シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

遺体~明日への十日間

2016-09-13 | シネマ あ行

ずっとハードディスクの中に入っていたのですが、見る勇気が出ず延ばし延ばしにしていた作品です。

東日本大震災のあと、遺体安置所となった中学校でボランティアとして活動することになった元葬儀関係の相葉常夫西田敏行を中心にあの日何があったのかを描く。

ワタクシは被災していないので、正直この作品が現実にどれほど近いのかということは分かりません。実際に被災した方の中にはあんなもんじゃないとおっしゃる方も多いのかも。

ただ単純にこの作品を見た感想だけを書かせてもらうと本当に胸が痛く涙が止まりませんでした。日本映画でここまで遺体安置所というところを描いた作品はめずらしいと思うし、どうしても有名な役者がそろっているだけにきれい過ぎる感は否めませんが、それでもあの時人々がどんなふうに行動したのかということが描かれていたと思います。

地震発生直後何の情報もなく隣町が津波でなくなってしまったことなどにわかに信じられない人々。続々と運ばれてくる死体。消防関係者ですらどのように扱って良いか分からない。医者ですら僧侶ですらただただボー然と立ち尽くしてしまう現実。市役所の若い職員・及川勝地涼が心を閉ざしてしまうことも仕方ないと思える。

誰もが何から手をつけたら良いのか分からない状況の中、元葬儀関係の仕事をしていたという相葉は運ばれてくる死体を「ご遺体」として扱うことをみなに話す。まっすぐ寝かせるために腕を折らなくても少しずつ筋肉をほぐしてやれば腕を下ろしてやることができる。名前が分かった人の遺体には名前で話しかけてあげる。泥だらけの床をできるだけこまめに掃除してやる。警察や医療関係には国から食べ物の支給があるが、ボランティアの相葉にはない。そんな中相葉は懸命に一人一人のご遺体に接していた。

相葉の影響を受け、最初はただ立ち尽くしていた役所の職員・照井志田未来は率先して床掃除を始め、遺体に話しかけるようにもなり、自らみなを弔うための祭壇を作ろうと提案するに至る。あの状況下にあっても人は人に影響し合い、自ら変わって行くことができる。その結果最終的に心を閉ざしていた及川もみなの作業を率先してするようになっていく。

あの渦中にいた人たちは実際の被害がどのようなものかという全体像がまったく分からず、行政に3000ものお棺の手配を依頼された葬儀業者緒方直人が絶句するシーンが印象的でした。その3000にしても行政と2つの葬儀業者が手分けしての一つの業者あたり3000だったのですから。

医師の下泉佐藤浩市は支給されるおにぎりを相葉に譲り、相葉はそれを食べずに妻のために持って帰ると言う。おそらく、こういう状況下では食べ物の奪い合いなども起こるだろうし、それが起こったとしても仕方ないと思える中、譲り合いをする人たちがいるのもまた真実だ。

次々に親族を探しに来る遺族の慰めに少しでもなろうと努力する人たちがいる。自らも被災しながらそれだけ人のためになろうとできる人たち。英雄的な行為とはそういった些細な報道されないところにあるのかもしれない。

現実はあんなもんじゃない、実際の何千、何万分の一も表現できていないという方もいるだろうけど、それでもやはり結構衝撃的な映像もあるので、単純にたくさんの人に見てほしいとは言えません。被災していなくても見るのが辛いほどの作品です。見るか見ないかはそれぞれの判断に任せられるところだと思います。



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