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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国によるウイグル族弾圧問題 強制労働・不妊手術 批判するアメリカ 沈黙するイスラム諸国

2021-01-11 22:55:46 | 中国

(トルコ・イスタンブールの中国領事館前で消息不明の親族の写真を掲げ、新たな犯罪人引き渡し条約に抗議するトルコ在住ウイグル人(2020年12月30日撮影)【12月31日 AFP】)

 

【中国、「職業訓練」は終了した。 強制労働の指摘も】

中国・新疆ウイグル自治区における、百万人にも及ぶとも言われる強制収容や、ウイグル族の人口抑制を目的とした強制的不妊手術が行われているのではとの疑惑などの人権弾圧の問題。

 

中国側は「強制収容」などではなく、あくまでも「再教育」「職業訓練」としていますが、その「職業訓練」事業もすでに終了したと改めて表明しています。

 

****ウイグル族への「再教育」終了 中国・新疆の報道官が主張****

中国新疆ウイグル自治区政府の報道官は11日、北京で記者会見し、自治区に設置した施設で少数民族ウイグル族らを対象に実施していた「再教育」や「職業訓練」が2019年10月に終了したと主張した。

 

国際社会ではウイグル族が強制収容されているとの批判が根強いが、一連の措置はテロ対策の一環だと訴えて正当化した。

 

報道官は「教育・訓練の学生は全て卒業した。現在、新疆に教育訓練センターは一つもない」と強調した。人権状況に厳しいとされるバイデン次期米政権の発足を前に、強制収容を巡る問題は存在しないとアピールする狙いがありそうだ。【1月11日 共同】

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ただ、中国側の言う「教育施設」を「卒業」しても、付属の工場に移されて強制労働が行われているとの指摘もあります。

 

****中国「新疆綿」収穫で強制労働、ウイグル人ら57万人超を動員 報告書****

中国北西部・新疆ウイグル自治区の綿花収穫で国家ぐるみの強制労働が行われ、ウイグル人ら少数民族少なくとも57万人が動員されている。米シンクタンク「センター・フォー・グローバル・ポリシー」が(12月)14日、報告書で明らかにした。

 

自社のサプライチェーンの中でウイグルの強制労働を用いていると批判されているナイキやギャップ、アディダスなどの世界的な衣料品ブランドに対する圧力は、今回の報告でさらに高まりそうだ。

 

人権団体は、新疆には超法規的な強制収容所の広範なネットワークがあり、100万人以上が収容されていると指摘しているが、中国政府は強制収容所ではなく過激派対策の職業訓練施設だと主張している。

 

同シンクタンクの報告はインターネット上の中国政府の文書を参照したもので、自治区内のウイグル人が多く住む3地域で綿花の収穫に強制動員されている人は、2018年時点で少なくとも57万人とされ、そこから数万人増えているだろうと指摘している。

 

新彊産の綿は、世界の生産量の20%超、米国で使用されている繊維の約20%を占めていることから、世界の綿のサプライチェーンに「劇的な影響が生じる」ことが懸念されている。

 

この報告を受けて、英BBCが世界の衣料品大手30社に、中国製品の調達を続けるかどうか尋ねたところ、中国で製造される自社製品に新彊産の綿花の使用を禁じる厳格な方針があるのは、回答が得られた中の4社にとどまった。

 

中国政府は、すべての収容者が問題の施設を「卒業」したと主張しているが、報告書によると、その多くは強制収容所とつながっていることの多い工場に移され、非熟練労働に従事しているとみられる。

 

労働者は警察に厳しく監視され、収容所から工場へ直接移され、「軍隊式マネジメント」の下で思想教育を施されるという。

 

報告書は、農村部の所得を増やせば政府が義務付けた貧困削減目標を達成できることが、強制労働を実施する強力な動機になっていると指摘している。

 

中国当局は15日、報告書について問われると、「新疆のすべての民族の労働者が、自発的な職業選択に基づいて企業と労働契約を結んでいる」と答えた。

 

中国外務省の汪文斌報道官は報告書を作成したエイドリアン・ゼンツ氏について、「米情報機関の操作の下で設立され、中国に関するうわさを捏造(ねつぞう)し、中国を中傷している反中的な研究組織の中心人物だ」と激しく批判した。 【12月16日 AFP】

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習近平国家主席は12月3日、共産党政治局常務委員会の会議で、「現行基準下で貧困県がなくなり、絶対的貧困が解消した」と述べ、2020年を期限とする「貧困ゼロ」目標の達成を宣言しました。

 

農村部の貧困対策が重要課題であり、共産党政権が大きな成果をあげていることは大いに評価する必要があります。

 

新疆においてもしかり。ただ、「新疆のすべての民族の労働者が、自発的な職業選択に基づいて企業と労働契約を結んでいる」かどうかも正しく評価されなければなりません。

 

【中国、ウイグル女性を「子供を産む機械」から「解放」した。 強制的不妊手術の疑惑も】

強制的な不妊手術による人口抑制を図っているとの指摘に対しても、中国側は否定していますが、ツイッターはこうした在米中国大使館のツイートを削除しています。

 

****ツイッター、在米中国大使館の投稿を削除 ウイグルは「解放」されたと主張で****

SNS大手ツイッターは10日、中国政府の新疆ウイグル自治区政策によってウイグルの女性が「解放」されたと主張した、在米中国大使館のツイートを削除した。

 

このツイートは、中国の国営メディア中国日報の記事へのリンクと共に投稿されたもの。記事では、中国政府がウイグルの宗教的過激派を抑え込んだことで、女性が「子供を産む機械」ではなくなったと述べていた。

 

中国政府にはかねて、イスラム教徒のウイグル族を迫害している疑惑が持たれている。女性に対しては不妊手術などを強制し、人口抑制を行っているとみられている。

 

中国はこうした疑惑を一貫して否定している。

 

在米中国大使館は7日、中国政府が「推進」している「生殖に関する健康政策」の結果、ウイグルの女性が「自信と自立」を得たとツイートした。

 

ツイッターは週末に入り、ツイッターの規則に「違反」したとしてこの投稿を削除。この措置の詳細については明かしていない。

 

元のツイートに掲載されていた中国日報の記事には、新疆での過激派撲滅運動によって「ウイグルの女性が子どもを産むかどうか自分で決められるようになった」と書かれている。

 

この記事は新疆開発研究センターの報告を引用。「こうした変化は、一部の西洋の研究者や政治家が指摘しているようなウイグル族に対する『強制不妊手術』によるものではない」と書かれている。

 

専門家は厳しい人口抑制策を指摘

中国の新疆政策に関する世界的な専門家、エイドリアン・ゼンズ博士は昨年、ウイグルなど中国国内の少数民族の女性たちが人口抑制政策で決められている人数以上の子どもを妊娠した場合、中絶しなければ強制収容所に入れられると脅されていると報告した。

 

この報告は地方自治体の公式データや政策文書、新疆に住む少数民族の女性への取材を基にしている。

 

報告ではまた、法的に認められている人数以上の子どもをもつ女性だけでなく、規定以下の子どもしかもっていない多くの女性も、強制的に子宮内避妊器具を装着させられたり、不妊手術を受けさせられたりしていると指摘している。

 

中国では現在、夫婦は原則2人まで、一部の地方では3人まで子どもをもつことが認められている。

 

中国は強制収容所を、過激派に対抗するための再教育施設だと主張している。しかし収容されていた人の証言では、月経を止める薬などを注射され、その結果、不正出血に陥る女性もあったという。

 

ゼンズ博士のデータ分析によると、新疆での人口増加率はここ数年で劇的に低下しているという。自治区内で最も大きな2県では、2015年から2018年にかけて増加率が84%低下。2019年にもさらに下がった。

 

この報告書を受け、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は「全ての国がアメリカと共に、この非人間的な行いを終わらせるよう求めていくべきだ」と述べた。

 

中国はこの時、一連の疑惑は「根拠のないもの」で「隠れた動機」に基づいたものだと主張している。【1月11日 BBC】

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【アメリカ ジェノサイド認定を検討 ICCは捜査要請を退ける】

こうしたウイグル族に対する「強制収容」「強制不妊手術」は、米中対立のなかで、アメリカ側の中国批判のカードともなっています。

 

****米、ウイグル族の虐殺認定を検討 中国政府の弾圧で国務省****

トランプ米政権が中国政府による中国新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族への弾圧について、国際法上の犯罪となるジェノサイド(民族大量虐殺)と認定するかどうかの検討に入ったことが(12月)24日、分かった。

 

対中強硬派のポンペオ国務長官が検討作業を指示した。米当局者が共同通信に明らかにした。米政府が認定すれば、中国の強い反発が予想される。

 

国務省で国際刑事司法問題を担当するタン大使が検討作業を取りまとめ、ポンペオ氏に報告する予定だというが、報告の時期は不明。ジェノサイドに認定した場合、中国に対する何らかの制裁措置を求める声が高まるのは確実とみられる。【12月25日 共同】

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政権交代のゴタゴタのなかで、この問題がどのようになっているのか知りません。

 

一方、国際刑事裁判所(ICC)は、中国によるウイグル族弾圧に関する捜査要請を退けています。

 

****国際刑事裁の検察、ウイグル弾圧の捜査要請を退ける「人権への罪に当たらない」****

国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)の検察は、中国による少数民族ウイグル族弾圧に関する捜査要請を退けた。14日に発表した報告書に明記した。中国はICC非加盟で、中国内での行為についてICCに管轄権がないことを理由とした。

 

ICCによる捜査は亡命ウイグル人が求めていたもので、人口抑制を目的とした不妊手術や強制移住は、ジェノサイド(集団殺害)や、人権に対する罪に相当すると主張していた。

 

訴えには、ICC加盟国であるカンボジア、タジキスタンからウイグル族が強制移住を迫られたとの主張も盛り込まれたが、検察は「国際人権法に抵触するおそれはあっても、(ICCの管轄である)人権に対する罪に当たらない」と判断した。

 

ICCは昨年、非加盟国ミャンマーの少数民族ロヒンギャに対する迫害疑惑について、容疑事実の一部が加盟国バングラデシュで行われたことを理由に、捜査に踏み切った。【12月16日 産経】

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「国際人権法に抵触するおそれはあっても、(ICCの管轄である)人権に対する罪に当たらない」ということが、どういう意味かは知りません。

 

【沈黙するイスラム諸国 かつて中国を批判したトルコも中国になびく】

また、中国の影響力の大きさの証か、欧米などにおけるイスラム冒涜などには敏感に反応するイスラム諸国のウイグル族弾圧問題への反応は鈍いのが現実です。

 

****中国のウイグル人弾圧、イスラム協力機構は声を上げよ 米団体が圧力****

米国の複数のイスラム教団体は17日、イスラム教徒の権益を守ることを目的に掲げる国際機構「イスラム協力機構」について、中国のウイグル人弾圧に沈黙し、ジェノサイド(大量虐殺)とも言われる中国の行為を助長していると非難し、声を上げるよう求めた。

 

イスラム諸国56か国とパレスチナが加盟し、サウジアラビアに事務局を置くOICは、イスラム教徒が不当に扱われていると判断した事例にしばしば対処しており、イスラエルを非難したり、パキスタンの要請でインドを批判したりしている。

 

しかし、中国西部・新疆ウイグル自治区でのウイグル人弾圧に関しては沈黙を続けてきた。

 

人権団体によると、新疆ではイスラム教の慣習を根絶し、強制的に漢民族に同化させる試みの一環として、ウイグル人をはじめとするチュルク語系少数民族100万人以上が強制収容所に入れられている。

 

全米最大のイスラム人権団体「米イスラム関係評議会」など米国の複数のイスラム教団体は、OIC加盟国は中国の力に恐れをなしていると非難した。

 

米国人イスラム教徒で、学者・人権活動家でもあるオマル・スリーマン氏はオンライン記者会見で、「中国がイスラム世界を経済的に支配し、すべてのイスラム諸国を孤立させ、ウイグル人を支援するという大義に口先だけ賛同することさえ恐れさせることができたのは明らかだ」と指摘した。

 

スリーマン氏は、パレスチナなどの支援には口先だけ賛同する国もあるが、ウイグル人問題については、特に難民認定希望者を追い返すことで、中国の弾圧を「助長」し続けるだろうと述べた。

 

ウイグル系米国人のルーシャン・アッバス氏は、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を推進する中で、イスラム教徒に向けた政策を輸出する可能性があると警鐘を鳴らしている。

 

アッバスさんは、「中国には買収や脅しで各国を服従させてきた実績がある。ウイグル人のジェノサイドは、中国の国内問題ではない。人類の問題だ」と語った。アッバスさんの活動を受けて、中国はアッバスさんの姉妹を拘束したという。

 

米政府は中国のウイグル人に対する扱いをナチス・ドイツの所業になぞらえており、OICが声を上げないことに失望を表明していた。 【12月18日 AFP】AFPBB News

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沈黙するイスラム諸国にあって、民族的・文化的にも近いトルコは、かつて「人類にとって大きな恥だ」と非難したともありました。

 

しかし、その後、トルコも対応を一変させています。

 

****トルコ大統領、中国非難から一転「ウイグルの人々は幸せに暮らしている」****

中国を訪問中のトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は(2019年7月)2日、習近平国家主席との首脳会談の中でこれまでの姿勢を一転させ、新疆ウイグル自治区の少数民族は幸せに暮らしていると語った。中国国営新華社通信が報じた。

 

(中略)こうした中国政府のウイグル政策について、イスラム教国はおおかた沈黙を貫いていたが、トルコ外務省は2月に声明を発表。イスラム教徒でチュルク語系の言葉を話すウイグル人に対する中国政府の措置は「人類にとって大きな恥だ」と非難していた。

 

しかし新華社によると、2日に北京の人民大会堂で習氏と会談したエルドアン大統領は、批判的だった態度を軟化させ「トルコは常に『一つの中国』原則を支持している」と述べ「新疆ウイグル自治区の多様な民族が、中国繁栄の恩恵を受けて幸せに暮らしていることは確固たる事実だ。トルコは、同自治区と中国の関係に亀裂を生じさせようとする者を許さない」などと強調した。

 

さらにエルドアン大統領は、過激思想と対峙するにあたって、中国との政治的な相互信頼を高め、安全保障上の協力を強化する用意ができているとも述べたという。【2019年7月3日 AFP】

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更に、トルコと中国との新たな犯罪人引き渡し条約によって大勢のトルコ在住ウイグル人が中国に送還されることになるとの懸念も。

 

****中国との新条約にウイグル人引き渡しの懸念、トルコが「火消し」****

トルコは30日、中国との新たな犯罪人引き渡し条約によって大勢のトルコ在住ウイグル人が中国に送還されることになるとの懸念を払拭(ふっしょく)した。

 

中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会が26日、2017年に署名された同条約を批准。これを受けて、イスタンブールの中国領事館前ではトルコ国籍を持つウイグル人約20人がピケを張って抗議した。

 

トルコ側はまだ同条約を批准していないが、中国側が批准したことによって推計5万人の在トルコウイグル人の間で不安が高まっている。

 

メブリュト・チャブシオール外相は、議会がいつ同条約を審議するかについては言及しなかったが、条約締結が中国へのウイグル人引き渡しを意味するものではないと発言。「これまでにもトルコ在住ウイグル人に関し、中国から引き渡しの要請はあった。だが、トルコがそうした措置を取っていないことは周知の通りだ」

 

さらに、「ウイグル人を引き渡すための条約だという言い方は誤っているし、不当だ。わが国は他国よりもそうした問題に敏感だ」と述べた。

 

ウイグル人は、トルコ語と同じチュルク諸語のウイグル語を話し、トルコとの文化的結びつきもある。そのため中国北西部・新疆ウイグル自治区での迫害から逃れようとするウイグル人に人気の避難先となっている。

 

しかし報道では、トルコ政府は第3国を経由してひそかにウイグル人を中国に送還しているとして非難されている。

 

犯罪人引き渡し条約への恐怖を訴える在トルコウイグル人の集会は30日で9日目となった。わが子が中国で拘束されているというトルコ国籍のウイグル人、オメル・ファラーさんは、「神よ、どうか私たちの国がこんなものを批准しませんように」と語った。「そんなことになったら、私たちは心配でたまらない。中国にとっては、在トルコウイグル人5万人全員が犯罪者なのだから」 【12月31日 AFP】

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イスラムの大義、民族的・文化的近さにもかかわらず中国になびくトルコ・・・現実世界というのは「こんなものだ」と言えばそうとも。ザラつくものが心に残りますが。

 

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台湾  「置き土産」として台湾重視を加速するトランプ政権 バイデン新政権の方針を注視する蔡政権

2021-01-10 23:43:31 | 東アジア

 

【中国政府に配慮した自主規制に終止符 バイデン次期政権に中国への強硬路線を維持させたいねらい】

アメリカ・トランプ政権は、大統領選挙で敗北した後の「政権末期」になっても、新政権への「置き土産」のように、過去のアメリカ外交とは方針が異なる独自の外交施策を展開していますが、そのひとつが台湾への対応。

 

アメリカにしても、日本にしても、これまでは中国への配慮から、台湾との関係は表立ってはあまり目立つことをしないという方針でしたが、トランプ政権で米中対立が激しくなると、対中国外交のカードの1枚としても、台湾との関係を明示的に強化しています。

 

昨年8月には、断交以来最高位のアザー厚生長官が訪台し、中国が反対する台湾のWHO参加を支持。

 

****米厚生長官 台湾のWHO参加をめぐり 中国らの対応を批判****

台湾を訪問しているアメリカのアザー厚生長官は、台湾がWHO=世界保健機関への参加を求めていることについて「オブザーバーとしての参加資格を復活させようと働きかけたが、中国共産党とWHOが阻止した」と述べ、中国とWHOの対応を批判しました。

 

アザー長官は、アメリカが41年前に台湾と断交して以来、台湾を訪問する最高位の高官で、(8月)10日は蔡英文総統に続き、新型コロナウイルス対策の陣頭指揮をとる陳時中衛生福利部長と会談しました。

一連の会談を終えて記者会見したアザー長官は、台湾がWHOへの参加を求めていることについて「トランプ大統領の指示のもと、私とポンペイオ国務長官は台湾のオブザーバーとしての参加資格を復活させようと働きかけたが、中国共産党とWHOが阻止した」と述べ、中国、WHO双方の対応を批判しました。(後略)【2020年8月11日 NHK】

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アメリカからの台湾への武器提供も“続々と”といった具合。

 

