風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

New Zealand ~Lake Tekapo 2~

2014-09-28 21:52:49 | 旅・散歩


Cowans HillのWalk Way。
こちらもMt. Johnに劣らず素晴らしいコースでした。
2時間近く、出口付近まで一人も人間と擦れ違わず(犬と羊には会ったが)、そして標識もなくふつーに道が3つに別れていたりする、イギリスのフットパスを彷彿とさせるワイルドさではありましたが。。。


所々にこんな沼も。
友達が「ここで落ちたら誰にも気づいてもらえないね」と。
うん、そうね・・・。


『ハウルの動く城』に出てくる荒野を思い出しました。


NZはいま早春なので、色々な花が咲き始めています。


桜も。


静かな静かなテカポ湖。


透き通った穏やかな湖面。
ぽかぽか陽気でも、まだ水温は冷たいです。
のんびり。


早咲きのルピナスみっけ。


穏やかだなぁ。


この道をいつもお散歩している夫婦。
正面に見えている山がMt. Johnです。あの頂上まで登ったということですよー。


星も月も雪もないときのTekapoの夜は、まさに真っ暗闇。
いつまでたっても目が慣れず、まるで目の前に真っ黒の壁があるみたいでした。


湖側。
私達が泊まったホテルや湖の付近は、街灯は一切なし。


でも晴れた夜はこのとおり!
煙突からの煙が星の妨げになるので、このときは暖炉の火は消しました。でもセントラルヒーティングがあるから無問題♪


蠍座の右上、最も明るい辺りが私達の銀河系(天の川銀河)の中心付近。
ロマンですねぇ。


テカポといえばお約束のショット。善き羊飼いの教会と天の川。
カノープス、大マゼラン雲、南十字星(逆さ十字)、ケンタウルス座αβ。
南十字星の右上の特に濃い闇の部分は、暗黒星雲のコールサック(石炭袋)。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のラスト、ジョバンニとカンパネルラの別れの場所です。


町のストールで買ったビーフバーガー。最後まで美味しかったNZの食事!
これで$16でしたが^^;


Christchurchから早朝発の便でAucklandへ向かう機上より。そして成田へ。
またいつか来られたらいいなぁ。


★おまけ★


映画『ホビット』仕様の機体@オークランド空港


オールブラックス仕様の機体@オークランド空港

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New Zealand ~Lake Tekapo 1~

2014-09-28 21:52:38 | 旅・散歩


Tekapoのホテル。というより一軒家を丸ごと借りるスタイルのモーテルだったので、心おきなく過ごせました。
となりの棟に住むオーナーの方もとても親切で、あまりに居心地が良くて、住んでしまいたかった。
仕事が終わってこんな家に帰ってこられたら癒されるだろうなぁ。
どこでもドアが欲しい~。


リビングからの眺め!
日本に帰った今では、数日前までここにいたことが夢のよう。。


キッチン付きなので基本は自炊にしました。
NZは物価がアホみたいに高いので外食ばかりだと恐ろしいことになるのです。。


でもテカポに来たらコレは食べておかないと♪
湖畔レストランのサーモン丼、ではなく納豆サーモン丼。サーモンオンリーは苦手なので(サーモントラウトぽかったけど)。
ラムかつも♪


そして夜、部屋から一歩出れば満天の星空!
カノープス、大マゼラン雲、小マゼラン雲、天の川が家の庭から見られるこの贅沢。。。
大マゼランは太陽系から16万光年、小マゼランは20万光年に位置する銀河です。
スケールが大きすぎて気が遠くなる。。


Mt. JohnのWalk Way(イギリスで言うFoot Pathですね)。
頂上付近から来た道を振り返る。
登山口からここまで約1時間なり。


この荒涼した風景、テンション上がる(>_<)!!


Mt. John山頂到着~!カンタベリー大学の天文台があります。


山頂にはカフェもありますよ


席からの眺めは、もちろん絶景。


ケーキとかメニューはいろいろあるけれど・・


やっぱりSoup of the Day
こちらはレンズ豆のスープとflat whiteのコーヒー(NZはコーヒーの種類が沢山あるのです)

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New Zealand ~Mt. Cook~

2014-09-28 21:52:26 | 旅・散歩


ミルキーブルーのLake Pukaki


Mt.Cook全貌!
雲が晴れてくれてよかった!


Hermitage Hotelのカフェでランチ。
この景色を観ながら食事をする贅沢といったら。。。


私のカメラの腕のせいで不味そうに見えますが、美味しかったです。
ブロッコリーと牛肉の煮込とライス。白米万歳!


マウントクックを望むヒラリーさん。
人類で初めてエベレスト登頂に成功したお方。


Hermitage Hotelの前から出ている遊歩道。


遊歩道を歩いていくと、どんどん姿を現すマウントクック。
なんかもう、風景すべてがあまりに雄大で美しすぎて言葉が・・・


山頂もクッキリ。
雲がかかって見えないことも多いと聞くので、見られて本当によかった。


周辺の山もこの迫力。
近!


