風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『春調娘七種』『義経千本桜(渡海屋、大物浦)』 @歌舞伎座(2月15日)

2022-02-17 00:34:35 | 歌舞伎




ブログには書いていませんが、歌舞伎座にはちょこちょこ行っています。
でもオミクロン株が流行り出してからはさすがに自粛していて、でも今月はニザさま一世一代だしな・・・と迷っているうちに月の中旬になってしまい、こんなご時世だしいつ休演になってもおかしくない、観ないで後悔したくない、と意を決して行ってきました。できれば第一部の梅玉さんの『御浜御殿』も観たかったな・・・。

【春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)】
梅枝萬太郎の曽我兄弟+千之助君の静御前。
舞踊の上手下手を見極める目はないけれど、萬太郎の五郎が元気がよくて動きもハキッときまって、見ていて楽しかったです。
春の七草の歌にのった若い3人の踊り。早春らしい澄んだ空気を感じながら、のんびりと拝見しました

(20分間の休憩)

【義経千本桜~渡海屋、大物浦~】
仁左衛門さんの知盛を見るのは、2017年3月に続いて2回目。
基本的には前回書いた感想と同じですが、前回より更に仁左衛門さんの気迫が増していたように感じられました。特に大物浦は凄い迫力だった。
前回いいなと感じた個所に加えて今回いいなと感じたのが、銀平。仁左衛門さんの銀平って、台詞のイントネーションが上方アクセントなんですね。あれ、いい!上方の堅気じゃない親分的な空気が素敵!ニザ様は西のお人ですものね、お似合いなわけだ。一方で吉右衛門さんの鬼平的な大らかな銀平も私は大好きなのですけど。
渡海屋最後の花道の引っ込みは、今回も美しかった。。。。。。。。。発光してた。。。。。。。。。。
安徳帝(梅枝の息子の大晴くん)への知盛の忠義は、松嶋屋が皇室崇拝のご一家だったことを思い出し(孝太郎さんが『終戦のエンペラー』で昭和天皇役をされたときに秀太郎さんがブログにそう書かれていた)、演技がリアルに迫っているのはそういう理由もあったりするのだろうかとか想像しました。
ラストで本当に仁左衛門さんが死んでしまうように感じられたのも、前回と同じ。

ただ、本当に本当に素晴らしい知盛ではあったのだけど、やはり私は吉右衛門さんの知盛が好きだな、と改めて感じてしまったことも前回と同じでした。
『渡海屋』の前の幕間に3階の廊下を歩いていたら亡くなった俳優さん達の写真の一番新しいところに吉右衛門さんの写真が加えられているのを見てしまい、それがとてもいい笑顔のお写真で、もう歌舞伎座であの空気を感じることはないのだなと不思議な気持ちになりました。劇場というのはやはり独特な空間ですね。
仁左衛門さんはどうか、長生きしていただきたい。。。。

脇では、孝太郎さんの典侍の局がよかったな。『渡海屋』の後半でお柳から典侍の局となる空気の変化が素晴らしかったし、『大物浦』も迫力の演技でした。私、このお柳&典侍の局の役って好きなんですよね、可愛らしさと潔さが両方感じられて。
そして左團次さんの弁慶がとてもよかった。大きさも厳しさも優しさも感じられて。仁左衛門さんとお二人並んだところも、最後の花道に一人立ったときの空気も素晴らしかったです。今回は(前回も?)弁慶が眠っている安徳帝をまたぐ場面はないんですね。また法螺貝はご自身で吹いてはおられなかったけれど、それはそれで落ち着いた気持ちで見られるのでよかったです。役者自身が吹くパターンはちょっとハラハラしてしまうので

私はこの演目、知盛が海に身を投げて幕が引かれて、盛大な拍手がおさまって、舞台上に義経達だけが残って、舞台と客席がシンと静謐な空気に変わる瞬間が大好きなんです。知盛の壮絶な死の名残の気配と、鎮魂と、義経達のこの先の運命と、そういった全てを表しているような厳かで透明な清らかさというんですかね。この演目にはいつも浄化の空気を強く感じる。
なのに。
今日の客席、知盛が海に身を投げて幕が引かれると「ニザ様もう出ないし、お芝居は終わり」とばかりに、ハンドバッグのファスナーをジーッと開けてオペラグラスをしまって、ガサガサと帰り支度を始める客達が。舞台上にはまだ義経一行がいるのに!これからが良いところなのに!あんた達本当にこのお芝居に感動したのと聞きたい。まあああいう輩はニザ様だけがお目当てで、芝居なんてどうでもいいんでしょうけど(毒舌失礼)。

