風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

鈴木範久 『中勘助せんせ』(岩波書店)

2015-08-30 18:08:24 | 

〈中勘助〉。どんな作家ですかと、きかれると、わたしは〈作品〉は無論のことですが、〈人間〉がすばらしいですとこたえることにしていました。言ふだけならどんなことでも言へる活字の世界にひきずられることなく、日々の生活の中でききとられた爽やかな心裏の声を、しぼったうへにもしぼっての氷のやうな文章、だからどんな断章、小節も氷のもっている虹の光彩を秘めもっています。その光彩も晩秋の雑木林の木漏れ日の揺れではなくて、初冬の竹林に見られる葉漏れ日のたゆたひなのです。
〈一年を仕事にいそしまふよりは、一日を浄くしやう〉と、作家、詩人といふよりも、御自分には修道僧のやうにきびしかった八十年に近い生涯をすごされた中せんせ。

(塩田章「中勘助先生のこと」六六・二・二六(土)梅の午后記〉

中勘助がどういう人間であったかは私には知りようはないけれど、その文章に対する私の印象は「暖かで優しい」感じではなく、といって「冷たい」というのともちょっと違う。敢えて言うなら「冷たく優しい」、そんな感じ。
これってどう表現すればいいのだろ~とモヤモヤしていたところ、ああ、この塩田の表現がまさにピッタリ。
氷のような文章、それのもつ虹の光彩、初冬の竹林の葉漏れ日。

キリスト教徒の塩田章と勘助との付き合いは、1939(昭和14)年~1965(昭和40)年までの26年間。
その間の談話を塩田が記した手帳は、先日の中勘助展で展示されていました。

どんな派であらうと、つまりキリスト教でもホウヨウできる仏教が、ホントなんじゃないかとおもふ。…私は空といふことをおもつているんですが…辞書をひきましたら施物も亦空とありましたよ。沢山施物をすればめぐみも沢山あると考へられた仏教に、それはまた大変な考へ方ですね。しかしこれはホントですね。といつても施しをしなくともよいのではないですね。それを知つての上での施しが大事なんですね。キリスト教でも伝道の書なんかで空の空といふことをいひますが、両方にこのやうな思想のあるのがおもしろいです。
(勘助。1954(昭和29)年6月10日)

仏教もキリスト教も包容するなにか。それが言うなれば勘助にとっての宗教であり、言い換えれば真の仏教もキリスト教もそういうものであるべきだ、というのが勘助の意見でした。仏教の呪術的要素を嫌ったのも同様の理由によるのでしょう。

「信者に神仏が大切なやうに不信者には不信が、懐疑者には懐疑が大切なのである」
「信念は危うい。演繹は危うい。主義はうつる。信も不信もいけない。肯定も否定もいけない」
(全集より)

キリストにしても釈迦にしても一隅を照らしたわけで、その光が本物だつたから、一隅だけだつたのに現在まで光つているわけでせう。釈迦など八十迄生きたといふから、どんなにか広いところを沢山あるいたわけだらうが、しれたものですからね。一隅を照らせばいいんですね。
(勘助。1956(昭和31)年2月8日)

そしてこちらは、やはり先日手帳が展示されていた、最後の談話より。この対談の翌日早朝、勘助は激しい頭痛に襲われ入院。意識の戻らぬまま、5月3日、世を去りました。

四月十四、五日と岩波からの招待で、伊豆山(熱海駅から車で二、三分)の岩波の別荘に家内と行つてきました。これはよかつたです。安倍もかりてますが、岩波らしい作りでした。崖の下まで買つてあるらしいので、隣近所に煩はされず各へやから海がみおろせて、たゞ昔は櫓でこぐ舟で、かけ声もきこえたのに、海を通る舟はポンポンセンで、是がつまらないでしたが。庭に中がうつろになつた櫟がありました。建築士が伐りませうといつたら、岩波は伐らせなかつたといふ。そして惜櫟荘とつけたといふ。岩波とはさういふ男ですね。そこを力んでみせるところが岩波らしいです。
(中略)皆さんがお元気だお元気だと言つて下さるが、空元気でだめです。(中略)長く生きやうとおもふとつい欲がでますけどね。ムリをせずに、今のことを今してます。それが好きな読書と習字といふことでせうね。
(勘助。1965(昭和40)年4月29日)

