったく観えなかったのが、くぅ・・・っ(><)となりました。。。


【将門】

玉さま・・・!今日もお美しい・・・!
如月のときに光圀に向かって人差し指でちょいちょいってする仕草が、色っぽくてもう・・・。
本気で、心の底から、「男の人は女なんかよりよっぽどこの玉さまの方に惹かれてしまうのではなかろうか」と思ってしまいましたよ。
そして、光圀と闘い始めるときに家の脇の木から枝を折って、無造作にぺっぺっと光圀に向かって放り投げる玉さま。 さっきまで散々切々と誘っていた相手に対して、正体がばれた途端にこの態度(笑) 最高です。
やっぱり玉さまは地味に耐え忍ぶ妻&母の役よりも、こういう派手で上から目線の姫系が似合う!
ラストの玉さまが観えないことは百も承知だったので今回は焦らずゆったりと眺めていたら、最後に蝦蟇ちゃんを従えながら平家の赤旗をさぁって投げる投げ方が、かっこよすぎ!手しか見えなかったけど(泣)!!


③につづく

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歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 第一部(4月11日)

2013-04-11 23:04:33 | 歌舞伎



どうも!
4日に引き続き、今回は杮茸落の第一部に行ってまいりました。
de――。
「第一部の終了→第二部幕見の発売→第二部の終了→第三部幕見の発売」のスパイラルに見事に嵌まり、結局第一部~盛綱まで、江戸時代さながらに一日中を歌舞伎座の中で過ごしてしまいました。。。
だって・・・・・、並ばないでも幕見が買えちゃったものだから・・・・・、つい。。。


【壽祝歌舞伎華彩(ことぶきいわうかぶきのいろどり) ~鶴寿千歳~】

私の鑑賞予習方法はいつも「あらすじ」&youtubeなわけですが、この演目はネット上で筋も動画も見つけることができなかったことから、まったく予備知識ゼロの観劇となりました。一体どんな演目なのか、ワクワクどきどき。こういうのも楽しいものですね~♪
そしたら――。
う・・・わぁ・・・、すっごいツボ!
まさかの平安絵巻じゃないですか!素敵素敵素敵(><)
というのも、ちょうど行きの電車の中で読んでいたのが『源氏物語』の紅葉賀の章だったのですよ。
光の君&頭中将が宮中で舞を舞う場面は、この物語の中でも特に好きな場面のひとつ。
まさにその場面さながらの舞に、大感激でした。
最初に登場するのは、染五郎の春の君と魁春さんの女御。
涼やかな薄水色の衣装を纏って桜の枝を差した冠をのせた染五郎は、光源氏が物語の中から飛び出てきたような美しさ。染五郎って薫は演じたことがありますが、光源氏はないのですよね。この人、生真面目な薫よりも、プレイボーイな光源氏の方が絶対に似合うと思うんだけどなぁ。
しっとりとした女御と、すっきりとした春の君の舞は、まるで絵巻物の一頁を眺めているようでした。染五郎の舞は優雅さに少々欠ける気もしましたが、顔が美しかったから許しちゃいます、笑。
そして、宮中の男達&女達10名が勢揃いした舞台の華やかなこと!
それぞれの装束の色合いが、もう、たまらなく美しい。。。。。。私は襲の色目の本を一日中でも飽かずに眺めていられる人間なので、こういう演目は至福以外の何物でもございませぬ。いつまででも観ていたかったです。
橙色衣装の壱太郎くん、みーっけ。相変わらずカワユイ。青い装束の松也とよくお似合い^^
そして、中央のセリから藤十郎さんの鶴がご登場~。白生地に金糸と銀糸が刺繍された衣と透けた白い上衣が美しい。ゆったりと大らかな舞で、おめでたい気分をたっぷりと味わわせていただきました。
若手の皆さんの舞はまぁ、ビミョー・・・?な感じでしたが^^;、全体としては大満足でした♪