Tekapoに向かう道で。牧場へ向かう羊さん達の群れ

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New Zealand ~Queenstown~

2014-09-28 21:52:02 | 旅・散歩

ニュージーランドに行ってまいりました~
私にとって初の南半球です。



Queenstown着陸時。
いつ翼が山肌をガリガリするかと気が気じゃ。。。


ホテル前のワカティプ湖。
カモメは置物ではなく本物ですよん。


カフェにてランチ。
Soup of the Day。ロンドンと同じく、NZでもハズレがなかった大好きなメニュー♪
こちらはマッシュルームのスープ。
写真だとわかりにくいですが、ボウルのようにデカい器でございました^^;
とっても美味


夕陽に映えた雪山がきれー。


生牡蠣(本日のオススメだそうで)と、ビーフと、ラムと、NZ産白ワインの夕食
あまり食事には期待していなかったのだけれど、NZはどこで食べた食事も全部美味しかった
食事の美味しい国って、それだけで好きになってしまう。


Queenstownから45kmの位置にあるGlenorchy。
こういう風景も、ぞくぞくして大好き。
ロードオブザリングっぽいわ~(Glenorchyはアイゼンガルドやロスロリアン等のロケ地になりました)。


NZは黒鳥ばかりなのだそうです。
そしてこの時の私にチャイコフスキーのメロディを思い出すなという方が無理なハナシ。あぁ今頃日本では・・・とは考えないようにいたしました。。。


Glenorchyのカフェ。ホビットぽい内装が可愛い^^


美味美味♪景色も味も最高~。


カフェのにゃんこ。


こちらはX-MEN ZEROのロケ地。
ウルヴァリンがヘリコプターと戦って勝っちゃったあの場所ですよ。



ここから右手を見ると映画ロードオブザリングでカラズラスとなった山があり、左手にはホビットのロケが行われた丘がある、何気に映画撮影の宝庫な場所。


QueenstownのSkylineレストランのブッフェ。
味についてはあまりいい評判を聞かなかったのだけれど、十分美味しかった♪
NZはどこでもシーフードが食べられるのが嬉しい。


払った値段?
・・・この眺めも御馳走のうちですから、はい。


Queenstown郊外にて、ゴージャスな星空。
Queenstownは町中でも、これほどではないですが、ちゃんと天の川が見えました。
ほんの数十年前までは東京でも天の川が見えたのだとか。
ちなみに私のカメラは、数年前に2万ちょいで買った普通のコンデジです。これほどちゃんと撮れるとは思わなかったのでビックリ。日本のデジカメ技術って素晴らしい。
このときの気温は0度近く。

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Flying to...

2014-09-16 01:33:23 | バレエ




Chris王子、昨日(15日)はとうとうGomes白鳥の腕の中で飛んでしまったそうですよ~~~(by 本人twitter)

そうよね、そうよね、9日→13日の変化(舞台は一期一会なので敢えて進化とは申しませぬ)だって物凄かったもの。客を置いて二人で別の世界にいっちゃってる感じだったもの。あと残り3回の舞台なんて、一体どうなっちゃうの(>_<)
こんなに短い期間でこんなに関係が変化していくなんて、きっと素晴らしい相性ということなのでしょうね。
ああ、後半の舞台が観られる方達が羨ましい。
しかし何より、そんな経験を今まさにしているGomesとMarneyが心底羨ましい。





こちらはGomesの初日(9日)を終えた翌朝のインスタグラムより。an experience of a lifetime、いい言葉ですね。

今回の二人の舞台、観ることができて本当に幸せでした。
男とか女とか、人とか人じゃないとか、そういうものを超えた愛を見せてもらうことができた。
私にとってもan experience of a lifetimeだったよ!
心からありがとう、Marcelo & Chris!

さて、これ以上この世界にいると本気でこっち側に帰って来られなくなりそうなので、無理矢理自分を引き戻して、今度は自分の体で自分のan experience of a lifetimeに出会ってくる!
というわけで、今年の夏のメインイベントの旅に行ってきます~。
しばらくネットから離れますので、ご了承くださいまし。

最後に公式ページより、リハーサル写真をこっそり拝借(圧縮してます)。
Gomesの体の美しさと、舞台の二人のドキドキ感を思い出させてくれる写真2枚。
他にも素敵な写真がいっぱいなので、ぜひNew Adventuresの公式FBへGo!
公演は21日まで。






追記:
リハーサル写真の中にこんな写真↓が・・(さらに圧縮)



ジョナサン&クリス。
おぉ、ゴメス相手とはまた違った意味でエモーショナルな王子を見せてくれそうではないの!
リハーサルをしてるってことは、他の国の人達はこのペアが観られるのか。いいなぁ。

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『マシュー・ボーンの白鳥の湖』 マチネ&ソワレ @東急シアターオーブ(9月13日)

2014-09-13 23:23:07 | バレエ

先日に続き、またしても行っちゃった、しかもマチソワ・・・・・・。
だってだって他のキャストも観てみたかったのー(>_<)
でもゴメススワン&マーニー王子ももう一回観たかったのー(>_<)