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国防総省のヘルビー次官補代行(東アジア担当)は(2020年)10月の講演で、米国が台湾に対し、できるだけ多くの沿岸防衛の巡航ミサイルのほか、地雷、移動砲、最先端の監視装置も購入するよう促していると明かした。

 

その取り組みこそが、「絶対に敗北が許されないたった1回の戦闘」に勝利する可能性を最大化してくれると力説した。

 

武器の提供はこれだけで終わらない。トランプ政権は10月、台湾が要望していた対艦ミサイル「ハープーン」400基と発射・運搬装置、レーダーシステムの売却を承認。これにより軍艦や海陸両用部隊からの攻撃に対する対処能力が向上する。台湾空軍向けに空中発射式の新型巡航ミサイル135基を売却することも同月承認した。

 

こうしたミサイルは、中国との軍事衝突が起きた場合には、台湾による中国艦艇、あるいは中国本土沿岸の重要拠点を攻撃する力を増強する。台湾は自前で製造する高性能の対艦、防空、対地攻撃の各種ミサイル開発も加速している。【12月12日 ロイター】

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武器の供与だけでなく、米海軍艦船が台湾海峡に出向く形で、中国をけん制する姿勢を強めています。

 

****米ミサイル駆逐艦が台湾海峡航行 中国反発****

アメリカ軍のミサイル駆逐艦2隻が台湾海峡を航行したことに、中国外務省は「断固反対する」と強く反発しました。

アメリカ海軍第7艦隊は(12月)31日、ミサイル駆逐艦2隻が台湾海峡を航行したと発表し、声明では「自由で開かれたインド太平洋への取り組みを示すものだ」としています。

中国側を牽制する一方で、中国外務省は31日の会見で、「断固反対する」と反発し、「あらゆる脅威と挑発に対応し国家の主権と領土を断固守る」と示しました。

相次ぐ武器売却などアメリカと台湾が関係強化を進める中、中国は反発を強めていて、12月20日には中国初の国産空母「山東」が台湾海峡を通過しました。

圧力を強める中国に対し、アメリカ側は一歩も引かない姿勢を示していて、台湾をめぐる双方のせめぎ合いが続いています。【12月31日 日テレNEWS24】

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高官訪台としては前出のアザー厚生長官に続き、今度は国連大使が訪台の予定です。“台湾は、中国の国連加盟を受け1971年に国連を脱退しており、国連大使の訪問は極めて異例”とも。

 

****米国連大使が近く訪台へ****

ポンペオ米国務長官は7日、クラフト国連大使が近く台湾を訪問すると声明で明らかにした。具体的な日程には言及しなかった。

 

ポンペオ氏は「台湾は信頼できるパートナーであり、中国がその偉大なる成功に水を差そうと画策しているにもかかわらず、活気に満ちた民主体制が花開いている」と称賛した。

 

台湾は、中国の国連加盟を受け1971年に国連を脱退しており、国連大使の訪問は極めて異例。

 

クラフト氏は昨年9月に開かれた会合で「世界は台湾が国連に完全加盟することを必要としている」と述べ、台湾の国連復帰を支持する考えを示していた。

 

国務省はまた、米国と台湾による毎年恒例の政治・軍事対話を6日にオンライン形式で実施したと発表した。国務省からはクーパー次官補が出席した。対話の内容については明らかにしていない。米国から台湾への武器売却など、中国の脅威などをにらんだ台湾支援策について話し合われたとみられる。【1月7日 産経】

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訪台の日程は、今月13─15日と報じられています。

 

当然ながら、中国は反発しています。

 

****米国連大使、台湾訪問すれば「重い代償」 中国が警告****

中国政府は7日、米国務省の発表通りにケリー・クラフト国連大使の台湾訪問が実現すれば、米国は「重い代償」 を払うことになるだろうと強く警告した。

 

中国の国連代表部は、「米国は、誤った行動の重い代償を払うことになるだろう」と警告。「中国は米国に対し、その狂った挑発行為をやめ、中米関係および国連における両国の協力関係にとっての新たな問題を生み出すことをやめ、誤った道を突き進むことをやめるよう強く求める」と述べた。【1月8日 AFP】

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別に中国の主張を擁護するつもりも何もありませんし、台湾の地位は改善させるべきだと思いますが、外交に関して言うなら、米中が国交を回復した当時、お互いが都合よく解釈できるような玉虫色ながら、台湾に関しては表立って支援・交流しないという「合意」が前提となっていたはずで、「心変わりした」「約束を破った」のは客観的に見てアメリカの方です。中国が怒るのも道理です。

 

もちろんアメリカの対応は、中国が重大な脅威として台頭するという環境の変化を受けてのことですが。

 

一方のアメリカの方はポンペオ国務長官が、台湾との交流に関して中国政府に配慮した自主規制を「もういい。全て解除する」と開き直っています。

 

****米、台湾との公的接触規制に終止符 ポンペオ国務長官*****

マイク・ポンペオ国務長官は9日、数十年にわたって台湾との公的な接触を抑制してきた規制に終止符を打つ方針を表明した。

 

ポンペオ氏は声明で、「中国共産党政権との融和策として」外交官や軍人などによる台湾側との接触に「複雑な内部規制」が課されていたと述べ、「今後はなくなる」と付け加えた。

 

この方針転換が具体的に何を意味するかは明らかではない。今回の表明は象徴的な動きである可能性はあるものの、台湾を自国の領土とみなしている中国の反発を招くのは必至とみられる。

 

ドナルド・トランプ米大統領の任期切れが迫っているなか、中国と米国および台湾の間の緊張は高まっていた。 【1月10日 AFP】

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この「政権末期」の態度表明は立場を明確にしたと言えばそうですが、ゴタゴタの後始末は自分でする気はないという意味では「無責任」とも言えます。

 

“トランプ政権は政権交代前に対中国の新たな措置を相次いで発表していて、バイデン次期政権に中国への強硬路線を維持させたいねらいがあるとみられます。”【1月10日 NHK】

まさに、新政権への「置き土産」です。

 

【台湾 バイデン新政権が強硬路線を引き継ぐのか、不安な気持ちで注視】

台湾としては、トランプ政権のもとでアメリカとの関係が強化され、その分、中国との関係で矢面に立つようにもなっただけに、今後のバイデン新政権の台湾対応が気になるところです。

ここで「はしごを外されたら」困ります。

 

“米国の大統領選で民主党のバイデン氏の当選が確実になり、台湾に少なからず動揺が走っている。トランプ政権下で米国との関係が強化されたためで、蔡英文総統は「米台関係は揺るがない」と強調。官製メディアは「米民主党は伝統的には(台湾の政権与党の)民進党を支持してきた」などと報じ、鎮静化を図った。”【11月13日 レコードチャイナ】とも。

 

****防衛支援は継続か、バイデン氏の出方に気をもむ台湾****

米国はトランプ大統領の下で台湾への軍事支援を大幅に拡大し、関係強化にいそしんできた。そのトランプ氏に選挙で勝利したバイデン氏の次期政権が、こうした外交方針を受け継ぐかどうか、台湾側は不安な気持ちで見守っているところだ。(中略)

 

中国政府はトランプ政権が推進した「親台湾」政策に相当な不快感を抱く。米国には直ちに台湾への武器売却と軍事的交流をやめもらいたいというのが、中国側の主張だ。

 

国務院台湾事務弁公室は声明で、台湾は中国の内政問題であると強調し、台湾への武器売却は中国に対する政治的挑発であり、「台湾分離独立」勢力を増長させるだけでなく台湾海峡の平和と安全を損なうと訴えた。

 

一方台湾国防部はロイターに、台湾の防衛力強化は米国内で長年、超党派から支持されていると説明した上で、米国が最近承認した武器売却に触れて、「次期米政権はこれに関する約束を履行し続けるだろう」と期待を示した。

 

バイデン氏の政権移行チームはこの記事内容についてコメントを拒否した。

 

<過去の発言が不安要素>

台湾を不安にさせているのは、バイデン氏の過去の発言だ。

 

例えば2001年、当時上院議員だったバイデン氏は、ジョージ・W・ブッシュ大統領(子)が台湾防衛を米国の「責務」だと表明したことを批判し、米国が中国と国交正常化した後に米台関係を規定した「台湾関係法」に基づけば、そうした義務はないと論じた。

 

もっともこの発言は、中国がアジア太平洋地域の米国の覇権にとって、重大な脅威として台頭するずっと前の話だ。今年の大統領選中には、バイデン氏は台湾や「志を同じくする民主主義国家」とのきずなを深めるべきだと訴えていた。

 

バイデン氏の側近で外交に携わる人々の多くも、中国が強権的な姿勢を先鋭化し、さまざまな国際機関を都合の良いように変革させようとするようになったことで、米国が果たすべき責務は変わったと認める。

 

バイデン氏が国家安全保障担当の大統領補佐官に指名したジェイク・サリバン氏はコメント要請に応じなかったものの、5月の外交専門誌フォーリン・ポリシーに共同執筆した記事で、台湾問題の核心に鋭く切り込んでいる。

 

「中国人民解放軍は、台湾を支配下に置くために必要な兵力投射能力を築きつつある事実を隠そうとしていない。(中国の台湾制圧は)一夜にして地域の勢力バランスを覆し、西太平洋における米国の残りのコミットメントに疑念を生じさせてしまう」と論評した。【12月12日 ロイター】

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イラク  イランの影響をめぐる対立 ひっ迫する国家財政、破綻すれば再び内戦状態に戻る危険も

2021-01-09 23:37:55 | 中東情勢

(ガセム・ソレイマニ司令官らの殺害から1年の節目に、イラク・バグダッドのタハリール広場で反米のプラカードを掲げる人たち(2021年1月3日撮影)【1月4日 AFP】)

 

【親イランと反イランの対立】

中東、特にイラクに関するニュースは最近ほとんど目にしませんが、平穏順調にイラク政治が行われている・・・という訳でもありません。

 

先日報じられたのは・・・

 

****イラクがトランプ氏逮捕状 イラン司令官殺害で****

イラクの首都バグダッドの裁判所は7日、昨年1月にイラン革命防衛隊精鋭部隊のソレイマニ司令官とイラクの親イラン組織創設者の殺害に関与したとしてトランプ米大統領の逮捕状を出した。対米批判の象徴的な逮捕状で、執行される可能性はほとんどなさそうだ。イラクの国営通信が伝えた。

 

イラン検察当局も昨年6月、ソレイマニ司令官の殺害に関与したとして、トランプ氏らの逮捕状を取得したと発表している。

 

米軍は昨年1月3日、イラク・バグダッドで、ソレイマニ司令官らを無人機による攻撃で殺害し、イランは同8日、イラク駐留米軍の拠点を弾道ミサイルで報復攻撃した。【1月7日 共同】

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「なんだかな・・・」という現実離れした「逮捕状」ですが、米軍によるイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官らのバグダッドにおける殺害に対する報復として、イラクを対米攻撃の場としたいイランおよび親イラン勢力と、イランの影響力拡大を嫌い、イラクを泥沼に引きずり込みかねないそうした争いに巻き込まれたくないとする勢力のせめぎあいがイラク国内・同じシーア派内にあり、対立が激しくなっています。

 

****シーア派勢力間の対立(イラク)****

イラクのシーア派の親イラン派とそうではない勢力の対立など昔からあったところで、目新しいことではなさそうですが、al sharq al awsat net はスレイマーニ司令官暗殺1周年が、彼らの間の対立をより深刻化させたとの記事を載せています。

今後イランがイラクを米に対する攻撃の舞台として使おうとすれば、シーア派諸勢力間の関係はさらに難しくなっていくでしょうね

記事は、(独立派とされている)モクタディ・サドル師がバグダッドの官庁、外国公館街のグリーン地域への攻撃、特に米大使館への攻撃を止めるべきと表明したことに対し、3日集まった群衆の多くがこれを非難したが(ということは彼らの多くが親イラン派により動員されたということか?)、これに対してサドル師の報道官は、2014年に親イラン民兵及び元首相マリキーが、イラク軍の力を弱め、ISの勢力を強めたと非難したとしている。

彼は更に、親イラン派民兵は米軍を歓迎したし、また米軍はイラク政府の招請に基づきイラクに来たとした由。
これに対してマリキー派の議員は、サドル派を激しく非難し、彼らはマリキーを非難する以外に話すことがないとした由。【1月5日 中東の窓】

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こうした勢力のバランスの上に立つ実務者のカディミ首相がイランとの対決姿勢を強めていることは、2020年11月4日ブログ“イラク イラン・シーア派民兵組織の影響力排除を目指すカディミ首相 デモ隊とも共通利害”でも取り上げたところです。

 

****カディミ首相、シーア派民兵に警告「直接対決の用意がある」****

カディミ首相は、ソーシャルメディア上で発言し、「国民の治安部隊と軍に対し違法な活動をする者のせいで揺るいだ安全を取り戻すために、我々は静かに取り組んできた。イラクがくだらない災難に陥らないようにすべく、平静になるように呼びかけた。しかし、必要となれば対決する用意がある」と警告した。

 

カディミ首相の発言を受け、政府と近い匿名希望の情報筋が次のように伝えた。

 

親イランのシーア派民兵のアサイブ・アフル・ハックが、バグダッド空港に向けて実行されたロケット弾攻撃の犯人であるメンバーを政府が逮捕したため、政府を脅迫し始めた。この組織は、逮捕された民兵の釈放を要求した。さもないと今夜または明朝に政府の建物を攻撃すると脅迫した。この組織は、内務大臣をも直接脅迫した」

 

情報筋は、これらの出来事を受けて国家安全次官のカシム・アル・アラジ氏が介入して事件を抑えたものの、カディミ首相は逮捕された民兵を釈放しないと断言していると述べた。

 

シーア派民兵に属する武装組織が、バグダッドのリサファ地区付近の一部地域に展開しているとの主張が上がっている。【12月26日 TRT】

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このイラク国内の親イランと反イランの対立、その他の対立を加速させ、イラクを再びバラバラの状態、内戦の場としかねないのが、イラクが直面している財政危機です。

 

【国家財政破綻で内戦再燃の危機】

これまで石油収入をつぎ込むことで、公務員としての雇用、貧困者への補助などを行い、なんとかイラク国内をまとめてきましたが、原油価格の低迷・新型コロナの影響による国家財政破綻とともに、「カネの切れ目が・・・」ということで状況は一気に悪化し、内戦が再燃することが懸念されています。

 

****よみがえる砂漠の危機****

コロナ禍で原油価格が急落し、財政破綻が目前  インフレと国家崩壊の危機をバイデンは救えるか

 

またも新たなイラク危機。

ジョー・バイデン次期米大統領にとっては考えたくもない悪夢だろうが、あいにく1月20日の就任初日から重い頭痛のタネになりそうだ。

 

イラク財政は崩壊へと突き進んでいる。そして誰もが知るとおり、金の切れ目は縁の切れ目。国庫が空っぽになれば、反目し合う諸勢力の微妙な均衡で成り立っているこの国は空中分解し、再び内戦に陥る恐れがある。

 

2003年のフセイン政権崩壊以来、イラクの政界には汚職が蔓延している。政府は宗派や民族を異にする諸勢力の寄り合い所帯で、主な政党から送り込まれた閣僚は所轄官庁を私物化し、国益など考えもせず、ひたすら自分たちの懐を肥やしている。

 

政府とは名ばかりの巨人な利権ネットワークだ。彼らは石油で得られる収入を国庫から吸い上げ、雇用や公共事業

の発注などの形で自分たちの支持層にばらまく。おかげで、もともと脆弱だった民間部門の雇用は壊滅状態だ。

 

政府は今や、この国で最大の雇用主であり、国民の多くは国のお金に頼って暮らしている。公務員や公的年金の受

給者でなくても、公共事業を受託した民間企業で働く人や公務員相手の商売で稼いでいる人も、間接的には政府のお金で食っている。

 

形式上は自営業の人でも、特に首都バグダッドなどの大都市の場合、顧客のほとんどは何らかの形で政府から金を

引き出して生きている。貧困層も例外ではない。イラク政府は今も基礎的な食料品の配給制度を維持しており、貧しい人たちはそれで食いつないでいるのが現状だ。

 

だから04年以来、公務員の数は3倍になった。15年前に比べると現在、公務員給与の総額は5倍。その膨大な

支出に政府が耐えられたのは、石油の輸出による利益を政府が独占してきたからだ。

 

今のイラク政府は、公務員給与と公的年金給付のためだけに毎月50億ドルを必要としている。その他の公共サービスや、その維持費にも20億ドル。これがなければ、国民生活は持たない。

 

国庫をむしばむコロナ禍

ところが新型コロナウイルスの感染拡大と原油価格の急落(原油の輸出収入は歳入の9割を占める)により、今や

イラク政府の歳入は毎月25億~35億ドル程度。計算上は毎月35億~45億ドルの赤字になる。

 

そして今、この赤字を補填する外貨準備が底を突こうとしている。(中略)今年の夏までには外貨準備が実質的に底を突き、政府は最低限の支払いすら不可能になるかもしれない。

 

イラク政府筋によれば、外貨準備の不足に怯える政府は既に紙幣の増刷によって公務員給与や政府機関の維持に必

要な費用を賄っている。だが、そんなことを続ければ制御不能なインフレを招く恐れがある。(中略)

 

外貨準備が底を突けば、やがて食料品をはじめとする輸入品の支払いが不可能になる。しかもこの国は、石油以外のほとんどの生活必需品を輸入に頼っている。

 

この先、石油による収入が減り、しかも通貨安が一段と進むことになればモノ不足が深刻化し、あらゆる製品の価格が高騰するだろう。そして国庫がいよいよ枯渇すれば、半年後には通貨ディナールも紙くず同然になる。(中略)

 

政府が公務員の給料や最低限の公的支出さえ捻出できない日が来れば、イラク情勢は壊滅的になるだろう。首相の

ムスタファ・カディミは20年11月17日の記者会見で、このままだと「1月には給与の支払いが困難になる」と率直に認めていた。

 

あいにくカディミは政治的な権力基盤を持たない実務官僚だから、主要政党を動かして問題に対処するよう求める

力を持ち合わせていない。

 

イラク政府は20年10月13日に、財政改革に向けた白書を発表している。しかし、その実現に向けた取り組みは始まってもいない。公務員の給与減額や人員削減の問題も手つかずのままだ。政界有力者の怒りを買うことを恐れて、何十万人にも上る「幽霊公務員」の撲滅さえ進められない体たらくだ。

 