以下、覚書。
・マイクがあったので、収録日だったようです。でも前日も収録していたそうなので、色々撮ってるのかも。
・喉の渇きを血で潤す上方だけの演出について、インタビューで「矢を舐める型と薙刀を舐める型があり、どちらかにしようと思っています」と仰っていましたが、この日は矢の血を舐める型でした。相変わらず血がお似合いのニザ様。
・今回の席は3階1列目でしたが、ラストの岩の上の知盛も問題なく見えました。
・仁左衛門さんの知盛は最後で後ろにジャンプはしないんですね。

終演後はいわて銀河プラザで、いつもの冷凍ホヤと、サバのマリネと、今回初めて北上市のロシア料理レストラン「トロイカ」の冷凍ボルシチを買ってみました。
このボルシチ、帰宅してレンチンして食べたら、美味しい。次回はロールキャベツも買ってみたい。
一つだけ残念なのは、トロイカのボルシチにはビーツが使用されていないこと。ビーツが入った本格ボルシチを食べたくなり自宅周辺のロシア料理店を探してみたところ、全然ない。あやしいガールズバーしかない。ロシア料理のレストランってこんなに少ないんですね。今まで割と気軽に食べていた気がしていたので、知らなかった。仕方がないのでレシピを探したところ意外と簡単に作れそうなので、自分で作ってみようと思います。それにしてもほんの2年前には本気で計画していたロシア旅行がどんどん遠くなっていくな。。。

ロシアといえばマリインスキーとイタリアツアー中のゲルギエフとトリフォノフがコロナ陽性となったそうで。お大事に…と感じる前に「ゲルギエフ×マリインスキー×トリフォノフってめっちゃ聴いてみたい組み合わせだな」と思ってしまった私は非情だろうか(今はそれよりも反日!とか言われそうだな)。
記事によると「マリインスキー劇場管弦楽団については先月末、オーケストラのメンバー50名以上に陽性反応が出たが、症状が出ているメンバーなどを除いてモスクワ・ツアーを敢行。その後、イタリア・ツアーに出発した。」。マリインスキーについては今更驚かないけど、イタリアもそれを受け入れてるのか。日本から見ると吃驚だけど、最近の欧州のスタンダードは案外そんな感じなのかも。なんか色々ぶっ飛んでるけど、とにかく皆さんお大事に。。。





トロイカのボルシチ。
ビーツ不使用でも本当に美味しかったので、機会がありましたら是非 肉が柔らかくて、サワークリームもたっぷりで、満足度高し。
(写真はいわて銀河プラザのHPからお借りしました)

※追記
自宅の近くにはなかったけれど、銀座に良さげなロシア料理レストランをみつけました(「ロゴスキー」) 
コロナが落ち着いたら歌舞伎観劇ついでに行こう。
あと丸ビルの「ゴドノフ」とか六本木の「バイカル」とか。やはり東京は揃ってますな。


©松竹

「一世一代と銘打たせていただきました」。
歌舞伎俳優の片岡仁左衛門が「義経千本桜渡海屋・大物浦」で渡海屋銀平実は新中納言知盛を勤めるのは、この『二月大歌舞伎』が最後となる。
「役者には完成というものはないですし、まだまだ勉強したい、まだまだやりたいんですけれど、いかんせん体力がきつい。20kg近い衣裳を身に着けますのでね。この次やらせていただくチャンスがあっても、果たして1ヶ月間自分の納得いくやり方ができるかどうか、お客様に対して恥ずかしくない芝居ができるかどうか。(最後だと)謳っておかないと役者はどうしてもまたやりかねないので自分でブレーキをかけました。今回が最後と言えば、”次でええか”と思っていたお客様にも来ていただける。それを狙ってます(笑)」と語る。
源氏への復讐を遂げようと凄まじい執念で源義経に迫る知盛。初演は平成16年4月の歌舞伎座だった。
「知盛を勤めた先輩方は既にいらっしゃらない。紀尾井町のおじさん(二世尾上松緑)と河内屋のおじさん(三世實川延若)を参考に、私なりにアレンジさせていただいて、私の型を作り上げました。ですからこの狂言には愛着を感じております」と語る。
物語を重視する大阪と、役者の見せ方を大事にする東京と、双方のやり方をミックスして知盛を描いてきたという。大物浦の瀕死の知盛が、自身に刺さった矢を抜き、その血で喉を潤す場面も凄まじい。
「これは東京の先輩方はなさらない、河内屋のおじさんはなさっています。薙刀を舐める型もあり、どちらかにしようと思っています。壮絶な雰囲気を何とか出したいですね」。
東西をミックスした、いわば「仁左衛門型」の知盛だ。
「今回で消えるかもしれませんから、せいぜいよく見といてください(笑)。こればっかりはなさる人が(どの型で勤めるか)選ぶことなので、こちらの方から売り込むものではないんです。(仁左衛門型で)勤めたいと言ってくれる方が現れればもちろん伝えようと思います」。
ぴあ

