風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

東京・春・音楽祭『トリスタンとイゾルデ』(演奏会形式/字幕付) @東京文化会館(3月30日)

2024-05-02 16:07:59 | クラシック音楽



昨年の春祭『マイスタージンガー』で超高速なのに超名演を聴かせてくれたヤノフスキ&N響。今年も楽しみにしていました。

先日の大野さん&都響@新国に続いて、ブラボー
大野さん&都響とはまた違う音。清らかさや透明感よりも劇的さや濃さ?が加わった感じ。昨年のマイスタージンガーの方が音に官能性が感じられた気もしたけれど、コンマスさんが違うからかな(昨年はキュッヒルさん、今年はMETのコンマスさん)。
とはいえ途中までは昨年と同様に、「いくらなんでも速すぎでしょうよ」と感じたのが正直なところ。一幕の船が陸に着いて旗が翻るところの音とか大好きなんだけど、感動する前に音が次に進んでしまう。恋の高まりや一幕最後のマルケ王!の喝采と二人の世界の対比とその悲劇性も大好きなんだけど、心が締め付けられそうになるともう音が次に進んでいる。。。もう少し浸らせて〜と思ってしまった。
二幕もやはり速い…のと、愛の二重唱は演奏会形式なので二人が向き合わないから愛を感じにくい。
でも「トリスタンの行く国にイゾルデも来てくれるか?」から二幕幕切れには、オケの演奏に胸がいっぱいになりました。
そして三幕、泣いた。オケの音楽の力が凄い。。。
ヤノフスキの音って不思議なんですよね。一見サラサラと進んでいるように聴こえるのに(知人はこれを「一筆書き」と表現していて、なるほどと)、ちゃんと引っ掛かりがあって、聴いている者の心を連れて行く、心が締め付けられないではいられないような響きをさせる。私達を置いてそのまま流れて行ってしまうことがない。うーん、ヤノフスキマジック。。。

イゾルデ役のクリステンセン。二幕までは声量不足に感じられたけれど、最後は頑張った!
今回も改めて感じましたが、トリイゾって『愛の死』がダメだと絶対にダメですね。ここに全てが向かっているような作品だもの。イゾルデ役のプレッシャーはどれほどか。

スケルトンのトリスタンもとても良い声だったけれど、とても頻繁に水を飲んでいて(譜面台の上に常にペットボトルが数本)、イゾルデが真剣に愛を語ってるときも蓋を回してゴクゴク。マルケ王が苦悩を切々と語ってるときも座ってゴクゴク。。すぐに椅子に座っている様子からも、ご体調が心配になりました。体格の大きな方で、糖尿病とかそういう心配をしてしまった。
三幕モノローグはとてもよかったです。『愛の死』の場面で、死んでいるはずのトリスタンが座りながらじーっとイゾルデを見ていて、(ただ演技に飽きて見ていただけかもしれないけれど)なんだかジーンとしてしまった。

クルヴェナール役のアイヒェ、甘やかな声がとてもよかった。新国でも感じたけれど、この役って実はとても重要ですよね。マルケ王にしてもブランゲーネにしても、トリイゾって不要な役が一つもない。みんな重要。
ブランゲーネ役のドノーセも決して悪くはなかったのだけれど、新国の藤村さんがいかに素晴らしかったかを改めて実感しました。

ヤノフスキは二幕ラストでフラ拍が起きかけても手を下ろさず、沈めていました。にもかかわらず三幕でまたもやフラ拍。しかも今度は拍手をやめず。ヤノフスキは手を下ろさず。周りの人が「シーッ」と言って、やめさせていました。ちなみに私の数席隣の方でしたけれど。。
以前も書いたけれど、演奏終了と同時の拍手が常に悪いとは私は思っていないけれど、曲によりますよね。もしマーラー9番で拍手が起きたら、それって新手のブーイング?と思ってしまうもの(幸い出会ったことはないけれど)。

同じ春に新国と上野でタイプの違う、でもどちらも極上なトリイゾを聴けて、本当に幸せでした。三幕は毎回泣いた。
ヤノフスキ&N響のワーグナーは、4月7日にリングのガラも聴いてきました。幸せすぎる。。。

対談 vol.1:マレク・ヤノフスキ(指揮) × 鈴木幸一(春祭サイト)

指揮:マレク・ヤノフスキ
トリスタン(テノール):スチュアート・スケルトン
マルケ王(バス):フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ
イゾルデ(ソプラノ):ビルギッテ・クリステンセン
クルヴェナール(バリトン):マルクス・アイヒェ
メロート(バリトン):甲斐栄次郎
ブランゲーネ(メゾ・ソプラノ):ルクサンドラ・ドノーセ
牧童(テノール):大槻孝志
舵取り(バリトン):高橋洋介
若い水夫の声(テノール):金山京介
管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ベンジャミン・ボウマン)
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン







桜の季節の上野を舐めていた私は藪蕎麦も駅ビルもどこの店にも入れず、朝から何も食べてないままトリイゾなんて死んでしまうので、結局東京文化会館内の精養軒へ。ここのお店はそれほど好きではないのだけれど(精養軒系列なら東京都美術館のミューズの方が好き)、いつも最後の砦になってくれる店でもあります。ビーフカレーは美味しかった(1680円也)。ご飯の量、昔よりは多くなった気がする

Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 歌劇『トリスタンとイゾルデ... | TOP | 東京・春・音楽祭『ニーベル... »

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。