風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『白鳥の湖』 K-BALLET COMPANY @オーチャードホール(5月25日)

2016-05-26 01:11:27 | バレエ



「音楽と偉大な先人達が作った群舞の美しさとかストーリー展開など、もう隙がないよね。とにかく感動という言葉は白鳥の湖には担保として絶対にある。」

「キュビズムの世界だね、絵でいえば。表に見えてるものと表の奥の裏にある霊的なものって何?っていう話。それって人の感情でしかないわけよ。だからバレエってやっぱり五次元の世界。見えてるものって床の横のラインと高さと奥行と、で三次元だよね。そうすると時間の経過で四次元になってくるよね。そこに最後はやっぱ愛だね、愛。それで五次元。感情表現。」

(熊川哲也 『白鳥の湖』特別番組より)

まだ体調が優れないのですが、この感想だけは上げておかねば。
Kバレエ『白鳥の湖』、初日に行ってきました。
熊川さん&荒井さんのこの演目は私が初めて感動した白鳥の湖で(2013年秋)、このペアで再演があったら絶対に行くと心に決めて待つこと3年。
もう一度観ることができて、本当に本当に本当に嬉しい・・・
私、今まで観た色んなジークフリートの中で熊哲のジークが一番好きで、熊哲の踊った色んな役の中でジークフリートの彼が一番好きなんです。だからどうしてももう一度観たかった。
踊ってくれてありがとう、熊川さん。。。

今日はもう観ている間ずーっと幸福&感謝の気持ちでいっぱいでした。
あらためて、Kバレエの白鳥の湖が私はとても好き。ディズニーランドみたいな夢があって。でも泣きたくなるような切なさもあって。
熊川さんは最初から楽しそうないい笑顔。この人って本来はバジル属性なダンサーだと思うのだけれど、この役が不思議なほど合ってるんですよね。ただ立っているときも動いているときも、指先から足先まで全ての動作が美しくはっとさせる華があって、目が吸い寄せられる。王子様そのもの。
もっとも今回のジークは3年前とは少し印象が違って、ヘタレ度(あれも大好き♪)が減って、大人で格好いいジークに見えました。一方で三幕のソロでは思いっきり弾けてくれて、相変わらずサービス精神いっぱい オディールのグランフェッテの後のクルクルも、超高速キレッキレ
今回はソロに入るときの表情が珍しく少し緊張しているようにも見えたのですけど、ソロの後は大盛り上がりの拍手喝采の中でほっとしたような満足そうな明るい笑顔でした。
本当に全力でこんなに素敵なジークを見せてくれて、こんなに幸せな気持ちにさせてくれて、ありがとうしか言えない。
私はこのジークが本当に本当に好きなので、幸せで、何度も泣きそうになってしまった。後半は「終わらないで・・・!」とどれだけ思ったことか。
熊川さんのジークは、オディールに誘惑されていく過程がしっかり伝わってくるのもいい。オディールが現れたときは吃驚して、嬉しくて、でも何かおかしい?と疑念を持ちながらもロットバルトの術中にはまっていく様子が自然と伝わってくる。
それと3階の正面席だったので、熊川さんが上を見上げているときに目が合った勘違いができて、ちょっぴり得した気分でした笑(いつもはバルコニー席なので)。

荒井さん。
3年前と変わらない素晴らしい安定感(アラベスクの長時間バランスも凄かった)と、変わらない熊川さんとのパートナーシップ。
このお二人はケミストリーというのとは少し違うのに、「白鳥の湖のオデットとジークフリート」を観たなぁという、なんともいえない愛溢れる幸福感をもらえるのが不思議。後味がとてもいいんですよね。
オディールも、荒井さんのオディールはわざとらしさがなくて、艶やかで可愛らしさもあって、大好きです。
今回も「熊哲だけに集中するつもりが気付いたら荒井さんを見ていた」現象、起きちゃいました。素晴らしかった。
それとオディールが放った花束が王子の手から零れ落ちてばさぁって床に散らばるところ、Kバレエに限らずとても好きな場面なんですけど、Kバレエの白鳥はリアルじゃないお伽噺のような花束なので(でも大人っぽいセンスの良い花束)、自分も物語の世界の中にいる感覚を覚えゾクゾクしました。Kバレエの白鳥は衣裳も演出も本当に好きだなぁ。