 仁左衛門は知盛を演じるにあたり、「安徳帝への忠義と源氏への恨み」を意識しているといい、「人物の生き様、戦いの虚しさ。そして忠義も場合によっては虚しさを伴うことがある。そういうことを訴えられれば」と、語ります。知盛が大碇を担いで入水する最後の場面は、「恨みも晴れ、安徳帝を確認したあと心静かに沈んで消えていく。一人の人間として、いろいろとがんじがらめになっていたものから解放されて、散り際、潔さを見せる...一つの武士の生き方」をお客様に観てもらいたいと強調します。 
  せりふを観客へストレートに伝える方法も、常に考えているという仁左衛門。役を演じるにあたり、「意味を伝えるだけではなく、思いを伝えるようにせりふを言うこと」を大切にしていると言います。「“おんてき”という言葉は、相手を尊ぶ“御敵”ではなく、怨む敵で“怨敵”。せりふで『怨敵九郎判官義経を討取って』と言いますが、お客様がその言葉を、“怨敵”ととらえてくださるか」と、神妙な面持ちで話します。「わからなくても雰囲気で汲み取っていただきたいところもありますが、できるだけお客様にわかる言葉で伝えたい。そういう部分はどんどん直している」と、明かしました。
歌舞伎美人

















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2 Comments

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Unknown (mihana223)
2022-02-19 12:04:39
こんにちは。
お元気そうで何よりです。(^^)

オミクロンが猛威を振るってる中、中々観劇に行った話って書き辛いの、よくわかります。
私の職場でも陽性者が続出して、人数激減しました。
なのに、上の意見がまとまらなくて、二転三転、朝令暮改。
毎日、業務調整に走り回ってます。(TT)
だから、不要不急の外出はするな!と会社は言いますがストレス溜まりまくって、笑顔で仕事を回すため、中島みゆき劇場版に4回(毎週)行ってました。
バレたらヤバいんですけどね。(^.^;
って、変な愚痴を言うためではなく、知盛のお話だったので、少し。
もうご存知かもしれませんが、今「平家物語」のアニメが放映されています。
私の大好きな漫画家の高野文子先生がキャラクター原案を担当されたこともあり観始めたのですが、これが大変美しく面白いのでハマっています。
そういうアニメがあることをお伝えしたくてコメントしました。
地域によって放映時間に違いがあるので、興味があれば検索してくださいませ。
追記、
私も、余韻に浸りたいタイプなので映画のエンドロールが終わる前に立つ人とかは腹が立ちます。

長々とすみません。
では、また、お元気で。(=^・^=)
返信する
Unknown (cookie)
2022-02-19 17:22:13
mihanaさん、コメントありがとうございます(^^)

うちの会社も同じく朝令暮改です。。。
もはや社の対応マニュアルは意味をなさず、国の基準と社の基準も違うので(社の基準の方が厳しい)、もし今自分が罹っても自宅待機が何日なのかも不明です。もちろんそういう事態になったら担当部署に報告するので、そこで指示があるのだと思いますが…。どこも同じような状況なんですね^^;
うちの職場の罹患者は結構発熱しています。味覚障害の出た人もいました。オミクロン株は無症状や軽症と言われていますが、油断は禁物ですね。と言いつつ、生きる栄養も必要なので観劇は行きますが(笑)。お互い気を付けつつ、楽しみましょう~。

「平家物語」のアニメ!mihanaさんはご存じだったんですね!しかも高野文子先生が大好きだとか。
私はこのアニメ、つい最近知ったんです。ネットのニュースで。なので、録画を始めたときは既に何回か終わってしまっていて・・・。まだ録画したものは見てないのですが、一層見るのが楽しみになりました。ありがとうございます!
『あさきゆめみし』もそうですが、古典の漫画やアニメ化はストーリーや世界観が現代の私達にもわかりやすく伝わってきて、嬉しいですよね♪

ではまた^^
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