マチネは当日券で11列中央、ソワレはマチネの時に買ったリピーター券で7列中央。
表情をはっきり見るには7列目が、足元までしっかり見るには9列目位が見やすいですね(8列目から段差あり)。どちらも捨てがたいですが。
しかし13000円でこんな席に座れるとは、ありがたい。あぁ、すっかり日本値段に慣れきってしまった私・・・。てかロンドン値段を忘れなかったら日本で観劇なんかできない・・・泣


【マチネ】

ジョナサン・オリヴィエ(ザ・スワン)とサイモン・ウィリアムズ(王子)のペア。

ジョナサンのザ・スワンは、ゴメスよりずっとストイックで、野生のままの孤高の白鳥という感じでした。

サイモン王子は、健康的で典型的なお坊ちゃん。
アプローチの違いですが、クリス王子の方が人間性が複雑というか奥行があって、個人的には好みでした。それにクリスの方が踊りにも雰囲気にも圧倒的に色気が・・・・・・。スワンクバーの場面は、クリス王子は普通の若者くらいには遊び慣れてる感じ、サイモン王子は全く慣れない場所に来ちゃった感じ。
ちなみにサイモンは会社のイギリス人同僚にそっくりでした。。。外国人の知人なんて多くないのに、今回のキャストってどうしてこんなことになってるの・・・泣。ジョナサンに似てる知人がいなかったのが唯一の救い・・・。

こちらの二人は作品のアプローチの仕方もゴメス組と全く違い、ザ・スワンと王子の間に色っぽい空気はほぼ皆無なのですね。全体的にジョナサンのスワンはゴメスと比べると王子を“より大きな次元の愛”で包み込む感じなので、必然的に色っぽい空気は減ります。
三幕はジョナサンのストレンジャーが意外なほど大人の色気があってカッコよく「私と付き合ってくださいo(>_<)o!」とか思ったのだけど、いかにせ王子との間に艶っぽさが皆無なものだから、息を詰めて成り行きを見守るドキドキ感がなく。。最初に観たのがゴメス組だったせいか、やっぱり私はそういう感じを二人に望んでしまうのですよね。。。
女王と擦り替わる場面は、このペアの場合、どういう風に見ればいいのだろう?母の愛を求めている王子の心をズタズタに引き裂くストレンジャー、か?
でもってサイモン王子が子供のような雰囲気なので、ストレンジャーに弄ばれてショックを受ける姿が、大人の男に強引に初キッスを奪われた乙女のように見え^^;。いや、このコンビの場合はその解釈でいいのか。
ゴメス&サイモン、ジョナサン&クリスだとどうなるんだろう?とちょっと想像してみたけど、後者は結構興味あるかも。

二度目鑑賞で気付いたことは、スワンクバーのドアの看板の文字は「royal rumpus(王家の乱痴気騒ぎって感じ?)」と書いてあるんですね。パーティーの名前なのか、暗示的で面白いですね。
あと、バーの外でガールフレンドが執事にお金を返そうとする仕草を、王子はコートを被っていて見ていないのですね。だからお金を進んで受け取ったと誤解したのかな。とはいえここで王子が感じるのは「君もか」的なショックであって、もともと激しい恋愛感情はガールフレンドに持ってなさそうですが(この日のソワレのクリス王子に至ってはオペラハウスでイラってた)。
もひとつ。二幕でスワンが登場してソロに入るところ、ジョナサンはすぐに音楽が始まってて、ゴメスは9日も今日もたっぷり時間をとっていました(9日はアクシデント?と一瞬思ったのだけど、今日もそうだったので違うのだなと)。ダンサーによって色々調整してるんですね。

そしてカテコで熱い抱擁を交わすのは、ゴメス組だけなのね(今日のソワレも熱かった・・・^^;)。 
これもアプローチの違いによるのか、あるいは主役二人の性格の違いか。
カテコのサイモン、ジョナサンに対してさっぱりした男らしい感じで、王子の時とのギャップが楽しかったです笑。二人ともいい表情!

あと、このペアの舞台でちらりと思ったのは、「最初と最後のベッドの上の王子だけが現実で、あとは全て王子が見た夢なのかな」とか。そういう意味ではアダムの白鳥を見たときの印象に近いです。怖くて美しくて、だけどやっぱり、あのラストは私には羨ましく思えてしまうのでありました。


【ソワレ】

二度目のマルセロ・ゴメス&クリストファー・マーニーのペア。
さあゴメス、一度滑ったんだからもう怖いものはないでしょ(前回の11日に二幕で転倒しかけたと聞き)、思いっきりはじけちゃいなさい!
と観劇に臨んだら。
百倍返しでぶっとばされた。

すごかった。。。。。。
あれがゴメスの本気ってやつですか。。。。。
ものすごい熱量の舞台だった。
ゴメスの熱量がマーニーに伝染して、それが他の全てのダンサーを巻き込んで途方もない熱量になるのを目の前で観ちゃった感じ。
9日の舞台とほぼ同じキャストなのに(執事は別)、こうも変わるものなのか。
その中心にいるのはもちろんゴメス。
すごいダンサーですね。。。