ところで勘助とはあまり関係がありませんが、1937年10月、塩田が召集令状を受け取ったときのことを回想している文章も印象的でした。
奥さんは覚悟していたとはいえショックで、母乳が止まってしまったそうです。

召集の電報をうけてからの時間は、惜しむあとからあっけなく燃えて行った。それは「マッチ売りの少女」が最後に残った一本のマッチのもえきるまでのわずかな時間を惜しむにも似た気持ちだった。
(塩田。1963年に回想)

最後の一本のマッチがもえきるまでの時間という表現はすごくリアルだな、と。
惜しんでいる間もなく、マッチはあっけなく燃えきってしまう。

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ルピシア グランマルシェ 2015

2015-08-15 22:31:33 | 日々いろいろ



こんばんは。
街を歩いている外国人集団を見かけると「バレエフェスのダンサー達だったりしないかしら」と勝手に胸を高鳴らせているアブナい女、cookieでございます。なかなかあの夜の夢から覚められなくて困る。。
明日のガラ、行きたかったなぁ。彼らがまだ東京にいるのがわかっているのに行けないなんて~~~~
しかし行けないものは行けない(別の予定が入っているのである)。

なので気を取りなおして~。

今日は、ルピシアの紅茶の祭典グランマルシェに行ってきました
年に2回、大体いつも行っています。予約してくれるのは友人ですけど^^;
入場無料で、イートインスペースで軽食(こちらは有料)なども食べられて、なかなか楽しいのです♪

今回の会場は、池袋のサンシャインシティ。
お盆にもかかわらず、街も会場も人でいっぱいでした

写真は、今回の戦利品(別に戦っていないが)
・フランスのTipitakのクスクス。ノーマル味とトマト&ハーブ味。
・Doleのスリランカの3種のオーガニックベジタリアンカレー レトルト
・アリサ。写真右上の小瓶。ハリッサとも呼ばれる中東の調味料。
・グレープフルーツティー(アイスティーにすると美味なのです)
・緑茶&ジャスミン茶のブレンドティー 茉莉春毫(大好き)
・ハイランドストロベリーティー(原材料のストロベリーリーフ、ヒースフラワー、ローズレッドに惹かれ)

紅茶と関係のないものの方が多いのは私の趣味です。変な食べ物が好きなのです。ゲテモノは無理ですけど。
しかし帰宅してからググッたネットのクチコミ情報によると、このDoleのスリランカカレー、変なんてレベルではないらしい。相当変らしい。
まぁ3種の内容からしてふつうではないです。「ジャックフルーツ」「ダル」「バナナフラワー サンバル」
・・・まったく味の想像がつきません・・・
これまたネット情報によると、白いご飯ではなく炒め飯と食べると結構美味しくいただける、らしい。。

帰りに宮城のアンテナショップで「牡蠣の塩辛」を買いました。牡蠣味噌と迷ったのですけど、塩辛の方が珍しいかなーと。
こちらは先程白いご飯でいただきましたが、ちゃんと美味しかったです笑


カレーといえば。
先日、里帰りしていた職場のマレーシアンからフィッシュカレーのレトルトをお土産にもらったのです。


表。マレーシアはムスリムが多いので、ちゃんとHALALマークがあります(右下)


裏。英語、中国語と合わせて不思議な言語が書いてあるのだが、これはマレー語だろうか?

彼女は日本人の味覚の好みをよ~く理解している子なので(というより彼女の味覚が日本人的)、味についてはまったく心配しておりませぬ。
具を足すとしたら、やっぱり海老とかですかね。・・・と今instructionsを読んだら「Add 140g fish and 50g lady finger」と書いてありました。
lady fingerって、、、オクラなんですね!オクラの英語名ってokraだけじゃないんですね!ていうかオクラって日本語じゃないんですね!てっきりokraは日本食ブームで広がった英単語かと思っていた。TofuとかTeriyakiみたいな。

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第14回世界バレエフェスティバル Bプロ @東京文化会館(8月11日)

2015-08-12 19:28:05 | バレエ






世の中にこんな素敵イベントが存在していたとは…!バレエ初心者の私はびっくりですよ。
次から次へとメインばかり出てくるフルコースなのに、いくら食べてももたれない!なぜなら全ての食材が極上だから
まぁそんななので4時間半殆ど気を抜くことができず、観終わったときには汗びっしょり。でも心地よい疲労感でございました。
いやぁ本当に楽しかったなぁ。。。ダンサー達からエネルギーと感動をいっぱいもらって、昨夜はなかなか眠れませんでした。
そして、初めて観る作品や初めて観るダンサーがいっぱいで、もしかしたら私は今が一番バレエを観ていて新鮮にワクワクできるときなのかもしれないなーとも。そういう貴重な時期を今はめいっぱい楽しみたいと思います。

