風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

片桐はいり 『わたしのマトカ』

2008-03-27 18:57:02 | 



よその国で野菜や果物を食べると、野生の味がする。このいちごだって、畑の出身というよりは、野や山の出のようだ。日本で感じるおいしさとは、一味も二味もちがう。これが本来の野菜や果物の味なのよ、と言う人もいるが、どうなのだろう。ほんとだろうと嘘だろうと、わたしはどちらの味も大好きだ。

・・・

”なんにもしない”を学ぶどころか、ぼおっとする瞬間すらなかった。わたしはきっと、そんな星のもとに生まれた人間なのだろう。それならそれで、これからもじたばたしながら生きていくさ。フィンランドでだろうと日本でだろうと。

(片桐はいり 『わたしのマトカ』)


映画『かもめ食堂』の撮影にまつわる、またその後の片桐さんのフィンランド一人旅のエピソードをまとめたエッセイ。
渡英直前に購入したのだけれど準備でいそがしく読む時間がなかったたのです。
迷った末に、重量制限ぎりぎりのスーツケースにつめこんだ本。

この本は、ほんとオススメですよ~。
旅好きな人には、共感できる部分がいっぱいです。
とくに海外個人旅行や一人旅をしたことがある人。
そうそう旅ってこうなんだよね~と楽しくなります。
そして、スーツケースに荷物をつめて、ガイドブックとパスポートを片手に、旅に出たくなる。

日本も好きだし海外も好き、日常が嫌いなわけじゃないけど旅は大好き、という片桐さんの力の抜け具合がいいのです^^

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イギリス人って、結構おバカ・・・。

2008-03-16 06:57:49 | 倫敦うるるん滞在記
「クリスマスキャロル」の著者チャールズ・ディケンズを知らない、シャーロックホームズを実在の人物だと思っている(当然コナン・ドイルなんて知らない)、第二次世界大戦時の首相ウィンストン・チャーチルを想像上の人物だと思っている―――。
そんな人たちが、それぞれイギリス人全体の約4割だとか(正確な数字は忘れたけど大体それくらい)。
このニュースを見たとき「えっ!いくらなんでもそれは・・・」と仰天だったんですけど、実際にイギリス人と話してるとなんかホントっぽい・・・。
ボーディングスクールに通ってる知り合いの話では、イギリスの歴史の授業は選択科目で、必修ではないそうで。
自国の歴史を教えないなんて、どういう文化なんだ。だから自国が誇るべき文豪の名前も知らないんだよ。

そして、普通の常識を持ってそうな人たちでも、単語のスペルを間違える間違える。
最近だけでも、lonelyness(正:loneliness)、liesure(正:leisure)、addmission(正:admission)と皆さんほんとうにヒドイ。
英語を教えるのを職業にしている先生でさえ、生徒に「これでスペルあってたっけ?」と聞いてくるんですよ・・・。

なんだか、この国もいろんな問題をかかえてる国だなぁと思う、ほんとに…。
ところで、私は1年間だからまぁそれなりに楽しんでいますけど、何年も(ましてや永住なんて!)暮らしたい国ではないなぁと感じています。
このブログでも書いているように良い面も沢山ある国ですけどね。
あまり私の性格には合っていないというか。
保守的というのもあるし、上にも書いたように意外とオバカが多いというのもあるし、その割にプライドは高いし。
洋服もよく「日本人の女の子はみんな同じようなファッションをしてる」と批判されたりしますけど、イギリス人だって同じですよ。
細身のジーパンをはいて、短い丈の細身のコートを着て、ジーパンの裾をブーツに入れて、色は黒かグレーを着て、肩から無地の地味色の小さめバッグをかければ、ほらイギリス人の出来上がり!

