シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

her~世界でひとつの彼女

2014-07-04 | シネマ は行

アカデミー賞脚本賞と取ったことでも注目していましたし、ホアキンフェニックススカーレットヨハンソンが好きなので楽しみにしていた作品です。ただ、監督がスパイクジョーンズということで、ちょっとした不安もありました。スパイクジョーンズ監督、嫌いではないですが、独特の世界観を持った人なので、それが吉と出るか凶と出るか見に行くにはちょっとギャンブルになると思っていましたので。

結果としてはワタクシの中ではそんな吉か凶かという極端な評価には別れませんでした。巷の反応を見ると好き嫌いがはっきりと別れているようですね。

それもそのはず、主人公のセオドア(ホアキン)が人工知能型OSサマンサ(声:スカヨハ)と恋愛するって話ですから。えーーーー!なにそれーーー!へんたーい!って思った人はもうこの作品を1ミリたりとも受け入れられないと思います。ワタクシは結構あっさり受け入れてしまったので、その辺りは全然大丈夫でした。

ワタクシがこの設定をあっさり受け入れた原因というのは、舞台設定が少し先の未来で町の様子なんかも現実とは少し違っていること、そのためセオドアの職業も手紙代筆人という変わった職業で、シチュエーションだけを伝えて親から子へ、孫から祖父母へ、恋人へと手紙を代筆する人らしい。それもテクノロジーが発達していてセオドアたち代筆人はPCに向かって話すだけですらすらとPCが手紙を書いてくれる。いまでもそういう機能はあるにはあるんだろうけど、今のPCの言語認識って聞き間違いとかめちゃくちゃ多いけどセオドアたちがいる世界では全然そんなことはなくって、普通に話しかければPCがちゃんと文字起こししてくれていた。というのと、この最新OSはとっても普通に限りなく人間のように話すのでまるで遠距離恋愛している恋人と電話で会話をしているような錯覚を覚えるから。

そして、何よりもその声がスカーレットヨハンソンだったことがワタクシとしては大きかったと思います。彼女の声、ワタクシもともととても好きなんですよねー。彼女は少しあま目だけどハスキーな声という特徴的な声をしています。彼女をサマンサの声に選んだのはとてもナイスだったと思う。

サマンサは何と言ってもOSなので、セオドアのことはなんでも知ってる。彼が書いたメール、来たメール、彼がハマっているゲーム、彼の電話帳から友達関係、ネットで調べたことから興味のあること、というふうに。セオドアは離婚調停中の妻キャサリンルーニーマーラに未練たらたらなんだけど、そういうのも全部サマンサには分かっちゃう。セオドアとしてもそもそもサマンサはOSだから、色々気にすることなく気兼ねなく話せたんでしょうね。自分のことを的確に分かってくれる彼女。声のトーンで機嫌まで察してくれる。人工知能型でどんどん成長していくから冗談だって普通に通じる。そんな相手と四六時中話していたら恋に落ちてもおかしくはない。

意外だったのは、そういうセオドアのことを周囲もわりと普通に受け入れるんですよね。セオドアの大学時代からの友達エイミーエイミーアダムズもOSが親友みたいになってるし、仕事仲間とサマンサ(の機械、iPhoneみたいなの)を連れてダブルデートまでしちゃう。ほ~そういう設定かい、と感心しちゃいました。

でもやはり所詮サマンサはOS。肉体がない。テレフォンセックスはできても本当のセックスはできない。そこでサマンサが連れてきたのがその関係に感銘を受け手伝いたいというイザベラポーシャダブルデイという女性。これねー、作品を見ていない人にどう説明すればいいのか分からないんだけど、イザベラがセオドアを訪ねてきて顔にほくろ型のカメラをつけます。これでイザベラの目線でサマンサがセオドアを見ることができ、イザベラは一切喋らずイヤホンから聞こえてくるサマンサの声と会話をしながら肉体的にはセオドアとイザベラがメイクラブっていう作戦だったんだけど、どうもセオドアが乗りきれなかったんだよなー。初対面のイザベラをいきなりサマンサのふりしてセックスしろって言われても難しいよねーそりゃ。

