シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

しあわせの雨傘

2011-01-14 | シネマ さ行

久々に劇場で見たい!と思ったフランス映画。フランソワオゾン監督の作品は何作か見ていますが、やはり「8人の女たち」が印象的だったかな。今回は予告を見て面白そうだと思ったのとカトリーヌドヌーヴも好きなので見に行くことにしました。

まず、舞台が1977年ということで、ファッションや政治、文化の面で現代とはまったく違い、この物語にとてもフィットしています。フランスでさえまだ男尊女卑だった時代に退屈な専業主婦スザンヌ(ドヌーヴ)が心臓発作で倒れた夫ロベールファブリスルキーニに代わって労働運動に揺れる雨傘工場の切り盛りをすることに。

スザンヌの掲げる経営方針は夫のものとは正反対の「友愛の精神」日本人は、誰かさんのせいでこの言葉を聞くとちょっと笑っちゃう感じだと思うんですが、「友愛の精神」そのものには何の罪もなく、実際に大切な精神だと思います。実の娘ジュエルジュディットゴドレーシュにまで「ママのような“飾り壺”にはなりたくない」とバカにされるような世間知らずだと思われていたスザンヌですが、友愛の精神あふれた工場経営に意外な手腕を発揮して、夫がいない数か月の間に労働者の意欲もアップ、収益もアップ、すべてがうまくいったと思っていたときに夫が休暇から戻ってきてしまい、娘を取り込んで妻を工場から追い出してしまう。され、スザンヌはどう反撃するのか!?

スザンヌの過去の情事の相手ババン議員としてジェラールドパルデューが登場するのですが、ドヌーヴに比べるとドパルデューまでもが、なんだかヒヨっ子に思えてきちゃう。しかも、情事の相手はババン一人かと思ったら、出るわ出るわ。あんなにさらっと告白されちゃうと、なんだかなんでもないことのように思えてしまう。「だって、仕方なかったのよ。あの頃の私は若くて美人で」なんてセリフ、いくら架空のセリフでもドヌーヴにしか言えないよ。夫の浮気に泣き寝入りしているだけかと思ったら、息子ローランジェレミーレニエの本当の父親が誰かさえはっきり分からないほどだなんてねー。でもさ仕方ないよ、だってドヌーヴだもん、だってフランス人だもん。

そのドパルデューとドヌーヴにクラブでダンスを踊らせたり、最後にドヌーヴに歌わせたりと、オゾン監督ってもうまるでドヌーヴと同世代で何本も一緒に撮ってきた仲かのような演出を見せてくれますが、監督まだ43歳という若さなんですよねー。これには本当にびっくりしてしまいます。ドヌーヴにあんなジャージまで着せちゃうし。(と言っても70年代風で襟とかなんかオシャレな感じのするジャージなんですけど)彼がゲイということもあって、息子のローランは結局ゲイってカミングアウトするのかなと思っていましたけど、それはなかったですね。なんか妙に匂わせてた気がしましたが。

まだ70年代後半だけど、スザンヌが「私は80年代の女よ」と言って夫に反撃を開始するところは、本当に清々しかったです。もちろん、お話はあまりにもとんとん拍子に行き過ぎますが、そんなことはどうでもいいって思えるくらいスザンヌは魅力的でした。


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