風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

福井晴敏 『亡国のイージス』

2006-09-26 22:31:41 | 

裏切られたからって、裏切るつもりはない。他人に褒められようが捨てられようが、そんなのはただの結果だ。おれはそんなことのために働いているんじゃない。……戦う理由は、他人から与えられたり押しつけられたりするものじゃない。自分で見つけて、自分でつかみとるなにか……。自分にしか触れられないなにかのため……甲斐を守るために、戦うんだ。……生き甲斐だ。生きてて良かったって思えるなにかだ。それがあるから、人は生きていけるんだって……そう教えてくれた人の言葉を、おれは信じる。

(福井晴敏『亡国のイージス』下p111)


この本は、好きですねー。読んでいてとても楽しかった本です。
好きな本トップ20?くらいには入るかも(古典除く)。
ああそれなのにそれなのに……。同じ作家の『終戦のローレライ』は私の嫌いな本トップ20に入るんですよ、実は。はっきり言ってしまえば、嫌悪感が走るくらい。理由は色々ありますが。イージスを読んだときは素敵な作家が出てきたと嬉しかったのになぁ。残念…。

さて。話をイージスに戻しましょう。
ローレライが苦手な理由の一つにこの作家の戦争観がどうにも私と相容れないということがあるのですが、この点イージスのテーマは戦争というより防衛なので、さほど抵抗なく読むことができました。それに、このお話の核となるのは主人公達の内面で、その描写がとっても爽やかで良いのです(この作家の文章は良くも悪くも爽やか)。このお話で特に好きなのは、主人公二人が「絵」でつながっているというところ。芸術って人間の中の最も純粋な部分の表れだと思うので、そういう感覚で通じ合える関係ってすごくいいなって思います。
ローレライも、せめて上下巻位できちんとまとめてあればまだ読めたんだけどなぁ…。色々詰め込みすぎだ。福井さんはあれだけの長編を描くには筆力がまだ足りないように思うのです。

写真は、横須賀の海上自衛隊。
ちなみにイージスを読むとむしょーに千葉の白浜町へ行って太平洋を眺めたくなります(笑)

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中島みゆき 『永久欠番』

2006-09-13 17:18:18 | その他音楽



どんな人間も、一瞬でもこの世界に存在した以上、望もうと望むまいと必ず何かを残していくものだ。
私達が生きた証は必ずこの世界に残る。
たとえどんなに小さくても、誰もそれを知らなくても、私達が見上げるこの空はちゃんとそのことを知っているから、大丈夫。

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中島みゆき 『孤独の肖像 1st.』

2006-09-12 18:46:13 | その他音楽

某美容外科のCMで、「私の鼻がもうちょっとだけ高かったら…、私の目がもうちょっとだけ大きかったら…(この世界も変わるかもしれない)」みたいなCMがありますが。

どうなんだろう。
尾崎豊もそうだけど、みゆきさんもとても美人で才能にも恵まれて名声も財産も、普通の人が一生かけても手に入れられないものをこんなに沢山もっているのに。
そんな彼らが作る曲は、幸せ一杯♪という所から程遠いものばかりだ。
この二人のことを思うと、人の幸せは本当に主観的なものなんだな、と感じる。
そしてそんな風に不器用に真っ直ぐにしか生きられない人たちだから、私は彼らのことが好きなのだと思う。真面目に生きている人が私は好きなのです。真面目というのはもちろん表面的な意味ではなく、人生に対する姿勢のこと。

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中島みゆき 『命の別名』

2006-09-06 19:12:33 | その他音楽

ドラマ「聖者の行進」の主題歌。
名もなき者たちに優しいみゆきさんの歌がとても好きなのです。
なんのために生きているんだろうと考えてしまうとき、「命」の別名は「心」だと言い切るこの曲を聴くとほっとする。
もう何年も前、はっきりした理由はないのに精神的に壊れかかった時期があった。まずいな…という自覚はあるのに止められない。普通だったら飛び上がるような怪我をしても鈍い痛みしか感じなくて、そのわずかな痛みが快感にさえ思えて、こういうことって本当にあるんだなあってぼんやりと思った。傷口から流れる赤い血をじっと見て、私は生きているんだなって思い出したりした。
そんな真っ暗闇な心に小さな、けれど力強い灯りを照らしてくれたのが、この曲でした。
音楽の力ってすごい。

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中島みゆき 『ひまわり "SUNWARD"』

2006-09-05 19:40:43 | その他音楽

たとえどんな名前で呼ばれる時も花は香りつづける。
東西ドイツや南北朝鮮などの意味からもももちろん読めるけれど、もっと広い意味でも読むことができる歌詞ですよね。

花が香るのは、名前がついているからや誰かの庭に咲いているからじゃない。花の香りも、その名前や持ち主によって変わるものではない。名前も持ち主も後からついてくるもの。それらをとっぱらえば、花はただ花としてそこに咲いているだけだ。
人も同じ。学校や会社や役職や国籍がある以前に、人間はただ人間であるというだけで価値ある存在なのだ、と。

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