テロリストのパラソル |
史上初の江戸川乱歩賞、そして直木賞をW受賞した作品です。
公園での爆破事件に端を発して覚えのない疑いをかけられて逃げ回る主人公が、自らが抱えてきた二十年以上の闇とも言える人生と対峙をしていく流れが語られています。
その受賞は当たり前に過ぎると思われるスピード感に溢れる展開と魅力ある登場人物、そして思いもよらぬ結末と、楽しみがてんこ盛りな初の藤原伊織でした。
逃げながらも真相を追い詰めていく主人公、その主人公を助ける謎の人物、また主人公と若かりしころに関係のあった女性との思い出、とどこかで見たような人間関係だったりもしますし、過去のエピソードにフラッシュバックをするなどそのまんまだったりもしますが、しかし底辺にあるものは全く違います。
ある意味でハードボイルドであり、ある切り口では恋愛小説であり、そしてもちろんミステリーとしての要素も色濃く持ち合わせています。
時の流れの残酷さ、しかし変わらないことの強さ、憧憬が見事に描かれており、あまりに偶然が重なる状況設定などはさして気にはなりません。
そうなれば一連の作品を読みあさるのが習性なのですが残念なことに現時点で電子ブック化をされているのはこの一冊だけで、かつ作者が既に若くして世を去っているという事実が残念でならないのですが、それでも我慢をして待つことが楽しみになるだけの深みのある作品との出会いが嬉しかったテロリストな風景でした。
2013年11月26日 読破 ★★★★★(5点)
萩原健一主演のテレビドラマがすごく良かったので、原作本を即買いして一気に読み終えたと記憶しています。
主人公を気取りホットドッグを作って、ウイスキーを飲みながら友人と食べたのを思い出しました(笑)
読後17年たった今も余韻が残る名作だと思います。
日本で数少ない骨のあるハードボイルドだったとの印象があります。
読んだときは、まだ著者が存命だった頃でしたが、その後亡くなられ、なんとも残念な思いをしました。
電子書籍化はこの1冊のみなんですか・・・他作も同系のハードボイルドと思いましたが、これから出てくれればいいですね。
そっか、もうそんなに経つのですね。
かなり長期間に歴史小説に入り浸っていたため、それ以外のジャンルは完全に浦島状態です。
萩原健一、根津甚八、高橋恵子、木村佳乃はちょっと原作からするとピンとこないかしら。
じゃあ誰、と言われても・・・難しい・・・
今なら堤真一、三浦理恵子、西島秀俊、吉高由里子かなぁ、うーん、これも違うか。
もう少し若ければ佐藤浩市、中井貴一なんですけどね。
ところでキャベツはきれいに切れましたか?(笑)
>タンマさん
既に通り過ぎている方が多いようで(汗)
書評を見ると面白そうな作品が多いので、早く電子化をして欲しいです。
でも物故をされた方の電子化って、どなたが判断をする、できるのかしら。
ご遺族なんでしょうかね。
木村佳乃はまったく記憶に残っていないのですが、萩原、根津、高橋恵子の3人の演技は覚えています。
ひと世代先輩の方たちの青春の匂いとはこういうものだったのだろうか、なんて想像を膨らましたことが思い出されます。
これが、原作が先でドラマが後だったらまったく違う印象だったのでしょうね。
堤真一、佐藤浩市、中井貴一の中から主役を選べと言われたら、堤は自分と同世代という括りなので、佐藤版か中井版を見てみたいです。
いや、堤、三浦、西島、吉高の配役も新鮮で魅力的だなぁ(優柔不断、笑)
玉ねぎのみじん切りじゃないの、みたいな。
高橋恵子とか木村佳乃の「殺せ!」ってのがピンとこないんですよね。
根津甚八はいい線をいっている感じはありますが、ボクサーの萩原健一も・・・
当時であれば年齢的にもいい感じだった佐藤浩市、中井貴一は見てみたかったなぁ。