三島由紀夫の作品は「金閣寺」しか読んだことはありません。彼が自衛隊を占拠し割腹自殺をしたことは知っているけど、それ以外に特に彼に関する知識はありませんでした。それでもやはり三島由紀夫の半生が映画になると知った時には必ず見に行こうと思っていました。
三島由紀夫井浦新って明治時代とかのそういう軍国主義の日本に生まれていれば幸せだったのかなぁ。ワタクシ自身は三島の右派の思想にまったく共感しなかったので、どっか冷めた目で見てしまったんですよね。彼らの一所懸命さがなんか寒いっていうか、ぶっちゃけて言うとアホか?と思った部分も少なからずあったりして。日本の伝統的な文化を守るために戦いは日本刀でなければならない!なんてスーツ来てネクタイ締めてワイン飲みながら言われても、それのどこか日本の伝統よ?と思っちゃうところとかあったりしてね。しかし、本気で三島の望み通り自衛隊が蜂起していたとして、軍隊に昇格(?)したとして、そのとき諸外国と日本刀で戦うつもりだったのか?おうちも奥さん寺島しのぶの趣味かなんか分からんけど、思いっきり洋館だったしな。
彼の思想とワタクシの思想が全然違うというのはただの見解の違いということでいいんだけど、映画としてこの作品を評価すると、どうでしょうか。途中ちょっと退屈なところもあったかな。演出がどうも一本やりな感じがしましたね。
でも役者たちの演技には鬼気迫るものがあります。特に三島の腹心であった森田必勝を演じた満島真之介がすごかったですね。ほんと、これ言うと怒られるかもしれないけど、森田と三島の関係性はもうゲイ萌え?と思ってしまうくらいだったな。ああいう男同士の関係において、肉体関係はないにしても、そして本人たちに自覚はないにしても、同性愛的な感情が秘かにあるんじゃないかなぁと思いました。これは真面目な話として。
三島を演じた井浦新ですが、この作品のエンドロールにARATAと出るのが好ましくないと考えて芸名を本名に戻したらしいです。それだけこの作品には思い入れがあるということなんでしょうね。実際の三島を知っている人が彼の三島をどう感じたかは分かりませんし、ワタクシは本物を知らないのでなんとも言えないのだけど、実際の三島を写真で見る限りでは、ものすごく筋骨隆々なんですよね。井浦新のほうは自衛隊に入ったり、自分のことを「武士として、武士として」とかやたらと言う割にひょろっとした体だなぁと思ったんですよ。この作品に思い入れがあったならもっと体鍛えて欲しかったなぁ。
あの時代、右も左も結局最終的に武力に訴えるということしかなかったのかな。それはどの時代でも同じなのかもしれないけど。思想は違っても結局手段は同じっていうのがなんか稚拙に思える。よど号事件が起きて「先を越された」なんて世間の注目さえ浴びれば何でも良かったというのか。という気がしてしまった。最後の演説は命を賭して行ったわりにマイクも用意せず、野次でほとんどの内容が伝わらなかったようで、見ていて切なくもあり滑稽でもあった。
ただこの作品を見ただけで複雑な三島由紀夫の心理とか行動の動機などがすべて分かるとは思わない。この作品はあくまでも日本の近代史のひとつの衝撃的な事件をなぞっただけにすぎない。これをイントロダクションとして三島の人生をもう少し探っていきたい気になった。