就任当初のカディミは一般国民だけでなく、反体制デモに加わるような人たちやシーア派系の組織・政党、この国

では少数派のスンニ派、そしてクルド人勢力からも一定の支持を得ていた。頭はいいし政治的な野心はなく、実務能力があってアメリカとの関係もいい人物と評されていた。

 

それがどうだ。今では、この国の救い難い政治システムを立て直すにはカディミでは力不足だという見方が広まっ

ている。

 

この状態で国庫が底を突き、イラク経済が危機に陥れば命取り。カディミはあっさり信用を失い、今まで政権を支えてきた諸政党は彼をスケープゴートに仕立てて国民の反発をかわそうとするだろう。もともとカディミ嫌いのイランが、混乱に乗じて影響力の強化を図ろうとすることも間違いない。

 

財政が破綻すれば国内各地で抗議行動が起き、政権交代を求める声が高まるのは必至だ。公務員の給料も払えず、首相の権威も失われた政府が社会秩序を維持することは不可能に近い。

 

そうなれば、イランの支援するシーア派民兵組織をはじめとする勢力が権力の空白に付け込み、地域の治安を実質

的に掌握しようとするかもしれない。勢力圏をめぐる各派の武力闘争が再燃する恐れもある。そして油田や港湾、国境検問所や大企業、農地や私有地などの強引な争奪戦が始まるかもしれない。

 

ドミノ倒しで広がる影響 

要するに、武力で支配地域を奪い合う日々が戻ってくるということだ。(中略)

 

アメリカは中東政策について、オバマ政権以来の12年間で2つの重要な教訓を学んだはずだ。

1つ目は、中東で起きたことの影響は必ず他の地域にも広がること。

2つ目は、病は重くなってから治療するより、早めに予防したほうが安く上がるということだ。

 

思えば、イラク駐留の米兵を一日も早く帰還させたいバラク・オバマ大統領の下、副大統領として対イラク政策を

陣頭指揮したのはバイデンだった。それは最高に損な役回りだったに違いない。だから彼が、二度とごめんだと思ったとしても無理はない。

 

しかし今度は自分が大統領だ。運がよければ新たな危機をチャンスに変え、今度こそイラクを真の安定への、そしてアメリカの権益をしっかり守れる道に導けるかもしれない。【1月12日号 Newsweek日本語版】

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カディミ首相が「1月には給与の支払いが困難になる」と発言していた、その「1月」です。

トランプ大統領の抵抗で引継ぎ・新政権人事などが遅れているアメリカ・バイデン新大統領が、就任早々にイラク支援に着手するというのは、あまり可能性は大きくないようにも思えます。

 

そうこうしているうちに、国庫が尽き、公務員給与も支払われず、貧困者補助もできないという事態に陥り、武力で支配地域を奪い合うような抗争が火を噴く・・・・という可能性は大きいようにも。

 

もともとイラクについては、シーア派、スンニ派、クルド人の三つに分割しなければ収まらないという議論がありました。

 

シーア派内も親イランと反イランに分かれていることは先述のとおり。

 

いったん火がつけば、内部崩壊は早いでしょう。

 

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新型コロナワクチン  急く様子がない日本の世論と政府 欧米では効率的接種の方法が議論

2021-01-08 23:29:16 | 疾病・保健衛生

(中国製とされるワクチンを接種した際の同意書と接種を受けた人のリスト【1月1日 毎日】)

 

【「ワクチンを急げ!」との声が上がらない日本の不思議 副作用恐怖症と責任回避?】

日本では新型コロナ感染の急拡大を受けて緊急事態宣言が出され、市民生活・経済活動の自粛・制約が再び強く求められています。

 

一方、感染拡大からの出口と期待されるワクチン接種については、「当初2月中に製薬企業の治験データがまとまるということだったが、日本政府から米国本社に対し、強く要請し、今月中にまとまる予定だ。そのうえで安全性、有効性の審査を進め、承認されたワクチンをできる限り2月下旬に接種を開始できるよう、政府一丸となって準備を進めている」(1月4日 菅首相)とのこと。

 

自粛に対する社会的同調圧力・自粛警察的な風潮が大嫌いな私としては、個人的な思いを言えば、「国民に多大な犠牲を強いる自粛・制約を求めるのなら、もっと出口戦略のワクチンを急げよ! 何とかの一つ覚えみたいに自粛・三密回避ばかり繰り返すんじゃなくてさ!」といったところ。

 

世界各地ではすでに欧米・中国・ロシアなどでワクチン接種が始まっており、関心は「いかに効率よく接種するか」に移っているのに、なんとも慎重というのか、おおらかというのか、のんびりした対応にも思えます。

 

英調査会社によれば、ワクチンが普及し社会が日常に戻る時期について、日本は先進国の中で最も遅い22年4月となることが見込まれています。これじゃ、オリンピックなんて到底無理ですね。オリンピックにあれだけこだわってきた政府・東京都は、そこをどうかんがえているのだろう?

 

当然ながら、政府としても訳もなく遅らせているのではなく、2月末になるのは、それ以上は早められないのは理由あってことでしょう。

 

たとえそうであっても、「製薬会社の首締めてでも、土下座してでも、札束で横っ面はたいてでも、1日も早くワクチン接種を実現するのが政治の責任だろうが」と言いたくもなるのですが・・・。

 

ただ、私には非常に不思議に思えるのですが、そうした「ワクチンを急げ!」といった声は、TVでも、新聞でもまったくというぐらい目にしません。私一人のたわごとのようです。

 

国民はみな、「早くて2月末・・・そうか」と、文句も言わず納得しているみたい。不思議だな・・・

 

基本的に、過去の薬害の経験もあって、日本は他国に比べてワクチンに警戒感が強いようです。

国民も急ぐことを無理強いしないし、政府も急いだ結果何らかのトラブルが出た際の責任をとりたくない・・・ということで、政府・国民ともに「無理に急がない」という姿勢なのでしょうか。

 

****ワクチンに警戒感根強い日本、普及後れの可能性-過去の薬害が影か****

日本の新型コロナワクチン接種意向は69%-平均を下回る水準

ワイドショーの扇動的な報道による高齢者への影響を懸念する声も

 

英国や米国などで新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まる中、日本国内では過去の薬害や副反応に対する扇情的な報道などの影響でワクチンに対する懐疑的な感情が根強いことから、普及が他の先進国に大きく後れを取るとの見方が広がっている。

  

「潜在的に国民の頭の中にワクチンは副反応があるということがこびりついている」。北里大学の中山哲夫特任教授(ウイルス感染制御学)はそう指摘する。9月に英医学誌ランセットに掲載されたワクチンへの信頼度に関する意識調査では、調査を実施した149カ国のうち、日本が最も低い国の一つであることが明らかになった。

  

新型コロナのワクチンでも日本人の忌避の傾向は顕著だ。世界経済フォーラムと調査会社イプソスが共同で15カ国を対象に実施した意識調査では、日本の新型コロナワクチンの接種意向は69%にとどまり、インドの87%や英国の79%よりも低く全体の平均の73%も下回った。

  

現在、政府は米ファイザーとは来年6月末までに1億2000万回分、米モデルナとは来年の第3四半期までに5000万回分、英アストラゼネカとは1億2000万回分(来年3月までに3000万回分)の供給を受けることで基本合意している。

  

ファイザーは18日に日本で製造販売の承認を申請しており、国内での臨床試験の結果を2月までに取りまとめることを計画している。モデルナのワクチンの国内流通を担う武田薬品工業も、来年1月にも国内で臨床試験を開始する予定。中山氏は、現在国内で進行中の臨床試験で良好な結果が出れば、3、4月にも承認されることを想定していると話した。

  

英調査会社エアフィニティーは、新型コロナのワクチンが各国・地域で普及し社会が日常に戻る時期を予測。来年に東京五輪・パラリンピック大会の開催を目指す日本では、先進国の中で最も遅い22年4月となることが見込まれている。

  

日本政府は通常の経済活動や日常生活を取り戻すために早期にワクチンを承認する必要がある一方で、国民の信頼を損なわないよう慎重に審議を進める事も求められている。

 

過去の薬害が影

ワクチンを避ける国民感情には過去に何度か起きた薬害が影響している。1948年から翌年にかけてはジフテリアの予防接種で製造企業のミスが原因で924人に健康被害が及び83人が死亡した。89年から93年にかけてはしか・おたふくかぜ・風しん(MMR)ワクチンの接種により多くの子供が無菌性髄膜炎に感染し、約1800人の被害者が出た。

  

これらを背景に94年の改正予防接種法では定期接種に課せられた「義務接種」が「努力義務」へと変更された。近年では子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)感染予防のためのワクチン接種を巡る副反応が大きな話題となった。

  

早稲田大学政治経済学術院の田中幹人准教授(科学技術社会論)は、センセーショナルに報道する傾向があるワイドショーの影響を懸念していると話す。ワクチンの恩恵を最も大きく受けるのが高齢者である一方で、高齢者にとっては「ワイドショーが重要な情報源」となっているためだという。

  

東京大学大学院の坂元晴香特任研究員(公衆衛生学)は、新型コロナワクチンの接種を普及させるためには政府やメディアが積極的に広報の役割を果たすことが求められると指摘する。

 

HPVワクチンではメディアが副反応を大きく取り上げた結果、最終的には政府が積極的勧奨を差し控える事態となったことを例に挙げ、それぞれが果たす役割は重要との認識を明らかにした。

  

その上で、ワクチン忌避はどこの国でも存在するものの「違うのはマスコミ報道の在り方とそれに対する政府のスタンス」と述べた。(後略)【12月23日 Bloomberg】

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副作用について言えば、副作用のない薬なんて世の中に存在しません。新型コロナワクチンだって当然に副作用はあります。なかには重篤な事態に陥る場合もあるでしょう。(また、ワイドショーが騒ぐんだろうな・・・)

 

でもそれは、どんな薬剤でも同じです。要は、その薬剤がもたらすベネフィットとリスクの比較です。

 

大勢が感染し、重傷者・死者も増加する、自粛・制約を強いられるなかで多くの事業者・雇用者が廃業・失業に追い込まれ、なかには自殺等に追い込まれる者もでる・・・そういう状況で慎重に安全性の確認を続ける・・・そのリスクとベネフィットの比較です。

 

私的には、こうした危機的状況での慎重さは、不合理な副作用に対する警戒・不安、誰も責任を負いたくない無責任体制の結果のように思われるのですが。

 

その結果、自粛を強要される期間が長引く・・・苛立つ思いです。

 

【“抜け道”を探す者も】

さきほど、“「ワクチンを急げ!」といった声は、TVでも、新聞でもまったくというぐらい目にしません。私一人のたわごとのようです。”と書きましたが、「早くワクチンを接種したい。たとえ非正規なルートでも」と考える者が日本でもいないわけでもないようです。当然でしょう。

 

****国内富裕層が未承認コロナワクチンを先行接種 中国人ブローカー持ち込み****

中国で製造したとされる新型コロナウイルス感染症の未承認のワクチンが日本国内に持ち込まれ、日本を代表する企業の経営者など一部の富裕層が接種を受けていることが明らかになった。

 

2020年11月以降、既に企業トップとその家族ら18人が接種を受けたという。ワクチンは、中国共産党幹部に近いコンサルタントの中国人が持ち込んでいる。

 

個人が自分で使う以外の目的で海外からワクチンを持ち込むのは違法の可能性があるが、中国側がワクチンをテコに影響力拡大を狙っている姿が浮かんだ。(後略)【1月1日 毎日】

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“中国側がワクチンをテコに影響力拡大を狙っている姿が浮かんだ”・・・それは筋違いでしょう。

中国側の意図はともかく、話の大前提にあるのは「海外では接種が進むのに、日本ではワクチンを接種したくても当分できない」という事実、それに対する一部の者の焦りでしょう。

 

どうしてそこを問題にせず、「中国側が・・・」といった陰謀論みたいな話になるのかな???

 

利用者はいくら払ったんだろう?そこに記事が触れていないのは、「その額だったら私も・・・」という者が続出するのを警戒してのことでしょうか。

 

でも、個人が自分で使う目的なら海外からワクチンを持ち込むのは合法か・・・(そう言えば、私も普段、ある種の薬を個人輸入しています)

そのうち、ネット上で中国産ワクチンの個人輸入という形での販売が始まるかも。

 

ただ、内服薬ではなく特殊な扱いを要する注射なので、個人だけでは利用できませんね。医療関係者をまきこまないと。たとえ個人輸入でも、そのあたりで違法性が出てくるのではないでしょうか。

 

当然ながら、中国政府は関与を否定しています。

 

****「未承認ワクチン国内接種」本紙報道に中国大使館「日本で広める権限与えていない」****

未承認の新型コロナウイルスワクチンが中国から日本に持ち込まれ一部の富裕層が接種を受けていると毎日新聞が報じたことについて、在日本中国大使館は7日、「中国政府は今まで、いかなる企業や個人に対しても日本でワクチンを広める権限を与えていない」とコメントした。

 

コメントによると、報道を受けて暫定的な調査を行ったが、ワクチンを開発した中国の国有製薬会社は「日本と関係するいかなる個人とも接触したことがない」といい、「生産したワクチンが日本に流入したという状況は今のところ見つかっていない」という。

 

そのうえで、「中国は各国と共同でワクチンの偽造販売や不法な国外流出など犯罪行為を取り締まる」と強調。「出所不明のワクチンの接種を受けるのは重大なリスクがあり、だまされないよう希望する」と注意を呼びかけた。【1月7日 毎日】

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利用が制約されていると、なんとか抜け道を探して・・・、あるいは特権を利用して・・・という話になりがちなのは日本でも、他国でも同じ。フィリピンでは・・・

 

****ワクチンどう密輸? 比大統領の警護隊が極秘接種****

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領の警護隊員が昨年秋、新型コロナウイルス予防ワクチンを接種していたことが明らかになった。だが、当時も今も、フィリピンではどのワクチンも承認されていない。

  

野党議員は、警護隊員らがいかにして新型コロナウイルス予防ワクチンを接種したのか、その経緯を追及している。

 

ワクチンを巡るスキャンダルは先月、ドゥテルテ氏が大統領の警護を担当するフィリピン軍の複数の隊員が自身への報告なくワクチンの接種を受けていたと述べたことで発覚した。

 

その後、警護隊の司令官はドゥテルテ氏を感染リスクから守るために、「一握り」の警護隊が9月と10月にワクチン接種を受けたと明らかにした。

 

その司令官は、ドゥテルテ氏は警護隊員が必要な2回の接種を受けた後にその件について知ったと説明。警護隊は他の当局による承認、もしくは支援を受けずに単独で行動したとしており、テレビインタビューで「自分たちでワクチンを接種した。とても簡単なことだ」と述べた。

 

今回のスキャンダルは政界を揺るがす問題に発展。フィリピン国家捜査局(NBI)が捜査に乗り出したほか、上院での公聴会開催を求める声が強まった。これまでフィリピン食品医薬品局(FDA)に承認されたコロナワクチンはまだない。NBIとFDAはコメントの要請に応じていない。

 

フィリピンは国内でワクチンを製造しておらず、ワクチンがどこからいつ持ち込まれたのかなどの疑問がくすぶっている。

 

ドゥテルテ氏は先月、国内には中国国営医薬品の中国医薬集団(シノファーム)傘下の国薬控股(シノファーム・グループ)が開発したコロナワクチンを接種した人が複数いると明らかにしていたが、4日のスピーチでは、警護隊が接種したワクチンの製造元は知らないと述べた。(中略)

 

シノファームのワクチンは7月に緊急使用許可が認められた後、第3相試験(フェーズ 3)で79%の予防効果が確認されたことで、昨年12月下旬に中国で暫定承認を受けている。シノファームは11月、中国では100万人以上が接種を受けたと明らかにしていた。

 

在マニラの中国大使館によると、シノファームはフィリピンで今週、緊急使用許可を申請する予定。

 

ドゥテルテ氏は4日、議員らに対し、警護隊は自身を守るという任務を遂行しているだけだと述べ、追及しないようけん制。議会が調査に乗り出しても証言に応じないよう、警護隊の責任者に指示した。

 

フィリピン(人口1億0600万人)は東南アジア諸国の中ではコロナ感染が極めて深刻で、感染者数は約50万人、死者は9300人以上に達している。フィリピン当局は2~5年に6000万~7000万人のワクチン接種を目指している。同国はこれまで唯一、英製薬大手アストラゼネカから260万回分のワクチンを調達することで合意している。【1月7日 WSJ】

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超法規的殺人が横行する国ですから、こんな話、あって当然でしょう。

 

【欧米では効率的ワクチン接種の方法が議論】

ワクチン接種が始まっている欧米で問題となっているのは、変異型ウイルスへの有効性と、効率的ワクチン接種の方法の問題。後者については・・・

 

“英国でワクチン接種方法めぐり論争”【1月4日 日テレNEWS24】

“米政府、モデルナ製ワクチンの半量投与を検討 接種スピードの加速狙い”【1月4日 ロイター】

“米FDA、コロナワクチンの接種回数や間隔の変更は「時期尚早」”【1月5日 ロイター】

“NY・フロリダ州、病院にワクチン接種加速要請 応じなければ配布停止も”【1月5日 ロイター】

 

****ワクチン接種間隔めぐり英政府とファイザーが対立 新型コロナ****

米製薬大手ファイザーと独バイオ企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種方法をめぐり、英政府とメーカー側の意見が分かれている。

 

同ワクチンは1人につき2回の接種が必要だが、英政府は多くの国民に1回目の接種を行き渡らせるため2回目の時期を遅らせる方針なのに対し、ファイザーは英政府が掲げる方法は「安全性が検証されていない」と懸念を示している。

 

英国で昨年12月8日に接種が始まったファイザーのワクチンは、1回目の接種から21日後に2回目を行うことで発症を防ぐ95%の有効性を発揮するとされる。

 

しかし、新型コロナの変異種の感染が拡大したことを受け、英政府は12月末、少数の国民に2回投与するよりも、1回目の接種をより多くの国民に早く実施することで感染者数を減らす考えを主張。1回目から2回目の間隔を最長3カ月にする方針を決めた。

 

米メディアがファイザーの臨床研究の担当者に取材したところ、同社ワクチンは1回目の接種で有効性は約52%確保できるとみられている。

 

ジョンソン英首相は初回の投与だけでも「(新型コロナの)影響から国民を守れる」と判断。英政府は今月4日に接種が始まった英製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンに関しても、2回目を遅らせる考えを示している。

 

だが、ファイザーとビオンテックはこの方針に不安を隠せない。ロイター通信によると、両社は今月4日、ワクチンの臨床試験(治験)と異なる間隔での投与は「安全性や有効性が検証されていない」と警告した。

