『メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)シリーズ第1作目の『メイズ・ランナー』をDVDで見て面白かったので(注1)、第2作目もと思って映画館に行ってきました。
本作(注2)の最初の方では(注3)、巨大迷路から脱出したトーマス(ディラン・オブライエン)らが、「クランクが来るぞ、ここは危ない」と叫ぶ兵士らによってヘリコプターに乗せられて(注4)、巨大な施設に連れていかれます。
そのドアが開くと男(エイダン・ギレン)が待ち構えていて、「クランクが来て騒がしかった。我々は君らの命を救った者だ。私はジャンソン」、「ここは外の世界から遮断された場所で、聖域だ。WCKD(注5)は絶対に来ない」と言います。
トーマスが、「なぜ救ける?」と尋ねると、ジャンソンは、「君らは追われる身。この扉は、新しい人生への入り口だ」と答えます。
トーマスらは、迷路を脱出する際に付いた臭いを落とすためにシャワーを浴び、さらに栄養素が入っている注射を受けます。
次いで、トーマスはジャンソンに呼ばれて質問を受けます。
ジャンソンが「よく来てくれた。2人きりで話がしたい。質問は一つだ。WCKDの記憶はあるのか?君はどちらの側なのか?」と訊くと、トーマスは、「僕はWCKDで働いていたが、迷路に送り込まれた。仲間が次々と死んだ。僕は仲間の側だ」と答えます。
トーマスらは他の仲間のところに連れて行かれます。
そこには大勢の若者がいて、ミンホー(キー・ホン・リー)は「迷路は一つじゃなかったんだ」と言います。
トーマスはガラス越しにテレサ(カヤ・スコデラリオ)を見つけて走り寄ろうとしますが、なぜか兵士によって阻止されます。
そればかりか、若者の一人エリス(ジェイコブ・ロフランド)に密かに導かれ排気口のトンネルを伝って行った先の別の部屋に、トーマスは大変なものを見てしまいます。
さあ、それはどんなものでしょうか、ジャンソンらの組織は一体何なんでしょうか、トーマスらをこれから待ち受けている運命はいかなるものなでしょうか、………?
まあ、本作では、基本的にスリルに満ちた追っかけごっこが描かれているのですから、最後までまずまず面白く見ることが出来ます。でも、本作には、第1作目で見る者を圧倒した“迷路”はどこにも出てきませんし、主人公たちを追い詰めるのはもっぱらゾンビというのでは、『ワールド・ウォーZ』などのゾンビ映画とどこが違うのか、という感じにもなってしまいます。
(2)本作では、迷路から脱出してきた若者たちを保護したジャンソンの組織もまたWCKDとつながっていて、WCKDが全体で何を企んでいるのかがおぼろげながら明らかとなります(注6)。
それが分かったトーマスらは、このままでいるとWCKDによって殺されてしまうと考え、慌ててそこから逃げ出します。
ところが、逃げ出した先には荒涼とした砂漠が広がっています。
あるいは、この灼熱の砂漠こそが“迷路”(あるいは「迷宮」)なのかもしれません。
でも、遠くの方に山が見え、ともかくもそこに行ってみようということになるのです(注7)。それでは、いくら砂漠の横断が難行苦行だとしても、とにかく向かう方向がはっきりしていて、とても迷路とは言えないように思います(注8)。
また、若者らが、砂漠を歩いている最中に建物の中に飛び込むと、そこに待ち受けていたのはクランクと呼ばれるゾンビたちなのです。
彼らは、フレアに感染してゾンビ状態になってしまったのですが、このクランクは、通常のゾンビとは異なって、ものすごい速度で若者らを追跡するのです。
こうした点や(注9)、さらには、治療薬を探しだそうとしている点で(注10)、本作は『ワールド・ウォーZ』とよく似ている感じがしてしまいます。
第3作は2017年2月にアメリカで公開されるとのこと(例えば、この記事)。
第1作と第2作との公開日の間隔(5カ月)と比べると異常に長い気がします。まだまだ謎の部分がいろいろ残されていて、それがどう解明されるのか知りたいところではあるものの、そんなに長く待てませんし、本作の内容からしても、第3作はDVDで見ればいいのかもしれません。
