(トルコ・イスタンブールの中国領事館前で消息不明の親族の写真を掲げ、新たな犯罪人引き渡し条約に抗議するトルコ在住ウイグル人(2020年12月30日撮影)【12月31日 AFP】)
【中国、「職業訓練」は終了した。 強制労働の指摘も】
中国・新疆ウイグル自治区における、百万人にも及ぶとも言われる強制収容や、ウイグル族の人口抑制を目的とした強制的不妊手術が行われているのではとの疑惑などの人権弾圧の問題。
中国側は「強制収容」などではなく、あくまでも「再教育」「職業訓練」としていますが、その「職業訓練」事業もすでに終了したと改めて表明しています。
****ウイグル族への「再教育」終了 中国・新疆の報道官が主張****
中国新疆ウイグル自治区政府の報道官は11日、北京で記者会見し、自治区に設置した施設で少数民族ウイグル族らを対象に実施していた「再教育」や「職業訓練」が2019年10月に終了したと主張した。
国際社会ではウイグル族が強制収容されているとの批判が根強いが、一連の措置はテロ対策の一環だと訴えて正当化した。
報道官は「教育・訓練の学生は全て卒業した。現在、新疆に教育訓練センターは一つもない」と強調した。人権状況に厳しいとされるバイデン次期米政権の発足を前に、強制収容を巡る問題は存在しないとアピールする狙いがありそうだ。【1月11日 共同】
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ただ、中国側の言う「教育施設」を「卒業」しても、付属の工場に移されて強制労働が行われているとの指摘もあります。
****中国「新疆綿」収穫で強制労働、ウイグル人ら57万人超を動員 報告書****
中国北西部・新疆ウイグル自治区の綿花収穫で国家ぐるみの強制労働が行われ、ウイグル人ら少数民族少なくとも57万人が動員されている。米シンクタンク「センター・フォー・グローバル・ポリシー」が(12月)14日、報告書で明らかにした。
自社のサプライチェーンの中でウイグルの強制労働を用いていると批判されているナイキやギャップ、アディダスなどの世界的な衣料品ブランドに対する圧力は、今回の報告でさらに高まりそうだ。
人権団体は、新疆には超法規的な強制収容所の広範なネットワークがあり、100万人以上が収容されていると指摘しているが、中国政府は強制収容所ではなく過激派対策の職業訓練施設だと主張している。
同シンクタンクの報告はインターネット上の中国政府の文書を参照したもので、自治区内のウイグル人が多く住む3地域で綿花の収穫に強制動員されている人は、2018年時点で少なくとも57万人とされ、そこから数万人増えているだろうと指摘している。
新彊産の綿は、世界の生産量の20%超、米国で使用されている繊維の約20%を占めていることから、世界の綿のサプライチェーンに「劇的な影響が生じる」ことが懸念されている。
この報告を受けて、英BBCが世界の衣料品大手30社に、中国製品の調達を続けるかどうか尋ねたところ、中国で製造される自社製品に新彊産の綿花の使用を禁じる厳格な方針があるのは、回答が得られた中の4社にとどまった。
中国政府は、すべての収容者が問題の施設を「卒業」したと主張しているが、報告書によると、その多くは強制収容所とつながっていることの多い工場に移され、非熟練労働に従事しているとみられる。
労働者は警察に厳しく監視され、収容所から工場へ直接移され、「軍隊式マネジメント」の下で思想教育を施されるという。
報告書は、農村部の所得を増やせば政府が義務付けた貧困削減目標を達成できることが、強制労働を実施する強力な動機になっていると指摘している。
中国当局は15日、報告書について問われると、「新疆のすべての民族の労働者が、自発的な職業選択に基づいて企業と労働契約を結んでいる」と答えた。
中国外務省の汪文斌報道官は報告書を作成したエイドリアン・ゼンツ氏について、「米情報機関の操作の下で設立され、中国に関するうわさを捏造(ねつぞう)し、中国を中傷している反中的な研究組織の中心人物だ」と激しく批判した。 【12月16日 AFP】
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習近平国家主席は12月3日、共産党政治局常務委員会の会議で、「現行基準下で貧困県がなくなり、絶対的貧困が解消した」と述べ、2020年を期限とする「貧困ゼロ」目標の達成を宣言しました。
農村部の貧困対策が重要課題であり、共産党政権が大きな成果をあげていることは大いに評価する必要があります。
新疆においてもしかり。ただ、「新疆のすべての民族の労働者が、自発的な職業選択に基づいて企業と労働契約を結んでいる」かどうかも正しく評価されなければなりません。
【中国、ウイグル女性を「子供を産む機械」から「解放」した。 強制的不妊手術の疑惑も】
強制的な不妊手術による人口抑制を図っているとの指摘に対しても、中国側は否定していますが、ツイッターはこうした在米中国大使館のツイートを削除しています。