【十八世中村勘三郎に捧ぐ ~お祭り~】

三津五郎さんの踊りがカッコいい!
そして勘九郎と七之助が七緒八くんの手を引いて花道から登場し、三津五郎さんと中村屋ファミリーが舞台でそれを迎えたときには、中村屋にそれほど深い思い入れのない私でさえ、涙が出ました。。。
彼らがみんな笑顔なだけに、余計に。。。。。。
「さぞ十八代目も喜んでいることでありましょう」。だから泣かせないでってば、三津五郎さん・・・(><)!
しかし鳶頭姿の勘九は、惚れ惚れするいい男ですね。
芸者姿の七も色っぽくて、七緒八くんと三人で床几の上で寛いでいる姿は、“妻に先立たれた若いお父さん+その恋人の芸者”以外の何物にも見えませんでした(笑)
この演目は、床几に座って寛いでいる中から一人or数人が順にさっと前に出て踊り、残りの者達はそれを楽しげに眺めている、という構図なのですが、それが大変ツボでした。こういう振付、かっこよくて大好きなんですよ。BBLのディオニソス組曲の祭りの場面と同じ。ただ勘九の踊りは少々真面目風というか、祭りの粋なノリがもうひとつ感じられなかったのがちょっと残念でした。
みんな勢揃いの最後の見得は華やかで大満足。お父さんが気になって仕方がないという風にちらちら勘九の顔を振り返っている七緒八くんが可愛かったです^^
勘三郎さんの「お祭り」も、この歌舞伎座で観てみたかったなぁ。


【一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) ~熊谷陣屋~】

さすがは人気演目。見応えがありました~。
玉三郎さんの相模と菊之助の藤の方は“母親”の雰囲気があまり感じられない気がし、個人的には少し残念でしたが(さよなら公演の藤十郎さん&魁春さんの印象が強すぎるせいか・・・)、仁左衛門さんの義経が!絶品!
品があり、将としての冷静さがあり、そして人としての情があり。勧進帳と同じく、この義経は「この人のためなら命も投げ出す」と家来達に感じさせるような魅力が必要で、それがないと舞台自体に説得力がなくなってしまうような、登場場面は少なくても大変重要な役だと思うのです。
弥陀六に「堅固でおったな」と言うときの微笑みも、「熊谷には子供を殺させておいてよく笑ってそんなことが言えるわ」と普通なら思ってしまうところですが、この義経の場合はそう感じさせないんですよね。彼はなすべきことを命じただけで、彼の中には熊谷に対する負い目は一切ないのです。あるのはただ、透明な哀しみのみ。勧進帳の義経が弁慶たちに負い目がないのと同じです。だから自分の両親の回向も熊谷に頼んだりできちゃうわけです。大将というものはこうでなくちゃなりません。そしてもちろん熊谷の側にも、「命令されたから仕方なく殺した」などという感情はないでしょう。
最後に立ち去ろうとする熊谷を「こりゃ」って呼びとめるところも、良かったなー。で、最後にもう一度息子の首を見せてやり、自分は顔を背ける。これは「非情な命令をした自分はとても熊谷に顔向けができない」というわけではもちろんなくて、熊谷の息子との最後の別れの場に自分はいるべきではない、ということなんだと思います。(主であり、しかも息子を殺す命令を下した)自分がじっと見ていたら、熊谷は存分に悲しむことができない。だから「私はお前を見ていないぞ。だから存分に息子との別れをしろ」と態度で示してあげたのだと思います。だから熊谷は存分に悲しむことができた。いい主だなぁ。。
それから地面に蹲った熊谷に再び視線を戻し、そして静かに目を伏せて、そのまま幕。やはり致し方がなかったとはいえ、義経にも、いたたまれない哀しみがあるのでしょう。この最後の一連の義経は本当によかった。
一言でまとめると、仁左さま、美しすぎ・・・(オイ)。こんな色っぽい69歳、反則でしょ。
そして吉右衛門さんの熊谷。もう何も言うことはないです。これほど魅力のある義経に全く負けていないなんてスゴすぎる。
心の奥から絞り出たような「十六年は一昔」・・・・・、もう・・・・・(泣)
法螺貝と陣太鼓の音に反射的に武士の顔に戻り、それからそんな自分に気づいて小さく首を振るところなんか・・・・・、うぅ・・・・(号泣)
熊谷という人間が生きてきたこれまでの人生と、これから生きていくであろう人生を、すべて一本の花道で表現しきった吉右衛門さんに拍手!!!!!
すばらしい舞台を、本当にありがとうございました。


②につづく

『熊谷陣屋』(2回目)

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歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 第二部(4月4日)   