(3)渡まち子氏は、「仲間を奪われてついに戦う決心をした主人公トーマスの運命も含めて、怒涛の展開と謎解きが待つであろう最終章への期待は大いに高まった」として60点をつけています。
(注1)第1作目では、理由がはっきり明示されないまま、若者が何人も一箇所に閉じ込められ、一部の若者の勇敢な行為によって、彼らを取り巻く巨大な迷路から脱出する様子がハイテンポで描かれていて、なかなか面白く見ることが出来ました。
特に、若者たちの前に立ち塞がる巨大な迷路は、最近見た『進撃の巨人』で描かれる巨大な壁に類似しており、そこに出現するグリーバー(脚が鋼鉄製の蜘蛛のようなモンスター)も『進撃の巨人』における巨人のような感じがしたりして、興味深いものがありました。
なお、トーマスらが巨大迷路の施設に閉じ込められた理由については、第1作目の最後の方で、その施設の責任者と称するペイジ博士(パトリシア・クラークソン:『人生万歳!』で見ました)が、次のようなことをトーマスらが見ている映像の中で話します。
「太陽が地球を焼き尽くした。フレアと名づけられたウィルスが治療不能の病気を蔓延させ、人類は滅亡の淵に立たされた。しかし、フレアに侵されても死なない若者が現れた。そこで、その若者たちを厳しい環境のもとにおいて、なぜ死なないかの理由を探る実験が始まった」。
その映像では、ペイジ博士は、そう述べた後にピストル自殺するのですが、第1作目のラストでは、同博士は生きていて、「生存者数が予想以上だったが、迷路実験は大成功。トーマスは期待以上の働きをした。今彼らはエサに食いついてくれた。これから実験は第2段階だ」と述べます。
ただ、こう言われても何のことやらサッパリわかりません。若者がフレアで死なない理由を探るためにどうしてあのような巨大な迷路を作り上げる必要性があるのでしょうか?
この点は、本作になっても依然として謎のままです。
(注2)監督は、第1作に引き続いてウェス・ボール。
原題は、「Maze Runner The Scorch Trials」。
原作は、ジェイムズ・ダシュナー著『メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』(角川文庫:未読)。
(注3)冒頭では、トーマスの幼い頃の記憶なのでしょうか、吹雪の中鉄条網の内に集められている人々の間からトーマスが兵士によって連れだされて列車に乗せられるシーンが描かれますが、よくわかりません(母親らしい女性が、トーマスに「大丈夫よ」と言ったりします)。
(注4)第1作目の最後の方では、迷路から脱出した時、迷路の中の居住区(The Glade)にとどまっていたはずの反トーマス派のボスであるギャリー(ウィル・ポールター)が現れ、トーマスに銃口を向けます。ミンホの投げた槍でギャリーは死にますが、ギャリーが放った銃弾がチャック(ブレイク・クーパー)に命中しチャックも死んでしまいます。
その時兵士が現れ、トーマスらを連れ出しヘリコプターに乗せて脱出させるのです。その際、兵士らはトーマスらに向かって、「みんな大丈夫か、心配ない、もう安心だ」、「リラックスしろ。これから全てが変わる」などと叫びます。
ここのところと、第2作目の最初の方とが繋がります。
(注5)WCKDは「The World Catastrophe Killzone Department」の略とされますが(この記事によります)、実態のわからない謎の組織です。
(注6)上記「注1」を参照。
本作のラスト近くでも大型ヘリに乗ってペイジ博士が現れ、同じようなことを述べます(「治療法を見つけなければならない」)。
(注7)若者らは、WCKDに対抗する集団のRA(ライト・アーム)がその山にいるらしいという情報を得て(エリスが、ジャンソンがそれらしいことを話していたと言います)、山の方に向かいます。
(注8)映画ポスターには「本当の迷メイズ路は、ここから始まる」とありますが、“本当に”そうでしょうか?