このファッションの地味さも私があまり好きになれない原因の一つかもしれない。
すごくお洒落だし、可愛くて似合ってるんですけど、真似したいなって思ったりもしますけど、、、それにしても!地味すぎるんですよ色が!暗いんです!
日本に来た欧州の観光客が、日本の第一印象を聞かれて「女の子達の服の色が鮮やかで綺麗」って答えていたのを思い出しました。

うーむ。。。
ていうか英語の勉強がんばろ。本分を忘れちゃならねぇ。。。
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『負け犬の遠吠え』とか。

2008-03-15 20:01:35 | 

数年前に一大ブームとなった酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』。
最初にことわっておくと、この本、全部は読んでないです。
さっきYahoo!のトップページから著者のインタヴューにリンクが貼られていたので、読んでみました。あと、本の冒頭10ページも。

たしかに文章はうまいですね。
笑えるし。

でも、です。
全部を読んでいないからエラそーなことは言えないけれど、私とこの人の考え、根本的なところで合わないなぁ。
なにが合わないって、『カテゴライズの感じ方』 。

酒井さんは本の冒頭で、
「人間を勝ち負けで二分することが本当は不可能であることは、私も知っているのです。が、そこを無理やりにでも分けてしまうと単純に面白い、というのもまた事実。」
と言っています。
でも、私は人間を無理やりに二分してみても全然面白みを感じられないんですよ。
二分できないところにこそ人間の面白みはあるのだと思うし、そういうことを描いている本を読むほうがずっと楽しい。
酒井さんって、こういうカテゴライズするエッセイが得意なようですね。
これなんかもそうだけど。

またインタヴューの中で、
「『負け』という言葉に拒否反応を起こしちゃう人は、すでに『勝ち=えらい、負け=えらくない』と上下をつけているのでは。私は、未婚の30代女子の”負け”は単にひとつの条件にしかすぎないと考えています。右の道へ行くか左の道へ行くか、という程度のことであって、どちらかの道に進んだからと言って、幸せ不幸せが決まるわけじゃない。そこを勘違いされがちなんです」
と言っています。
一見的をついているようだけど、この意見もやっぱり変だよね。
「『勝ち=えらい、負け=えらくない』という考え方はおかしい」というのは、まったくその通り。負けは別に悪ではありません。
でも、この言葉の持つイメージが、誰がどう聞いても、勝ち=プラス、負け=マイナスであることもまた、事実。
良い悪いの問題じゃなくて、そういう言葉だからです。
「勝ち」「負け」は『競争』のときに使う日本語。
誰も負けようと思って徒競走をする人はないし、負けようと思ってオーディションを受ける人はいないでしょう。
「負け」という言葉に拒否反応を持つのは当然です。

人生はそもそも競争じゃないのですから、この言葉を使うこと自体、おかしい。
でも酒井さんは「世間ではそんな風に考えている人もいる」ということを踏まえてあえてこの言葉を使ったのでしょうから、それについては百歩譲ったとしても、です。

未婚・子なし・30代は「負け」ではないのですよ。
これは大事。
たしかに社会はそう見てるかもしれない。でも、そこでこの作者のように「はい、負け犬ですけどそれが何か?」と開き直っちゃやっぱりダメなんです。開き直っちゃったほうが楽かもしれないけど、ダメ。
だって、それは「負け」だと認めてることになってしまうもの。
ちがうでしょ?負けじゃないでしょ?だったらやっぱり、そこは譲っちゃだめです。
大声をはりあげる必要はないです。
ただ、気張らずに、「人間も幸せも十人十色でしょ?」というスタンスに堂々と立っていなきゃ。
この本を読んで、共感して、気が楽になっているだけじゃ、ダメです。

酒井さんが、30代・未婚・子なしを悪い意味で「負け犬」とカテゴライズしたのではないのはわかります。でもね、社会はそうは見ないです。
「言葉ばかりが一人歩きしてしまった・・・」とインタヴューで言っているけれど、こういう刺激的&挑発的な言葉をタイトルにした時点で、本人もそれを多少は狙っていたはずですよ。メディアに籍を置いている以上、想像できなかったとは言わせません。
アマゾンレビューでも誰かがいっていたけれど、そこに商業主義が匂うんですよねぇ。
そしてこの言葉をはやらせたことで、結果的に「30代・未婚・子なし」がこれまで以上に生きにくい社会を作り上げてしまったと。。。