2013-04-04 21:10:21 | 歌舞伎



行ってまいりましたよ~、杮茸落第二部。
開場して3日目。
歌舞伎座前も道路を挟んだ反対側も写真を撮っている人達でいっぱいで、杮茸落ならではの華やいだ雰囲気に入場前からテンションが上がりました。
内部もまだペンキや木の匂いがして、ピカピカです。
写真で見ていた限りは以前と全く同じに見えた内部でしたが、結構変わったんですね。
って、私が好きだった西側売店コーナーがなくなってる・・・。がーん。
あの大して買いたい物もないのについぶらぶらしてしまう、昭和の雰囲気漂う雑雑とした一画が大好きだったのに・・・。
東側1階にできた売店は京都のお洒落なお土産屋さんみたいで、以前のどこか懐かしい雰囲気がなくなり、すっかり小綺麗な洗練された空間になってしまっていました。
大好きだった実演販売も鯛焼き(ともちろん人形焼)くらいになってしまい、各階のドリンクコーナーなどまるで先日行った新国立劇場オペラパレスみたい。。
寂しいけれど、これも時代の流れなんでしょうね。。。平成生まれのお客を呼び込んでいくには、こういう方が親しみやすいのだろうと思うし。
あと、エスカレーターとトイレ、あれは設計ミスではなかろうか。
エスカレーターは閉幕後に3階から降りていく客に2階の客が合流し、すごく危険な状態になっていました。あれどうにかしないと、いつか事故が起きると思う。
トイレは入口と出口が違う場所なのは四季劇場と同じなのですが、どちらが入口でどちらが出口か非常にわかりにくいため、誘導スタッフが必須状態。入口は列をつくっているのに出口からさっさと入る客が多数(わざとではなく)。 
とはいっても、新しい劇場というのはやっぱり気持ちがいいものです。

※追記:11日に行ったときには、係員が階段も利用するよう誘導するようになっていたので、エスカレーターの混乱はなくなっていました。また、トイレの出口も引き戸が基本閉まるように変わっていたため、こちらも改善されていました。素早い対応!

さて、私の席は3階B席の一番うしろ。
おー、本当にちゃんとすっぽんが見える。
舞台は遠いけど、傾斜のおかげで前の人の頭で遮られることもなく。いいじゃないの。のーぷろぶれむ。
と、開演前は思っていたのですが――。
後ほどA席との2000円の差の意味を、嫌というほど思い知らされることになったのであります。。。。。。。。
というわけで、以下、お芝居の感想。


【弁天娘女男白浪】

弁天小僧!!!
将門目当てで買った第二部でしたが、この菊五郎さんだけでも十分にチケット分の価値がありました。
youtubeで義経@勧進帳を観たときは「この人のどこがよいのだろう、、、」と思った私でしたが(すみません)、この弁天小僧はすっごくいい。
御名残公演のときよりも台詞のテンポがゆったりめでしたが、言い回しや絶妙な“間”はさすがで、聞いていて実に気持ちがいいです。
「知らざあ言って聞かせやしょう」、わかっていても痺れるっ。
左團次さんの南郷力丸も、ガラ悪くていいわ~。 菊五郎さんとのチンピラコンビ、素敵すぎます。
菊之助も、呉服屋の坊ちゃん役がぴったりでした。
鳶頭清次は、なんと幸四郎さんですよ。脇までも超豪華です。実は私、この人のお芝居があまり好みじゃないのですが、鳶頭は悪くなかったです。声を荒げず大人しい分、妙な凄みがありました。この役にこういう凄みが必要かどうかはともかく、舞台に杮茸落らしい花を添えてくれたことは確か。
吉右衛門さんの日本駄右衛門は思っていたよりも無難な感じがしたけれど、盗賊の頭領の重みは十分に感じられました。
花道での弁天小僧と南郷力丸のお決まりの言い合いも、ちゃんと見えましたよ。この場面の、分け前をテキトーに半分こしちゃう二人が大好き。いつでもどこでもギャンブル。
そして稲瀬川勢揃いの場で時蔵さんの赤星十三郎と三津五郎さんの忠信利平が加わり、大物役者5人が立ち並ぶその光景の美しいこと!まさに錦絵。
お揃いの「志ら浪」の傘に、それぞれの個性を打ち出した紫の衣装も、くぅ~~~、カッコよすぎるっつーの!台詞もイチイチカッコよすぎるのよ、あんたたち!
だからこそ思うんですけど、、、、この後の極楽寺立腹の場って必要ですかね・・・?なんか蛇足な気がしてならないのですが。
菊五郎さんの立ち回りも、なんとなく気が抜けた感じですし(追手はめっちゃ気合い入ってるけど)。。。
しかし、再び台詞を話し始めるとやっぱりさすがで、切腹~がんどう返しの演技は息をのむ迫力がありました。
だからこそ思うんですけど(二回目)、、、、この後の山門~滑川土橋の場って必要ですかね・・・?なんか蛇足な(以下略)
いや、仕掛けは確かにすごいのですけど、なんかそれだけのような。ここは深く考えずに石川五右衛門のパロディを楽しんでください、ということでしょうか。
まぁこういう場面こそ、とっても歌舞伎らしいといえばらしいのですけれど。
意味があるとかないとか、そういう現代の観点とはまったく違う観点で動いているところも、私が歌舞伎を好きな理由のひとつなのですけどね、結局。