(注9)『ワールド・ウォーZ』に関する拙エントリの「注3」や「注5」で触れましたように、映画ライターの高橋諭治氏は、同作や本作で描かれているようなゾンビについて、「ウィルス感染者というれっきとした“生者”であり、一度死んで甦った(古典的な)ゾンビとは別物」であると述べています。さらに、こうした「21世紀型ゾンビ」は、「牧歌的なくらい動きがのっそりしていた」かつての「古典的なゾンビ」とも異なっている点を指摘しています。
(注10)『ワールド・ウォーZ』では、主人公(ブラッド・ピット)の活躍によってワクチンの作成が可能になったためにゾンビ対策が打てるようになります。これに対して、本作では、ペイジ博士のWCKDがフレア対策用の治療薬(血清?)を作ろうとしているようです。
★★★☆☆☆
象のロケット:メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮
(1)シリーズ第1作目の『メイズ・ランナー』をDVDで見て面白かったので(注1)、第2作目もと思って映画館に行ってきました。
本作(注2)の最初の方では(注3)、巨大迷路から脱出したトーマス(ディラン・オブライエン)らが、「クランクが来るぞ、ここは危ない」と叫ぶ兵士らによってヘリコプターに乗せられて(注4)、巨大な施設に連れていかれます。
そのドアが開くと男(エイダン・ギレン)が待ち構えていて、「クランクが来て騒がしかった。我々は君らの命を救った者だ。私はジャンソン」、「ここは外の世界から遮断された場所で、聖域だ。WCKD(注5)は絶対に来ない」と言います。
トーマスが、「なぜ救ける?」と尋ねると、ジャンソンは、「君らは追われる身。この扉は、新しい人生への入り口だ」と答えます。
トーマスらは、迷路を脱出する際に付いた臭いを落とすためにシャワーを浴び、さらに栄養素が入っている注射を受けます。
次いで、トーマスはジャンソンに呼ばれて質問を受けます。
ジャンソンが「よく来てくれた。2人きりで話がしたい。質問は一つだ。WCKDの記憶はあるのか?君はどちらの側なのか?」と訊くと、トーマスは、「僕はWCKDで働いていたが、迷路に送り込まれた。仲間が次々と死んだ。僕は仲間の側だ」と答えます。
トーマスらは他の仲間のところに連れて行かれます。
そこには大勢の若者がいて、ミンホー(キー・ホン・リー)は「迷路は一つじゃなかったんだ」と言います。
トーマスはガラス越しにテレサ(カヤ・スコデラリオ)を見つけて走り寄ろうとしますが、なぜか兵士によって阻止されます。
そればかりか、若者の一人エリス(ジェイコブ・ロフランド)に密かに導かれ排気口のトンネルを伝って行った先の別の部屋に、トーマスは大変なものを見てしまいます。
さあ、それはどんなものでしょうか、ジャンソンらの組織は一体何なんでしょうか、トーマスらをこれから待ち受けている運命はいかなるものなでしょうか、………?
まあ、本作では、基本的にスリルに満ちた追っかけごっこが描かれているのですから、最後までまずまず面白く見ることが出来ます。でも、本作には、第1作目で見る者を圧倒した“迷路”はどこにも出てきませんし、主人公たちを追い詰めるのはもっぱらゾンビというのでは、『ワールド・ウォーZ』などのゾンビ映画とどこが違うのか、という感じにもなってしまいます。
(2)本作では、迷路から脱出してきた若者たちを保護したジャンソンの組織もまたWCKDとつながっていて、WCKDが全体で何を企んでいるのかがおぼろげながら明らかとなります(注6)。
それが分かったトーマスらは、このままでいるとWCKDによって殺されてしまうと考え、慌ててそこから逃げ出します。
ところが、逃げ出した先には荒涼とした砂漠が広がっています。
あるいは、この灼熱の砂漠こそが“迷路”(あるいは「迷宮」)なのかもしれません。
でも、遠くの方に山が見え、ともかくもそこに行ってみようということになるのです(注7)。それでは、いくら砂漠の横断が難行苦行だとしても、とにかく向かう方向がはっきりしていて、とても迷路とは言えないように思います(注8)。
また、若者らが、砂漠を歩いている最中に建物の中に飛び込むと、そこに待ち受けていたのはクランクと呼ばれるゾンビたちなのです。
彼らは、フレアに感染してゾンビ状態になってしまったのですが、このクランクは、通常のゾンビとは異なって、ものすごい速度で若者らを追跡するのです。
こうした点や(注9)、さらには、治療薬を探しだそうとしている点で(注10)、本作は『ワールド・ウォーZ』とよく似ている感じがしてしまいます。
第3作は2017年2月にアメリカで公開されるとのこと(例えば、この記事)。
第1作と第2作との公開日の間隔(5カ月)と比べると異常に長い気がします。まだまだ謎の部分がいろいろ残されていて、それがどう解明されるのか知りたいところではあるものの、そんなに長く待てませんし、本作の内容からしても、第3作はDVDで見ればいいのかもしれません。