以下、感想をざっと。プログラムは買っていないので、見当違いなことを書いていたらご容赦を・・・。

※5階Rサイド:8,000円也


■第 1 部■ 18:00~18:55

「ディアナとアクテオン」
ヴィエングセイ・ヴァルデス(キューバ国立)&オシール・グネーオ(ノルウェー国立)
グネーオって軽やかでキレのある踊りをしますね~。

「シナトラ組曲」より"ワン・フォー・マイ・ベイビー"
イーゴリ・ゼレンスキー (モスクワ音楽劇場、ノヴォシビルスク)
えっと・・・これは、ぼーと見てるうちに終わってしまった。。。すみません

「ペール・ギュント」
アンナ・ラウデール&エドウィン・レヴァツォフ(ハンブルク)
予習してなかったけれど、楽しめました~。不吉なような、でも救済もあるような、色々想像しながら観られた。ノイマイヤーなのか。リアル系な振付が確かにそんな感じですね。

「ライモンダ」より 幻想のアダージオ
ウリヤーナ・ロパートキナ&ダニーラ・コルスンツェフ(マリインスキー)
初ロパ様 品のある美しい踊りでした。ただライモンダの全幕を観たことがないので、どういう場面なのかがわからないのが残念であった。

「椿姫」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト(元シュツットガルト)&アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク)
ラドメーカーの降板が数時間前に発表されて、急遽代役となったリアブコ。
大丈夫なのだろうかと心配していたら、、、
もうもう素晴らしかったです~~~~~~
最初に登場したときはちょっとアルマンとは違うんじゃ?と一瞬思ったのだけれど(貫録がありすぎて)、あっという間に二人の感情の波に飲み込まれてしまった。いいわぁ~~~~~
急遽カップルゆえの良い意味での緊張感が、この第一幕のPDDにぴったりだった。そんな二人の距離が目の前で徐々に狭まって、加速して、そして美しいピアノの旋律とともに一気に高まっていく様子は、見ていて本当にドキドキしちゃいました。こんなに愛が出せるなんて二人ともすごい。リアブコ、カッコイイなー。マルグリットが好きだ!っていう真っ直ぐな気持ちが爽やかなくらい出てて(内側にこもる系じゃないのが新鮮)。そしてなによりアイシュヴァルトのマルグリットが高級娼婦らしさと純粋さと儚さと哀しさが滲み出ていて最高でした。
もしや私は椿姫という作品は誰が踊っても感動してしまうのだろうか、とこの時は思ったのですけれど、、、(そうではないことを第三部で知りましたです)。

<休憩15分>


■第 2 部■ 19:10~20:10

「眠れる森の美女」
リュドミラ・コノヴァロワ(ウィーン国立)&マチアス・エイマン(パリオペラ座)
15分の休憩後も椿姫の感動が残ってしまっていて最初の方は心ここにあらずで観てしまったのだけれど、エイマンが踊り始めると、私の目はぐわっとエイマン仕様に。この人の踊り、やっぱり大好き なんて美しくエレガントに踊るんでしょう。。。ソロの間中「きれー…」と心の中で呟きっぱなしでした。その踊りを見ているだけで幸せでいっぱいにしてくれるダンサー。

「ノー・マンズ・ランド」
アリーナ・コジョカル(ENB)&ヨハン・コボー(ルーマニア国立)
私生活でもパートナーの二人の踊りというのはこんな風なのだなあ。二人が互いに心から信頼し合っていることが踊りから伝わってきて、そんな空気がこの作品にぴったりでした。
この作品、男性の方はもう戦場に行ってしまっているのですね(よね…?)。生きているのか死んでしまっているのか、彼の心だけが愛する女性の元に戻ってくる。おそらく最後のお別れに来たのでしょう。女性のいる場所の暗さと、舞台の奥、男性がやってきて再び去る所から細く伸びる光が印象的でした。

「海賊」
サラ・ラム(英国ロイヤル)&ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル)
ここはちょっと休憩気分で気軽に観ました。
二人とも美しいのぅ~~~ 若々しくてキラッキラ。眼福でした^^