 

このワクチンの接種間隔をめぐっては、各国や機関で対応が分かれている。米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は1日、米メディアに「私たちは治験で21日間の間隔をあけることが最適と知っている」と英政府の方針を支持しない見解を示した。

 

一方、欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は42日以内に2回目を行うべきだとの認識だ。世界保健機関(WHO)も42日間以内に行えば効果が得られるとしている。

 

両機関はワクチン不足を想定し、1回目の接種を十分に確保するためにファイザーなどが主張する間隔を延ばしたとみられている。ただ、英国が示す接種間隔はEMAやWHOよりもさらに長く、ワクチンの有効性を大きく下げる恐れも指摘される。【1月8日 産経】

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製造会社が嫌がっているのに強行するというのは、ジョンソン首相はずいぶん強引ですね・・・“初回の投与だけでも「(新型コロナの)影響から国民を守れる」と判断”って、どういう根拠でしょうか。

 

まあ、それだけイギリスの状況が切羽詰まっているということであり、そこを考慮すると合理的判断なのかも・・・逆に言えば、そうした危機的状況で漫然とルールどおりに行動するのは「不作為の過失」を犯すことになるとの政治判断でなのでしょう。

 

****英国、ワクチン130万人が接種 新規感染者は初の6万人****

ジョンソン英首相は5日、昨年12月から国内で始まった新型コロナウイルスのワクチンを約130万人が接種したと明らかにした。5日発表の新規感染者は6万916人で、初めて6万人を超えた。8日連続で5万人以上となり、ウイルス変異種の拡大が続いている。

 

ジョンソン氏は記者会見で、首都ロンドンを含むイングランドでは80歳以上の23%がワクチンを接種したと説明。介護施設や病院の職員、高齢者ら優先度の高い全ての対象者が2月15日までに接種できるよう計画を進めているとした。【1月6日 共同】

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アメリカ  中国も揶揄する「トランプの乱」の混迷 即時罷免要求 共和党内からの批判・離反の動き

2021-01-07 23:04:10 | アメリカ

(議事堂の西側には、アメリカで黒人差別の象徴となっている首つり縄がくくられた絞首台が設置された。【1月7日 HUFFPOST】)

 

【民主党、かろうじ上院主導権を握るものの、今後の議会運営には困難も】

アメリカの「長い1日」「激動の1日」を、淡々と数行でまとめれば以下のとおり。

 

****バイデン氏の当選を正式認定 トランプ支持者ら4人死亡****

米連邦議会は7日、民主党のバイデン次期大統領の大統領選当選を正式認定した。与野党議員は共和党のトランプ大統領の支持者による議事堂占拠を非難した。占拠に伴い、トランプ氏支持者の女性1人を含む計4人が死亡。

 

バイデン氏は国民の癒やしと結束を掲げるが、社会の分断は深刻で、20日の政権発足は前途多難の船出となる。南部ジョージア州の上院決選は民主党が2議席を全勝し、上下両院で主導権を握った。

 

上院議長を兼務するペンス副大統領は上下両院合同会議で「暴力に勝利はない」と述べ、占拠を厳しく批判した。【1月7日 共同】

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上記に関して山ほどの報道がなされているところですが、1月4日ブログ“アメリカ  共和党にとって悩ましいトランプ大統領との距離感の取り方”でも取り上げた、ジョージア州の上院決選について。

 

結果的には、民主党が2議席を制して、「ねじれ」を回避して大統領と上下両院の三つを押さえる形を“かろうじて”実現しました。

 

トランプ大統領の積極関与が共和党候補には裏目に出たようにも思えます。

もっとも、上院で“同数”という状況は、バイデン新大統領にとっても容易な状況ではありません。

 

****バイデン氏、「ねじれ議会」回避でも重要法案実現には壁****

(中略)採決で同数となった場合は議長を兼務するハリス次期副大統領が決裁票を投じるため、事実上は民主党が多数派になる。

とはいえこれだけ勢力がまさに伯仲する以上、バイデン氏が重要法案を通すためには共和党との妥協は不可欠だ。また最も野心的な内容の法案は、民主党内の左派からプレッシャーをかけられたとしても、しばらくは審議を見合わせなければならなくなるかもしれない。(中略)

上下両院の多数派とはいえ、シューマー氏とペロシ氏に票固めでの取りこぼしが許されるほど余裕があるわけではなく、共和党が勢い付いて、民主党が推進する法案を可能な限り阻止しようとしてもおかしくない。(中略)


<鍵は穏健派取り込み>
バイデン氏のアドバイザーは、政権移行チームが与野党双方の穏健派を味方に付けられる政策案を取りまとめることに注力していると明かした。特に念頭に置いているのが、ジョー・マンチン議員のような民主党内の保守派を押さえることや、スーザン・コリンズ議員、ミット・ロムニー議員のような共和党穏健派を取り込むことだ。

 

ほとんどの法案は上院で60票の賛成が必要だからだ。バイデン氏の盟友の民主党クリス・クーンズ上院議員などが共和党との折衝窓口役だ。

上下両院を制する形になっても、バイデン氏は慎重な態度で政権運営を始めるだろう。まず目指すのは、景気刺激策や州政府や自治体政府支援、学校再開や新型コロナウイルスワクチン配布にかかる資金拠出などを盛り込んだ総額1兆ドル弱の追加経済対策の実現になる見通し。(中略)


<オバマ政権の教訓>
昨年の大統領選でバイデン氏は、世界大恐慌を克服するためにニューディール政策を進めたフランクリン・ルーズベルト大統領をほうふつさせるかのように、移民から気候変動、医療、経済格差まで実に幅広い問題を解決するために動くと表明した。

こうしたせっかくの野心的な政策は、いくら議会勢力上、実現が難しそうでも、不可能でないならば後退・撤回すべきでないとの声も民主党内から聞こえてくる。(中略)

バイデン氏は、移民問題などでは大統領令を多く活用し、幼少期に親に連れられて米国に不法な形で入国した若者(ドリーマー)の米国在留を認める措置(DACA)を復活させるとともに、強制送還に歯止めをかける考えだ。気候変動については、パリ協定に復帰するほか、トランプ政権が導入した環境政策の多くを撤回するつもりだ。

それでもバイデン氏には、長期的な視点も必要になる。オバマ前政権の副大統領として同氏が目にしたのは、オバマ氏が医療や環境で政権発足早々に踏み込んだ政策を実行した結果、2010年の中間選挙で共和党に下院の奪還を許したという光景だった。共和党は、賛否が分かれたオバマ氏の政策を批判して勢力を盛り返した。

民主党上院院内総務時代のハリー・リード氏の側近筆頭だったジム・マンリー氏によれば、今回も、共和党はバイデン氏との協調に関心を示さず、22年の中間選挙まで辛抱強くバ待った上で上下両院の多数派の地位を取り戻そうとするかもしれない。マンリー氏は「これから厳しい2年間になると思う」と警戒を示した。【1月7日 ロイター】

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バイデン新政権・民主党にとっての最大の問題は、上記記事では直接的には触れていませんが、民主党内の穏健派と急進派の対立でしょう。

 

上記のような共和党への配慮を重視した政権・議会運営を行えば、サンダース議員に代表されるような急進的な勢力の不満が大きくなり、党内の分断・対立を招きます。

 

一方で、そうした急進派の不満に応えようとすれば、共和党から「社会主義」といった類の批判を浴びることにも。

 

【「トランプの乱」を中国が揶揄 香港立法会議事堂占拠とどこが違うのか? 香港では死者は出ていない】

次に、「トランプの乱」とも言うべき議事堂占拠の混乱の件。

 

****米議会乱入騒ぎ、トランプ氏自ら「激しい」抗議と「戦い」あおる****

(中略)昨年11月の大統領選の不正を主張し、敗北をまだ認めていないトランプ氏は何週間も前から抗議集会を呼び掛け、この日の演説でも支持者に「戦い」を訴えていた。

トランプ氏は12月20日のツイートで「2020年の選挙で負けたというのは統計上不可能だ」とし、「1月6日にワシントンで大規模集会を開こう。ぜひ来てほしい。激しいものになるだろう」としていた。

6日は米大統領選の選挙人投票を正式に集計し、結果を認定する上下両院合同本会議が開かれる日だった。

集会には多数のトランプ支持者が集結。トランプ氏は演説し、議会議事堂に行進して選挙手続きに抗議の意を表明し、議員らに選挙結果を拒否するよう圧力をかけるべきだと強調。

「議会に行進し、勇敢な上院議員と下院議員を激励する」と呼び掛け、支持者らに「戦う」よう訴えた。

「われわれは決してあきらめしない。決して敗北は認めない」と述べ、民主党の勝利は「でたらめだらけだ」と語気を強めた。

これに支持者らは「でたらめだ」と何度も叫んで応じた。

演説開始から約50分後、まだ話が続く中で一部の支持者はトランプ氏の旗を振りながら議事堂に向かって動き始めた。(後略)【1月7日 ロイター】

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こうした事態に、“ジョー・バイデン次期大統領は6日、「反乱」と呼び、議員らは「クーデター未遂」と呼んだ”【1月7日 AFP】などの民主党サイドだけでなく、「米国大統領があおった反乱だ」(ミット・ロムニー上院議)といった共和党内からも大統領への強い批判が出ています。(ロムニー議員のトランプ批判自体は以前からですが)

 

国際的にも、「恥ずかしい光景だ」(イギリス・ジョンソン首相)、「とても悲惨な光景だ」(オーストラリア・モリソン首相)、「これはアメリカではない」(EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表)、「怒りと悲しみを覚えた」(ドイツ・メルケル首相)などの批判が。

 

ただ、形の上だけで言うなら、ベラルーシでの選挙結果を認めない抗議行動は欧米から評価されており、香港で起きた若者らの議会乱入に対して同情的な見方が多々あります。

 

香港が許されて、アメリカでは「暴力」だというのはダブルスタンダードではないか・・・中国がさっそく揶揄しています。

 

****中国SNS、米議会突入を「美しい光景」とやゆ 香港デモと比較****

(中略)7日朝、共産党機関紙・人民日報系の環球時報はツイッターに、2019年の香港デモ隊による立法会(議会)議事堂占拠の画像と、トランプ氏支持者が議事堂内に侵入し、自撮りをしたり、警備員ともみ合ったり、建物内を荒らしたりする様子を捉えた画像を並べて投稿した。

 

ナンシー・ペロシ米下院議長がかつて香港の抗議活動を「目を見張る美しい光景」と呼んだことを引き合いに、「米議事堂での最近の出来事についても彼女が同じことを言うかはまだ分からない」とのコメントを画像に添えた。(中略)

 

ウェイボーでは7日、「トランプ支持者が米議事堂に突入」というハッシュタグが拡散され、2億3000万回閲覧された。ユーザーらは、香港の抗議デモ参加者に国際的な支持が集まったのに対し、トランプ氏の支持者には批判が殺到していることに言及した。

 

欧州諸国の首脳が香港デモを支持した一方で米議事堂での騒動は非難していることを「ダブルスタンダード」だと指摘する投稿には、5000件超の「いいね」が寄せられた。 【1月7日 AFP】

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****中国、米議事堂占拠を香港議会乱入と比較*****

(中略)中国外務省の華春瑩報道官は7日の会見で、「2019年の(香港)立法会へのデモ隊乱入は、ワシントンでの出来事よりも深刻だったが、デモ隊は1人も亡くなっていない」と述べた。【1月7日 ロイター】

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香港で冷酷な中国支配が進むなかで、「民主主義」という中国との違いを鮮明に打ち出すべきこのとき、トランプ大統領とその支持者の愚行は中国に嗤われるような事態ともなっています。

 

ベラルーシ・香港はよくて、今回のアメリカでの出来事がなぜダメなのか・・・選挙結果否定・議事堂乱入という形式的な問題ではなく、どうしてそのような行為に及んでいるのかというところで論じる必要があります。

 

ただ、そこにおいては「陰謀論などを信じる愚か者」という主張と、「マスメディア・エスタブリッシュメントの言い分に騙されている愚か者」という主張の事実認識が異なる水掛け論にもなり、「私の思うところでは・・・」という話になります。

 

ついでに言えば、私個人は「私の思うところでは、陰謀論などを信じる愚か者は・・・」という立場です。

 

【憲法修正25条に基づいた大統領の即時罷免要求】

トランプ大統領批判のなかで最も厳しいものは、大統領が死亡や罷免や辞任などで責務を全うできなくなった時に、副大統領が代わって大統領になることを規定する憲法修正25条に基づいた大統領の即時罷免要求です。

 

****トランプ政権閣僚ら、大統領の即時罷免を協議 米報道****

米主要メディアは、ドナルド・トランプ米大統領の支持者らが連邦議会議事堂内に突入した問題を受け、トランプ政権の閣僚らが6日、合衆国憲法修正25条に基づいたトランプ氏の大統領の即時罷免について協議したと報じた。

 

修正25条は、米大統領が「職務上の権限と義務の遂行が不可能」だと判断された場合に、副大統領と閣僚らで構成される大統領顧問団(内閣)に大統領を罷免する権限を認めている。修正25条の発動には、マイク・ペンス副大統領が大統領顧問団を率いて罷免の可否を問う投票を行う必要がある。

 

米CNNは、匿名の複数の共和党幹部の話として、修正25条の発動が協議されたと報じた。この共和党幹部らは、トランプ氏について「制御不能」だと述べたという。(中略)

 

トランプ氏をめぐっては、デモ隊の議事堂突入に先立って支持者らをあおったことや、大統領選での敗北は大規模な不正によるものだとの根拠のない主張など、数々の不可解な言動を受けて、大統領としての職務遂行能力を疑問視する声が上がっている。 【1月7日 AFP】

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民主党議員はこの種の主張を声高にしていますが、上記記事では「政権の閣僚らが協議した」ということで、興味深いところです。

 

アメリカで最も影響力を持つとされるビジネス団体、全米製造業者協会(NAM)も、ペンス副大統領にトランプ大統領の罷免(ひめん)を検討するよう求めています。【1月7日 CNNより】

 

ただ、任期も余すところ2週間となったこの時点で「ペンス副大統領が大統領顧問団を率いて罷免の可否を問う」というのは、現実的ではないかも。(個人的には、残り日数にかかわらず、行うべきとは思いますが)

 

【共和党・政権幹部にトランプ氏からの離反の動き】

もっとも、さすがにペンス副大統領はじめ、共和党内にもトランプ離れが加速しています。

 

****トランプ氏支持者扇動 共和党に離反の動き****

米民主党のバイデン次期大統領の就任を正式確定させた6日の上下両院合同会議は、本来は単なる形式的手続きであるにもかかわらず、暴徒の乱入で一時中断されるという未曽有の騒動に発展した。

 

共和党のトランプ大統領が敗北を頑として認めず、「不正選挙があった」とする客観的根拠のない主張を展開して選挙への信任を傷つけ、支持者を扇動してきたためだ。

 

連邦議会議事堂が襲撃されるのは、米英戦争終盤の1814年、議事堂が英軍に焼き打ちされて以来207年ぶりとなる。

 

上下両院合同会議で進行役を務めたペンス副大統領は、合同会議の再開に際し「私たちはきょう議会を守った」と述べ、「暴力は決して勝利しない。自由が勝利する」と強調した。

 

FOXニュースなど複数の米メディアによると、トランプ氏が議事堂への乱入に対応しようとしなかったことから、ペンス氏が独断でミラー国防長官代行らに電話をかけ、州兵部隊の緊急出動を要請した。

 

トランプ氏による「不正選挙」の主張に同調し、合同会議で選挙結果に異議を申し立てると表明した共和党の上院議員13人と下院議員百数十人も、この日の事態を受けて異議を取り下げる議員が相次いだ。

 

これらの議員は元来、トランプ氏の退任後の影響力や支持基盤の票にあやかることを見越して同氏を支えてきたが、政治専門家の間では、急進的な同氏の支持勢力によるこの日の行動を機に、一般の共和党支持者の間で潮目が「トランプ離れ」に変わる可能性があるとの指摘が出ている。

 

共和党のキンジンガー下院議員は声明で「トランプ氏はもはやわが党の指導者ではない。同氏による(議事堂襲撃の扇動という)反逆罪に相当する行動を拒否すべきだ」と訴えた。

 

米紙ワシントン・ポスト(電子版)社説は「トランプ氏は残り2週間の任期を全うするには不適格だ」とし、米憲法修正25条に基づく同氏の解任を主張した。

 

バイデン次期政権は、6日のジョージア州の上院決選投票の結果を受け、民主党が上下両院を支配する比較的有利な状況で政権を運営することが確定した。

 

ただ、トランプ氏および支持勢力は、今後もあらゆる形でバイデン氏に対して政策遂行の妨害や醜聞の追及を通じて攻撃を仕掛けていくとみられ、対立が尾を引くのは必至だ。【1月7日 産経】

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トランプ大統領はかねてより、ペンス副大統領が取り仕切る米大統領選の公式集計において、選挙結果を覆すようペンス氏に圧力をかけていましたが、ペンス氏は5日、ホワイトハウスでトランプ氏に対し、バイデン次期大統領が勝利したとの承認を阻止する権限は自分にはないと告げ、トランプ氏に同調しない姿勢を明確にしています。

 

政権高官のなかにも、トランプ大統領を見限って辞任の動きが広がっています。

 

****米安保補佐官ら辞任検討=トランプ氏支持者議会突入で****

米CNNテレビなどは6日、トランプ大統領の支持者が連邦議会議事堂に突入したことを受け、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)が辞任を検討していると報じた。トランプ氏がこの日の演説で、集まった支持者に議会へ行くよう促したことへの反発が政権内に広がっている。

 

オブライエン氏はツイッターで、過去に上院議員の下でインターンをした経験を挙げた上で、議会への侵入は「完全な面汚しだ」と批判した。また、トランプ氏の意向に反し、大統領選の公式集計を拒否する権限はないと主張したペンス副大統領を「勇気を示した」と称賛した。

 

他に対中政策を主導するポッティンジャー副補佐官(国家安保担当)やリデル次席補佐官も辞任を検討しているという。また、マシューズ大統領副報道官とメラニア・トランプ大統領夫人のグリシャム首席補佐官が6日、辞任を表明した。【1月7日 時事】

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「これ以上は付き合いきれない」という思いと同時に、「トランプの乱」批判を明確にした方が、今後の自身にとって得策との判断でしょう。

 