(3)渡まち子氏は、「仲間を奪われてついに戦う決心をした主人公トーマスの運命も含めて、怒涛の展開と謎解きが待つであろう最終章への期待は大いに高まった」として60点をつけています。
(注1)第1作目では、理由がはっきり明示されないまま、若者が何人も一箇所に閉じ込められ、一部の若者の勇敢な行為によって、彼らを取り巻く巨大な迷路から脱出する様子がハイテンポで描かれていて、なかなか面白く見ることが出来ました。
特に、若者たちの前に立ち塞がる巨大な迷路は、最近見た『進撃の巨人』で描かれる巨大な壁に類似しており、そこに出現するグリーバー(脚が鋼鉄製の蜘蛛のようなモンスター)も『進撃の巨人』における巨人のような感じがしたりして、興味深いものがありました。
なお、トーマスらが巨大迷路の施設に閉じ込められた理由については、第1作目の最後の方で、その施設の責任者と称するペイジ博士(パトリシア・クラークソン:『人生万歳!』で見ました)が、次のようなことをトーマスらが見ている映像の中で話します。
「太陽が地球を焼き尽くした。フレアと名づけられたウィルスが治療不能の病気を蔓延させ、人類は滅亡の淵に立たされた。しかし、フレアに侵されても死なない若者が現れた。そこで、その若者たちを厳しい環境のもとにおいて、なぜ死なないかの理由を探る実験が始まった」。
その映像では、ペイジ博士は、そう述べた後にピストル自殺するのですが、第1作目のラストでは、同博士は生きていて、「生存者数が予想以上だったが、迷路実験は大成功。トーマスは期待以上の働きをした。今彼らはエサに食いついてくれた。これから実験は第2段階だ」と述べます。
ただ、こう言われても何のことやらサッパリわかりません。若者がフレアで死なない理由を探るためにどうしてあのような巨大な迷路を作り上げる必要性があるのでしょうか?
この点は、本作になっても依然として謎のままです。
(注2)監督は、第1作に引き続いてウェス・ボール。
原題は、「Maze Runner The Scorch Trials」。
原作は、ジェイムズ・ダシュナー著『メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』(角川文庫:未読)。
(注3)冒頭では、トーマスの幼い頃の記憶なのでしょうか、吹雪の中鉄条網の内に集められている人々の間からトーマスが兵士によって連れだされて列車に乗せられるシーンが描かれますが、よくわかりません(母親らしい女性が、トーマスに「大丈夫よ」と言ったりします)。
(注4)第1作目の最後の方では、迷路から脱出した時、迷路の中の居住区(The Glade)にとどまっていたはずの反トーマス派のボスであるギャリー(ウィル・ポールター)が現れ、トーマスに銃口を向けます。ミンホの投げた槍でギャリーは死にますが、ギャリーが放った銃弾がチャック(ブレイク・クーパー)に命中しチャックも死んでしまいます。
その時兵士が現れ、トーマスらを連れ出しヘリコプターに乗せて脱出させるのです。その際、兵士らはトーマスらに向かって、「みんな大丈夫か、心配ない、もう安心だ」、「リラックスしろ。これから全てが変わる」などと叫びます。
ここのところと、第2作目の最初の方とが繋がります。
(注5)WCKDは「The World Catastrophe Killzone Department」の略とされますが(この記事によります)、実態のわからない謎の組織です。
(注6)上記「注1」を参照。
本作のラスト近くでも大型ヘリに乗ってペイジ博士が現れ、同じようなことを述べます(「治療法を見つけなければならない」)。
(注7)若者らは、WCKDに対抗する集団のRA(ライト・アーム)がその山にいるらしいという情報を得て(エリスが、ジャンソンがそれらしいことを話していたと言います)、山の方に向かいます。
(注8)映画ポスターには「本当の迷メイズ路は、ここから始まる」とありますが、“本当に”そうでしょうか?
(注9)『ワールド・ウォーZ』に関する拙エントリの「注3」や「注5」で触れましたように、映画ライターの高橋諭治氏は、同作や本作で描かれているようなゾンビについて、「ウィルス感染者というれっきとした“生者”であり、一度死んで甦った(古典的な)ゾンビとは別物」であると述べています。さらに、こうした「21世紀型ゾンビ」は、「牧歌的なくらい動きがのっそりしていた」かつての「古典的なゾンビ」とも異なっている点を指摘しています。
(注10)『ワールド・ウォーZ』では、主人公(ブラッド・ピット)の活躍によってワクチンの作成が可能になったためにゾンビ対策が打てるようになります。これに対して、本作では、ペイジ博士のWCKDがフレア対策用の治療薬(血清?)を作ろうとしているようです。
★★★☆☆☆
象のロケット:メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