風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

NHK交響楽団 第2004回定期公演Aプロ @NHKホール(2月4日)

2024-03-02 14:34:59 | クラシック音楽




信じる道を命がけで突き進む井上の“最後のN響定期”

[Aプログラム]は井上道義のライフワークであるショスタコーヴィチ。《交響曲第13番「バビ・ヤール」》は、第2次世界大戦中のウクライナで起きた、ナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺がテーマである。生存者によるドキュメンタリー小説が出版されているが、銃殺される直前、死体が折り重なる谷底に自ら飛び込んで難を逃れたという、生々しい体験談が記されている。今日の世界を見れば、残念なことに、これを歴史の1ページとして片づけることはできそうにない。

「想像を絶する現実を前にすると、ショスタコーヴィチの音楽すら空しく感じる。これを演奏する意味があるのか」と、井上は自問自答を繰り返してきた。だが、常に音楽する意味を問い続ける姿勢こそが、指揮者・井上の本質なのだと思う。

前半には、短い舞曲を演奏する。ヨハン・シュトラウス2世の《ポルカ「クラップフェンの森で」》の原題は、「パヴロフスクの森で」。ウィーン音楽のイメージがあるが、もともとはロシア皇帝の離宮を囲む、貴族の別荘地を描いている。鳥のさえずる平和な光景は、革命により一変した。

続くショスタコーヴィチ《舞台管弦楽のための組曲》は、同じ舞曲と言っても、まるで異なる様相を呈する。最も有名な「第2ワルツ」は当初、ソ連のプロパガンダ映画『第一軍用列車』で使われた。音楽はここで、革命をたたえるアイテムの一つに変貌している。

2024年限りでの引退を表明した井上道義。これは彼が指揮する最後のN響定期である。初共演から46年。途中に長いブランクはあったが、2008年からは毎年のように共演を重ねている。マエストロの破天荒な言動が、周囲との軋轢を生むことも少なくなかったはずだが、信じる道を命がけで突き進む彼の音楽が、時としてどれほど魅力的に響いたか。唯一無二の機会を逃してはなるまい。

NHK交響楽団ホームページ

・・・一曲目にカッコーのワルツは選んだのには訳がありますがそれはそれ。僕も愛したクライバーのより自然な演奏ができたはず。
面倒な名前の付いたドミトリーの別の面を見せてくれる4曲も3階席までチャーミングにねじくれたワルツとポルカを届けられたと信じてます。

2日目の2月4日の演奏はさらに確信に満ちたものになってくれた。ショスタコのうらぶれた哀愁のワルツは場末感が深まり、ポルカでさえもどこか空虚感が聞こえたと思う。
13番はこの日も録音ができたのでこの最高の、物語コンサートのような作品をいつか録音などで聞いていただけると思う。

井上さんのブログ


最近、演奏会の感想を書く気力なのか熱意なのかが落ちている。。
それなら書かなければいいのだけど、このブログは自分用覚書として思いのほか有用なのでやめられず。。とりあえず一ヶ月以内のアップだけは頑張ろう。
プライベートで色々あり演奏会がストレスになっていたり、でもそれを超える大きなものを生の音楽からもらえていたり、なこの頃です。

【ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336】
初めて聴いたけれど、美しく楽しい曲ですね!井上さんはこういう軽やかな曲もとてもいい。最後のカッコー♪で奏者さんが「吹いてるのは私じゃないですよ~」なパフォーマンスのときに楽器の一部?を落としてしまうハプニングがあって和やかな笑いが起きたけれど、それも含め素敵な演奏でした

【ショスタコーヴィチ/舞台管弦楽のための組曲第1番-「行進曲」「リリック・ワルツ」「小さなポルカ」「ワルツ第2番」】
井上さんってロシアで生活されてたことがあるのかな?と聴きながら感じてました。それくらい”ロシア”の音がしていた(私はロシア行ったことないけど)。
ご自身がブログでも書かれている”うらぶれた哀愁”のようなもの。曲自体もそうだけど、井上さんの音からそれが感じられて、ああ、ロシアだ・・・としみじみと感じながら聴いておりました。
後半のバビ・ヤール目当てでとったチケットだったけれど、前半でこんな演奏が聴けるとは嬉しい驚き。
そして改めて井上さんにはショスタコーヴィチの音楽がよく似合う。

(20分間の休憩)

【ショスタコーヴィチ/交響曲第13番変ロ短調作品113「バビ・ヤール」】
バス:アレクセイ・ティホミーロフ
男声合唱:オルフェイ・ドレンガル男声合唱団

字幕なしでもある程度ついていけるくらいには歌詞を頭にいれていったけれど、それでも所々迷子になってしまったので、やはり字幕は欲しかったなぁ・・・。井上さんのブログによると井上さんは字幕を希望したようだけれど、N響側が「音楽に集中したいお客さんもいるから」と主張したようで(実際、この後の大フィルでは字幕ありだったそうです)。
それはともかく、演奏は素晴らしかった。
これは井上さんの特徴でもあるように思うけれど、リアルなドキュメンタリーのようなバビ・ヤールというよりは、情熱的でありながら音楽的な美しさも兼ね備えたバビ・ヤール、という風に感じられました(ティホミーロフの独唱もオルフェイ・ドレンガル男声合唱団の合唱も)。そしてそれゆえの凄みといいますか、しばらく後を引いて消えない、そんな演奏だった。
この曲、個人的には第二楽章の「ユーモア」がとても好き。音の軽やかさに包まれた毒。
そして、第五楽章「出世」。ストーリーのようなこの曲を第一楽章からずっと聴いてきて、最後の最後の弦の響きのとてつもない美しさにやられました。。。あれはコンマスの郷古さんかな。
この曲って予習のときは独裁国家の恐怖のようなイメージが強かったけれど、今日の演奏を聴いて、最後の最後の言葉にできないほどのあの美しい弦の響きを聴いて(これはもちろん井上さんの指示によるものと思う)、まだ僅かに、でも確かに残っている人間という生き物に対する希望、信頼、救いをショスタコーヴィチが見せてくれているように感じられました。
こんな曲だったのか・・・、と。
それを今の世界情勢の中で聴く重み・・・。
忘れられない演奏となりました。

井上道義に聞く―2024年2月「最後のN響定期出演」でショスタコーヴィチを指揮

2024年末指揮者引退に向けてカウントダウン進行中(SPICE)

 



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