シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

砂と霧の家

2011-02-03 | シネマ さ行

随分前にケーブルテレビで放映していたものを撮りだめしていたので見ました。

いやー、暗い!本当に暗くて救いのない話。

キャシージェニファーコネリーは父から相続した家に夫と住んでいたが、夫には去られ、いまはその家に独りで暮らしている。しかし、たった500ドルの所得税を滞納したということであっという間に家を競売にかけられてしまう。

その家を競売で破格の値で購入したのはイランからの移民のベラーニ大佐ベンキングスレー。彼は祖国の政変で仕方なくアメリカに亡命してきたのだが、アメリカでは思うように収入を得られず、祖国での生活水準を変えようとしない妻ショーレアグダシュルーの前ではお金のあるふりをしてきた。そのため、この破格で手に入れた家にしばらく住んだあと転売し、儲けを得ようと考えていた。

キャシーを行政に代わって追い出したときの警官レスターロンエルタードは妻子ある身でありながら、キャシーに魅かれ不倫の関係に陥ってしまう。妻子を捨ててキャシーと一緒に暮らそうとする彼だが…

キャシーがどんなに手を尽くしても行政は何もしてくれず、ベラーニ大佐に直接返還を求めるが、彼も家族の生活のために一歩も譲れない。

この物語には本物の悪者というのは一人も出てこない。確かに不倫は道徳的に責められるべきことだろうし、ベラーニ大佐も祖国での栄光にすがってばかりで現実を見ようとはしていないし、キャシーはどうやらドラッグだかアルコールだかの依存症であった過去もあるらしいけど、そういう弱いところがありながらも、全員が“悪意”から行動を取ってはいない。なのにもかかわらず、事態はちっとも好転しないのだ。彼らが何とかしようとすればするほど、事態は悪い方向へ進んでしまう。なんかねー、全員が全員とも非常に頑固なんですよね。柔軟性がないというか。それも彼らの弱さの裏返しなのかもしれません。

それぞれにこの「家」に執着する理由っていうのがあるのですが、絶望しかけた人間たちの集まりのせいですかね、この結末は。結局一番貧乏くじを引いたのはもともと全然関係ないはずだった警官のレスターだと思うのですが、彼がキャシーを選んだのも自業自得だし、この結末を引き出したのも実は彼だったりするわけで。彼がいなかったら、もうちょっと良い結果になっていたような気も。

いやー、冒頭にも書きましたが、見終わってからも「はぁああああ」とため息しか出ない暗さ。ここから何を言いたいかをくみ取るとかそんな必要は別になくてメロドラマを楽しめたからいいかなといった感じです。このメロドラマを楽しめたのはやはり、ジェニファーコネリーとベンキングスレーの演技のうまさなんでしょうね。二人ともいやらしいくらいにうまいです。

監督のヴァディムパールマン「ダイアナの選択」も監督した人で、こういう落ち着いたドラマを撮るのがうまいのかな。ウクライナ出身ということで両作品の独特の暗さも納得かも。

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