シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」

2013-06-26 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。副題に「若きウェルテルの悩み」というのが入っているので、あぁ、ゲーテって「若きウェルテル」の人ね。と分かっていたものの、その程度の知識で見ました。ゲーテって文学史とかで習ったのは覚えているけど詳しくは忘れていたしウェルテルも読んだことありません。「ファウスト」は何度も劇や映画で見たことがあったけど、それもウィキで調べて初めてあぁ、そう言えばこれもゲーテか、と思った程度です。

ゲーテアレクサンダーフェーリングが「若きウェルテルの悩み」を書くきっかけとなったシャルロッテミリアムシュタインとの恋を描いた作品。事実に着想は得ているけれどもかなり脚色されているそうですが、ワタクシは事実がどうだったのか全然知らないので映画を見ただけの感想として読んでください。

詩人になりたいゲーテは父ヘンリーヒュプヒェンの反対と出版社からの拒絶があったため、父の希望する弁護士になるため法学部に進む。村の舞踏会でシャルロッテに出会い恋に落ちたゲーテはシャルロッテの家に通い、弟、妹の面倒を見てやったりシャルロッテとの距離を縮めていく。シャルロッテもゲーテに対して同じ気持ちでお互いに気持ちを確かめた直後、シャルロッテは父ブルクハルトクラウスナーがゲーテの上司であり将来有望の男アルベルトケストナーモーリッツブライブトロイと婚約させようとしていることを知る。

ゲーテへの想いを断ち切れないシャルロッテだったが、弟や妹の教育資金などのことを考えるとケストナーと結婚しないわけにはいかなかった。1770年代の話ですから、自由恋愛で好きな人と結婚するのは普通のことではなかったのでしょうね。だからこそ、ケストナーも婚約以前のこととしてゲーテとのことを許しますし、ゲーテのことなど忘れて自分と結婚するのが当然だと思っています。家族のことを考えてシャルロッテが出した結論を責めることはできないでしょうね。実際ケストナーも全然イヤな奴とかじゃないので見ているほうもそのあたりは納得できてしまうのではないでしょうか。

しかし、そんなことで納得できるはずがないのはゲーテ。そりゃそうだよね。あんなに舞い上がっていたのに、自分の上司と結婚しちゃうなんてさ。その経験を基にゲーテは「若きウェルテルの悩み」を書く。という単純な恋愛ものなんですが、ゲーテのキャラクターが軽やかでエネルギッシュで魅力あふれる青年として描かれていてとても好感が持てます。本当にゲーテがどんな人だったのかワタクシは全然知らないですが、人の心とか感情とかそんなものは大切にされず二の次だった時代に自分の内面に目を向け豊かな感情を表現してみせたゲーテという青年にとても惹かれました。ゲーテが着ている濃い黄色のシャツに紺の上着というのはウェルテルが小説内で来ている服装で出版後当時それを真似る人がたくさんいたそうです。劇中ではヘンテコな格好と言われていたけどワタクシには普通というかオシャレに見えました。当時にしてみればおかしな格好だったんでしょうね。

ゲーテを演じたアレクサンダーフェーリングはなかなかの男前ですね。「イングロリアスバスターズ」に出てたって書かれてるけど、どこにいたんだろ?シャルロッテを演じるミリアムシュタインも可愛い方です。そしてドイツ映画と言えば必ずと言っていいほど登場するモーリッツブライブトロイ。こういうインテリでお金持ちっていう役どころはあんまりないので最初ミスキャスト?と思いましたが、全然違和感なく見られました。さすがの演技力ですね。

本当はシャルロッテは15歳だったし当時のことを考えてもゲーテとシャルロッテがセックスしたわけないというのが大方の見方だと思うのですが、この映画の設定ではシャルロッテはもう少し年上だし、2人が結ばれるシーンも森の中で土とかついて汚れてたけどそれでも美しかったのでワタクシは映画の中だけに限ってOKだと思いました。

演出もコミカルなところもあるしドイツ映画なんか見たことないし、ゲーテなんて知らないよーって人でも十分に楽しめる作品だと思います。