****ツイッター、在米中国大使館の投稿を削除 ウイグルは「解放」されたと主張で****
SNS大手ツイッターは10日、中国政府の新疆ウイグル自治区政策によってウイグルの女性が「解放」されたと主張した、在米中国大使館のツイートを削除した。
このツイートは、中国の国営メディア中国日報の記事へのリンクと共に投稿されたもの。記事では、中国政府がウイグルの宗教的過激派を抑え込んだことで、女性が「子供を産む機械」ではなくなったと述べていた。
中国政府にはかねて、イスラム教徒のウイグル族を迫害している疑惑が持たれている。女性に対しては不妊手術などを強制し、人口抑制を行っているとみられている。
中国はこうした疑惑を一貫して否定している。
在米中国大使館は7日、中国政府が「推進」している「生殖に関する健康政策」の結果、ウイグルの女性が「自信と自立」を得たとツイートした。
ツイッターは週末に入り、ツイッターの規則に「違反」したとしてこの投稿を削除。この措置の詳細については明かしていない。
元のツイートに掲載されていた中国日報の記事には、新疆での過激派撲滅運動によって「ウイグルの女性が子どもを産むかどうか自分で決められるようになった」と書かれている。
この記事は新疆開発研究センターの報告を引用。「こうした変化は、一部の西洋の研究者や政治家が指摘しているようなウイグル族に対する『強制不妊手術』によるものではない」と書かれている。
専門家は厳しい人口抑制策を指摘
中国の新疆政策に関する世界的な専門家、エイドリアン・ゼンズ博士は昨年、ウイグルなど中国国内の少数民族の女性たちが人口抑制政策で決められている人数以上の子どもを妊娠した場合、中絶しなければ強制収容所に入れられると脅されていると報告した。
この報告は地方自治体の公式データや政策文書、新疆に住む少数民族の女性への取材を基にしている。
報告ではまた、法的に認められている人数以上の子どもをもつ女性だけでなく、規定以下の子どもしかもっていない多くの女性も、強制的に子宮内避妊器具を装着させられたり、不妊手術を受けさせられたりしていると指摘している。
中国では現在、夫婦は原則2人まで、一部の地方では3人まで子どもをもつことが認められている。
中国は強制収容所を、過激派に対抗するための再教育施設だと主張している。しかし収容されていた人の証言では、月経を止める薬などを注射され、その結果、不正出血に陥る女性もあったという。
ゼンズ博士のデータ分析によると、新疆での人口増加率はここ数年で劇的に低下しているという。自治区内で最も大きな2県では、2015年から2018年にかけて増加率が84%低下。2019年にもさらに下がった。
この報告書を受け、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は「全ての国がアメリカと共に、この非人間的な行いを終わらせるよう求めていくべきだ」と述べた。
中国はこの時、一連の疑惑は「根拠のないもの」で「隠れた動機」に基づいたものだと主張している。【1月11日 BBC】
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【アメリカ ジェノサイド認定を検討 ICCは捜査要請を退ける】
こうしたウイグル族に対する「強制収容」「強制不妊手術」は、米中対立のなかで、アメリカ側の中国批判のカードともなっています。
****米、ウイグル族の虐殺認定を検討 中国政府の弾圧で国務省****
トランプ米政権が中国政府による中国新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族への弾圧について、国際法上の犯罪となるジェノサイド(民族大量虐殺)と認定するかどうかの検討に入ったことが(12月)24日、分かった。
対中強硬派のポンペオ国務長官が検討作業を指示した。米当局者が共同通信に明らかにした。米政府が認定すれば、中国の強い反発が予想される。
国務省で国際刑事司法問題を担当するタン大使が検討作業を取りまとめ、ポンペオ氏に報告する予定だというが、報告の時期は不明。ジェノサイドに認定した場合、中国に対する何らかの制裁措置を求める声が高まるのは確実とみられる。【12月25日 共同】
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政権交代のゴタゴタのなかで、この問題がどのようになっているのか知りません。
一方、国際刑事裁判所(ICC)は、中国によるウイグル族弾圧に関する捜査要請を退けています。
****国際刑事裁の検察、ウイグル弾圧の捜査要請を退ける「人権への罪に当たらない」****
国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)の検察は、中国による少数民族ウイグル族弾圧に関する捜査要請を退けた。14日に発表した報告書に明記した。中国はICC非加盟で、中国内での行為についてICCに管轄権がないことを理由とした。
ICCによる捜査は亡命ウイグル人が求めていたもので、人口抑制を目的とした不妊手術や強制移住は、ジェノサイド(集団殺害)や、人権に対する罪に相当すると主張していた。