「ヴァーティゴ」
ディアナ・ヴィシニョーワ(ABT、マリインスキー)&マルセロ・ゴメス(ABT)
抽象画を肉体の動きで表現したような印象の作品でした(感情を排除してあるがままを見ろ、そして感じろ、みたいな)。抽象画は苦手だけど、これは楽しかった。
このメロディーがあるようなないような音楽はショスタコーヴィチなんですね。
ゴメス、ジョナサンの死から一夜明けて、昨夜はちゃんと眠れただろうか…と少し心配したのだけれど、、、
すごかった。これは事前にyoutubeで見ていたのだけれど、実際に見るとさらに衝撃だった。
この二人の相性、完璧ですね。男女というより同士(私生活でも親友ですよね)。信頼度100%の同士。でも色気もちゃんとあって、女性が男性をそっと抱いてあげるようなところ、ヴィシ姐さんとゴメスにぴったりだった(足蹴にするようなところもぴったりだった)。
顔の表情も殆ど変えないし、体も同じような動きを繰り返しているのに、二人の肉体がすごく雄弁に語るのが不思議。別々の存在にも一つの存在のようにも見え。一瞬も気をぬいていない濃密さも迫力でした。
それにしても、この二人の体は一体どうなっているのかしら。特にヴィシニョーワ。前回マリ来日時のバヤデールでもその重心のバランスとしなやかさに鳥肌がたったものだったけど、人間の体ってこんな風になれるものなんですねぇ。

「ギリシャの踊り」
オスカー・シャコン(BBL)
今回Bプロを選んだ理由の一人がこのオスカー♪
これまたヴァーティゴの感動が残っていて前半ちょっぴりぼんやり気味で見てしまったのだけれど(感動に頭と体が追い付かないっ)、後半、軽快な音楽に変わるあたりから「やっぱりBBLが大好き」と!
理屈が全部吹き飛んでしまう、踊りそのものの原始的な意味。そもそも人はなぜ踊るのか。世界の明るさと暗さ。世界に対する素直さ。海と太陽と風。それを感じさせてくれるオスカー、いつもありがとう!!!

<休憩15分>


■第 3 部■ 20:25~21:15

「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
ヤーナ・サレンコ(ベルリン国立)&スティーヴン・マックレー(英国ロイヤル)
マックレーのロミオから初恋の昂揚感が伝わってきた~~~。
って、、、なんだ、マックレーってこういう踊りができるんじゃないの。あの一昨年のジークフリートは一体なんだったのか。。。

「伝説」
アリシア・アマトリアン&フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト)
予習をしていかなかったので早々に作品の解釈を諦め、気軽に見ました。二人とも上手だったので、踊りだけで十分に楽しめた!

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
タマラ・ロホ(ENB)&アルバン・レンドルフ(デンマークロイヤル)
これは・・・・。マルグリットよりアルマンが死んでしまいそうな、不思議な黒のPDDであった・・・。
体型という意味だけだったら死にそうに見えなかったのは昨年のオレリーも同じで、アルマンのぜーはーもエルヴェも同じで、オペラグラスを使わずに観たのもあのときと同じなのだけれど、、、まるで別作品を見ているようであった・・・。まったく同じ音楽で同じ振付なのに・・・。
というわけで、ある意味貴重な体験をさせてもらったこの椿姫でした。

「レ・ブルジョワ」
ダニール・シムキン(ABT)
このあたりでもう次のマノンに向けて気がそわそわになっていたので(どれだけ好きか)、シムキン君の軽やかな踊りに助けられました笑。ちょっと落ち着け、と笑。ラストの連続跳躍のキレには、おお!となった。なんだあれは。すごいのみた。