今夜はNAのダンサーとゴメスの間に、9日に見られた遠慮のようなものが一切見られませんでした。
ゴメスは最初から最後まで自信にあふれていて、まさに王者。
それに化学反応を起こしてクリスがまた、もの凄い役への入り込みよう。
9日のクリスは緊張気味のゴメスを見守っているようなフォローしているようなところがあったけれど、今夜はゴメスのようなダンサーと躍れることが楽しくて仕方がないって感じで踊ってた。そんなクリスをゴメスが受けて、高まり合って、途中から二人ともトランス状態に入ってるようにさえ見えました。
インタビューでゴメスがマーニーのことを「舞台は生ものですから同じ作品を同じ相手役と踊っても、日々新しい発見があったりして毎日違ってくるものですが、彼は僕のその時々の変化にとても敏感で、僕の変貌に呼応して演じ踊ってくれるダンサー」と言っていた意味がよくわかった。
二幕の二人の濃密、三幕の官能、どちらも9日と桁違い(9日の初日ならではな二人も唯一無二の貴重さでしたが)。ストレンジャーはセクシーさが10倍増しでございました。
ていうかお二人さま、気持ちが高ぶりすぎて顔、近すぎです・・・。唇、5mmくらいしか離れてないです・・・。マルセロさん、御手が王子のジャケットの中に入っております・・・。
四幕なんてもう言葉にならない。。。。。。。。。言葉にすると消えてしまいそうで言葉にできない。。。。。。。。王子が動かなくなってしまったとき、ゴメス泣いてた。。。

そしてそして、ゴメス上手すぎ!!!
ソロも上手ければ、サポートも上手くて(三幕の女性達との絡みも最高)、瞬きする間も惜しかった。
上手いだけじゃなく踊りに華があるから見ていて楽しい。
でもってこれだけはじけてても、品があってエレガント。

こんな舞台が観られるなんて、生きててよかった。。。(としょっちゅう言ってる気がするが、いつも本気です)

しかしこれほどの舞台に空席があるなんて、もったいなすぎる・・・。
ゴメス&ヴィシニョーワのマノンも空席が目立ったと聞いたけど、どうしてなんだろう。
かくいう私もマノンは公演が終了した数日後にその存在を知ってショックだったのだが。特に今となっては悔やんでも悔やみきれない 
そしてクリスのドリアングレイも・・・

今回は、カメラは持って行きませんでした。
やっぱり少しでも多く拍手したかったからなのだけど、正解だった。
だってカテコのゴメス、心から満足しているとってもいい表情をしていたもの。デジカメのディスプレイ越しで見るなんてもったいない!


残る今年のバレエ鑑賞予定は、Kバレエカルメンとボリショイ来日。楽しみです♪

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『マシュー・ボーンの白鳥の湖』 ソワレ @東急シアターオーブ(9月9日)

2014-09-10 21:47:21 | バレエ




本公演の初日に行ってまいりました~。
映画『リトルダンサー』をこよなく愛する私ですが、この作品を生で観るのは今回が初めて。
不思議と、観終わった後にとても幸せな気持ちになれた舞台でした。
ラストは切ないですが、本家白鳥と同じく、こちらも決して完全な悲劇ではありませんよね。
今回ザ・スワンを初役で踊ったABTプリンシパルのマルセロ・ゴメスは、こんな風に言っています。

「特にザ・スワンと王子の間の情感の描かれ方が素晴らしいと思う。王子にとってスワンは天使のように美しい生き物で、閉じていた心を開放し、愛することを怖れないでいいのだと教えてくれる存在。僕はこの作品を観て、マシューから、自分の心の中の何かを覚醒させてもらった気がする」(Japan Times

「彼らは男性とか女性とかでは無いのです。もはや人間では無く彼らは白鳥という生き物。そしてそこには彼らが何であるかは関係なく【愛】がある。それこそが伝わるべきことなんだ」(Dance Cube

王子の人生は決して幸福とは言えないものだったけれど、それでもザ・スワンという深く愛する(という言葉さえ軽く感じるほどの)存在と出会い、たとえ死という形であっても永遠に結ばれることができたのだもの。彼の魂は幸福なのではないかしら。

今回私が観たマルセロ・ゴメス&クリストファー・マーニーによる白鳥は、以前映像で観た1996年のアダム・クーパー主演の白鳥とは、ストーリー解釈が全く異なるように感じられました。
アダムの白鳥を観終わったときに感じたことは、「白鳥は王子の心が生み出した存在なのだな」ということでした。演出も演技もそういう解釈になるように作られていましたし、実際当時の彼らのインタビューを読むとそのように語っています。
でも今回は、その解釈で見ると違和感があるのです。主役二人の間にはっきりと(恋愛感情に限りなく近い)愛が見えているからです。もちろんゴメスが言っているように、彼らが男だとか女だとかは関係なく。もし白鳥が王子自身が生み出したものであるなら、そういう相手との間にその種の愛が生まれることはないように思うのです。どちらも自分なのですから。でも今回は明らかにそれがあったので、「ああ、今回の白鳥は王子の想像の産物ではないのだな」と感じました。もちろん私見ですヨ。