共和党は「トランプ党」とも言われる状況から抜け出すのか、中間選挙、4年後の選挙で再びトランプ氏に頼るのか・・・・。

 

「アメリカを再び偉大にする戦いの始まりにすぎない」と演説したトランプ大統領は4年後の出馬も念頭に置いているとも言われますし、トランプ氏が7000万票を超える支持を集めたのも事実ですから、これから2週間、更にバイデン政権となった4年間にも、いろんな動きが起きるのでしょう。

 

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ベラルーシ  民衆蜂起での政権崩壊は絶対に阻止したいロシア ただし、ルカシェンコ個人にはうんざり

2021-01-06 23:06:13 | ロシア

(ミンスクで(12月)20日、隠し持っていた赤と白の旧国旗を取り出し、住宅地を行進する反政権派のデモ隊。当局の摘発を逃れるため、数十カ所に分かれて小規模な集団で集まっていた。【12月27日 朝日】)

 

【同時多発デモにも徹底した弾圧】

周知のように、ベラルーシでは「欧州最後の独裁者」ルカシェンコ大統領の圧勝と発表された昨年8月9日の大統領選以降、選挙は不正だったとして同氏の退任を求める反体制派勢力や民衆の抗議デモが続いています。

 

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大統領選の投票終了直後に発表されたルカシェンコ氏の得票率は「80%の圧勝」だった。

 

選挙戦ではルカシェンコ氏に挑む有力候補らの拘束が続いた末、反政権派の統一候補になった主婦スベトラナ・チハノフスカヤ氏が旋風を起こしていた。26年間の強権体制下で以前は考えられなかった接戦への期待が高まっていただけに、国民の反発は大きかった。

 

複数の開票所職員が、得票のすり替えなど不正行為を強要されたと独立系メディアに告白し、国民の怒りが爆発した。【12月27日 朝日】

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しかし、政権側は徹底的に抗議行動を抑え込んでいます。

大規模デモは困難な情勢で、同時多発ゲリラ的な少人数デモが行われていますが、これも厳しい取締りに直面しています。外国メディアへの圧力も強まっています。

 

****「大統領得票8割」、デモ点火 ベラルーシ、一日1000人超拘束も*****

ベラルーシでは、8月の大統領選でルカシェンコ氏の圧勝が発表された。だが、人々は選挙結果が操作されたとし、抗議デモが全国に広がった。同国の人口は約950万人。200万人弱のミンスクで、日曜ごとに数万から十数万人のデモが数カ月続いた。

 

異例の事態に、政権のデモ弾圧も激しさを増した。治安部隊を大量動員して通りを封鎖。デモ隊に放水や音響閃光(せんこう)弾を浴びせ、11月には全国の日曜デモで拘束者が1日千人を超える日が続いた。デモを取材するジャーナリストも標的にされ、無差別に拘束された。

 

反政権派は同月末、都心での大規模デモ呼びかけをやめ、数十~数百人規模のデモを同時多発的に行う方針に変えた。当局の注意を分散させ、抗議が力で抑えられるのを防ぐためだ。

 

記者は20日にミンスク市内の数十カ所で行われたとみられるデモの一つを目撃した。参加者どうしの面識はなく、暗号化されたチャットで場所と時間を知り集まった。「ルカシェンコは辞めろ」。デモ隊がスローガンを唱え住宅街を練り歩くうち、参加者は300人ほどに膨れあがった。

 

だが、出発から約20分後、当局がデモ制圧の手を緩めていないことを見せつけられることになった。突然、小型バスが乗り付けて、先頭付近で急停止した。飛び出してきたヘルメットをかぶった多数の警官隊が一斉に参加者に襲いかかった。

 

人々はバラバラになって逃げ出した。記者のいる方向に走ってきた男性は警官に追いつかれ、地面にたたきつけられて、あっという間に連れ去られた。(中略) 

 

政権に抗議する環境は厳しい。人権団体「ビャスナ」によると、(12月)20日のデモでは警官隊に拘束された人が全国で140人を超えた。大規模行進から数十~数百人の同時多発型にデモの戦術は変わっても、警官隊は場所を特定し、ピンポイントで急襲する。治安当局との攻防は情報戦の様相も呈してきた。

 

拘束されれば通常は「当局の許可を受けないデモに加わった」とされ、行政法上の違反として留置は最大で25日。しかし本格的な刑事犯罪として起訴されるケースも急増している。「ビャスナ」のパーベル・ソペルコ法律顧問は「ベラルーシには集会の自由も表現の自由もない」と憤る。

 

政権は報道にも神経をとがらせる。ベラルーシ外務省は10月、規則変更を理由に全外国人記者の登録を無効にし、外国メディアの報道が困難になった。

 

また、取材する記者は「デモ参加者」として扱われ、当局の標的となる。ドブロボリスキー記者は10月に現場での拘束は逃れたが、監視カメラの映像に姿が映っていた。後日、自宅から連行され、15日間留置された。

 

ただ、留置先で出会った参加者は暴力を振るわれ、狭い場所に閉じ込められても、皆むしろ政権に抗議を続ける意思を固めていたという。「当局の脅しの手法は全く機能していない」と語った。(後略)【12月27日 朝日】

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【政権を支えるロシア ベラルーシ問題はほぼ「ロシアの国内問題」】

ルカシェンコ大統領の強気の背景にはロシア・プーチン大統領の支援があります。

 

ロシアとしては、ウクライナに続いてベラルーシを失うわけにいかないということですが、ただ、ロシアの意に反して独自の行動をとることが少なくないルカシェンコ氏個人に対しては、ロシア・プーチン大統領も以前から、いささかうんざりしていると言っていいような思いがあります。

 

****政権は強硬、ロシア支援に自信****

ベラルーシの政治学者ワレリー・カルバレビッチ氏は「今起きているのは政権と反政権派の闘いではなく、政権とベラルーシ社会の闘いだ」と話す。

 

国外に逃れたチハノフスカヤ氏ら反政権派はルカシェンコ氏の退陣と再選挙の実施を要求するが、ルカシェンコ氏は対話を拒み続ける。欧州連合(EU)は対話を促すため、制裁対象を閣僚らにとどめていたが、11月にはルカシェンコ氏への制裁発動に踏み切った。

 

ルカシェンコ氏が強硬姿勢を保てるのは、ロシアのプーチン政権からの支援に自信を深めているからだ。カルバレビッチ氏は「ルカシェンコ氏は、ロシアが自分を必要としていることを知っている」と指摘した。

 

ベラルーシはロシアと国家連合を組む。ルカシェンコ氏は、14年にロシアがウクライナのクリミア半島を併合して国際的非難を浴びると一時欧米に接近した。その欧米が今回の大統領選後の危機で批判を強めると再びロシアを頼った。

 

ルカシェンコ氏はもともとは自らの権限が奪われるのを嫌い、ロシアのプーチン大統領が求める国家連合の深化には消極的だ。ロシアにとって、世論の離反を招き、政治基盤が弱体化するルカシェンコ氏は理想のパートナーではない。

 

一方で、ロシアは欧米との「緩衝国」としてベラルーシを自国の勢力圏に置き続けることを最重要視する。プーチン氏は欧米が反政権派を通じてベラルーシに影響力を広げるのを強く警戒してきた。ベラルーシの世論を敵に回してでも、当面はルカシェンコ氏の後ろ盾の立場を維持し、危機の沈静化を待つ方針とみられる。【同上】

**************************

 

ジョージア、ウクライナに続いて、昨年はベラルーシ、キルギス、アルメニア、モルドバと、旧ソ連圏での政治混乱が続いており、ロシアの影響力に陰りも見えますが、そうしたなかにあってもベラルーシはロシアのとって「別格」の存在でしょう。

 

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もう一つ、ロシアと近隣諸国の関係性には、当然のことながら、具体的な相手国によって濃淡があります。

 

ロシアにとって、国境も接しておらず、住民がムスリム系のタジキスタンなどは、遠い存在です。ジョージアやアルメニアあたりは、同じキリスト教系といっても、ロシアの思い入れはそれほど強くないでしょう。

 

それに対し、歴史・言語・宗教などの紐帯で結ばれた東スラブ系のウクライナおよびベラルーシは、そう簡単に未練を断ち切れる相手ではありません。

 

実際のところ、クレムリンの感覚では、ベラルーシ問題はほぼ「ロシアの国内問題」なのではないでしょうか。だからこそ、プーチンは欧米諸国に対して、「ベラルーシに介入することは許されない」と警告しました。

 

プーチン政権は、ウクライナで手痛い後退を強いられただけに、ベラルーシだけは自国の勢力圏として死守しなければならないと考えているはずです。【1月5日 GLOBE+】

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【遅かれ早かれ、限界が来るとの指摘も 一方で、ベネズエラ・マドゥロ政権のような事例も】

では、このままルカシェンコ政権が国民の抵抗を力で押さえきれるか・・・という点に関しては不透明です。

(「そうあってはならない」という思いもこめて)「いずれ限界が来る」との指摘も。

 

****ベラルーシ危機は越年*****

昨年8月の大統領選挙をきっかけに、ベラルーシで発生した政治危機に関しては、当時我が国でも大きく報道されましたし、この連載でも数回取り上げました。その後、ベラルーシに関する報道量はかなり少なくなり、一般の関心も薄れているのではないかと思います。「ベラルーシは安定した」などとおっしゃる方もいます。

 

しかし、問題は何一つ解決しておらず、「安定した」というのは違うと思います。確かに、官憲の徹底的な弾圧を受け、夏から秋口にかけてのような数万人規模の反政府デモなどは、見られなくなりました。

 

それでも、「我々はこの暴力支配を許さない」という決意は、引き続き多くの国民によって共有されています。A.エリセエフという専門家は、「ベラルーシにとって、2020年の最大の出来事は、多数派がルカシェンコを支持しているという神話が、最終的かつ不可逆的に崩壊したことだ」とコメントしており、まさにそのとおりでしょう。

 

暴力(ルカシェンコ体制)VS非暴力(市民)という構図なので、すぐに体制が崩れるということはありません。まだしばらく、ルカシェンコ側が実力を行使して、権力の座にしがみつくこと自体は、可能なのかもしれません。

 

ただ、国民の多数派が現体制に拒絶反応を示し、国際的にも孤立する中で、ルカシェンコが正常な意味で国を統治することは、もはや困難です。遅かれ早かれ、限界が来るはずです。【同上】

*********************

 

ただ、暴力も厭わぬ権力を突き崩すことが困難な事例も多々あります。

そのひとつが南米・ベネズエラのマドゥロ政権。

 

一時はいつ倒れてもおかしくないような状況でしたが、民兵組織の暴力などもあって、権力は維持。

野党勢力は権力奪取の道筋を描けず、野党がボイコットした議会選挙を経て、マドゥロ政権は当面は権力基盤をむしろ強化したように見えます。

 

****マドゥロ大統領、三権完全掌握=新国会発足、独裁完成―ベネズエラ****

南米ベネズエラで5日、新国会が発足した。

 

これまで多数派だった主要野党が昨年12月に行われた総選挙を「自由、公正さが担保されていない」としてボイコットしたため、統一社会党(PSUV)など反米左派与党連合が議席の9割を独占。マドゥロ大統領が三権を完全掌握し、これにより確固とした独裁体制が完成したことになる。

 

野党に牛耳られていた国会を「目の上のたんこぶ」と見なし攻撃してきたマドゥロ氏は、ツイッターで「祖国に希望の道を開く歴史的な日だ」と称賛。「(破綻状態にある)経済の回復と国民和解、国家平和の防衛に向け、共に飛躍しよう」と呼び掛けた。

 

一方、新国会の正統性を否定して1年間の任期延長を宣言している主要野党はこの日、独自の国会を開き、欧米の支援を受けて「暫定大統領」を名乗るグアイド議長の続投を決定した。

 

グアイド氏は「(マドゥロ政権は)民主勢力を滅ぼそうとしているが、われわれはベネズエラを差し出しはしない」と述べ、徹底抗戦を誓った。【1月6日 時事】 

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今後のマドゥロ政権の持続可能性を左右する要因は、アメリカ・バイデン新政権の対応と財政の根幹をなす石油価格の動向でしょう。

 

【「煮ても焼いても食えない」ルカシェンコへの今後のロシアの対応は?】

一方、ベラルーシ・ルカシェンコ政権の命運を左右するのはロシア。

 

****ロシアは本当に「帝国」から脱皮できるのか?****

(中略)それでは、一時期窮地に陥っていたルカシェンコに、救いの手を差し伸べたロシアのプーチン政権は、ベラルーシ問題をどうしようとしているのでしょうか? 

 

大前提として、ロシアの息のかかった国で、民衆蜂起により既存の政治体制が転覆されるというシナリオ(クレムリンの世界観によればそこでは必ず欧米が糸を引いている)は、プーチン政権にとって許容できないものです。したがって、ルカシェンコが革命で倒れるという事態は阻止するというのが、プーチンの基本姿勢です。

 

しかし、ルカシェンコという人物については、ロシアもほとほと手を焼いています。昨年8月の大統領選直後こそ、完全にロシアに恭順するかのような姿勢を示していたルカシェンコでしたが、結局それは「死んだふり」にすぎませんでした。

 

その後、態勢を立て直すと、ルカシェンコはロシアに課せられていた宿題をこなさないばかりか、再びロシアと一定の距離を置き多元外交に乗り出そうとしています。

 

プーチンも、「やはりルカシェンコという男は煮ても焼いても食えない」と、改めて思い知っているところでしょう。クレムリンは、ルカシェンコに取って代わる別の親ロシア派の擁立を水面下で画策しているとも伝えられます。

 

プーチンがルカシェンコに求めていたのは、憲法改革および早期の大統領選挙を実施すること、国民との対話を進めること、それによって情勢を沈静化させることでした。

 

しかし、実際にルカシェンコがやろうとしているのは、憲法を変えて、自らが大統領とは別の形で絶対権力者に留まり続けることです。こんなまやかしの政治改革は、反ルカシェンコ派の市民にとっては論外ですし、プーチンも納得はしないでしょう。

 

ベラルーシ情勢で次の節目となるのが、2月11〜12日の開催が決まった「第6回全ベラルーシ国民大会」です。これはかつてのソ連共産党大会を思わせるような一大政治セレモニーであり、5年に一度、ルカシェンコの新たな大統領任期に合わせて開催されているもの。

 

果たしてこの場でルカシェンコはどのような構想を示すのか、そしてベラルーシ国民とクレムリンがどのような反応を見せるのかが注目されます。(後略)【1月5日 GLOBE+】

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抗議行動で政権が倒れるのは絶対に阻止したいが、“ルカシェンコは煮ても焼いても喰えない”ということで、今後の成り行き次第では、ロシア・プーチン大統領はルカシェンコ大統領を見限って、“首のすげ替え”を図る・・・ということもあり得るでしょう。

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イラン  米政権交代を控えての動き 韓国籍タンカー拿捕 ウラン20%濃縮再開

2021-01-05 22:02:28 | イラン

(イラン革命防衛隊(IRGC)が拿捕した韓国船籍のタンカー。タスニム通信提供【1月5日 AFP】)

 

【イラン革命防衛隊による韓国籍タンカー拿捕 背景に凍結資産問題】

4日、中東・ホルムズ海峡近くのペルシャ湾で、イラン革命防衛隊によって韓国船籍の石油タンカー1隻が拿捕されました。

 

表向きの拿捕理由とは別に、韓国銀行にあるイラン産原油の代金がアメリカによるイラン制裁のため凍結されていることへの“揺さぶり”が背景にあると指摘されています。

 

****韓国タンカー拿捕で米制裁による資産凍結に圧力か イラン****

イラン革命防衛隊は4日、原油輸送の大動脈である中東・ホルムズ海峡近くのペルシャ湾で同日朝、韓国船籍の石油タンカー1隻を拿捕(だほ)したと発表した。タンカーをイラン南部の港に移送し、船員を拘束した。

 

タンカーは石油化学製品を積載しており、イラン側は「海洋環境に関する法律に違反した」と主張している。

 

韓国政府は付近海域にいた海軍部隊の駆逐艦をホルムズ海峡近海に急派した。韓国外務省は5日、駐韓イラン大使を呼んで抗議。船員らを速やかに解放するよう求めている。

 

近く外務省幹部らをイランに派遣するほか、崔鍾建(チェ・ジョンゴン)第1外務次官が10日にもイランを訪れ、イラン政府と協議する。

 

韓国外務省や韓米メディアによると、タンカーは韓国籍の5人を含め、ミャンマーやインドネシア、ベトナム国籍の計20人が乗船し、サウジアラビアからアラブ首長国連邦(UAE)の港に向かっていた。

 

イラン外務省は、韓国政府に「船員は安全だ」と説明。拿捕について「海洋汚染を調査せよとの(イランの)裁判所の命令に従った措置だ」と主張している。韓国にあるタンカー所属会社は「海洋汚染の可能性はない」と反論している。

 

イランと韓国をめぐっては、米国による2018年の対イラン制裁の強化に伴い、韓国の銀行にある原油の代金70億ドル(約7200億円)以上が凍結された。イラン側は5日、資産の凍結には「根拠がない」と強く反発。拿捕によって米制裁を揺さぶる狙いとの見方が浮上している。

 

イランと韓国は、凍結資産を新型コロナウイルスのワクチン代など人道目的に充て制裁を回避する案を検討していたとされ、協議を詰める方針だったという。【1月5日 産経】

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韓国のウリィ銀行とIBK企業銀行にはイランの原油輸出代金約70億ドル(約7200億円)が凍結されています。

 

この資金を、制裁対象外の人道物資である新型コロナワクチンの購入にイランが充てる形で、事実上の資産凍結を解除する方向で話が進められており、それについてアメリカも承認したとのことでが・・・。

 

****イラン 韓国内の凍結資産でコロナワクチン購入要請=米国も承認****

イランが韓国内の銀行にある凍結資産について、新型コロナウイルスのワクチン購入のために使う案を韓国政府と協議していることが5日、分かった。

韓国政府内では医薬品など人道物資を取引する場合は制裁の例外となるため、このような資金活用について米国政府の承認を受けたが、イランはまだ結論を出せずにいるという。

外交部の当局者によると、イランはワクチンを共同購入する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」に加わるため、韓国政府に対し凍結資産をワクチン代金として入金するよう要請し、韓国政府は米財務省と協議した結果、ワクチン代金について制裁の例外とする承認を受けた。

