理想のアルブレヒトが目の前に・・・
わ~。ワディムくん、バレエフェスでラムちゃんと踊ったキラキラな海賊しか知らなかったけど、こんな演技もできるダンサーだったんですねえ。全幕観たことないのに、なぜか大根な子だと思い込んでた、ごめんなさい(^_^;) 今年26歳なんですね。ヌニェスが34歳ですから、8歳差か。
僕が一番好きな役がアルベルトとロミオなんですよ。『ジゼル』と『ロミオとジュリエット』は、音楽が素晴しいですし、色々な意味で僕の心に強く訴えかける作品なんです。特にアルベルトはENB入団直後に踊って、ダリアとの記念すべきパートナーシップの始まりになった作品ですからね。…スタミナがないと踊れない役です。若い僕にとっても2幕の最後の20分は肉体的に大変ハードです。ただスタミナやダンス技術は日々のトレーニングで養っていますし、2幕のソロについては「命つきるまで踊らねばならない」という物語の筋が、ダンサーに「この役をどう演じ、踊るべきか」全て教えてくれますから、僕自身はただ「物語に導かれ」「アルベルト役を生きることだけを心がけて」毎回舞台に立つのみです。
(ワディム・ムンタギロフ 2013年2月チャコットインタビュー)
【一幕】
マリアネラ・ヌニェスのジゼルは、健康的で大らかで明るくて、ちゃんと村娘ぽい(褒め言葉)!そうよね、心臓が弱くても雰囲気まで薄幸そうである必要はないのよね。
ワディム・ムンタギロフのアルブレヒトは、THE貴族。王子様じゃなくて、ちゃんと田舎にお忍びで紛れ込んでる貴族。この加減はワタクシ的にはパーフェクト!
一幕のワディム(長いのでファーストネームで失礼)は、育ちの良い甘々坊っちゃんがさほど深刻に考えずにジゼルとの恋を楽しんでいるように見えました。プレイボーイと言うほど意図的ではないけれど、天然のプレイボーイというか。まぁサイテー男であることに変わりはありません笑。このサイテー具合もツボ。
でもジゼルのことはちゃんと好き
二人のラブラブイチャイチャ恋って楽し~ねダンス、ニコニコしながら見てしまった。
二人ともさすがプリンシパルというか、存在感も技術も申し分なく、明るく華やかに魅せてくれました。一見合わなそうにも見える二人なのに、意外や、合っているのだなあ。
このアルブレヒトは恋愛と結婚は別という環境で当たり前に育ってきてしまったから、自分の行いがどれほどジゼルを傷つけうるかを今日まで深く意識したことがなく、彼が実は貴族で許婚がいることがバレてジゼルが狂ってしまっても(ジゼルも貴族とは結婚できないことはわかってるからね)、目の前の急展開にひたすら戸惑っているだけという感じ。
(自分に向けられたジゼルの視線に)・・・・・ ※何も言うことができず後ずさる
(剣をふりまわすジゼルに)危ないよ・・・オロオロ
(ジゼルまさかの絶命の事態に状況が飲み込めず)!!! ※吃驚呆然
(そしてキッとヒラリオン(ベネット・ガートサイド)に向き直って責任転嫁)お前があんなことしたせいで・・・っ
(しかし周りの視線は冷たく、ジゼルに駆け寄るもママに拒絶され、常識人ウィルフリード(ヨハネス・ステパネク)に「アルブレヒト様、ここは一旦引きましょう」と退場を促され)えっ、でもジゼルがっ・・・ジゼルー・・・!
てな感じが精いっぱいなアルブレヒトに見えました笑。
もっともジゼルの気狂い→死の場面は、不安定なオケが気になってしまい(初日だから覚悟はしていたけど、もうヤダこのオケ;;)、残念ながら私はいまひとつ入り込むことができず・・・
パ・ド・シスは次期プリンシパルを二人含んだ豪華版。ヘイワードとナグディの踊りが好みでした。
崔 由姫&アレクサンダー・キャンベル
フランチェスカ・ヘイワード&マルセリーノ・サンベ
ヤスミン・ナグディ&アクリ瑠嘉
その他脇も先日のロミジュリとだいぶ被っていて、ギャリー・エイヴィスのバチルドパパ(柄悪いのに、気の強い娘には甘々笑)が細かな演技で、エリザベス・マクゴリアンのジゼルママが迫力満点のマイムで楽しませてくださいました。
【二幕】
今夜の白眉はこの二幕
ジゼルの死から時間がたち、ようやく犯してしまった罪の重さを自覚した様子のアルブレヒト。黒のマントを肩からかけ、白百合の束を手にジゼルの墓を訪れる姿が無駄に超絶美しい笑。
「ジゼル、すまなかった・・・。でも僕は君のことを本当に愛していたんだ・・・」 (バレエの男ってどうしてこういう奴ばかり・・・)
ジゼルが自分の存在を知らせようと落とす白い花に埋もれる姿も美しいワディムくん。彼は普段の姿はそれほどではないように見えるのに(失礼)、舞台に立つとすごく美しくなりますね。無駄な動きがないから佇まいが美しく見えるのだろうな。うっとりしちゃいました。
体を張ってアルブレヒトを守ろうとするジゼル。二幕のヌニェスは、人間らしさと精霊らしさのバランスが本当に絶妙で。いかにも精霊というジゼルも素敵だけど、今夜はウィリになっても消えない彼女の溢れる愛情に涙でした・・・。こんなに温かいのにもう死んじゃってるんだよね・・・と思うともうね・・・泣。踊りもしなやかで軽やかで軸も安定していて素晴らしい~。
そして、ワディムくん。
目に見えない力で踊って踊って踊らされ続けて、次第に汗ばんでくる肌と上がる息が・・・ちょ、美しすぎてどうしたらいいの・・・ (@_@) !もうアルブレヒトすぎて、どこまでが演技でどこからが地なんだかわからないんですけど・・・!!??