「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
オレリー・デュポン&エルヴェ・モロー(パリオペラ座)
出た・・・舞台の空気を一瞬でパリに変えてしまう奇跡のカップル
椿姫のときから「オレリーのアデューで一緒にマノンを踊れるのが楽しみなんだ」って言っていたのに、エルヴェってば怪我で降板しちゃって…。今回私達も彼らのマノンが観られて嬉しかったけれど、本人達も嬉しいって来日前のインタビューで言ってましたねぇ。そういうことを考えながら見ているともう涙を禁じ得ないのだが、そんなことは全く関係なく見てもやっぱり大きく心動かされたよ。
美しいという意味ではそれはもう究極の美しさなんだけど、この二人の場合、それだけじゃないのですよね。互いに代わりのいない二人だけの特別な空気があるというか。
エルヴェ、椿姫のときに「ガラで踊るのと全幕で踊るのとは気持ちの入り方が全く違う」(黒のPDDについて@ダンマガ)って言ってたよなぁ。それが今回こんな素晴らしい舞台を見せてくれちゃって、これが全幕だったらどんなにか……。とはどうしても思ってしまうけれど、今回来日して愛溢れるマノンを踊ってくれて本当にありがとう、オレリー&エルヴェ。幸せそうな二人の姿に、一生ものの宝物、またもらっちゃいました。

<休憩10分>


■第 4 部■ 21:25~22:15

「シンデレラ」
ヤーナ・サレンコ(ベルリン国立)&ウラジーミル・マラーホフ
すみません、10分ではマノンの感動から立ち直るのはとても無理でした、、、、、。ぼー…としているうちに終わってしまった、、、。あ、マラーホフの王子の衣装が衝撃的でした(体操服のようなラインの入った白タイツ)。ってひどい感想ですね…、申し訳ない…。

「瀕死の白鳥」
ウリヤーナ・ロパートキナ(マリインスキー)
ロパ様は、人間ではなく瀕死の白鳥そのものでした。腕の動きといい脚の動きといい。死に抗うのではなく、自然のままに最期のときを迎えている白鳥。それでも体は最後の瞬間まで飛ぼうとしていて。それは人も鳥もきっと同じで。そこには言葉や解釈は必要なく、ただただその姿が美しかった。
グラス越しに観るのがもったいなくてオペラグラスをおろしました。最後の死の瞬間なんて、白鳥が生を終える姿以外の何ものでもなかった。どうしてあんな風に踊れるんだろう……。

「シルヴィア」
シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク)
これもノイマイヤーなのですね。
予習不足だったので作品の内容はわからなかったのですが、わからないながらも好きな雰囲気の作品でした。というよりこの二人の雰囲気がとても好きでした。この二人は実生活でも夫婦なのですね。舞台上の男女、どういう過去があるのかわかりませんが、二人の間のこれまでの長い時間と出来事が感じられて、切なくなりました…。最後のリアブコがシルヴィアの前に身を投げ出すところ、すごく胸に迫った……。
で、本当にどういうストーリーなのだろう。これから調べます^^;
※調べました。この二人はこの後やっぱり別れてしまうのか…。切ないですねぇ……。

「こうもり」よりパ・ド・ドゥ
イザベル・ゲラン(元パリオペラ座)&マニュエル・ルグリ(ウィーン国立)
これ、すごく素敵だった 洗練された大人のエスプリっていうのか、オレリー達とは違う意味で舞台の上がパリになってた  (こうもりの舞台がパリかどうかは知りませんけど)
オペラ座の怪人や椿姫みたいな作品って日本人には非常に難しい(というより正直なところ無理な)作品だと常々思っているのだけれど、こういうタイプの作品もそうだと思う。
二人ともなんて魅力的なんでしょう!この二人の洒落た人間味がとてもとても好きでした。踊りも綺麗~。

「ドン・キホーテ」
マリーヤ・アレクサンドロワ&ウラディスラフ・ラントラートフ(ボリショイ)
私は昨年の来日で見られなかった彼らのドンキ、今回見られてよかったです♪
マーシャはやっぱり体が少し重たそうだったけど、それを支えるウラドは見かけによらずサポートが安定してますね~。
とはいえウラドもあまり本調子ではなかったように見えたけれど(昨年のバヤの方がキレがあったような気がする)、二人とも引っ込みやレヴェランスがサービス精神いっぱいで、お祭り気分を盛り上げてくれて楽しかった~