そうそう。
3B最後列の席からは、ラストの日本駄右衛門の見得はまっっったく見えませんでした。
首から下しか見えないのです。
まぁこの演目は菊五郎さんでお腹いっぱいに満足させてもらったので、さほどショックではありませんでしたが、もしいつかまた歌舞伎座でこれを観ることがあったら、そのときは絶対に3Aにしようと思いました。

とはいえ、粋な江戸の美学溢れる弁天娘女男白浪、大満足でございましたよ^^


【忍夜恋曲者~将門~】

ドロドロドロンな登場シーンから、もう玉さまに釘付け。
美しいです。妖しいです。色っぽいです。・・・・・・自分のボキャブラリーの貧困さに泣けてきます。
この人はつくづく“人ならぬもの”が似合いますね。そしてこういうアヤカシやモノノケといった類の美人は歌舞伎の女形にぴったりの役だと、改めて感じました。生物学的な女には決して出すことのできない、独特の妖しい艶。
蜘蛛の糸の刺繍柄の衣装も、透けた傘も美しい。
でもっていつも思いますけど、玉さまは伏し目がちな表情が実に綺麗ですよね。。。瞬きする間も惜しいくらい、この登場シーンは見入ってしまいました。
滝夜叉姫のにらみの見得も、色っぽくて&可愛くてよかったけど(*^^*)

しかし良かったのは玉さまだけではありませんよ。
松緑の光圀が、とても良かったのです。
舞踊が半端なくカッコよかった。私、バレエもですけど、こういう男性的な振付が大好きなのです。
玉さま目当てで買ったチケットでこんなに良いものが観られるとは思っていなかったので、とても得した気分でした。
そして、そんな素敵な二人の絡みが悪いわけがない。
美味しすぎました。。
光圀を誘う如月、エロい。こんな美人にこんな風に誘われて靡かない男がいるだろうか。
ここで冷静に正体を探っている光圀がまた、かっこよかったです。

しかしこの演目で最強なのは、光圀でもなければ滝夜叉姫でもありません。
そう。
“ガマ”です。
なんなのでしょう、この可愛いイキモノ。。。。。。。口パクパクしてる。。。。。。。
緊張感みなぎる戦いの場面なのに、思わず頬がほころばずにいられない。
ラスト数分のみの登場にもかかわらず、その強烈なインパクトで光圀のカッコよさも、滝夜叉の美しさもすべて一瞬で吹き飛ばしてしまうラスボス、ガマ。
まさしく「将門」最強のキャラでした。

ちなみに3B席の悪夢は、この演目でも容赦なく襲い掛かりましたよ。
なんと最後の最後の玉さまの見得が、やっぱり首から下しか見えなかったのです!
「弁天」と違い、これは正直かなりショックでした。
玉さまの美しいにらみが、可愛いガマを従えた麗しい姿が見えないなんて・・・!

以上、なんのかんのありましたが、杮茸落ならではの賑やかさと配役の豪華さに、大変充実した観劇となりました。
そうそう、おめでたい雰囲気満点の沢山の大向こうも良かったですよ^^ おかしな大向こうもなかったし。
「〇代目!」っていうかけ声、かっこよくて好きです。

次回は来週、第一部です♪


※4/7追記:「情熱大陸」で菊五郎さんが弁天小僧の極楽寺の立ち回り場面について、「屋根の板を付けている糊が浮いてきて、足の裏に付いてつるつる滑る。皆は草鞋を履いて濡らして出てくるからいいんだけど、私は出っぱなしだから足の裏が乾いてきちゃって、それで糊がつるつる滑っておっかない」と仰っていました。立ち回りが気が抜けているように見えたのには、そういう理由もあったみたいです。怪我をされたら大変だ・・・。千穐楽までまだまだ長いですし、今からでもなんとか解決されるといいですね。

※2回目鑑賞の感想

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