風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

太宰治『パンドラの匣』 & 鎌倉文学館特別展

2009-10-12 19:41:33 | 

僕の周囲は、もう、僕と同じくらいに明るくなっている。
全くこれまで、僕たちの現れるところ、つねに、ひとりでに明るく華やかになって行ったじゃないか。あとはもう何も言わず、早くもなく、おそくもなく、極めてあたりまえの歩調でまっすぐに歩いて行こう。この道は、どこへつづいているのか。それは、伸びて行く植物の蔓に聞いたほうがよい。蔓は答えるだろう。
「私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当るようです。」

(太宰治 『パンドラの匣』)


みなさま、お久しぶりです。お元気ですか?
お久しぶりすぎてgooブログの使い方がすっかり変わっており頭がくらくらしているcookieです。

本当に、すっかりご無沙汰ですみません…。
私は元気にやってます。
お仕事は6月から派遣のお仕事しています。落ち着いたら正社員を探すつもりだったのですが、職場の人がちょっとあり得ないくらい性格の良い人たちばかりだったため、思わず契約更新してしまいました。仕事自体はものすごーーーく忙しいんですけどねぇ・・・・・。

そんななか久々の更新。
カテゴリは本にしましたが、映画のお話です。
今公開中の(と言っても都内でも一館だけだけど…)『パンドラの匣』。
昨日観に行ってきたんですが、すごーーーーく良かったのです。
あの本の世界がそのまんま!
面白さも、哀しさも、おもみも、かるみも、美しさも。
もともと私は好きな小説の映像化は大抵OKな人間です(ダメって人も多いですよね)。本に出てきた建物や食べ物や風景が映像で見られるのは、多少イメージと違っても、やっぱり至福。
でもこの『パンドラの匣』は筋は変えられてあっても、ほとんど私のイメージどおりでしたし、出来は期待よりずっと上!
というわけで、上映館は少ないですが、原作がお好きな方はぜひぜひ(とこれが言いたくて更新しました)。
★公式サイトはこちら


あとも一つお知らせ。
このブログを読んでくださっている方なら興味あるかなと思って。

今由比ガ浜の鎌倉文学館で開催中の特別展「鎌倉からの手紙、鎌倉への手紙」。
これがね、またいいのです。見どころいっぱい。
正岡子規から漱石へ宛てた「ずるいことはずるいが忙しいことも忙しいので御無沙汰致候。苦しいことも苦しいが忙しいことも忙しいので筆ははなさず候。胃が悪いことも悪いが、いそがしいこともいそがしいので大食も致し候」の手紙も展示されてます。柄付き便箋だった!手紙の最後で「この手紙書くのもいやいや書いたから乱暴だ」と自分で書いているとおり、素晴らしい乱筆(笑)。でもあれだね、子規の手紙はやっぱり哀しいね…。深刻ぶらない口調がかえって哀しみを増す典型…。長い手紙なのに書き損じが全くないのもすごいです。あぁ、子規…(T T)。来月からNHKで『坂の上の雲』もはじまりますし、必見。

他には、漱石が鎌倉で夏休みを過ごしている娘へ宛てた葉書(「お父さまも海へはいりたい」と書いてある)とか、芥川龍之介の『地獄変』の原稿とか、中原中也が母親へ宛てた手紙とか、棟方志功の版画付き年賀状とか(これもらった人すごい価値だよね)、萩原朔太郎や三島由紀夫の手紙とか、そうそう太宰治が川端康成へ宛てたかの有名な「芥川賞ください!くれなきゃ死ぬかもしれない!」の手紙も展示されていますよ、みなさん!康成さん、ちゃんと保管していたんですねぇ(^_^;)。これも必見。すごいよ。各行たった3~5文字なんですよ。書き初めのような大きな綺麗な丁寧な字であんな奇怪な(本人は真面目なのでしょうが…)内容を書いちゃうんですよ。やっぱりタダものじゃない…!と思いましたね。
以上、見どころいっぱいな鎌倉文学館特別展。12月までやっていますので、近代文学ファンの皆さまはぜひどうぞ(^_^)
ちなみに、この文学館は建物自体もとても素敵なんですよ。加賀前田家の別邸だったところで、鎌倉の海が正面に見渡せます。三島由紀夫の『春の雪』のモデルにもなっています。

しかし久々のブログ、楽しいですね。
また更新がんばろうかな。でも仕事が泣きたいほど忙しいからなぁ…。

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