キャストは、とにかく王子役のマーニーが素晴らしかった 役になりきることができるダンサー。
この王子だったら、スワン役にどんなダンサーが来ても感動する舞台になるのではないかしら。
今夜は白鳥のゴメスが初役初日のせいか多少ぎこちなさが見られたのですが、そんなときに数年ぶりとはいえ役を完全に自分のものにしているマーニーがとても頼もしく、一見少年のようなのに良い意味で落ち着いていて。彼のそんな部分が緊張気味のゴメスを静かにサポートしているように感じられ、それが舞台に不思議な効果を生み出していた気がします。素敵なダンサーですね。
彼の王子は、「王子って本来はこういう性格の子なのだろうなぁ」というのが伝わってきました。ただ親の愛に飢えている孤独な子というだけではなく、知的で芯がちゃんと通っていて、だからこそ悩み苦しむ。そしてそんな彼だからこそスワンも惹かれたのだろうな、と。それが伝わってくるのは、心身両面におけるマーニーの表現力が素晴らしいからです。スワンクバーでのヤケ酒&クスリをやっちゃうところも(少年らしいだけじゃなくて色気もある!)、バーを叩き出された後の孤独と絶望も、公園でのザ・スワンとの涙が出るほど美しいアダージョも、白鳥達と踊るときの楽しくて仕方がない高揚感も、白鳥達が消えた後の晴れやかなソロも(餌やりの女性にキスして遺書をパッと散らすところ、大好き!)、どれも絶品。
この作品ってザ・スワンが王子を振り回しているようで、何気にザ・スワンも同じくらい王子に振り回されているんですよね。そんな一種の危うさのようなものが、ザ・スワンという役柄を一層魅力的にしている。そんな王子とザ・スワンの関係は、互いが互いを補い合っているような、片方が存在するためにはもう片方が絶対に必要であるような、そんなところがあるように思います。
そういう雰囲気が今夜の二人にはすごく出ていて、たぶんこれからゴメスが回数を重ねていったら彼らの間にまた違う関係が構築されるのかもしれませんが、今夜の二人のそんな雰囲気もとってもよかったのです。
たぶんゴメスはマーニーに感謝してるんじゃないかな。あんな風に王子を踊ってもらえたら、ザ・スワンはすごくやりやすかったと思う。カテコでもマーニーに思いきり抱きついてたし
ちなみにマーニーはこの日が誕生日で、35歳になったそうです。ゴメスももうすぐ35になるそうで、王子と白鳥が同い年って、なんかいいですね(*^_^*)

前半ぎこちなさがあったゴメス白鳥も、二幕後半からはさすが!!うっまいなぁ~~~。想像していたよりずっとエレガントで品のある踊りをするダンサーだった。
バレエって演技ももちろん大事ですが、すべては基本の技術があってこそですよね。それが無いとバレエを観る歓びって絶対にもらえない。ゴメスに劣らず綺麗に踊るマーニーと絡みまくる二幕は、いつまでもいつまでも見ていたかったです。
王子はザ・スワンと出会って、初めて本当の愛と自由を感じることができたのですね。長い間ずっと、望んでいたもの。
そしてザ・スワンもたぶん、それまで愛という感情は知らなかったのだと思う(もしかしたらガーディアンとして王子を見守ってはいたかもしれないけれど、直接触れ合ったのは初めてですから)。
そんな初恋に戸惑っているようなピュアな二人(一人と一羽か)の距離が少しずつ狭まっていく過程は、愛おしくもとてもセクシーで、王子が白鳥の体に触れようとして、初めはふっと体を引いていた白鳥がやがて触れるのを許すところなんか、すごく素敵。
この世のものとは思えないほど美しくて色っぽいこの二幕、あと一万回くらい観たい。

三幕のゴメスのストレンジャーは、イヤな男ではあるのだけど、王子に酷くしきれていないというか、ちょっぴり優しそう笑。
でも前幕の二人があまりに愛に溢れていたから、その記憶が王子の中と同様に観客の中にもあるので、やっぱり酷い男には見える。そういう意味でも二幕は大事ですね。程よいセクシーさと品があって、私は好きですこのストレンジャー。鞭演出はアホっぽく見えるから好きじゃないのだけど、今回もあった(もとはアダムの提案だそうで・・・)。女王と踊る場面は、華やかでキレがあって余裕もたっぷりで、見惚れてしまいました。やっぱり女性と踊るのは慣れてるんだな、と思った笑。
マーニーも、相手の体をふわっと簡単に持ち上げていて、小さい体なのに抜群の安定感。どこにそんな筋肉がついてるのかと凝視してしまった。ダンサーの体ってすごいわぁ。
王子とストレンジャーがタンゴを踊るところは、気付いたら息を止めて見つめておりました。ドキドキ。

四幕。
マーニー王子のおかげで最初からずっと王子に感情移入しまくりで観ていたので、四幕は・・・・・・泣
ゴメス白鳥も王子への愛1000%で、王子を守ろうとする想いが全身から溢れてて・・・・・・泣泣泣
ゴメス、さすがこの場面が好きと言っていただけあって素晴らしかった。
もうザ・スワン&王子は切ないし、スワンズは迫力だしで、泣いたりワクワクしたりと大変。
本家でもスワンズがロットバルトを追い詰めていくところがゾクゾクワクワクして大好きなんだけど、マシュー版も素晴らしかった!追い詰められるのはロットバルトじゃなくて主役二人ですけど^^; ここは映像で観るのと生で観るのとでは迫力が全然違いますね。この場面をもう一度観たいがために、チケット買い足したい。
そしてどんなバージョンでも毎回感心するのは、やっぱりチャイコフスキーの音楽の偉大さ。これほど様々なバージョンの『白鳥』が生み出された理由がよくわかる。こんな美しいメロディだったら、誰だって自分の『白鳥の湖』を作りたくなっちゃうよね。今回は生演奏ではありませんでしたが、前方席だったせいか、音は平たいものの意外とちゃんと迫力を感じられました。