~フィナーレ~
わぁ・・・・。このクラスのダンサーが舞台に勢ぞろいすると圧巻ですねぇ!凡人の私には眩しすぎるわ。。。
ゼレンスキーに「さあ君は前に出て」って促されて恥ずかしげに笑うゴメスは可憐な少女のようであった(例えがおかしいのは承知してます)。そして周りがちゃんと服を身に着けているなかで、二人だけ黒い下着な恰好でも堂々としているゴメス&ヴィシ様はさすがでございました。
オレリー&エルヴェは端っこで静かにゴージャスな空気を醸し出していて、カテコでもそこだけパリであった。
幕外での一組一組のカテコもやってくれるのか。夜も遅いのにサービスいいな~。アッツォーニ&リアブコ&アイシュヴァルトの三人仲良くのカテコが微笑ましくて素敵でした♪
そしてゴージャスで優し気な男性陣がゴージャスで女王様な女性陣をレディファーストで前に出してあげる姿にうっとり…
各演目後のカテコでも、実生活で夫婦の二人がそれぞれ相手を讃えるように礼をしたり、パートナー同士がさりげなく愛情と敬意のこもったキスをしたりする姿は、日本人の私にはまるで夢の世界のような美しさに見えました。バレエのこういうところ、いつ見ても感動します。そして皆さん、カテコなんてこれまで何百回とやっているだろうに、今夜の舞台は特別でしたよ、とでもいうような良い表情をしてくれるのよね~~~^^

みなさん、本当に本当に素晴らしいパフォーマンスをありがとう
次回のバレエフェス(3年後?)も楽しみにしています!!!


指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「ノー・マンズ・ランド」、「椿姫」)
チェロ:遠藤真理、ハープ:田中資子(「瀕死の白鳥」)   
出演:矢島まい[東京バレエ団](「こうもり」)


NBSのツイからお借りしたロビーの様子。お祭り気分いっぱい(*^_^*)


オレリーのインスタより。美の化身のような二人。。。。。。。。。。
椿姫とはまた違う、小悪魔なオーレリ

Diana Vishneva and Marcelo Gomes in Vertigo

ヴィシ様&ゴメスのヴァーティゴ。
あれ、ゴメさん長タイツだわ。今回はボクサー下着だったのに。夏だから?・・なわけないか。

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Jonathan Ollivier

2015-08-10 23:17:09 | バレエ



ジョナサン、亡くなったんですね・・・。ロンドンでバイクの事故だとか。

世の中のニュースに疎いのでゴメスが先日までSadler's Wellsで『ザ・カーマン』に出演していたことも最近知ったのですが、ジョナサンも9日の千秋楽に出演予定で、この事故を受けて公演はキャンセルになったとのこと。

ジョナサン、私と同い年だったのか。昨年秋のスワンレイクのときにSNSを覗いたら、お子さんと一緒の温かい笑顔の写真があがっていて、いいお父さんなのだなぁ~と思ったものでした。
私はジョナサンはあのときのスワンレイクしか観ていないので、思い浮かぶのはやっぱりザ・スワンの彼で、素敵な守護天使が世界から一人いなくなってしまったような、なんだか寂しい気持ちです。
まだあれから一年もたっていないのに・・・。

以下、New Adventuresの公式HPより、マシュー・ボーンからのトリビュートです。


JONATHAN OLLIVIER, 1977 - 2015
A TRIBUTE FROM MATTHEW BOURNE AND NEW ADVENTURES

Following yesterday’s tragic incident and as messages come in from around the world, Matthew Bourne, Artistic Director of New Adventures issues the following tribute on behalf of the company:

“Yesterday we lost our “Swan" and our "Car Man” - Jonathan Ollivier was one of the most charismatic and powerful dancers of his generation: An intensely masculine presence tempered with tenderness and vulnerability made him the perfect casting for a string of triumphant roles in the New Adventures repertory including "The Swan”, the enigmatic “Speight” in “Play Without Words” and his final role as Luca in “The Car Man” which he was due to dance at last night's final performance at Sadler’s Wells. A man of great warmth and charm, Jonny was a true gent, loved and respected by his colleagues and adored by audiences who were mesmerised by his memorable performances on stage as well as his friendly and genuine personality at the Stage Door. He was also an inspiration and role model to several generations of young dancers who strived to emulate his enviable technique and majestic stage presence. Yesterday's events have ripped at the heart of the New Adventures family and we join together to send our heartfelt condolences to all of Jonny’s family and friends. In our grieving for this irreplaceable artist we take some comfort in the legacy of memories that he has left behind.”
Matthew Bourne

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なつかしき地球はいづこ (宮沢賢治 歌稿B 大正三年四月)

2015-08-10 00:55:30 | 




なつかしき
地球はいづこ
いまははや
ふせど仰げどありもわからず
(159)


そらに居て
みどりのほのほかなしむと
地球のひとのしるやしらずや
(160)

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