井澤さんのベンノ。キレッキレ 3年前よりも進化していた気が。熊川さんのオーラとは別な意味で、キラキラ眩しかった。もっともっとこの人の踊りが見たいって感じました。楽しそうな表情もgoodです

他には、パ・ド・トロワの中村春奈さんが音楽にのった踊りで、見ていて楽しかったです。チャルダッシュも情熱的でよかった。

コールドも完璧な美しさ。こちらも3年前よりも更に進化していたような。

今日はオーケストラも盛り上げてくれました。天下のマリインスキー管弦楽団よりずっと安心して音に身を預けることができた笑。なんといってもこの演目は音楽が命ですもの。ありがと~。

今日の舞台、初日のせいもあるのか舞台全体に良い意味で少し独特な気迫と緊張感があったように感じられました。まぁKバレエで気の抜けた舞台って観たことないですけど。「もしかしたら熊川さんのジークを見られるのは今回が最後かも」な客席の空気(熊哲への拍手がいつもより凄かった気がする)とも相まって、少し特別な感じのした舞台でした。
しかしKバレエは客席も温かくていいですねぇ。トイレ待ちの列でダメ出しいっぱいのバレエ談義を聞かされる苦痛がKバレエのときにはないもの。二幕の幕がおりて休憩時間になったとき、「すごかったねぇ~・・・!」って周りはみんな笑顔で。ですよね!って嬉しい気持ちになった(*^_^*)

熊川さん&Kバレエの皆さん、素敵な夢を見させてくれて本当にありがとう。
これで明日からまた頑張れます
というよりこんな素晴らしい舞台を見せてもらったのだもの。もらいっぱなしじゃバチが当たっちゃいますよね。頑張らなきゃ。
これが人生最後の舞台になったとしても満足!と観終わったときに心から思いました。そんな風に思える舞台って、なかなかありません。



Kバレエfacebookより。初日のカーテンコールの様子。3階席までスタオベでした。グレーの白鳥衣裳も素敵♪

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四月大歌舞伎 @歌舞伎座(4月24日)

2016-05-04 16:25:54 | 歌舞伎


皆さまGWを満喫されていますか?
私は体調が優れず、出掛けるのも近場ばかり 家の掃除をしたり、新しく買ったタブレットPCの設定をしたり、そんなのんびり連休です。
さてさて、今更感満載ですが、四月の歌舞伎座(幕見)の感想を自分記録用に簡単に。


【身替座禅】
仁左衛門さんっ、お久しぶりでございます~~~http://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_naki.gif
私は去年の十月以来なので半年の間におじいちゃんになってしまわれていたらどうしましょう・・・と実はちょっぴり心配していたのですけれども(それでも好きですけど!)、・・・ニザさま、若返っていらっしゃる・・・?72歳なのに私よりお元気そうだ。仁左衛門さんは人間じゃなくて妖精さんなのかも・・・。

始まる少し前に定式幕が開いて・・・、わぁ、緞帳(「中島千波作 春秋の譜」)だ~~~ 一気にぱぁ~っと華やいだ雰囲気にhttp://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0237.gif
この緞帳は右京の衣裳と同じ柄(紅葉と桜)なんですね。素敵http://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0236.gifhttp://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0237.gif 
菊五郎さん&吉右衛門さんのときもそうだったっけか?と後で調べたところ、あのときは「松尾敏男作 朝光富士」でした。