さて、ストーリーの解釈についてあーだこーだと考えるのも、この作品の楽しみの一つですよね。
で、今回のペアのラスト。
私の解釈では、ザ・スワンでも守りきれないほど王子を蝕む闇が(内的にも外的にも)大きくなってしまい、白鳥達は衰弱した王子を獲物として容赦なく襲おうとする。そして王子を愛してしまい守ろうとするザ・スワンは白鳥達のリーダーである資格を失い、彼らを邪魔する者として殺されるのではないかと。王子が白鳥達に囲まれていく様子は、闇に飲み込まれそうになっている王子の精神状態も表しているのだと思います。白鳥ももちろん現実の白鳥とは違い、この物語ではもっと抽象的な次元の存在。
美しく純粋な愛や自由の象徴がザ・スワンなら、ストレンジャーはこの現実世界の全ての闇の象徴? 不安定な王子の心をずたずたにした決定打を与えた人。
ザ・スワンは王子のただ一つの光ですから、ザ・スワンが死んだら王子も生きていけません。それに彼と共にいることが王子の幸福ですから、ザ・スワンの後を追うのは王子にとって幸福なのだと思う。
というようなことを一週間くらい尾を引いて考えてしまうのがこの作品の恐ろしいところですね^^;
そして次に観るときはまた解釈が変わったりして、スパイラル。すごい中毒性です。。

カーテンコール。
最初はゴメス&マーニーの二人で。舞台中央でのがっつり抱擁が感動的でした。カメラをバッグから取り出す前だったので、マシューさんがツイに写真をアップしてくれて嬉しい♪
カテコは写真撮影OKでしたが、やっぱりキャストに拍手を送りたい気持ちが一番だったので、あまり撮れませんでした。でもちょっとだけお裾分け^^




10列目の席だったので後ろの様子はわからなかったのですが、公式ページによると全席スタオベだったそうで。このとき↑のゴメスがニッコニコで可愛くて、一度仕舞ったカメラをまた取り出しちゃいました笑
十数年越しの夢が叶った初日、おつかれさま!!



ガールフレンドの子(一番右)もチャーミングで良かった。王子よりお姉さん系だったので、カミラ夫人とチャールズ皇太子を連想しました。
あと、一羽一羽の白鳥さん達!みなさんそれぞれが個性的で美しくて不気味で純粋で最高でした。もし彼らがこれほど魅力的でなかったら、どんなに主役二人が素晴らしくても、こんなに感動できなかったと思う。ブラボー!


開演前の幕。一羽のスワン。



パンフにほとんどマーニーの写真がなくて残念に思っていたところ、公式ページに一杯載せてくださって嬉しい!お誕生日パーティーの写真まで^^
パンフは2000円で高かったけど、グレーがかった濃紺のグラデーションの表紙がセンスよくて素敵です。
そしてパンフで知ったのですが、白鳥達のいる池ってSt James' Parkなんですね。じゃあ王子の住む宮殿はバッキンガムか。
とわかれば、最後にこちらの写真もどうぞ。



St James' Parkの池です。
ほとりにいるのは2羽のブラックスワン。
夜になると人間に姿を変えるかも・・・



バッキンガム宮殿の窓!
そういえばラストの王子の寝室シーン、窓が上から下りてくるときのキコキコ音がほんのちょっぴり気になった^^;

ところでマーニーは私がロンドンで住んでいたフラットのオーナーに年齢も顔も体格もそっくりで(名前も同じクリス。この人モテるだろうなーというオーナーだった・・・)、さらにゴメスが今の会社の同僚ドイツ人に似てるため、時々妙な気分になり結構本気で困りました。。

9月13日マチネ&ソワレの感想

※インタビュー(chacott):マルセロ・ゴメス&クリストファー・マーニー
ザ・スワンザ・ストレンジャー役のマルセロ・ゴメス、王子役のクリストファー・マーニーにインタビュー

※追記:インタビュー(.fetale)

──マシューさんは、若いダンサーのメンタル面での教師でもあるのではないでしょうか。 王子の役は、若いダンサーにとっては精神的に苛酷な面もあるのではないかと思います。

マシュー・ボーン「そういう面もあるかも知れないね。面白いのは、王子役は成熟したダンサーほど深くはまってしまう役でもあるということなんだ。今日マルセロと一緒に踊る王子役のクリストファー・マーニーは今日が誕生日で、今月末に誕生日を迎えるマルセロと全くの同い年だけど、彼はすごく王子役に入れ込んでいるね…あまりに役に打ち込んでいるので、カーテンコールでも笑えないほど。クリスは7年ぶりに王子役をやって、さらに深いところまで到達したんだ」

