シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

わが教え子、ヒトラー

2008-10-22 | シネマ わ行
うーん。ちょっと難しいな。ブラックユーモアっていうのかな。辛辣な皮肉に満ちた喜劇っていうことなのかな。でもワタクシはちょっと笑えなかった。

ヒトラーヘルゲシュナイダーの演説の指導をすることになったユダヤ人俳優アドルフグリュンバウムウルリッヒミューエ。収容所から呼び戻され、ヒトラーの住む宮殿のような建物へ連れて行かれる。このグリュンバウムが垣間見るナチの幹部とヒトラーの心のうちなどをおもしろおかしく描いている。

ナチの統率はさすがドイツ人と思わせるようなカンペキなまでの「書類」と「手続き」の連続で、彼らが出会うと必ず一人一人が「ハイルヒトラー!」と叫んで手を上にあげ、挨拶は時間のかかることこの上ない。そういうところは皮肉っぽくて笑えはしたんですけどね。でもやっぱり、強制収容所に入れられているユダヤ人がヒトラーが子どもの頃虐待されていたとかを知ったからって「この人はただ愛情に飢えているだけなんだ」なんていうセリフを言えちゃうっていうことに抵抗を感じてしまった。ヒトラーに犬の真似をさせたり、「お父さんごめんなさい」って泣かせたり、ユダヤ人夫婦に甘えて二人の間で寝ちゃったりって、思いっきりバカにして笑っちゃおうって感じなのかなー?その辺の意図はよく分からないけど、ワタクシは気持ち悪いだけで笑えなかった。後半は、そんな感じで子供じみたヒトラーとそれに同情し、温かく見守っている感さえあるグリュンバウムという構図がなんとも違和感があって、どうこの話は終わるんだ?って思っていると、ラストは特に衝撃的でもなかったんだよねー。どうせウソの歴史で喜劇ならいっそのこと、あそこでグリュンバウムがチャップリンばりの演説をぶってヨーロッパを救っちゃったほうが良かったなぁなんて思ったりなんかして。ってワケにはいかないか。

史実に忠実にすべきだとかそういうお堅いことを言うつもりはまったくないんだけど、この面白さは残念ながらワタクシには合いませんでした。「ライフイズビューティフル」を見たときの違和感とちょっと似ていたかなぁ。あの作品については、ワタクシは最初好きじゃなかったけど、「あんな場面でも子供のためにユーモアを持ち続ける精神力のすごさ」というものを後から感じて、後になってワタクシの中で受け入れた作品なんだけど、この作品をそんなふうに受け入れる日は来ない気がするなぁ。

「善き人のためのソナタ」でも素晴らしい演技をしていたウルリッヒミューエの演技は今回も素晴らしく、彼の映画を見るのはこれが2本目だったのに、もう故人であることを知ってものすごく残念だ。