菊五郎さんの右京もだぁ~~~い好きだけど、仁左衛門さんの右京もすっごく好き
お似合いだろうな~とは思っていたけれど、想像以上に殿さまらしい(御公家さまとは微妙にちがう)右京で、それが大変好みでございました。
京のお殿さまの上品さに、ふんわりと薫る色気。こういうお役の仁左衛門さんが私は本当に好きだなあ。水色も黒も橙色も、お花柄もよくお似合いです
ニザさまって登場した途端に舞台がぱぁっと明るくなるんですよね。周囲にはいつもそよ風が吹いてるし(本気で)。・・・やっぱり人間じゃないのかも。

左團次さんの山の神は、吉右衛門さんが意外に可愛らしい系だったのに対して、ドスのきいたThe恐妻という感じ笑。
又五郎さんは今回も鉄板の太郎冠者で、児太郎米吉も美しく(二人とも雰囲気があって大変よかった)、仁左衛門さんの右京にうっとりと酔いしれながら、ほんわか楽しく華やかな、幸せな一時間でございました。


【彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち) 杉坂墓所~毛谷村】
「純朴な男がみせる一筋の正義――」(@ポスター)とのことですが。仁左衛門さんは「純朴な男」というにはイイ男過ぎます~。穢れを知らない純朴な男(@ニザさまインタビュー)があんなイイ男オーラを纏えるわけないわ!素敵すぎ(キッパリ)。

毛谷村は数年前に愛之助&壱太郎で観たことがあるだけなのだけれど、あちらが新春浅草歌舞伎らしい若々しい毛谷村なら、今回は歌舞伎座の大歌舞伎の毛谷村という印象でした。歌舞伎って本当に演じ方で作品のカラーが変わりますね~。

仁左衛門さんの六助は、想像していたよりも熱演系であった。
後半の怒りの場面がリアルなので(こんなに怒りを表現するのか!と少しビックリした)、このお話は長閑なイメージだけどやっぱり敵討ちのお話なのだなぁ、ということがよくわかる毛谷村でした。
そして斧右衛門(浅草では海老蔵、今回は彌十郎さん)というのは単なるお笑い担当キャラではなかったのだね。自分も母親を亡くしたばかりの六助は、自分が騙されたことよりも、微塵弾正(歌六さん)が斧右衛門の母親をあんな風に簡単に殺したことに怒っているのだなと感じました。斧右衛門という役の滑稽なだけではない哀れさのようなものが、今回の毛谷村でわかった気がします。新薄雪もそうだったけれど、仁左衛門さんの舞台は作品の言わんとしていることがわかりやすい。
といって怒りだけが前面に出ているわけではなく、ラストの斜め上を見上げる表情、清々しくてとても美しかった。本当に、キレイな人だなぁ・・・。紅梅と白椿もなんてお似合いなのでしょう。
それと膝で寝てしまった子供に目を細めて「子供というのは罪のない仏様だなぁ」みたいな台詞を言うところ。ニザ様の空気がなんだか透明で、あなたこそ仏さまみたいですよ!と、ぐっときてしまいましたよ。まぁ、この台詞でこんなにぐっとこさせる“若者”が果たしているか、ということは別にして^^;

舞台上でのお着換え。お園ちゃん役の孝太郎さんが両手を広げて(一階席の)お客さんから隠していても、上階の貧民席からは全て丸見えなわけですが。こういう着替えの場面って、いつ見てもドキドキしてしまう。いや着替えだからではなく、「間に合うのかなあ~」と。着替えの多い役は歳をとると大変って前にどなたかが言っていたけれど、アタフタ見せずに何でもないことのように美しく(しかし超高速で)着替えてみせる役者さん達&それを手伝う女方さんや後見さん達。そうよね、歌舞伎役者にはいつだって涼しい顔でいてほしいもの。こんなところでも夢を見させてくれる皆さん、アッパレ&ありがとうございます

さて、今月の歌舞伎座は團菊祭ですね。行けるかなぁ。行きたいなぁ。

仁左衛門が語る『彦山権現誓助剱』『身替座禅』
(笑わせようと思えばいくらでも笑わせられるけれど)「笑いは深いところから出てこないといけない」
どうかどうかこの言葉を揮毫して全ての楽屋部屋の壁に貼ってくださいまし~~~。

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