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ロンドンのイケメンとか。

2008-03-07 05:11:40 | 倫敦うるるん滞在記

男性や女性の好みのタイプは人によって千差万別だとおもいます。

そして私基準ではかった場合、ロンドンには東京の100倍くらいの比率でイケメンがいるとおもうのですよ。
それもかなりレベルの高い。
特に通勤時間帯のTUBEの中―――。

なんなのあれ。
素敵すぎる。。
イギリス人は基本的に背が高くて顔が小さくて足が長いせいか、スーツが!コートが!ものすごく似合う~~~~。
小説から飛び出てきたみたいっ。
カッコいいのもいれば、カワいいのもいるし(注:男)、シブいのもいるし。
ここはホストクラブか?
ていうか日本のホストも芸能人も、彼らに敵うのはそうはいまい。

もちろんイケてないのも山ほどいますよ。
要は日本と比べた比率の問題です。
だって、日本でぼー……っとみとれてしまうほどのイケメンなんて、滅多にお目にかかれないもの。

今日も帰りの電車の中で隣に紺色コート&スーツのブロンドお兄ちゃんが立っていたんですけど、電車をおりるとき「Excuse me」と言われたからふと顔をみたら、、、、もっっっっのすごくカッコいいのですよ!!!すごい好み!!!なんですかあれ!??
あまりのカッコよさに、ずーっと後姿を目で追っちゃいました。
なんだよー。あんなにカッコいいのがすぐ隣にいたなんて全然気づかなかったよ。わかっていたらもっと顔を盗み見したのに(><)

と、ラッシュもなかなか楽しいロンドンなのでした。
ところで、ロンドンのラッシュ時のTUBEは「Excuse me!」「Sorry!」の嵐。
ラッシュ時にかぎらず、カバンがほんのちょっと他人の腕にぶつかっただけでも「Sorry!」を言うイギリス人。思いっきりぶつかっても無言の日本人(ほんとあれ何様なんですかね、怒)。
やっぱり日本はどこかが間違っていると思わざるをえないのです(もちろんイギリスも別の面では間違ってると感じることはありますよ。交通機関の運営のひどさとか、人種差別とか、階級意識とか挙げたらきりがありません)。

でもそんな日本も、中国に比べたら全然マシかもしれない…。差別じゃないですよ。仕事をしていた頃の事実に基づいた感想です。
一例をあげると。
北京大学かどっかの教授数人が私のいた職場で打ち合わせをすることになっていて、来日したその足でオフィスにきたんですよ。で、私がお茶をいれようと席を立った途端、私の椅子(←白地に小花柄のクッションを敷いていた)の上に、それまで床に置いていたでっかいアタッシュケースをいきなりドカッと置いたんですよ!なんでわざわざ??そのまま床に置いておけばいいじゃん。ていうか私が座ってるの見えなかった?椅子が荷物置きに見えましたか?だとしたら北京大学のくせにただのバカだな。
あれには呆れたというか唖然とした・・・・・・。
案の定、後で見たらクッション思い切り汚れていたし・・・(怒)
あー思い出しただけで腹がたつ。
って、あれ?イケメン話題からずいぶん遠くにきてしまいましたね。

まぁそんなわけで、他国の文化の良いところはばんばん取り入れて、自国の良いところには誇りを持って、我らが日本をもっともっと住みやすい魅力的な国にしていきたいものですね。

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めいびー

2008-03-04 04:13:01 | 倫敦うるるん滞在記



今日買い物をしながらお店のオジチャンと話しててハタと気づいた。
わたし、なんかやたらとmaybeを使ってる・・・?
全然maybeじゃねーじゃん、というときでもなぜか「Maybe」。
英語への自信のなさがこういうところにあらわれておりますな。
maybeって付け加えておけば間違えたことを伝えちゃってもとりあえず大丈夫ですもんね^^;

