
さていよいよ裁判です。こちらも前篇同様、裁判開廷までの経緯、開廷後の裁判の様子、周りの反応などを丁寧に丁寧に描いていきます。
生徒たちがきちんと裁判とはどのようなものなのかを調べて、弁護人、検事、陪審員、判事、廷吏と役割分担を決めていく過程までが丁寧に描かれていることに好感を持ちました。特に成績トップで高校受験のことしか頭になくこんな裁判受験の邪魔になるだけだと思っていた井上康夫西村成忠を藤野涼子藤野涼子がうまく乗せて判事になってもらうシーンが、この作品の少ないほのぼの笑えるシーンに出来上がっていて好きだった。その後も“判事”井上君は要所要所でいい味を出してくれていた。
大出君清水尋也に裁判に出廷してもらうために奔走する弁護人・神原君板垣瑞生と助手の野田君前田航基や、少しでも事件の真相に迫ろうと柏木君望月歩の通話記録まで調べあげ、聞き込み調査を行う検事・藤野涼子とその助手・倉田まり子西畑澪花と向坂行夫若林時英のシーンは結構本格的なミステリー要素も踏まえているようでかなり面白かった。
もう一人の重要人物である三宅樹里石井杏奈は松子富田望生の死以来学校に来なくなってしまい、彼女にもまた裁判に出廷するよう説得に行く藤野涼子。彼女たち2人の対比はこの物語の中で重要な役割を担っていたと思う。まっすぐに事件を見つめようとする涼子と自分が犯した罪と向き合えない樹里。彼女たちのそれぞれの家庭環境の違いもかなり影響しているように思えた。
家庭環境と言えば、秀才で私立の中学校に通っている苦労知らずのおぼっちゃんに見えていた神原君の衝撃の過去が大出君を裁判に出るよう説得するシーンで明らかになる。この彼の過去が裁判のクライマックスにおいても大いに関連してくるのだった。
いよいよ裁判が始まり、大勢のPTA、教員、生徒が見守る中、涼子たちは立派に裁判を進行していく。始めあまりにもざわついたり野次を飛ばしている傍聴席の群集に対して死んだ松子のお父さん塚地武雅が「この子たちが一所懸命にやろうとしている裁判、ちゃんとやらせてやってください」と頭を下げるシーンが泣けた。娘を亡くして、こんな裁判反対だと言っていたお父さんがどう心変わりしたのかという描写はなかったのだけど、それだけ涼子たちの本気が伝わったのだろうと感じた。
裁判の大きな見どころとしては大出君のアリバイの証明、三宅さんが告発状について何か知っているのか、なぜそんな告発状が送られなければならなかったのか、学校側の対応はどうだったか。といったところだろうか。
三宅樹里が証言台に立ち、「告発状は松子が書いたもので私は一緒に投函しただけ」と言ってみせたところは正直驚いた。ワタクシの中で三宅樹里がどういう証言をするのかというのが一番注目していたところだけに、そうきたかー!と思った。彼女にしてみればもうあそこであんなふうに言うしか残された道はなかったんだと思う。もちろんいけないことだけど、自分の浅はかな考えが大騒ぎを起こしてしまって、ぎりぎりのところまではまだ保身に走りたかった気持ちは分からないでもない。
大出君の弁護人である神原君がなぜ告発状が送られたと思うか、その原因は大出君によるいじめが原因だと大出君を責め立てていくシーンがあって、この裁判の大きな見せ場になっているが、あれは果たして彼の弁護人である神原君がやるべきことだったのだろうか。むしろ、それくらい人をいじめていた大出君なら柏木君を突き落としても不思議はないというふうに検察側が責めるべきだったんじゃないかと思う。
裁判から去って行った三宅樹里だったが、保健室で涼子に話した松子の死の真相というのはかなり衝撃だった。これが物語の中で一番衝撃だったかも。松子ちゃん、本当に死ぬ必要なんてなかった子なのに一番かわいそうだったな。
最終的に検察側の涼子が柏木君の死の真相について重要な証拠を新たに見つけたとして、柏木君ちの通話記録から柏木君が死んだ夜最後に4回も電話していた人物の存在を明らかにする。それはなんと神原君だと言うのだ。。。
ここから神原君が証言台に立ち、柏木君の死の真相について語り始める。ってか、お前最初っから全部知っとったんかーい!!!とビックリしたんだけど、一応神原君の説明を聞けば彼がどうしてここまでそのことを黙っていたかということも理解はできた。
フタを開けてみれば所謂青春の思春期特有の悩みが原因で、「告白」的なぞーーーっとするようなラストを期待していたワタクシは、え、これめっちゃ爽やか青春物語やんとこれまた少し驚いてしまった。そうか、そうやったんか、これ普通に青春物語なんや。あ、でも柏木君はなんとも言えず不気味やったなぁ。彼には確かにぞーーっとした。
エピローグ的に裁判後の校庭の風景が本当に青春物語っぽく描かれる中で、三宅樹里と松子の両親の対面シーンには泣けた。松子は亡くなってしまっているのに、ご両親があそこまで三宅樹里に寛大にいられるというのがすごすぎない?と思ったけど、それまで松子のご両親の人柄はよく表れていたので納得できるという部分もある。
とにかく全篇、中学生がこんなんできるかー?と思う部分もあるけど、中学生だからこそあそこまで懸命にできるのかもしれないという部分もあり。演じる生徒たちをきちんとあれくらいの世代でまとめたのもえらいなぁと思いました。だいたい学園ものって18才くらいの子でも中学生を演じてたりして違和感があるものが多いですから。そして、成島出監督がとても丁寧にワークショップを行った結果、彼らの演技を引き出すことができたんだろうなぁということがとても伝わってくる作品でした。
裁判のオチとしては少し物足りない感じもあるし、前篇のほうが面白かったかなという気はしますが、それでもやはりぐっと入り込んで見てしまう作品でした。原作を読んだ方がどう感じるかは分かりませんが、製作陣と出演者がとても誠実にこの作品に取り組んだことがよく伝わってくる作品でした。
*前篇、後篇と連続で見たので、厳密に2つの作品の切れ目が分からなくなってしまい前篇後篇が混じったレビューになってしまっているかもしれません。
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