風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

漱石の英語学習法

2008-09-13 23:12:03 | 



 英語に就(つい)ては、その前私の兄がやっていたので、それについて少し許(ばか)り習ったこともあるが、どうも六(むず)カ敷(し)くて解らないから、暫らく廃(よ)して了(しま)った。その後少しも英語というものは学ばずにいた者が、兎に角成立学舎へ入ると、前いう通り大抵の者は原書のみを使っているという風だから、教わるというものの、もともと素養のない頭にはなかなか容易に解らない。従って非常に骨を折ったものであるが、規則立っての勉強も、特殊な記憶法も執ったわけではない。
 又、英語は斯ういう風にやったらよかろうという自覚もなし、唯早く、一日も早くどんな書物を見ても、それに何が書いてあるかということを知りたくて堪らなかった。それで謂わば矢鱈に読んで見た方であるが、それとて矢張り一定の時期が来なければ、幾ら何と思っても解らぬものは解る道理がない。又、今のように比較的書物が完備していたわけでないから、多く読むと云っても、自然と書物が限られている。先ず自分で苦労して、読み得るだけの力を養う外ないと思って、何でも矢鱈に読んだようであるが、その読んだものも重にどういうものか、今判然と覚えていない。そうこうしている中に予科三年位から漸々(だんだん)解るようになって来たのである。

(夏目漱石『私の経過した学生時代』より)


英語の勉強がメインの留学じゃないのでなかなか時間がとれないけれど、それでも明治時代とは比べ物にならないほど書物もインターネットも山ほどある現代、さらにロンドンにいる自分。
漱石の文章を読んで、もっともっとがんばれるはず、と思った次第です。
あと四か月。がんばるぞー。

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