昔読んだ『プラチナ・ビーズ』っていう小説のなかで、いつもmaybeって言ってしまう主人公が上司から「Maybeじゃない。Sureだ」ってその都度注意されていたのを思い出したよ。
このシリーズ、どうなっちゃたのかなぁ。
途中で追うのをやめちゃったんだけど。
シリーズ一作目の『プラチナ・ビーズ』が大好きなんです~。
このタイトルも最高に好き。
このシリーズを読んでると外国語をマスターしたくなるのよね。英語とか韓国語とか中国語とか。

★写真:桜とロンドン大学。外見だけでなく内部も普通の家のようなつくりで、日本の大学とは全然ちがって面白いです(注:関係者以外の立入は不可…だと思う)。
幕末に長州ファイブたちもここで勉学に励んでいたんですねぇ。ロンドンは古い建物がそのまま残っているので、東京とちがって当時の風景を容易に思い浮かべることができます。歴史&古建築物マニアの私にはたまりません^^
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桃の節句

2008-03-03 00:38:54 | 倫敦うるるん滞在記





そういえば、今日は日本は桃の節句なんですねぇ。
いいなぁ、ひな祭り。
雛あられと菱餅と白酒(笑)
こちらは当然ながらただのふつうの一日です。

せっかくなのでオックスフォードの桃の花の写真でも。
陰鬱な空がイギリスらしいでしょ(笑)?

桃の花は色が可愛らしくて大好きです~。
梅、桃、桜。
日本の春が恋しい。。
こっちの桜、もう一ヶ月くらい咲き続けているんですよ!
儚さもカケラもありゃしません。
こんなのは桜じゃないっっっ(><)
桜は可憐に咲いて儚く散ってなんぼ、でしょう。

ところで今ふと、中学生のとき、うちの中学のヤンキーな男の子達が丈を短くしたブレザーの背中に、『咲いて散るのが花ならば 咲かせてみせようこの命』って刺繍で縫いこんでいたのを思い出しました(笑)
ちゃんと刺繍をしてくれる店があって、パンフレットまであるのが笑えた(言葉とか色とか選べるの)。
ていうかこの話、毎年桜を見るたびに思い出してる気がするな私。。。

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リヴィエラの舞台を訪ねてみる 8 :ドーチェスターホテル&ハイドパーク

2008-03-03 00:23:16 | 倫敦うるるん滞在記

 同じころ、ハイドパークは雨の闇だった。シンクレアは、鍵の壊れた門から公園の散策路に入っていった。後方から追ってくるダーラム侯は、傘もささず、ジャケットもなく、カーディガン一枚の姿で裸足だった。片手のスコッチのボトルを掲げて、ダーラム侯は何か叫んでいた。
 
先をゆくシンクレアは振り向かなかった。芝生に落ちた雨の粒が一面の銀色に輝いていた。空は暗く、広がる樹影はさらに深い漆黒だが、そうして歩いていく地面はいっせいに発光しているのだった。闇は光るものだと初めて知ったウィーンの幼年時代の記憶が、一足ごとに輝く芝生の上で翻るように感じられた。後ろから追ってくる者さえいなければ、足を止めて眺めていたいところだった。
 シンクレアは、たった今、パークレーンに面した豪華なドーチェスター(ホテル)のスイートルームから飛び出してきたのだった。・・・ティーハウスの近くまで来ていた。池はまだ向こうだ。

(高村薫 『リヴィエラを撃て』)