訴えには、ICC加盟国であるカンボジア、タジキスタンからウイグル族が強制移住を迫られたとの主張も盛り込まれたが、検察は「国際人権法に抵触するおそれはあっても、(ICCの管轄である)人権に対する罪に当たらない」と判断した。
ICCは昨年、非加盟国ミャンマーの少数民族ロヒンギャに対する迫害疑惑について、容疑事実の一部が加盟国バングラデシュで行われたことを理由に、捜査に踏み切った。【12月16日 産経】
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「国際人権法に抵触するおそれはあっても、(ICCの管轄である)人権に対する罪に当たらない」ということが、どういう意味かは知りません。
【沈黙するイスラム諸国 かつて中国を批判したトルコも中国になびく】
また、中国の影響力の大きさの証か、欧米などにおけるイスラム冒涜などには敏感に反応するイスラム諸国のウイグル族弾圧問題への反応は鈍いのが現実です。
****中国のウイグル人弾圧、イスラム協力機構は声を上げよ 米団体が圧力****
米国の複数のイスラム教団体は17日、イスラム教徒の権益を守ることを目的に掲げる国際機構「イスラム協力機構」について、中国のウイグル人弾圧に沈黙し、ジェノサイド(大量虐殺)とも言われる中国の行為を助長していると非難し、声を上げるよう求めた。
イスラム諸国56か国とパレスチナが加盟し、サウジアラビアに事務局を置くOICは、イスラム教徒が不当に扱われていると判断した事例にしばしば対処しており、イスラエルを非難したり、パキスタンの要請でインドを批判したりしている。
しかし、中国西部・新疆ウイグル自治区でのウイグル人弾圧に関しては沈黙を続けてきた。
人権団体によると、新疆ではイスラム教の慣習を根絶し、強制的に漢民族に同化させる試みの一環として、ウイグル人をはじめとするチュルク語系少数民族100万人以上が強制収容所に入れられている。
全米最大のイスラム人権団体「米イスラム関係評議会」など米国の複数のイスラム教団体は、OIC加盟国は中国の力に恐れをなしていると非難した。
米国人イスラム教徒で、学者・人権活動家でもあるオマル・スリーマン氏はオンライン記者会見で、「中国がイスラム世界を経済的に支配し、すべてのイスラム諸国を孤立させ、ウイグル人を支援するという大義に口先だけ賛同することさえ恐れさせることができたのは明らかだ」と指摘した。
スリーマン氏は、パレスチナなどの支援には口先だけ賛同する国もあるが、ウイグル人問題については、特に難民認定希望者を追い返すことで、中国の弾圧を「助長」し続けるだろうと述べた。
ウイグル系米国人のルーシャン・アッバス氏は、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」を推進する中で、イスラム教徒に向けた政策を輸出する可能性があると警鐘を鳴らしている。
アッバスさんは、「中国には買収や脅しで各国を服従させてきた実績がある。ウイグル人のジェノサイドは、中国の国内問題ではない。人類の問題だ」と語った。アッバスさんの活動を受けて、中国はアッバスさんの姉妹を拘束したという。
米政府は中国のウイグル人に対する扱いをナチス・ドイツの所業になぞらえており、OICが声を上げないことに失望を表明していた。 【12月18日 AFP】AFPBB News
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沈黙するイスラム諸国にあって、民族的・文化的にも近いトルコは、かつて「人類にとって大きな恥だ」と非難したともありました。
しかし、その後、トルコも対応を一変させています。
****トルコ大統領、中国非難から一転「ウイグルの人々は幸せに暮らしている」****
中国を訪問中のトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は(2019年7月)2日、習近平国家主席との首脳会談の中でこれまでの姿勢を一転させ、新疆ウイグル自治区の少数民族は幸せに暮らしていると語った。中国国営新華社通信が報じた。
(中略)こうした中国政府のウイグル政策について、イスラム教国はおおかた沈黙を貫いていたが、トルコ外務省は2月に声明を発表。イスラム教徒でチュルク語系の言葉を話すウイグル人に対する中国政府の措置は「人類にとって大きな恥だ」と非難していた。
しかし新華社によると、2日に北京の人民大会堂で習氏と会談したエルドアン大統領は、批判的だった態度を軟化させ「トルコは常に『一つの中国』原則を支持している」と述べ「新疆ウイグル自治区の多様な民族が、中国繁栄の恩恵を受けて幸せに暮らしていることは確固たる事実だ。トルコは、同自治区と中国の関係に亀裂を生じさせようとする者を許さない」などと強調した。
さらにエルドアン大統領は、過激思想と対峙するにあたって、中国との政治的な相互信頼を高め、安全保障上の協力を強化する用意ができているとも述べたという。【2019年7月3日 AFP】