この日のマーニーはカテコでしばらく笑顔が見えなくてきゅっと唇を食いしばってる感じだったのだけれど、こういうことだったのですね。ゴメスにしてもマーニーにしても、この作品は舞台の上だけじゃなく、彼らの人生の色々なものと重なる何かがあるのかもしれないな、と思います。

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梅若玄祥のスリーステップで学ぶ能 『葵上』 @横浜能楽堂(9月7日)

2014-09-08 20:07:54 | その他観劇、コンサートetc



こんばんは!
今宵は旧暦の8月15日、中秋の名月ですね
職場の中国系マレーシアンの女の子から、お母さんが送ってきたという大きな月餅をもらいました。
英語では中秋の名月のお祝いはmoon festivalって言うのですね。月餅はmoon cake。綺麗な響き^^

さて、昨日は人生3度目のお能鑑賞に行ってまいりました。勝手に“地元で古典芸能”第二弾です♪
4月の『二人静』でド素人の私にも無限の静寂を体感させてくれた梅若玄祥さん。この方になら能の楽しさを教えてもらえる気がする!と。

とはいえこの『スリーステップで学ぶ能』、チラシのコピーでは、

「難しい」「分からない」と敷居が高く思われがちな能。確かに貴族・武家社会の中で洗練されていった能は、現代人には「難しい」と感じさせる要素が沢山含まれています。しかし、それらの要素を押さえてしまえば、後はそれぞれの感性で楽しむのみ。
本公演では、まず、梅若玄祥、馬場あき子、三田村雅子、各界の第一人者として活躍する3人が、源氏物語を題材とした能の代表曲「葵上」をテーマに、「題材となる作品世界」、「詞章に込められた意味」、「謡や型が表現するもの」についてスリーステップで徹底的に講義。その後、舞台鑑賞を行うことで、能の世界が分かりやすく理解できます。まだ能を観たことがない方から、もっと深く能を知りたい方まで、幅広い方におススメです。

などと書いてあったから「シテとは、ワキとは」から説明してくれるのかと期待して行ったら、どう考えても能も源氏物語もある程度知っている人向けだった^^;
三田村さんのトークからしていきなり「このお能は桐壺帝が退位して朱雀帝の世になり、光源氏の宮廷での地位が傾き始めた頃のお話です」から始まってギョッ
源氏物語は好きなお話なので幸い付いてはいけましたけど。そして周りのお客さんも、能も源氏も初心者っぽい方は一人もおられなかったですけど(なんで!?)。
お値段4千円で、10時~16時まで、休憩を挟みながらどっぷりと能と源氏の世界に浸ることができました♪

以下、玄祥さんのトークの覚書。すごくお話し上手な方ですね!

・(本日使われる江戸初期の白般若の面を見せてくださりながら)後にもいくつか作られた白般若面のオリジナルともいえるものは観世流のこちらと、喜多流にもう少し黒いものがあって、その二つがとても貴重なもの。『葵上』は面を選ぶのが非常に難しく、品のある面でないと恨めしそうに見えてしまう(白般若にも品のないものもあるそうです)。なお『道成寺』では赤般若、『黒塚(安達ケ原)』では黒般若が使われる。

・葵上の小袖を運ぶときに姫を抱くように扱う後見が偶にいるが、それは間違い。気を消して小袖を運び、舞台正面で広げる。このとき初めて小袖は葵上になる。巫女も橋掛かりから出てきたときはまだ「見えないもの」であり、舞台の定位置に座ったときに初めて観客の目に見える存在になる。

・能ではシテはいつもワキと向かい合ってるように思われるかもしれないが、この作品ではシテは葵上を見ている。最初の破れ車から降りた場面でも、始めはじっと葵上を見つめ、それから巫女(この場合はツレ)に視線を移す。

・この作品のシテは最初のうち殆ど動かない。最近は新作能などで動きの多さを求められがちだが、能はじっと動かない時間もとても大事。そのときに観る側は想像力を働かすことができる。とはいえ動かずに場を持たせられるのは、よほどの名人じゃない限り15分程度が限界。

・父が祖父から稽古を受けた際、蛍を追う部分を繰り返しやらされ、ちゃんと蛍を目で追っているのに何が駄目なのか理由を聞いたところ、「お前のはただ型どおりに動いているだけで、心が伴っていない。御息所がどういう気持ちで蛍を追うのか、その心を考えて動かないと、この後の”光の君とぞ契らん”で正面を向くときの光の君への想いが観ている人に伝わらない」と祖父は答えた。

・御息所の深い哀しみを出したい。謡と合わなくなるところもあるかもしれないが、そう演じたい。

・(能の世界には)シテは沢山いるが、ワキは大量生産できないからとても大事。シテは色々動いたりするからなんとかなる。でもワキがしっかり受けてくれないと、シテはうまく演じることができない。昨日高崎で『頼政』を演ったが、ワキの宝生(閑)さんがじっと目を見て受けてくださったから、やることができた。それが涙が出るほど嬉しく、ワキの重要性は知っていたつもりだったが、昨日は身をもって知った。ホールの会場で本来なら条件は悪かったはずだが、とても幸せな舞台だった。