ドーチェスターホテル


ドーチェスターホテル前の道(Park Lane)とハイドパークの柵。


ハイドパーク。
ドーチェスターホテル側の入口付近。














散策路の突き当たりにある池。
左の建物はカフェですが、これは新設なので小説に出てくるものとはちがいます。


小説と一番イメージが違ったのが、ここ。
だって、ドーチェスターホテル前の道、あまりに道幅が広すぎて(片側3車線ですよ!)、いくら夜中でもとても酔っ払いがふらふらと渡れるような道じゃないです~。危険すぎます。
パークの門も、ホテル真ん前にはないから、すこし歩かなきゃですし。
公園内も、ダーラム侯が倒れこんじゃうような”茂み”は全然ない(笑)
たまにあっても、鉄柵の中。。
でも一面の芝生は大変美しいので、これは小説のまんまです。
木々も日本の公園のものとは全然ちがい、やはりどの景色ひとつとっても”イギリス”です。
リスや鳥が沢山いて、同じ都会の公園でも日比谷公園や上野公園などとは和やかさ&美しさが比になりません(日比谷公園みたいな雰囲気もあれはあれで好きだけど)。
あと、リヴィエラ気分を味わいたい方は小説と同じ冬に行かれることをオススメします。ここに限らずロンドンの公園は暖かくなると日光浴をする人達で溢れかえるので、イメージから遠のきます(笑)

それにしても高村女史の文章には、ほんとうにうっとりするなぁ。
思うに、高村さんの小説の魅力の一つは、イーストエンドのような下町っぽさとダーラム侯のようなセレブっぽさが交差しているところですよね。テロリストなのにクラシックを聴いちゃったり。警視庁の刑事がヴァイオリンを弾いちゃったり、ダンテを読んだり、多摩川沿いでワインを飲んじゃったり。スパイがオペラを観たりジョイスの話をしちゃったり(これはまぁ普通かな)。非現実的・・・とわかっちゃいても、読んでいて楽しい。
ですが、最近読み返していたらその非現実的っぽさが今の私には少々ひっかかるようになってしまったのも正直なところ。もっともっと普通の日常の感覚?みたいなのも同時に掘り下げられていると嬉しいのですけれど。

★ドーチェスターホテル(The Dorchester)&ハイドパーク:地下鉄Piccadilly lineのHyde Park Corner駅下車すぐ。

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リヴィエラの舞台を訪ねてみる 7 :王立音楽院&リージェンツ・パーク

2008-03-02 02:23:01 | 倫敦うるるん滞在記

 午後一時半、リージェンツ・パークの南側から路地一つ隔てたメリルボーン・ロードの街路樹わきに埃だらけのBMWを止めて、M・Gは飄々と飛ぶように王立音楽院の正面玄関をくぐっていった。・・・冬のリージェンツ・パークは、一面の灰色の中に植え込みのくすんだ緑が散っていた。王立音楽院から楽器の音が漏れてくる南側の端は、わずかに水仙の緑が濃く、咲き始めた花が黄色いシミのように見えた。その水仙の散歩道を横切って、セーター一枚にジャケットを着ただけの質素なシンクレアの姿が動いていた。待ち合わせの場所の池まで来るのに、慎重に見えない目を気づかい、方向を逸らせて遠回りしてくるつもりだろう。・・・池の端に立って、近づいてくる足音を確かめながら、M・Gは振り向いた。シンクレアが近づいてくる。・・・
 M・Gとシンクレアは池を半周した。・・・二人が別れると、どこからか戻ってきた水鳥が羽音をたて、テニスコートを走るボールの音などが響いた。

(高村薫 『リヴィエラを撃て』)



メリルボーン・ロード。
左奥の赤レンガの建物が王立音楽院。


王立音楽院の正面。


リージェンツ・パーク。
池へ向かう場合の、「遠回りの道」


王立音楽院を望む。


「黄色いシミ」(笑)といわれた、水仙の花。
実際はとっても可憐でかわいらしいですよ~。


水仙とスノードロップ。
ロンドンの公園には基本的に柵がないので、こうやって花の間を歩くことができます。
気をつけないと踏みそうになります。


池。リージェンツパークには池がもう一つありますが、小説の文章からすると、このQueen's  Mary's gardensにある池の方でしょう。


池と水鳥。


池の隣のテニスコート。もう桜が満開です(2月上旬)。

ここも小説のまんまの位置配置ですが、私の訪れた日が良かったのか悪かったのか、小説とは異なり、とってもなごやな雰囲気の公園でした。
この日以来すっかりお気に入りの公園となり、もう3回も行っちゃいました。
他の公園に比べて花が多いんですよ~。
これからの季節が楽しみ♪