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更に、トルコと中国との新たな犯罪人引き渡し条約によって大勢のトルコ在住ウイグル人が中国に送還されることになるとの懸念も。
****中国との新条約にウイグル人引き渡しの懸念、トルコが「火消し」****
トルコは30日、中国との新たな犯罪人引き渡し条約によって大勢のトルコ在住ウイグル人が中国に送還されることになるとの懸念を払拭(ふっしょく)した。
中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会が26日、2017年に署名された同条約を批准。これを受けて、イスタンブールの中国領事館前ではトルコ国籍を持つウイグル人約20人がピケを張って抗議した。
トルコ側はまだ同条約を批准していないが、中国側が批准したことによって推計5万人の在トルコウイグル人の間で不安が高まっている。
メブリュト・チャブシオール外相は、議会がいつ同条約を審議するかについては言及しなかったが、条約締結が中国へのウイグル人引き渡しを意味するものではないと発言。「これまでにもトルコ在住ウイグル人に関し、中国から引き渡しの要請はあった。だが、トルコがそうした措置を取っていないことは周知の通りだ」
さらに、「ウイグル人を引き渡すための条約だという言い方は誤っているし、不当だ。わが国は他国よりもそうした問題に敏感だ」と述べた。
ウイグル人は、トルコ語と同じチュルク諸語のウイグル語を話し、トルコとの文化的結びつきもある。そのため中国北西部・新疆ウイグル自治区での迫害から逃れようとするウイグル人に人気の避難先となっている。
しかし報道では、トルコ政府は第3国を経由してひそかにウイグル人を中国に送還しているとして非難されている。
犯罪人引き渡し条約への恐怖を訴える在トルコウイグル人の集会は30日で9日目となった。わが子が中国で拘束されているというトルコ国籍のウイグル人、オメル・ファラーさんは、「神よ、どうか私たちの国がこんなものを批准しませんように」と語った。「そんなことになったら、私たちは心配でたまらない。中国にとっては、在トルコウイグル人5万人全員が犯罪者なのだから」 【12月31日 AFP】
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イスラムの大義、民族的・文化的近さにもかかわらず中国になびくトルコ・・・現実世界というのは「こんなものだ」と言えばそうとも。ザラつくものが心に残りますが。
■新疆人口問題への米国・西側の悪意ある中傷に反論=中国人研究者
https://www.recordchina.co.jp/b865398-s16-c100-d0046.html?utm_source=goo
■【CRI時評】新疆についての大うそは、このように練り上げられた(2019/12/27)
http://japanese.cri.cn/20191227/197836c9-ba8a-bb63-12e0-4a2283b552eb.html
■「世界ウイグル会議は米支持下の右翼組織」米ニュースサイトが暴露(2020/3/17)
http://japanese.cri.cn/20200317/a11618dd-fd45-a042-f5b7-1edac0581e53.html
■西蔵資料館 ~チベットの本当の歴史~
http://xizang.is-mine.net/index.html
>中国の新疆政策に関する世界的な専門家、エイドリアン・ゼンズ博士
この方は非常に怪しい方です。日本で言う右翼です。
エイドリアン・ゼンツ(共産主義犠牲者記念財団・中国研究上級フェロー)
アメリカの反共主義団体で法輪功やビターウィンターみたいなカルト団体ともよろしくやってる。
●共産主義の犠牲者記念財団、世界的コロナウイルス死亡者を歴史的な共産主義犠牲者数に加える
https://www.trumpnewsjapan.info/2020/04/14/voc-global-coronavirus-deaths/
●「台湾をWHOに、中国は権利停止を」米NPO、トランプ政権に訴え
https://japan.cna.com.tw/news/apol/202004150004.aspx
【政治】 2020/04/15
(ワシントン中央社)米国の非営利団体「共産主義犠牲者追悼財団」が先ごろ(主張した)
オーストラリアには米軍基地があります。
■豪公民党、反中シンクタンクASPIを批判(2020年10月22日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3311428
CNNやBBCのニュースも信用してはいけません。
リビアやイラクは欧米のデマにより、民衆が虐殺されました。カダフィ大佐もフセインも民衆のための政治をしていました。
■背後にいるのは誰か?主流メディアは、ウソのビデオや映像を使って「虚偽ニュース」をでっち上げる
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-472.html(2021/1/6)