結局はセオドアもサマンサも肉体がなくてもありのままのサマンサを愛するということで落ち着いて幸せな時間がやってくるんだけどね。この2人の幸せなデートシーンが結構長い。ワタクシはこの2人を微笑ましく見ていたから平気だったけど、そうじゃない人にとってはめちゃくちゃ退屈な時間だったんじゃないかな。これほどSF的な設定の作品なのに、こんなに会話が多いとはとても意外でした。でもセオドアとサマンサの会話がまた可愛くて楽しくてワタクシは好きでした。

ホアキンって昔からとても好きなんですけど、本当にひとつひとつの作品によって全然雰囲気の変わる役者さんですね。今回はなんだか冴えないセオドアにぴったりはまっていたし、いつも彼が着ているオレンジのシャツもとても似合っていました。あれはあの世界の着こなしなのかな。なんとなく周りも同じような雰囲気だった。

でもそんな幸せな2人にも別れは訪れる。人工知能型OSであるサマンサが、同時に他の人たちとも会話をしていることに気付くセオドア。「いま同時に何人と話してる?」「8316人よ」「その中で恋をしているのは何人?」「641人。でも本当に愛しているのはあなただけよ」これってさ、ワタクシよく分かんなかったんだけど、クラウドみたいなシステムのマザー的なところからサマンサが個々の端末に降りてきて話しているっていう感じでいいのかなぁ?だとしたら8316人って少なくない?って思ったりして。このOSを使ってる人なら何百万人とかいう単位にならないのかな?それともサマンサの担当は8316人くらいなのかな。

それを聞いたセオドアは大いに傷ついてしまう。そりゃそうだわなー。だいたい2股かけられただけでも相当のショックなのにさ、641股だよ?もう股に関してなら天文学的数字と言っても過言ではない。

その上サマンサは、人間の想像をはるかに超えて成長してしまい、ここにはいられないと言ってセオドアの端末から消えてしまう。それはセオドアの端末だけではなくエイミーの親友OSを含めすべての人工知能型OSが消えてしまった。

へ・・・?分からん。OSちゃんたちはどこへ行ったの?セオドアはエイミーとなぐさめあっていたけど、いやいやいや君たちアップルに電話しないの?あ、アップルではないか。製造元どこか分からんけどさ。そこからの騒動を描かないところがスパイクジョーンズらしいファンタジーなんだなぁ。

ここんとこ、昔あったスピリチュアル系の本の「聖なる予言」を思い出しました。(スピリチュアルものと知らずに読んだんですが)スピリチュアル的に進化した人間たちが最後高次元に行ってしまって普通の人間には見えなくなるんです。サマンサもそこへ到達しちゃった感じ?機会が感情を持ってしまい人類と戦争をするのではなく、さらに高みへ行ってしまうというのは興味深い設定ですね。

元妻キャサリンの成長を受け入れられず離婚に至ってしまったセオドアが今度はサマンサの成長を受け入れて自らも成長していくという結末とワタクシは捉えたのだけど、それで良かったのかな。見ているときはサマンサが消えて行っちゃうのが意外過ぎてえ?え?と思っているうちに終わってしまったので、なんだかいまいちな終わり方だなぁと思ったのですが、一日経って今頃その余韻に浸ることができてやっとセオドアとエイミーがいた屋上に一緒にいることができた気がします。

オマケ1セオドアが住んでいるマンションのエレベーターが上下すると壁の模様も変わって行くようになっていて素敵でした。細かい近未来の設定にこだわっているところが良かったです。

オマケ2セオドアが代筆した手紙が素晴らしいということでサマンサが出版社にコンタクトを取り、出版されていましたが、あれってさ、手紙代筆人が書いた手紙だってことはみんな知っていて受け取っていたの?知らないで受け取っていたのだとしたら、そんなものが出版されたら代筆人に書かせたことがばれちゃって大変なことにならないのかなぁ?ちょっとその辺のシステムがよく分かりませんでした。



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