★リージェンツ・パーク&王立音楽院:地下鉄Baker Street駅又はRegent's Park駅下車すぐ。王立音楽院の左側に、パークに続く道があります。
音楽院のショップ(正面向かって左手のmuseumの中)についてはこちらもご覧ください。

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リヴィエラの舞台を訪ねてみる 5 :テームズ川@フェンチャーチ~タワーブリッジ~ワッピング

2008-03-01 01:09:48 | 倫敦うるるん滞在記

1981年2月――― <<シンクレア>>
 雨が上がった。正午の遊覧船が通過して何分か経つ。テームズはワッピングで北へ折れ、ライムハウスで再び南へ大きく蛇行している。その辺りの岸に立つと、タワーブリッジがわずかに見えた。・・・ウォーターサイド・ガーデンと道路一つ隔てた空き地は、テームズ沿いに並んだ倉庫やアパート群が唯一途切れているところで、芝生と仮設のベンチがあり、コンクリートの手すりごしに、テームズが眺められるのだった。すぐ左手には、水上警察の桟橋が一本延びていて、そこにはランチがつないであることもある。対岸は、バーモンンゼーの倉庫郡。空き地の両側が建物で挟まれているので、川面から吹き上がってくる風はいくらか緩く感じられ、時間潰しの場所としては、ジャックの気に入っている場所の一つだった。ジャックはベンチに腰を下ろし、テームズを眺めた。・・・

1989年2月――― <<ノーマン>>
・・・曲がりくねった裏小路を走る間に、ジャックは<<伝書鳩>>を見失い、ひとりでフェンチャーチの裏通りまで逃げた。ペチコートレーンの露店街から大して離れていなかったが、騒ぎはすでに遠かった。人けのないさびれた駅近くのアーチの下で、一人の浮浪者とすれ違ったジャックは、身を翻すやいなや男の背にハンドガンのグリップの一撃を加えた。倒れた男のジャンパーをはぎ取って、それに自分のセーターの腕を通しながら、また少し走った。十五分後、ジャックはテームズ沿いに出て、ワッピングのウォーターサイド・ガーデンまで来ていた。昔、お気に入りの居場所の一つだった。八年前と同じく道路は今だに工事中で、新しく建ったアパート群には人影もなかった。

(高村薫 『リヴィエラを撃て』)



タワーブリッジ


タワーブリッジからワッピング方面を望む。
写真左に遊覧船が見えます。








フェンチャーチ・ストリート駅付近

ジャックのお気に入りの場所は興味あるけど、ワッピングまで行くのはちょっと怖いし面倒という方(=私)。
ワッピングより少しだけ西のタワーブリッジがオススメです。
観光地なので川沿いに散策路やベンチが整備されていますし、ワッピングからと殆ど同じテムズの眺めが楽しめます。テートモダンやビッグベンあたりから眺めるのとは一味違う、のんびりとしたテムズ。気持ちいいですよ~。

タワーブリッジ~フェンチャーチ~聖ボトルフス教会~ペチコートレーン~リヴァプールストリート駅までは徒歩でまわれます。
ステップニー・グリーンもすぐ近くですが、徒歩だとすこしきついので、地下鉄を利用したほうがいいです。シンクレアと同じ道を歩きたいという方は、歩いてもいいですが(笑)。
交通の便がいいので、半日もあればイーストエンドのリヴィエラ関連の場所は全部まわれちゃいます。観光地ではないロンドンが見られて面白いですよ^^
ただ、イーストエンドにかぎらず、観光地以外の場所を訪れる場合は治安には充分にご注意くださいね。

★タワーブリッジ Tower bridge :地下鉄District lineのTower Hill駅下車すぐ。

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