韓国の銀行は米国の対イラン制裁に反しない範囲内で資産を移す案をイランに示したが、まだイラン側から回答を受け取っていないという。

ウォン建ての資産をCOVAXに送金するには、まず米国の銀行でドルに両替しなければならないが、イラン側は資産が再び凍結される可能性を懸念しているようだ。(後略)【1月5日 聯合ニュース】

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アメリカも承認する形で話が進んでいたなら、敢えてタンカーを拿捕するような手荒いことをする必要もないようにも思えますが、ドル両替時の資産再凍結など、話が難航している部分があったのでしょうか。

 

韓国政府は、拿捕船解放の交渉のための実務代表団をイラン現地へ派遣することを発表しています。

 

****拿捕船の解放交渉へイランに代表団派遣 外務次官も10日出発=韓国****

韓国船籍のタンカーがホルムズ海峡近くのペルシャ湾でイラン革命防衛隊に拿捕(だほ)された問題で、韓国政府が船舶と船員の早期解放に向け、交渉のための実務代表団をイラン現地へ派遣する。外交部の崔泳杉(チェ・ヨンサム)報道官が5日の定例会見で発表した。(中略)

同部は拿捕事件が起きる前から、韓国内の銀行にあるイラン中央銀行の凍結資産の問題などを協議するため崔次官のイラン訪問を推進していた。この資産問題に対するイラン政府の不満が拿捕事件の原因になった可能性も指摘されており、崔次官がイラン側と解決策を見いだせるかどうかが注目される。

一方、外交部はこの日、シャベスタリ駐韓イラン大使を呼び出して拿捕事件に対する遺憾の意を表明し、速やかな解放を改めて要請した。

崔報道官によると、シャベスタリ大使は今回の事件が単なる「技術的」な事案だとするイラン政府の立場を重ねて伝え、イランの外交当局もできる限り早期の解決に努めるとの姿勢を明確にしたという。

タンカーには船長を含む韓国人5人やミャンマー人11人、インドネシア人2人、ベトナム人2人の計20人が乗船していた。シャベスタリ氏はこの日、外交部庁舎に入る際「船員は安全か」との報道陣の質問に対し「全員安全だ」と答えた。【1月5日 聯合ニュース】

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【米政権交代が迫るなかでの、拿捕事件、更にはウラン濃縮再開問題】

拿捕事件の背景として凍結資産問題などのイラン絡みの話が浮上しているのは、更にその背景に、イラン敵視政策のトランプ政権から、話し合いの余地もあるとされるバイデン政権への、アメリカの政権交代が間近に迫っていることで、イラン側が揺さぶりをかけている・・・とも指摘されています。

 

そういう観点からの“揺さぶり”としては、ウラン20%濃縮活動再開も報じられています。

 

****イラン、ウラン濃縮度20%の作業開始 さらに核合意逸脱****

イラン政府報道官は4日、中部フォルドゥの地下施設でのウラン濃縮活動について、濃縮度を20%にする作業を再開したと述べた。同国のメヘル通信が伝えた。

報道官は「フォルドゥの濃縮施設で、数分前に濃縮度20%のウランを生産する作業を開始した」と述べた。

イランは、米国が核合意から離脱し、対イラン制裁を再開したことに対抗し、2019年からウラン濃縮などで核合意を逸脱する行動に出ている。

イランは1日に国際原子力機関(IAEA)に、フォルドゥの地下施設で最大20%にウランを濃縮する活動を再開する計画と通達していた。

核合意では、ウラン濃縮度は3.67%までとされていた。【1月4日 ロイター】

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20%まで濃縮すれば、核兵器に必要な90%濃縮は比較的容易に進むとも言われています。

 

****イランがウラン濃縮20%意向 IAEAに通知 中東の緊張激化必至****
国際原子力機関(IAEA)は1日、イランが中部フォルドゥの施設でウラン濃縮度を20%まで高める意向を伝えてきたと明らかにした。ロイター通信などが報じた。

 

20%程度まで高めれば、核兵器に使う90%以上の高濃縮ウラン製造も容易となり、中東地域の緊張激化は必至だ。

 

イラン側は時期は明言しなかったが、実際に高めた場合、2015年にイランが主要6カ国(米英仏独露中)と結んだ核合意前の水準に戻る。イランは既に合意で定められた3・67%を超えているが、これまでは4・5%程度にとどめてきた。

 

米国は18年にトランプ政権が合意から離脱したが、バイデン次期政権はイランの合意順守を条件に米国の合意復帰を検討している。

 

20%の濃縮は、イランの核科学者暗殺を受けて昨年12月にイラン国会が成立させた法律に基づく措置の一環とされる。【1月2日 毎日】

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【敵の敵は味方 利害が一致する対立国強硬派】

イラン国内的には、イランの核科学者暗殺を受けて昨年12月に反米保守強硬派主導で、核開発の拡大を義務付ける法律が成立しています。

 

****イラン国会、核開発拡大を法制化 反米保守強硬派が影響力****

イランで(12月)2日、政府に核開発の拡大を義務付ける法律が成立した。来年1月に米次期大統領に就任する見通しのバイデン前副大統領は、イランの合意順守を条件にトランプ政権が離脱した合意に復帰する意向で、イランが合意違反を加速すれば復帰が困難になる。

 

イランの核科学者ファクリザデ氏が11月下旬に暗殺され、同国指導部はイスラエルが関与したとして報復を明言。反米保守派の発言力が強まっている。

 

英BBC放送(電子版)によると、法律は核合意当事国の英仏独が合意に定められたイランとの原油や金融の取引を2カ月以内に履行しなければ、国際原子力機関(IAEA)の査察を停止するよう政府に求めた。履行しない場合、ウランの濃縮度を現状の約4・5%から20%に上げる作業も始めるよう要求した。

 

合意の規定上限は3・67%で、ウランは濃縮度90%になれば核兵器転用が可能。欧州の企業はトランプ政権が科した制裁に抵触するとしてイランとの取引を手控えてきた。

 

反米の保守強硬派が多数派のイラン国会が1日に法案を可決し、憲法違反の有無を審査する護憲評議会が2日に承認し、法律として成立した。保守穏健派のロウハニ大統領は制定に反対していた。

 

イランでは来年6月実施の大統領選で反米の保守強硬派が勝利するとの観測があり、そうなれば米・イランの関係改善は遠のく公算が大きい。【12月3日 産経】

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基本的にイランの“権利”を制約する核合意に反対する保守強硬派、アメリカとの関係改善で経済制裁緩和を目指すロウハニ大統領などの穏健派、アメリカのイラン敵視政策のトランプ政権、オバマ前政権の遺産である核合意復帰も視野に入れるバイデン新政権・・・政権交代が“あと2週間あまり”に迫ったこの時期、それぞれの立場・思惑が交錯しています。

****イランの20%濃縮を欧米批判 核合意の行方、不透明に****

イランが中部フォルドゥの地下核施設で核兵器級に近づく濃縮度20%のウラン製造に着手し、欧米などから2015年の核合意の重大な違反に当たるとして批判が相次いでいる。米次期大統領就任を確実にしたバイデン前副大統領はイランとの対話再開を模索する意向を示してきたが、先行きは不透明になってきた。

 

ロイター通信によると、米国務省の報道担当者は4日、「核による恐喝だ」とイランを非難。イスラエルのネタニヤフ首相も「イランの核兵器製造は許さない」と警告した。一方、欧州連合(EU)の欧州委員会は5日、「強い懸念」を表明しながらも合意維持の重要性を強調した。(中略)

 

濃縮度20%のウラン製造開始は4日、イラン政府報道官が明らかにした。同国原子力庁報道官は同日深夜に濃縮度が20%に達するとの見通しを示していた

 

イランは核合意の締結前、がん治療を目的に濃縮度20%のウラン製造に成功したと表明したことがある。同国のザリフ外相は4日、合意の全当事国が規定を順守すれば、イランも合意に立ち戻る意思があるとツイッターに投稿した。

 

トランプ米政権が再開した制裁でイラン経済は悪化の一途をたどっている。イランには、米政権交代をにらんで強硬姿勢を誇示し、米国に合意復帰や制裁解除を促す意図がありそうだ。欧州の当事国である英仏独に対し、合意に盛り込まれた金融・原油取引の履行を迫る狙いもうかがえる。

 

バイデン氏はイラン側の規定順守を条件に合意に復帰する意向を示してきたが、イランの弾道ミサイル開発や周辺国への影響力行使に懸念を示すなど、現行の合意内容は不十分との見方も示している。イランと米側の隔たりが広がる中、早期の関係改善は困難との見方が強まっている。【1月5日 産経】

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イラン国内の話で言えば、タンカー拿捕もウラン濃縮再開も、反米保守強硬派主導の動きのようにも思えます。

保守強硬派の立場からすれば、アメリカとの対立が先鋭化して核合意復帰が吹き飛んでしまう事態が望ましいのでしょう。

 

それではイラン国民の生活は苦しくなるばかりですが、イラン経済は革命防衛隊などの既得権益層が制裁下で利権を独占するシステムにもなっており、そういう保守・既得権益層はむしろ制裁が続く方が望ましいのでしょう。

 

そうしたイラン国内の保守強硬派の立場を強め、結果的に彼らを支援しているのが、トランプ政権・イスラエルなどの“対イラン強硬策”というようにも俯瞰できます。

 

敵の敵は味方だ・・・ということで、イラン保守強硬派とトラン政権の利害は一致します。

 

アメリカの政権交代が“あと2週間あまり”に迫ったこの時期、イランに敵対するサウジアラビア側でも動きがみられますが、そのあたりは話が長くなるので、また別機会に。

“カタール断交、解消へ サウジなどが合意 トランプ米政権の意向が背景”【1月5日 産経】

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アメリカ  共和党にとって悩ましいトランプ大統領との距離感の取り方

2021-01-04 22:45:33 | アメリカ

(米ジョージア州ロームで行われた集会に出席したドナルド・トランプ大統領(2020年11月1日撮影)【1月4日 AFP】)

 

【バイデン新政権の今後を決めるジョージア州の上院選】

賞味期限2,3日の話になりますが、5日に行われるアメリカ南部・ジョージア州の上院選2議席の決選投票の件。

 

先の大統領選挙と同時に行われた議会選挙で、民主党は戦前予想に比べて苦戦。

下院はなんとか過半数を確保したものの、上院は共和党にリードを許しています。

 

ジョージアで決まる2議席を民主党が獲得できれば上院も制することができ、逆に1議席でも失えば共和党支配の上院という「ねじれ」が生じる・・・バイデン新政権の船出が天と地ほど違ってくる・・・というのは周知のところ。

 

アメリカ国民・メディア・経済界が注目、そして世界も注目する「大統領選の延長戦」とも言える選挙です。

 

****【バイデン次期政権】南部ジョージア州で5日に上院選の決選投票****

米南部ジョージア州で5日、上院選2議席の決選投票が行われる。

 

3日に開会した新議会(第117議会)での上院(定数100)の勢力は共和党50、民主党48(同党系無所属2を含む)。共和党が1議席でも確保すれば多数派を維持できる一方、民主党は4年ぶりに奪還する政権の円滑な運営に2議席獲得が課題だ。

 

両党は次期政権下での上院の主導権確保に向け、昨年の大統領選の延長戦さながらの激しい選挙戦を展開している。

 

上院では、全米50州に2人ずつ割り当てられた議員(任期6年)が2年ごとに3分の1ずつ改選される。通常は一つの州で2議席が同時に改選されることはない。

 

しかし、ジョージア州では今回、改選を迎えた1議席と、引退議員の補欠選挙(任期は23年まで)が同時に行われる異例の展開を迎えた。

 

昨年11月の選挙では、いずれも過半数の票を獲得した候補がおらず、それぞれ得票率が1位と2位の候補が5日の決選投票に臨むことになった。

 

改選議席をめぐる通常の選挙では、共和党現職のデービッド・パーデュー氏に民主党新人のジョン・オソフ氏が挑む。補選では、選出議員の辞職に伴い州知事から補選までの期間限定で議員に指名された共和党のケリー・ロフラー氏と、民主党のラファエル・ウォーノック氏が対決する構図だ。

 

民主党が両議席を確保して上院で両党の勢力が50対50となった場合、上院議長を兼務する副大統領が採決に加わることができる。このため、ハリス上院議員が副大統領に就くことが確実な民主党は上院の多数派を確立することになる。

 

民主党は下院で過半数を確保済み。加えて上院も制すれば、少なくとも2年後の中間選挙までは法案や閣僚の人事案を自由に通過させることが可能だ。

 

一方、共和党としては上院の多数派を死守し、次期大統領への選出が確実なバイデン前副大統領らが唱える急進的な気候変動対策や、左派勢力の主導による富裕層への課税強化、警察組織の弱体化などにつながる政策を阻止したい考えだ。

 

政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた平均支持率(3日現在)では、民主党のオソフ氏が49・3%、ウォーノック氏が49・8%で、共和党候補をそれぞれ0・8ポイント、1・8ポイント上回っている。選挙専門家のチャーリー・クック氏は「何が起きるか分からない接戦だ」と指摘する。

 

郵便投票と期日前投票を合わせた事前投票は1日現在で300万票を突破し、有権者の関心は高い。トランプ大統領とバイデン氏は4日にそれぞれジョージア入りし、支持者らに自党の候補への投票を呼びかける予定だ。【1月4日 産経】

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ジョージア州では、昨年11月の大統領選で、バイデン次期大統領がトランプ氏に勝利していますが、その差は1万2670票の僅差。

 

世論調査等の数字も拮抗しており、予測が非情に難しい展開ですが、状況はバイデン氏に有利な向きの風がわずかながら吹いているようにも。

 

やはり“レームダック”化してもおかしくない状況のトランプ氏と、新政策・新人事に着手しているバイデン氏・民主党の“勢いの差”でしょう。

 

ただ、繰り返しになりますが、やってみないとわからないのが最近のアメリカ選挙です。

 

****米ジョージア州決選投票、バイデン政権の政策運営を左右****

(中略)民主党勝利のカギを握る黒人有権者の投票数は全体の約3分の1を占め、11月の約27%から上昇している。

 

フロリダ大学のマイケル・マクドナルド政治学教授は「民主党が勝利するにはこのような有権者が必要だ」とした上で、共和党支持者は5日当日に投票に行く人が多くなる可能性があり、結果を予測するのは不可能だと慎重な見方を示した。

 

<新規有権者登録10万人>

2018年の中間選挙でジョージア州知事選に出馬し、20年11月の大統領選では有権者登録の取り組みを通じて同州でのバイデン氏勝利に貢献したステイシー・エイブラムス氏は3日、CNNの番組で、期日前投票を済ませた人には11月の選挙で投票しなかった新たな有権者10万人が含まれると指摘。この10万人は、民主党に投票する可能性が高い非白人や若者の比率が高いと述べた。

 

ランドルフ郡の民主党幹部は、黒人の投票を促すため精力的な戸別訪問を行った結果、同郡の期日前投票数について良い感触を得ているとした。その上で「当日にどれだけの共和党支持者が投票に行くかにかかっている」と語った。

 

調査会社アドインパクトによると、今回の決選投票に投じられた広告費は4億9000万ドル。関係筋によると、バイデン氏のチームは、スタッフや資金調達など民主党の取り組み支援に少なくとも1800万ドルを充てた。

 

接戦となれば、結果判明に数日かかる可能性がある。訴訟が起こされて結果判明がさらに遅れることもあり得る。大統領選ではバイデン氏の約1万2000票差での勝利を確認するのに1週間以上かかり、2回の再集計によって最終的な結果認定は12月にずれ込んだ。

 

エイブラムス氏は、郵便投票数を踏まえれば、結果確定には「少なくとも数日」かかるとの見方を示した。

 

バイデン氏は4日、オソフ、ワーノック両候補とともに選挙集会を行う。

トランプ氏は同日、共和党支持者の多い北西部の郡を訪れる。同氏が大統領選での不正を主張する中、一部の共和党関係者は、トランプ氏支持者が不正選挙の主張を信じて投票に行かない可能性があると懸念している。

 

パーデュー、ロフラー両氏は、トランプ氏の主張を支持する一方で、自らの当選が民主党に対する「防火壁」になると訴える微妙なかじ取りを強いられている。両氏は民主党候補を急進的な社会主義者などと呼んでいる。【1月4日 ロイター】

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「当日にどれだけの共和党支持者が投票に行くかにかかっている」状況で、トランプ大統領は「選挙は不正だ、誤魔化しだ」と主張している・・・トランプ支持者が投票に行かないリスクもあるというのが、トランプ大統領を支持する共和党候補のジレンマです。

 

【トランプ大統領の積極関与で共和党候補「4ポイントリードしていたが、大統領のおかげで消え去った」】

一方、トランプ大統領の支援自体も共和党後者にとってジレンマの側面も。

 

単に「勢いの差」という以上に、大統領選挙後のトランプ大統領の敗北を認めない対応、選挙結果を覆そうとする対応は目に余るものが。

 

“選挙やり直しへ戒厳令論議か=トランプ氏関心示す―米報道”【12月21日 時事】

ほとんど、クーデター計画のような話にも思えます。

 

連日、こんな話ですが、昨日・今日の話題は下。

 

****票を見つけよ、トランプ氏がジョージア州幹部に圧力 衝撃の録音公開****

ドナルド・トランプ米大統領が、ジョージア州での大統領選の結果を覆して民主党のジョー・バイデン氏に勝利できる十分な票を「見つける」よう、同州の州務長官に圧力をかけていた会話の録音を米メディアが3日公開し、米政界に衝撃が走っている。

 

トランプ氏と、ジョージア州のブラッド・ラフェンスペルガー州務長官(共和党)の録音された会話を最初に入手したのは、米紙ワシントン・ポスト。

 

この録音には、バイデン氏の勝利を覆すことができなければラフェンスペルガー氏や他の当局者は「大きなリスク」に直面する恐れがあると、トランプ氏が暗に脅すような内容の発言も含まれていた。

 

録音の中でトランプ氏は、大統領選の得票数を「再集計したと言っても何の問題もないだろう」と発言。「何十万票もの誤差がある」と指摘した。

 

これに対しラフェンスペルガー氏は、「大統領、問題はあなたが持っているデータが誤っているということです」と反論した。

 

長年共和党が優勢だったジョージア州で、バイデン氏は1万2000票未満の小差で勝利した。数回にわたる再集計や徹底的な検査を行っても、この結果は変わらなかった。

 

トランプ氏は、「現在の票差はたった1万1779票だ。それは分かっているだろう?」とラフェンスペルガー氏に問い掛け、「だから、私は1万1780票を見つけたいだけだ」と述べた。

 

