建設現場で働く少年とそこへ現場で怪我をした父親の代わりに男の子だと偽って働きに来た少女の淡い恋心を通して、イランにおけるアフガニスタン難民の姿を描く。
まずイスラムの社会で女の子が性別を偽って働こうものなら、どれほどの非難を浴びることか。そんなことは分かりきっていながら、そうまでして働かなくては生きていけない。その子が本当は女の子だと知ってしまい、恋心まで抱いた少年は、陰ながら彼女を助けることを心に誓う。彼女を助けるためにその家族にお金まで用意する。彼女への恋心は完全に隠して。社会的にも宗教的にも背景が日本とはまったく異なる国での出来事がワタクシたちには新鮮に映る。戦後の日本を見ているようと言えば、似通った部分もあるのかもしれないが、やはり宗教的なことや周辺諸国との緊張関係などはかなり異なっているだろう。
アフガニスタンの難民を違法に働かせている雇い主も法律的に見れば悪いのかもしれないが、難民にしてみれば、少しのお金でも稼がせてくれる彼は何もしてくれない国なんかよりよっぽど「善」なのかもしれない。あの雇い主はかなり良心的なほうだっただろうけど。
映像的には、原題がどうやら「雨」という意味らしく、実際「雨」が非常に効果的に使われていた。ラストではきっともう二度と会うことはないであろう彼らの心は通じ合ったのだと思いたい。
マルジャンストラピというイランの女性が書いた「ペルセポリス」という本を読んだことがあるが、それはイランでも都市部のリベラルな家庭に育った子の話で、この映画の中身とは切り口は随分違うが、イランにおいて女性がどのような状況に置かれているかなどを知るにはすごく役に立つし、純粋に読み物としても面白いので、この映画と同様オススメします。
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