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忍びの国 |
舞台は戦国期の伊賀国、十二家評定衆が支配をする忍びの国に攻め入る織田の軍勢、そんな天正伊賀の乱が描かれています。
いわゆる史実に基本的には忠実に大きく外れることなく、それでいて独創的な、そして魅力的な登場人物が横行闊歩なところなどは作者の筆力が成せる技なのでしょう。
それなりに複雑な設定も読みやすい文章で取っつきやすく、戸惑うようなところはありません。
その主人公は伊賀で随一の技を誇る無門なのか、武辺一筋の日置大膳なのか、はたまたその成長を信長に認めさせた織田信雄なのか、いやいや、伊賀の下人こそが主人公です。
人間扱いをしない十二家評定衆に幼い頃から人間性を失うような鍛錬を強いられて、生死の境を見失い、倫理観を持たず、金のためなら何でもやる、その置かれた境遇、生き様、時折に見せる一寸の虫にも五分の魂、一人一人はゴミのような扱いをされていますが、その集大成とも言える無門を通してそれらが描かれているように思います。
また侮蔑しあっていた者同士がギリギリの環境で心が触れあうところなどもしびれますし、信長のニヤリ、はなかなか秀逸でした。
来年に上っ面をなぞっただけのような映画化がされるようで、観るつもりはありませんが、それで作品の価値が貶められやしないかと今から心配です。
2016年11月18日 読破 ★★★★☆(4点)
数多の小説が映画化され、がっかりもしますが、その中にもこれはと言うものもあると思います。上っ面だけなぞってるのかどうかは映画観てからの判断で良いではないですか?
映画などで何度か演技を見たことがありますが、原作にある微妙な心の動きを演じられるとはとても思えません。
チープな忍者ものにならないことを願うばかりです。