さらに驚くべきことは、選挙人団の票が16票あるジョージア州での逆転シナリオですら、306対232で勝利したバイデン氏に逆転勝利することができないということだ。

 

公開されたこの録音について、ホワイトハウスはコメントを拒否。一方で民主党からは怒りの声が上がっている。

 

一部の政治コメンテーターらは、この録音をリチャード・ニクソン大統領の辞任に発展した「ウォーターゲート事件」で公開された音声テープになぞらえている。

 

当時ニクソン氏を辞任に追い込んだ記者の一人であるカール・バーンスタイン氏は、今回の音声について、「最大の決定的証拠になる」と述べた。 【1月4日 AFP】

*********************

 

バイデン新政権の今後を決める「大統領選の延長戦」直前に、当該ジョージア州の11月選挙に関して、上記のような録音が公表されるというのは、意図したものがあるのかも知れませんが、共和党候補にとっては悪影響を懸念させるものでしょう。

 

そうしたトランプ大統領がテコ入れしてくれることで、トランプ支持者の票は維持できるかもしれませんが、いわゆる浮動票・中間層の票は逃げてしまうジレンマも。

 

昨年11月頃の世論調査では、共和党候補がややリードという数字が出ていましたが、現在は冒頭記事のように民主党候補が僅かながらリードという状況に変化しています。

 

このあたりに、「勢いの差」に加えて、敗北を認めないトランプ大統領がテコ入れ・支持していることへ辟易して「浮動票が逃げている」ことが影響しているのかも。

 

****吉と出るか凶と出るか、トランプ氏積極関与-ジョージア州上院決選投票****

(中略)その選挙戦終盤のキャンペーンにトランプ大統領が自ら積極的に関与しようとしている。(中略)

  

共和党のベテラン世論調査専門家フランク・ルンツ氏によれば、過去1週間から10日間で(民主党)ウォーノック氏が(「共和党)ロフラー氏に追い付き、(民主党)オソフ氏が(共和党)パーデュー氏より優位に立つ情勢がデータで示された。

 

トランプ氏の最近の動きで変化が生じ、共和党支持者の投票数を抑える方向に働いているという。

ルンツ氏は27日のABCの番組で、「彼らは投票総数で全般に4ポイントリードしていたが、大統領のおかげで消え去った。驚くべきことだ。投票数に既に影響していると認識している」と語った。【12月29日 Bloomberg】

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【トランプを無視すればトランプ票が逃げていくし、トランプに擦り寄れば浮動票が逃げていく】

4年後をにらんでいるとも言われるトランプ大統領とどういう距離感をとるのか・・・このことが、ジョージア州の今回選挙だけでなく、(すでにトランプ党になった感もある)共和党の今後を決めることになります。

 

***存亡の危機に瀕する米共和党****

(中略)現時点で下院は140人以上、上院でも11人の共和党議員が選挙結果への異議申し立てをするらしい。この意味は何か。

 

共和党政治家の劣化かって?いいや、そうではなかろう。個人的に内々話せば「バイデン勝利」に異を唱えるのは、トランプ氏を除けば、誰もいない筈。ジャヴァンカ(JaredとIvanka:娘と娘婿夫妻)だって同じだろう。

 

こうした共和党議員たちの行動は世の常識では非合理だが、政治的には極めて合理的である。例えば、4年後大統領選挙を目指す政治家、2年後に上院・下院議員の選挙出馬や再選を考えている輩にとっては、実に悩ましい状況だからだ。

 

今トランプを無視すればトランプ票が逃げていくし、トランプに擦り寄れば浮動票が逃げていく。

 

確かに政治的には正しい行動なのだが、一つだけ問題がある。これにより共和党は少なくとも分裂し、最悪の場合、多くの有権者の信頼を失ってしまう可能性があるからだ。

 

つまり、GOP(Grand Old Party)を自負してきた誇り高き共和党が存亡の危機に瀕しているということ。これは日本だけでなく世界の同盟国にとって一大事である。

 

それではトランプ氏は今後も4年間「トランプ旋風」を吹かし続けることができるのか。結論から言えば、それは決して容易ではない。

 

例えば、こんな話がある。元旦に米上院が、トランプ氏の拒否権にも拘らず、国防権限法を賛成81対反対13で再可決し、大統領の拒否権を初めて覆したという。

 

いくらトランプ氏が「怖い」とはいえ、もう既にレームダック化した大統領だし、対象は超党派で可決された国防権限法である。トランプの神通力もようやく陰り始めたということなのか。

 

さすがはワシントンだ、「カネ」の切れ目ではなく、「権力」の切れ目が縁の切れ目になるのだろうか。(後略)【1月4日 宮家邦彦氏 Japn In-depth】

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スウェーデンの新型コロナ対策評価 「失敗」から「成功」、そして再び「失敗」

2021-01-03 22:55:20 | 疾病・保健衛生

(スウェーデンの感染対策を率いていた疫学者のアンデシュ・テグネル氏(11月)【12月8日 WSJ】)

 

【事態の変化とともに変わる評価】

物事の評価というのは、最後になってみないとなかなかわからないもの。各国の手探りの新型コロナ対策もそのひとつにすぎません。

 

一時は他国に誇っていた韓国の「K防疫」も第3波の前では怪しくなっていますし、日本の「高い民度による対応」といったものも同様。

 

ロックダウンなどの厳しい制限措置をとらずに、集団免疫獲得を目指しているようにも見えたという点で(政策当局は集団免疫を目指しているとは言っていませんが)、各国の中でも最もユニークな対応をとっていた北欧・スウェーデンの評価は、事態の変化に伴って二転・三転しています。

 

近隣国に比べて多い死者数、高まらない抗体保有率、ロックダウンなしでも落ち込む経済・・・などで、6月頃の評価は「失敗」という散々なものでした。

 

風向きが変わったのが8月・9月。

 

“フランス、オランダ、ドイツ、ベルギー、スペイン、イタリアなど欧州の多数の国で感染の再増加しているのと対照的に、スウェーデンの感染者数は望ましい減少方向に向かっているように見える。

 

1日当たりの死者数は4月にピークとなった後、現在は2、3人となり、新規感染者数は6月初めから着実に減少している。患者1人から感染が広がる人数を示す実効再生産数は、7月初めから1未満に抑えられている。”【9月9日 AFP】

 

10月18日ブログ“スウェーデンの緩い新型コロナ対策 「失敗」評価から、現時点では「成功」評価に変わる”でも、そうした評価の変化を取り上げました。

 

【放任主義的な緩やかな対応を断念、規制強化へ】

しかし、これで終わらず、事態は更に変化。

 

****フィンランドとノルウェーの死者数は約10分の1****

・・・一方で対策を再評価されているのが同じ北欧のフィンランドとノルウェーだ。両国はスウェーデンと地理的・社会的特徴が似ているが、100万人あたりの死者数は約10分の1に留まる。

 

「両国の共通点は、初動が早かったこと。3月にロックダウンや国境管理を厳格化し、移動する人々にPCR検査や自主隔離を強制した」(国際部デスク)【12月2日 文春オンライン】

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こうした「現実」に直面し、11月に規制強化への方針転換がとられました。

 

****スウェーデンでも規制強化 「厳しすぎない」路線揺らぐ****

新型コロナウイルスの感染拡大の第2波が欧州で広がるなか、商店の閉鎖や外出制限を伴う「ロックダウン(都市封鎖)」をしない北欧スウェーデンの独自路線が揺らいでいる。ロベーン首相は16日、人の集まりは8人までとする新たな規制を発表、感染抑止策の強化に乗り出した。(中略)

 

スウェーデンでは、社会的距離の確保などを国民が自発的に実行することに期待する、比較的緩い対応をとってきた。春の第1波の際も50人までの集会は認めていた。しかし、9月上旬には100人台だった1日の新規感染者は加速度的に増え、直近の1週間平均は4千人を超えている。

 

医療機関の負担も増しており、ロベーン氏は先週、感染抑止策として、今月20日から飲食店でのアルコール飲料の提供を午後10時以降は禁止する方針を打ち出していた。

 

スウェーデンでは累積の死者が6千人を超える。人口100万人あたりで比べると、英仏などよりは少ないが、近隣の北欧諸国よりはるかに多い。春のピークで亡くなった、介護施設の高齢者がその大半を占めている。【11月17日 朝日】

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ここにきて、カール16世グスタフ国王が、新型コロナウイルスの対応について「私たちは失敗したと思う」と述べる事態ともなって、政府も一層の規制強化を余儀なくされています。

 

****コロナ対応「失敗」 スウェーデン国王、異例の政策批判****

スウェーデンのカール16世グスタフ国王(74)が、新型コロナウイルスの対応について「私たちは失敗したと思う」と述べた。同国の公共放送SVTが17日、伝えた。多くの死者が出ていることを受けたもので、政治とは距離を置く国王が政策の批判に踏み切るのは異例だ。(中略)

 

欧州各国が外出制限や店舗閉鎖を伴うロックダウン(都市封鎖)に踏み切る中、スウェーデンは強制的な措置を極力避ける「緩め」の戦略をとってきた。マスクの着用は求めておらず、飲食店も社会的距離を取るなど一定の制限はありつつも営業を続けている。

 

こうした戦略は、国民から一定の支持を得る一方で、死者は北欧では突出して多い約7900人にのぼる。人口100万人あたりの死者は772人(16日時点、英オックスフォード大調べ)で、1千人を超えるイタリアやスペインなどよりは少ないが、74人のノルウェー、168人のデンマークなど近隣諸国よりはるかに多い。

 

科学者らからは、より厳しい対応を求める声が強まっている。

 

スウェーデン王室は先月末、国王の長男カール・フィリップ王子(41)とソフィア妃(36)が新型コロナウイルスに感染したと発表していた。症状は軽いという。【12月18日 朝日】

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*****スウェーデン、規制再強化 感染拡大、方針転換鮮明に****

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なスウェーデンの公衆衛生庁は18日、公共施設の閉鎖や、飲食店での人数制限など新たな規制強化策を発表した。

 

公共交通機関でのマスク着用も推奨。春以降、厳しい規制を避ける独自対策を取っていたが、11月に転換した規制強化の方針が鮮明となった。

 

ロイター通信によると、ロベーン首相は記者会見で「適切な時に適切な方策を取っている」と強調。だが、カール16世グスタフ国王がこれまでの政策を「失敗」と批判しており、政府への風当たりがさらに強まる可能性もある。【12月19日 共同】

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更に流れは加速。

 

****スウェーデン、店舗の強制閉鎖も 法案を提案、1月にも施行****

スウェーデン政府は28日、新型コロナウイルス対策として、店舗閉鎖などの強制措置をとる権限を政府に与える法案を提案した。地元メディアなどが伝えた。

 

事実上のロックダウン(都市封鎖)措置を進める多くの欧州諸国とは一線を画し、強制的な規制の回避を基本政策としてきたが、最近の感染再拡大を受けて規制の強化を迫られた形だ。

 

来年9月までの時限立法で、3月に予定された当初の提案時期を前倒しした。議会が可決すれば1月10日に施行される見通し。政府は感染拡大リスクの高い大型商業施設の閉鎖や公共交通機関の運行制限など、拘束力のある措置をとる権限を持つ。【12月29日 共同】

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新型コロナ対策を主導してきた疫学者アンデシュ・テグネル氏は降格し、政府が今後の対策を主導するようです。

 

****スウェーデン「コロナ集団免疫」作戦、失敗の深層****

方針一転、制限強化もマスク推奨せず

 

晩秋の新規感染者の急増で入院者や死者が増加し、国民の自主的な措置でコロナ流行に対抗するという、欧米では特異な取り組みをスウェーデン政府は断念した。

 

他の欧州諸国同様、スウェーデンは今、冬本番を向かえるにあたり大規模集会の禁止からアルコール販売の制限、学校閉鎖に至るまで幅広い制限措置に直面している。いずれも同国の医療システムの崩壊を防ぎ、既に世界最高水準にある人口当たり死者数を抑制することが狙いだ。

 

スウェーデン国民は先月まで大勢が集まるスポーツや文化イベントを楽しみ、医療当局者は欧州を席巻していた感染第2波について、スウェーデンでは自主的な措置で十分避けられると主張していた。

 

数週間後、コロナによる累計死者数は人口100万人当たり約700人に到達。感染者が指数関数的に増加し、病床が満杯になる中、政府は方針転換を決定した。

 

ステファン・ロベーン首相は11月22日、テレビで国民に対して全ての不要不急の集まりを取りやめるよう熱心に訴え、9人以上の集会の禁止を発表した。その結果、映画館などの娯楽施設が閉鎖されたほか、12月7日から高校も閉鎖される。

 

「当局は他の欧州諸国と完全に異なる戦略を選択した。そのせいで国は(感染)第1波で大いに苦しんだ」。首都ストックホルムにあるカロリンスカ大学病院でコロナ感染患者を担当するピオトル・ノバク医師はこう話す。「彼らがなぜ第2波を予測できなかったのか全く理解できない」

 

スウェーデンのコロナによる累計死者数は先週、7000人を突破した。同規模の隣国であるデンマーク、フィンランド、ノルウェーの累計死者数はそれぞれ878人、415人、354人だ。隣国は第2次世界大戦以来で初めてスウェーデンとの国境閉鎖に踏み切った。

 

スウェーデンの公衆衛生当局は、国民を徐々にウイルスにさらすことで人口全体が病原体への抵抗力を獲得できるようにする「集団免疫」作戦に楽観的だったが、医療従事者の見解は決して同じではなく、自主的な措置だけではコロナウイルスは制御できないと繰り返し警告していたとノバク氏は述べた。

 

スウェーデンがそうした警告にもかかわらず長い間やり方を変えなかった理由の1つは、公衆衛生局やその他同様の国家機関がスウェーデンの法律下で高い独立性と権限を享受しているためだ。

 

スウェーデンの感染対策の対外的な顔となっていたのは、公衆衛生局のコロナ対策責任者を務めていた疫学者のアンデシュ・テグネル氏だ。

 

先週テグネル氏に取材を申し入れたが断られた。しかし同氏は以前、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)をはじめとするメディアに対し、ロックダウン(都市封鎖)は持続不可能であり、不要だと語っていた。

 

また、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がマスクの着用を推奨する中、公衆衛生局は引き続きマスクの着用は勧めないとしている。

 

テグネル氏はここ数カ月、国民は制御した環境でウイルスにさらされることで免疫を徐々に獲得する、ワクチンは予想よりも開発に時間がかかる、欧米諸国の死亡率はいずれ収束するとの予想を示してきた。

 

しかし、欧米で最初のコロナワクチンの使用が先週、英国で許可され、スウェーデンの死亡率は隣国よりも依然として高いままであり、テグネル氏は11月下旬に感染の再拡大は同国で集団免疫獲得の「兆しが見えない」ことを示していると認めた。

 

一方、スウェーデンの放任主義的なコロナ戦略は、提唱者が予測したほどの経済的メリットをもたらさなかった。中央銀行と複数の経済機関によると、スウェーデンの上半期の国内総生産(GDP)は8.5%減少しており、失業率は2021年初めに10%近くに上昇する見通しだ。

 

レストランやホテル、小売店などのビジネスは閉鎖の波に直面している。政府が制限措置と寛大な刺激策を併用した他の欧州諸国と異なり、スウェーデン当局はそうしたビジネスに閉鎖措置を課さなかったため、比較的限られた支援しか提供していない。

 

沿岸の都市スンツバルでレストランを経営するヨナス・ハムルンドさんは「ロックダウンよりも悪い。このビジネスに従事する全ての人にとって悲惨な年だった。彼ら(政府)はわれわれを閉鎖しなかったため、大した支援は提供していない。それでも人々に『レストランには行くな』と言っている」と話す。ハムルンドさんは運営するレストラン2軒のうち1軒の閉鎖とスタッフ30人のレイオフを余儀なくされた。

 

経済学者でスウェーデン王立科学アカデミー会員のラース・カルムフォルス氏は、コロナへの警戒感と社会的な交流を避けるようにとの政府の助言が国内需要を下押しし、企業や投資家の信頼感を損なっていると指摘。「強制的な制限措置を導入した国はわれわれよりも首尾良くやっている」と述べた。(中略)

 

ロベーン首相の介入でテグネル氏は降格し、事実上、政府のコロナ対策に関する主導権を譲り渡すことになった。しかし、一部科学者は実験の失敗によって、伝統的に尊敬されてきた国内の当局者や専門家への信認が揺らいでいると話す。

 

調査会社イプソスの11月の調査によると、82%の人が感染流行が病院に与える負担を懸念していると答えた。また、当局が十分な措置を取っていないと回答した人の割合は44%と10月の31%から上昇した。しかし、過半数の人が依然、テグネル氏を支持している。

 

国内で最も人口の多いストックホルム地域の医療・病院担当責任者を務めるビョルン・エリクソン氏は「ストックホルムでは感染が拡大しており、われわれは現在、非常に深刻な状態にある」と述べた。

 

エリクソン氏は、首都の医療従事者は患者に対応しきれておらず、感染流行によるシステムの圧迫は一段と厳しい措置でしか緩和できない可能性があると述べた。

 

経済学者のカルムフォルス氏は「われわれは自分たちを非常に合理的で実際的だと考えたがっている」と指摘。しかし、当局は自らのアプローチが失敗している証拠が山積みになっているにもかかわらず変えようとしなかったとし、「私は自分の国がもう分からない」と述べた。【12月8日 WSJ】

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【「成果」を謳歌する中国・武漢】

一方、昨年春の悪夢と対照的な現在を謳歌しているのが中国・武漢。

 

****コロナ初確認の武漢の年越し、大群衆が歓声 中国***

2019年12月に新型コロナウイルスが世界で初めて検出された中国・湖北省武漢で12月31日夜、大勢が中心部に集まり、光のショーが繰り広げられるなか歓声を上げたり、空に風船を放ったりして年を越した。

 

時計塔のあるかつて税関だった建物の周辺には、密集を防ぐために警察がフェンスを設置していたが、若者を中心とする群衆が大挙して押し寄せたため、あまり効果を発揮できなかった。群衆の大半はマスクを着用していた。

 

武漢では昨年1月末から2か月以上にわたって厳しいロックダウン(都市封鎖)が実施されたが、夏以降はほぼ通常の生活に戻った。9月には学校も完全に再開した。

 

群衆の一人は、「中国は今やこの流行病をとてもよく抑え込んでいる」と語った。「しかし、まだこのウイルスに苦しんでいる国もある。他の国もなるべく早くこの困難を乗り越えてほしい」

 