彼はサポートも上手なんですね。ジゼルのふわふわも、空気のようにふわふわ~。
今回の来日公演、いい男達の美しいソロを堪能できて本当に幸せ
この二幕のアルブレヒトは、ジゼルと踊りながら彼女の深い愛情を魂で感じ、それに触発されて彼女への愛をはっきりと自覚し、そして今、よりその愛を深めていっているように見えました(遅すぎるってのよ~;;)。
そして4時を告げる鐘の音――。
この瞬間のヌ二ェスの表情がもう・・・!
彼は助かったんだっていう、心からの安堵の表情。そこにあるのはアルブレヒトへの無償の愛。それから、別離の哀しみ。温かいのに、透明で。清らかで、神々しくさえあって。それらが一瞬の表情に全てあらわれていて、でも大袈裟じゃなくて。号泣・・・。
地下へと帰っていくウィリ達。そしてジゼルもまた――。
微かな笑みを浮かべて消えていくジゼル。
今夜の舞台にこんなに感動することができたのは、ヌニェスの存在がとても大きいです。
ジゼルの消えた墓に蹲るアルブレヒト。
悲しみに暮れながら立ち上がり、ふと足下を見ると、そこには一輪の白い花が。それはジゼルが彼に残していったもの。彼女の愛。
そっとその花を胸に抱き、悲しみのなかに微かな明るさを浮かべるアルブレヒトの姿で、幕。
ここのアルブレヒトの表情はもう少し喪失感が濃い方が本来は好みなのですが、この白く清らかな花がヌニェスのジゼルの印象そのままで。その愛をアルブレヒトは今しっかり受け取ったんだなということが伝わってきて(だから遅すぎるのよー)、今夜のような『ジゼル』ならこういうラストもいいなぁと感じられたのでした。
二幕はオケも頑張った!「なんとか持ちこたえた」と言った方が正しいけど、感動できたから許す!ケッセルズさんもOKそうな顔してた、気がする!まぁそもそもの期待度がマイナス100だったせいもありますが
ウィリ達は整然と不気味にサワサワサワ…という感じではなく、ザザザザ~!という感じ。これはこれで怖かったけど、ジゼルのコールドは静かに整然系の方が冷たい凄味があって私は好みです~。上から見てるとフォーメーションの崩れも結構気になってしまったのだけど、そういうのはあまり重視しないバレエ団なのかな?(初日のせいもあるかも)。そんなバラつき気味な彼女達の女王であるミルタ(イツィアール・メンディザバル)もやっぱり足音や動作がバタバタ系で・・・。精霊の女王ではなく人間ぽく見えてしまい、ゾワーとする怖さはいまひとつでございました
あ~~~~本当に楽しかった~~~。バレエって素敵ね。
そして今夜こうして舞台を見ていられることそれ自体にも感謝しないと、と思いました。どんなに観たくても色々な事情でここに来られない人は沢山いるはずだもの。
ロイヤルの皆さんと、目に見えない大きな存在に感謝です。
NBSツイより。今夜のカテコの二人。
ウィリになったジゼルのヌニェス。今夜の写真ではありませんが、素敵・・・。
踊りつかれて倒れ込むアルブレヒト。何気にこのワディムの姿がかなり好きでした笑
NBSツイより。準備中のジゼルのお家 物語の世界の楽しさがロイヤルらしい。この感じ、やっぱりKバレエと似てますね。
Marianela Nuñez and Vadim Muntagirov on why they love Giselle (The Royal Ballet)
ピーター・ライトさんってこういう方なんですねー。
Exploring mime in Giselle with Marianela Nuñez and Vadim Muntagirov (The Royal Ballet)
Presenter of the live cinema broadcast of The Royal Ballet's Giselle, Ore Oduba, joins Principal dancers Marianela Nuñez and Vadim Muntagirov in rehearsal with choreographer Peter Wright.
※追記
NBSツイより。最終日(6/26)のウィリ達のフィナーレ写真。こんな笑顔を見ちゃうと、あのバタバタ具合も愛おしく思えてきてしまう笑。
ところで今回私が観た主役ダンサーの出身地は、ヘイワードがケニア(英国育ちだけど)、マックレーがオーストラリア、ヌニェスがアルゼンチン、ムンタギロフがロシア。一人も英国人がいない笑。前回観たラムちゃんはアメリカだし。ロイヤルだなあ。
そういえば、ギャリー・エイヴィスは英国人なんですね。