・能では開演前に楽器の調子を合わせるが、それは本番と同じトーンで行われるので、ぜひ耳を澄まして聴いてもらいたい。


【葵上】

ツレの照日巫女は、川口晃平さん(あ、私と同い年だ)。
橋掛かりから登場されたときの歩き方、この世のモンじゃありません感がsugoi。こんな歩き方で真夜中の犬神家の廊下とか歩かれたらトイレ行けないわ(>_<)!「見えないもの」どころかガン見してしまった。

そしてそして玄祥さんの六条御息所、すごかったぁ・・・・・・・。
前回の静もそうだったけど、今回も思い込みフィルター不要で自然と三十前後の若い女性に見える!苦しい恋に身を焦がしている女性に見える!あの体格なのに!
切々と涙を流す仕草が切なくて、可哀想で・・・。
そして上の話にもあった、蛍を追う場面。

恨めしの心や、あら恨めしの心や。人の恨みの深くして、憂き音に泣かせ給ふとも、生きて此の世にましまさば、水暗き、澤辺の蛍の影よりも、光る君とぞ契らん

(恨めしい心よ、なんと恨めしい心よ。この深い恨みでどんなにあなた(=葵上)を泣かせても、あなたは此の世に生きてさえいれば、暗い水の沢辺に飛ぶ蛍よりも光る、光の君と契るのでしょう)  ※「水暗き~影よりも」は序詞

まさか能で泣かされそうになるとは。。
「光る君とぞ契らん」のところ、玄祥さんが「正面を見る」って仰ったとき、なぜか私はシテは葵上(ということになっている小袖)を見るのだろうと思ったのです。でも違いました。御息所は本当に正面(客席の方)を、何もない空間を見つめるのですね。
このとき彼女の視線の先に、光の君の姿が見えました。正確には、御息所の目には光の君が見えているのがわかりました。かつて彼女を愛してくれた、光の君の姿が。
先ほど玄祥さんはこの演目で御息所の視線は葵上を見ていると仰ったけれど、舞台を観て、彼女の心はその向こうにいつも光の君を見ていたのだと感じました。

本当は誰も恨みたくなんかない。光の君がもう自分を愛していないこともわかっている。よくわかっていても、想いを断ち切ることができなくて。
どんなに忘れたくても忘れられない、抑えても抑えきれなかった想いはついに限界を超え、彼女自身の意識しないところで、生霊となって葵上のもとへ飛んでしまう。
そんな自分を誰よりも恥じ、恨んでいるのは彼女自身。
鬱蒼とした水暗き沢辺は、きっと彼女の心。そこに光る蛍のような、光の君。
草いきれの湿った空気や、深い暗闇をぽぅと照らす光を、私は確かに感じました。
御息所は、きっと誰かに救ってほしかったのだろうと思う。こんな愚かな自分を止めてほしいと望んでいたのだと思う。もう自分では止められないから。最後に調伏してもらえたとき、ようやく彼女の心は平安を得ることができたのでしょう。
今回は白般若の面だけでなく泥眼の面(こちらは比較的新しいものだそうです)もどこか透明感のある美しさだったので、一層そう感じられたのかもしれません。帰宅してネットで泥眼を検索したら、もっとオドロオドロしい表情のものもいっぱいあることを知りました。なるほど、面選びって大切なのですね。

自分の中の、自分でも意識しない、コントロールできないもう一人の自分。
生霊というと特別なものに聞こえるけれど、きっと誰の中にもそういうものはあるのではないかしら。

50分間、本当に別世界にいるようでした。
やっぱり能ってすごい。

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光あるもの

2014-09-01 22:52:35 | 旅・散歩





今から7年前、2007年にNHKで放送された『関口知宏の中国鉄道大紀行 〜最長片道ルート36000kmをゆく〜』のテーマ曲、大山百合香さんの「光あるもの」です。

私の趣味は観劇だったり読書だったり美術鑑賞だったり色々ですが、たった一つだけ選ばなければならないとしたら、即答で旅!です。

この番組とこのテーマ曲は、私が旅が好きな理由がそのまんま詰まっていて、本当に大好きでした。
旅の楽しみって、予め計画になかったハプニングや出会いにこそありますよね。
だからツアーじゃなく、個人旅行が好き(宿泊先は決まっていないとダメな人間なので、バックパッカーはしませんけど)。
丁度会社を辞めてロンドンに行く直前に放送していた番組なので、今この動画を見ると当時の心境を思い出して感慨深いです。

日本人も中国人も他の国の人達も、言葉が違って、歴史が違って、文化が違って、だからこそ知りたくなる。だからこそ面白い。地球って楽しい。大変なことも多いけど、その何倍も何十倍も旅がくれるものって大きい。
たくさんの人が色んなところへ旅をして、TVやネットからの情報ではなく直に異なった文化を持つ人達と出会って、素直に驚いて、感じて、知り合って、その想いが広がって、それがやがて国と国のよりよい関係に繋がっていけばいいなと心から思います。

この番組は中国でもとても人気があったのだそうです。
動画のコメントもそれを感じさせる素敵なものが多いですね(*^_^*)

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