中国は当初、武漢での新型ウイルス流行を隠蔽(いんぺい)し、世界的な感染拡大を引き起こしたとして各所から批判されている。中国政府は最近、新型コロナウイルス感染症の武漢起源説に疑問を呈する動きを見せている。 【1月1日 AFP】

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果敢な施策による「成果」を誇る中国ですが、あの悪夢の実態・責任について封殺し、「失敗」を認めない姿勢であることは、これまた周知のところです。

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中国  習近平指導部のもと、単一の国家アイデンティティーへの融合 民族融合・愛国教育・国有化

2021-01-02 22:43:11 | 中国

(湖南省の小学校を訪問した習近平国家主席【1月1日 WSJ】 国際政治の場ではあまりみせない“習おじさん”の笑顔ですね)

 

【チャイナドリームという中華思想のもとで進む「民族融合」という名の少数民族同化策】

中国・習近平政権の苛烈なウイグル・チベット・モンゴル対策は今更の話ですが、国際批判にもかかわらず、むしろ「弾圧」「同化政策」(習政権からすれば「民族融合」)の流れが強化される傾向のようです。

 

****中国、少数民族担当に漢族 66年ぶり 全人代常務委****

(中略)全人代常務委では、少数民族政策を担当する国家民族事務委員会の主任(閣僚級)に漢族の陳小江氏を充てる人事も決めた。

 

香港メディアによると、人口の9割を占める漢族が同委主任に就くのは66年ぶりだ。今年、内モンゴル自治区で標準中国語(漢語)の教育が強化されたことに抗議活動が起きており、国民意識の強化や少数民族政策の変更が進む可能性が指摘されている。(後略)【12月26日 産経】

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単一の国家アイデンティティーに融合する施策はウイグル・チベット・モンゴルだけでなく、特段の問題もなく共存しているその他の少数民族にも及んでいるようです。

 

****中国政府の「民族融合」加速、広がる監視地域****

異文化の同化政策は新疆ウイグル自治区以外の地域にも広がり始め激しさを増している

 

中国の習近平国家主席は自身が夢見る中国を実現するため、数十に上る国内の民族集団を単一の国家アイデンティティーに融合することを望んでいる。

 

積極的な異文化の同化――政府文書や演説では「民族融合」と呼ばれる――は、中国北西部の新疆ウイグル自治区で過激なまでに進められ、少数民族の拘留は第2次世界大戦以来で最大の規模となっている。こうしたキャンペーンは多様な民族が住む他地域へも広がり始め、激しさを増している。

 

内モンゴルでは、標準中国語の教育を拡大し、地方の教科書ではなく国の教科書を使うことを義務付ける計画に対し、モンゴル語が消滅の危機にあると懸念する学生や親たちの間で抗議運動や学校のボイコットが広がった。

 

同化キャンペーンの一部は、住民を監視するために構築されたセキュリティーインフラに頼る。一例として、少数民族が多い地域では警察の監視用ハイテク機器が設置された。

 

この戦略は新疆ウイグル自治区でチュルク語系のイスラム教徒を監視し続けるために使われている。現地政府は地域の安全維持に必要なアプローチだと述べている。

 

こうした手法は現在、南西部の平穏な広西チワン族自治区など、東へ向けて広がっている。チワン族は精霊を信じるアニミスト的な信仰を持ち、近年ほとんど民族対立を起こしていない。

 

既に厳しく統制されているチベットでは、地方当局が農村部のチベット人を対象にした「軍事スタイル」の新たな職業訓練プログラムを導入。地域の民族統一と愛国心を促進するための新規制を可決した。

 

これまで報じられていなかった政府文書によると、中国の治安部隊は最先端の監視ツールと「参考人物」の活動を予測する警備システムの導入を目指している。

 

民族政策を担う共産党機関の統一戦線工作部はコメント要請に応じていない。

 

中国には公式に認められた55の少数民族が存在する。共産党は数十年前から、国内で支配的な漢民族の文化に少数民族が徐々に融合していくと考えていた。

 

だが習氏が率いる共産党は、そうしたモデルに対する忍耐力を失っている。ここ数十年で最も強力な指導者である習氏は、中国を経済・技術面の覇者に築き上げ、過去に君臨した偉大な王朝に匹敵する存在にしようと目指している。同氏が描くナショナリスト的なチャイナドリームは、14億人の人民が共通のアイデンティティーを持つという考えに根ざしている。

 

習氏は昨年、政府の民族政策会議で「中国国家の集団意識を醸成することは、中国の偉大な再生という夢の達成の主軸を成す」と述べた。

 

中国は既に、世界でも最も同質性の高い国の一つで、漢民族が人口の90%余りを占める。その他、伝統的に遊牧民である数百万人のチベット人やモンゴル人、チュルク語系のイスラム教徒、東南アジアと文化的なつながりを持つ民族などが居住する。それぞれが独自の言語、信仰、習慣を持つ。

 

漢民族から文化的にとりわけ遠い少数民族のうち、最大級の集団のいくつかは国の周辺部に住む。こうした国境地域は資源が豊かで、歴史的に漢民族の支配下に置かれたり、外れたりを繰り返してきた。

 

習氏は香港に対して強硬路線を取ったのと同じように、中国の少数民族地域を支配することは国家の領土保全を強化する上でカギを握るとみている。

 

習氏は12月、モンゴルの民族問題を担当する政府機関トップを漢民族出身の当局者に交代させた。過去半世紀余りにわたり、同機関トップに少数民族以外の出身者が任命されたことはなかった。

 

オーストラリアのラトローブ大学で中国の民族政策を研究するジェームズ・レイボールド教授は、「習近平の下では、チャイナドリームとは漢民族中心の文化的ナショナリズムの夢だ」と指摘。中国指導部は「こうした安定制と国家への帰属感の創生に党が関与する必要がある」と考えているとの見方を示した。【1月2日 WSJ】

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記事最後にレイボールド教授も指摘しているように、単一の国家アイデンティティーとは言いながら、実際には多数派漢民族への同化強要にも見えます。

 

いわゆる「中華思想」の伝統でしょう。

習近平氏の「中国の夢」は、かつての漢王朝・唐王朝の再現でもあるでしょう。

そこでは、漢民族の権力に服従した諸民族の思いは「民族融合」という美名で消されてしまいます。

 

【毛沢東時代にも似てきた「愛国教育」による国民統合】

国家アイデンティティーへの融合は、少数民族対策にとどまらず、漢民族が中核をなす国民全般に及んでおり、その具体策が愛国教育の徹底です。

 

****中国の愛国教育、習体制で先鋭化 幼児に「訓練」も****

毛沢東時代の中国は、偉大な社会主義国の創造を若者に呼びかけるため、政治宣伝ポスターを活用していた。1989年の天安門事件以降、共産党は教科書を書き換えることで、自らの見解に基づく歴史を説き、欧米の思想から若者を引き離そうとしてきた。

 

中国は現在、若者の再教育を目指すキャンペーンに着手している。ここ数十年で最も露骨なナショナリズム的メッセージを打ち出し、しばしば習近平国家主席の肖像を中心に据えている。それは過去の中国政府のいかなる試みよりも、はるかに洗練されている。

 

ソーシャルメディアの巧みな動画は何百万回も再生されている。共産党機関が共同制作した人気動画シリーズ「イヤー・ヘア・アフェア(ウサギの年代記)」のあるエピソードでは、米国旗を着たハゲワシが、言葉を話すゴキブリと共謀して香港を大混乱に陥れようと画策する。そこへ愛らしい中国ウサギたちが登場し、ゴキブリを退治する--。

 

北京の大学に通うパン・ボルイさん(19歳)は昨年、このアニメに夢中になった。「これは中国の次世代の思想を形作ることになるだろう」と言う。パンさんは動画が党の支援を受けて作成されていることは知っていたというが、それでも大半の中国人には、従来の報道記事に比べ極めて正確で親しみやすいと受け止められたと語った。

 

中国指導部は常に愛国心を鼓舞しようとしてきた。毛沢東時代の若者は「毛沢東思想」や階級闘争について学び、革命歌を歌った。1990年代初めにはカリキュラムが変更され、中国は欧米に苦しめられているという論調を広げ始めた。

 

だが、10年ほど前に大学生を対象に実施された調査では、こうした取り組みはぎこちなく、意図が透けて見えるとの見方が大勢だった。多くの学生は、リベラル思考もしくは西洋的な政治思想を持つと自覚していた。

 

習氏の前任者である胡錦濤のような過去の指導者たちは、プロパガンダを押しつけ過ぎることに慎重で、そうすれば中国を不安定化させるような形でナショナリズムが高まりかねないと懸念していた。むしろ経済発展を加速させることを目指し、欧米の思想を巡る議論をある程度は容認することもいとわなかった。

 

だが習政権下では、愛国教育が強化され、広範にわたって展開された。南カリフォルニア大学のスタンレー・ローゼン教授(中国政治学)は、香港で最近発生したティーンエージャーや若者による抗議運動を受け、中国当局は、幼いうちに洗脳を始めなければならないことを学んだと指摘する。

 

習氏は2018年8月の会議で、「人生の最初の留め金をきちんとかけることができるように、ティーンエージャーの価値観が決定づけられ、形作られるこの重要な時期を捉え、彼らを導く必要がある」と説明した。

 

中国政府の野心は国務院(内閣に相当)が19年11月に公表した文書で明確になった。「愛国心は中国人の最も自然で純粋な感情である。乳児期から始め、根を固めることに注力し、魂に全力を傾けることを徹底しなければならない」

 

この文書はさらに、政府と党関係者に対し、習氏のイデオロギーや中国再生へ向けた同氏の計画を織り込んだ映画やニュース、授業を推進するよう指示。「愛国心がインターネット空間を埋め尽くす」ように、オンラインゲームやアニメ、短編動画へのティーンエージャーの関心を利用することを上層部に求めている。

 

複数の調査によると、今の中国の若者は猛烈な愛国心を持ち、前世代より国家への忠誠心が強いことが明らかになっている。インタビューに応じた学者や親、ティーンエージャーたちは、経済成長や新型コロナウイルス封じ込めの成功など、若者は中国を誇りに思う理由が多々あると述べている。

 

中国東部の杭州市のある幼稚園は9月、平常授業を中断し、4日間にわたって5~6歳児向け「軍事訓練」を実施した。ソーシャルメディア「微信(ウィーチャット)」の同園公式アカウントには、軍服を着た子どもたちが中国国旗を手に敬礼する様子が掲載された。

 

現行の愛国運動のルーツは、習氏が権力の座に就いた直後の2013年にさかのぼる。党指導部は同年、政策を記した「文書第9号」を作成。市民社会や自由な報道といった欧米の概念の広がりなど、党に対する7つの脅威について警告し、外部思想の侵入に対する抵抗を強化するよう党員に呼び掛けた。

 

また、政府は2016年、新教育相に陳宝生氏を起用。同氏は一段と愛国教育を推し進めた。陳氏は共産党の幹部教育機関である中央党学校で副校長を務めた経験を持つ。陳氏の同校在任中の大半で、習氏が校長を務めていた。

 

陳氏は16年の演説で、「インターネット言語」に精通した「敵対勢力」が中国の教育システムを破壊して党を弱体化させ、誤った考えを広めようとしていると警鐘を鳴らした。「学生はいったんそれに触れれば、簡単にだまされる。染料おけに入った白い布のようなものだ」

 

中国政府は各省政府が独自に教科書を選べる政策を撤回し、国家主権や民族、宗教を扱う教材は全て当局の承認を受けることを義務付けた。

 

教科書の一部も書き換えられた。1930年代から40年代の日本との戦争期間を6年引き延ばし、日本による早期の侵略行為だったとする期間を含めることで、中国の犠牲を誇大化させた。高校生は習氏の功績に重点を置いた新たな政治学の書籍「中国の特色ある新時代の社会主義」を勉強することが義務付けられた。同書には習氏の名前が少なくとも46回出てくるが、毛沢東の名前は16回だ。

 

中国人教師3人はインタビューで、党の功績に関する学校での討論を沈黙させる取り組みについて語った。仮に生徒が小論文で、政府の新型コロナ対策を否定的に描くなど、容認できない姿勢を示した場合は、成績を落とすよう求められたという。

 

北京市の当局が導入したプログラムでは、ナショナリスト的で革命的なメッセージのある博物館への学生の訪問が義務付けられた。展示の一つは習氏にささげられ、若者が習氏を称賛する様子を描いた絵が飾られている。尊敬心を抱く若者たちに囲まれる毛沢東の姿を描いた毛沢東時代の絵をほうふつとさせるものだ。【1月1日 WSJ】

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なんだか習近平政権の在り様は、文化大革命を指揮した毛沢東の統治にますます似てきたように見えます。

 

【矛先は巨大民間インターネット企業にも アリババも国有化?】

習近平政権の矛先は国民だけでなく企業、特にアリババなど巨大インターネット企業にも向けられています。

 

****なぜ目の敵に?習近平の民営企業虐待がエスカレート****

中国で最も成功した実業家として世界中で知られている有名人、馬雲(ジャック・マー)と中国共産党政権の関係がいよいよ微妙になってきた。

 

すでに報じられているように、アリババと、アリババ傘下のフィンテック企業アントグループが独禁法違反の疑いで国家市場監督管理総局による面談という形の取り調べを11月から複数回受けており、12月24日に正式に立件され立ち入り調査を受けた。

 

それによって同日、アリババの香港市場株が一気に9%ほど急落したので、世間はざわついた。12月24日付けの人民日報は、「独占禁止管理の強化はさらなる発展のためだ」という見出しで、アリババなど巨大インターネット企業、フィンテック企業に対する調査の正当性を訴えている。

 

人民日報や新華社の報道によると、市場監督管理総局は、アリババの「二選一」が市場独占行為にあたるとみて立件調査に入ったという。「二選一」とは“二者択一”を意味し、アリババへの出店者に対して競合ECプラットフォームへの出店禁止を迫るやり方を指す。

 

「これ(立件調査)はインターネット領域における市場独占禁止法の監督管理強化の重要措置であり、産業秩序に利するものであり、プラットフォーム経済の長期的健康的発展のためである」と人民日報は主張する。

 

同時に人民日報は、中央政治局会議、中央経済工作会議などで独占禁止の強化と資本の無秩序な拡張を防止する方針を明確化したことも明らかにした。つまり今回の独禁強化方針は党中央最高指導部、習近平政権としての決定だといえる。

 

こうした独禁法強化の流れは国際社会全体の潮流であり、「この4年の間に、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの巨大ハイテク企業が全世界で独禁法調査を受けており、2017年から2019年までの3年間で、EUはグーグルに対して独禁法違反として累計90億ドルの罰金を科した」という。

 

それはその通りであり、アリババの「二選一」などのやり方は、アリババ傘下のネットショッピングモール「天猫」(テンマオ)がEC市場の50%以上のシェアを占め市場の支配的地位にある中で、独禁法第19条に抵触する帝国の傲慢と言える行為であることは否定できない。

 

だが、果たして今回の立ち入り調査が本当に独禁法違反だけが理由か、という点については多くの人が疑念を抱いている。

 

「二選一」が独禁法違反にあたることが問題だというのならば、法にのっとって売上の1〜10%という処罰が実施されるだけだろう。しかし先月から投資家の間では、アリババの国有化問題がまことしやかに囁かれ始めている。

 

アントの“献上”を提案した馬雲

(中略)

 

習近平はなぜ民営企業を嫌うのか

一方で、こうした動きはアリババやアントといった特定の企業をターゲットにしたものではなく、習近平政権として、大きくなりすぎた民営企業を大整理する決心をしたことの表れだとも言われている。

 

最初にアリババやアントをターゲットにしたのは、中国式の「鶏を殺して猿を脅す」という、見せしめ効果、萎縮効果を狙ったものだ、という。もっともアリババは鶏どころか、猿以上の大企業ではあるが。

 

今回の独禁法違反の調査対象には、アリババやアントだけでなく、ウィーチャットを開発したテンセント(騰訊)や、中国最大のオンライン・ツー・オフライン(口コミサイト)プラットフォームを運営する美団なども入っているようだ。(中略)

 

習近平はなぜ、民営企業をここまで嫌うのか。

毛沢東思想の信望者である習近平としては、民営企業が中国経済の命運を左右することや、あるいは国家を超えるような影響力をもつことを、絶対許さない、と考えている。

 

そして政権の求心力を高めて権力基盤を強化するためにあえて“敵”をつくるとしたら、毛沢東が地主を階級の敵として、農民、労働者らの憎しみと嫉妬心を煽ったように、成功した大民営企業家がちょうどいいのかもしれない。

 

また、米国の混乱は、ビッグテックと呼ばれる巨大IT企業のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や、ウォール・ストリートの金融大手企業など“民営企業”が政権よりも影響力を持ち、政権を動かす力さえ持つことも関係があるとみられている。

 

金融と情報、この2つの力が結びつけば、世論を思うままに誘導し、混乱を生じさせ、選挙結果すら動かせるかもしれない。習近平は米国の状況を見ながら、インターネット巨頭企業やそれが金融と結びついたときの怖さを改めて思い知ったのかもしれない。

 

あるいは、共産党による経済・金融の指導を本気で徹底することが、今、中国経済が直面している問題を解決できる唯一の方法である、と考えているのかもしれない。

 

中国は11月に、巨大インターネット企業が消費者データなど敏感な情報を共有し、小規模の競争相手を締め出す談合を行うなどの寡占状態を阻止するための規則草案を発表している。

 

また12月には習近平が主催する中央政局会議で、2021年の市場独占禁止工作を強化し、「資本の無秩序拡防止」を強化することを承認している。これは、政府による巨大インターネット企業の整頓強化の予兆ではないか、とみられている。

 

こういう状況の中でのアリババへの独禁法違反調査と国有化の噂は、少なくとも中国の鄧小平時代が切り開いた中国民営企業のバラ色の時代の終結を告げるシグナルだといえるだろう。【12月31日 福島 香織氏 JB press】

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こうした少数民族も、国民一人ひとりも、巨大民間企業もすべて単一の国家アイデンティティー・共産党指導のもとに統合していこうという流れのなかでは、香港の「一国二制度」が存在する余地などないでしょう。

 

その件はまた別機会に・・・というか「中国支配が進んでいるし、今後はますます進む」ということに尽きますけどね。

 

ただ、習近平主席が国内各方面で「統合」に躍起になるのは、放置すれば分散の方向に流れ、党の指導力が低下するベクトルがあるからでしょう。今後の中国は、そのベクトルと政府の施策のせめぎあいでしょうか。

 

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