風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

花に嵐のたとえもあるぞ ~BUNGO 日本文学シネマ~

2010-03-12 20:03:25 | テレビ

唐詩選の五言絶句の中に、人生足別離の一句があり、私の或る先輩はこれを「サヨナラ」ダケガ人生ダ、と訳した。まことに、相逢った時のよろこびは、つかのまに消えるものだけれども、別離の傷心は深く、私たちは常に惜別の情の中に生きているといっても過言ではあるまい。

(太宰治 『グッド・バイ』作者の言葉)


お久しぶりでございます。
すっかりご無沙汰で、それでも毎日多くの方にご訪問いただき、本当にありがとうございます。
みなさま、お元気でしたか?
春、ですねぇ^^
上の引用は、太宰の未完の遺作『グッド・バイ』、作者の言葉より。
“或る先輩”とは皆さんご存知のとおり井伏鱒二で、原文は「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」。
ここでいう“花”はやっぱり桜、なんでしょうかね・・・?
中国だと違うのかな?
桜以外に考えられない私は、つくづく日本人。

さて。
今回更新しましたのは、例によって皆さんにオススメしたいものがあるからです。
先月深夜にTBSテレビで放映されていた『BUNGO -日本文学シネマ-』。
観られた方も多いかもしれませんが、太宰、芥川、谷崎、森鴎外、梶井基次郎の短編小説をショート・ドラマ化したものです。
昨年12月に訪れた斜陽館が撮影に使われたと聞いたのでDVDに録画しておいて、それを先日観たのですが。
うーん、すばらしい出来。。。
最近の近代文学の映像化、ほんとうまいねー。

もっとも、芥川の「魔術」と、梶井基次郎の「檸檬」はちょっと微妙・・・でしたが。残り4つはとても良かった!
特に太宰の「グッド・バイ」、めっちゃいい。
未完のあれをあんな風に纏めちゃうなんて、制作スタッフ、ぐっじょぶすぎる。
山崎まさよしも、すごくよかった。
女にだらしなくて、優しくて、身勝手で情けない男がぴったり。
別れる女性に告げる「グッド・バイ」の言い方も、どういう風に言うのかな~と思っていたら・・・、おお、そう言いましたか。すごくいいじゃないの。
ラストの終わり方も大好き。明るいラストと、これを最後に太宰が死んだ事実と、山崎まさよしの「ア・リ・ガ・ト」の歌詞とで、あったかいような、切ないような、悲しいような、でも人生ってやっぱりそんなに悪くもないなっていうような、不思議に前向きな感じが残って。
あと、お酒を飲むシーンでお店の看板がさりげなく「ル・パン」!ファンサービスばっちり。エンドクレジットの映像もル・パンの太宰の写真と同じだし。やるなぁ。

一部地域はこれから放送のようですし、DVDも発売されるようなので、まだ観ていなくてご興味のある方はぜひぜひオススメです^^
そうそう、テーマ曲(いきものがかり「真昼の月」)も、とてもよかったですよ。

それではみなさん、また次回の更新でお会いしましょう。
「さよならだけが人生」という訳は私はあまり好きではありませんが、どんな関係にもいつか“必ず”さよならは来る、それだけは真実です。
だからこそひとつひとつの出会いを、繋がりを、大切に生きなければならないのだと思います。
春はそんなことを改めて思い出させてくれる季節です。

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