goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  コロナパンデミックで「GDP世界最大」への道を加速 ワクチン外交で信頼獲得も目指す

2021-01-13 23:12:32 | 中国

(1月13日、インドネシアで、新型コロナウイルスワクチンの接種キャンペーンが始まり、ジョコ大統領(写真)が最初に接種を受けた。【1月13日 ロイター】 このワクチンも中国シノバック・バイオテック製)

 

【GDPのアメリカ越えがコロナ禍で5年早まる】

新型コロナのパンデミックは国際関係から個々人の生活に至るまで、あらゆる側面で大きな変化をもたらしつつありますが、国際関係の面で見ると、中国がこの難局をうまく乗り越え、その存在感の高まりが加速しつつあるように見えます。(現在進行形ですので、今後の展開はわかりませんが)

 

国力の基盤となる経済規模で見ると、コロナを制御した感のある中国は、これまでの予想より5年早く、2028年にはアメリカを追い抜く・・・・との調査結果が。

 

****中国のGDP “2028年 アメリカ上回り世界1位” 英民間調査機関****

中国のGDP=国内総生産の規模が2028年にはアメリカを上回って世界1位になるという予測をイギリスの民間の調査機関がまとめました。

アメリカ経済が新型コロナウイルスの感染拡大の深刻な影響を受ける一方、中国経済が回復していることが主な要因だと分析しています。

 

これは、イギリスの民間調査機関が世界193の国や地域のGDP=国内総生産について、2035年までの長期的な推移を予測したもので、26日に発表しました。

それによりますと、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ことしの世界全体のGDPの伸び率はマイナス4.4%に落ち込むと予測しています。

 

ただ、こうした中でも、中国については、GDPの伸び率をプラス2%と予測していて、欧米の主要国がマイナス成長に陥る見通しとなる中でもプラス成長を維持するとみています。

これは、中国がアメリカやヨーロッパと比べて感染の抑え込みに成功し、いち早く回復しているためだと指摘していて、2028年には中国のGDPの規模がアメリカを上回り世界1位になると予測しています。

前回の予測では、中国のGDPがアメリカを追い越すのは2033年としていましたが、5年早まった形です。

 

一方、日本についても感染拡大の影響は深刻だとして、ことしのGDPの伸び率はマイナス5.5%に落ち込むと予測しています。【12月27日 NHK】

*********************

 

もっとも、こうしたことをもって、アメリカが「覇権」を中国に奪われる・・・云々といった、米ソの冷戦当時のような発想を戒める指摘もあります。

 

****米中はゼロサム関係ではない――米国はなぜ対中ヒステリーに走るのか****

1月7日付毎日新聞で坂東賢治=専門編集委員が「米中はゼロサム関係か?」と題したコラムを書いていて、この設問の仕方は正しい。

 

設問それ自体に答えが含まれており、「米中対立激化で米政界やメディアには冷戦時代の米ソ関係のように中国の得点を米国の失点と見る『ゼロサム思考』が広がった。……〔が、この〕思考で米中どちらかの選択を迫るような手法は簡単には通用しまい」というのが結論である。(後略)【1月13日 高野孟氏「アメリカ混迷の根源。中国に「覇権」を奪われるという被害妄想の代償」 YAHOO!ニュース】

*******************

 

中国が“非民主的な軍事大国のまま対外的な悪影響を及ぼし続ける”ことへの懸念も。

 

****中国はコロナで5年早く「最強国」になる?ますます「不寛容さ」が際立つ奇妙な現象****

(中略)鄧小平が掲げた「改革開放」以降、しばらくの間「金持ち喧嘩せず」とばかりに寛容さを装ってきた中国だったが、大国になっても傍若無人の振る舞いを変えないことから国際社会の目が厳しくなると、自分と異なる他者を排斥するという不寛容さが再び頭をもたげ始めているのである。

 

自らの不寛容さを克服できなければ中国は「最強国」にはなれないが、非民主的な軍事大国のまま対外的な悪影響を及ぼし続けるという「不都合な真実」となる可能性が高い。

 

『不寛容論 アメリカが生んだ「共存」の哲学』(新潮選書)の著者である森本あんり氏は、「自分の信念は信念として堅持したまま、自分とは根本的に違う価値観を持つ他者と何とかして平和裡に共存する道を模索する」ことが現実的な寛容のあり方だと結論づけているが、隣国としての日本は、このような「寛容」な態度を他者である中国に対して保ち続けることが唯一可能な選択肢ではないだろうか。【1月13日 藤和彦氏 デイリー新潮】

**********************

 

【「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利であり、世界の公衆衛生の勝利」】

中国も不寛容さをまき散らすだけでなく、「最強国」にふさわしい国際的信頼を得ようとする戦略も展開しています。パリ協定離脱などに見られるように国際協調を軽視し、「アメリカ第一」を掲げるトランプ政権の内向き姿勢のおかげで、中国は「国際協調の担い手」としての役割を世界にアピールする機会を得ています。

 

そうしたなかで、新型コロナは中国にとって「ワクチン外交」という非常に効果的なカードを与えています。

 

****中国ワクチンに各国から注文続々―香港メディア*****

中国政府は昨年12月31日、国有製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)傘下の中国生物が開発した新型コロナウイルス不活化ワクチンを条件付きで承認した。中国国産ワクチンの承認は初めてとなる。

 

これに関連し、香港英字メディアのサウスチャイナ・モーニング・ポストは1日、「中国ワクチンの国際的な注文が急増」とする記事を掲載した。

中国国営新華社通信系の参考消息が3日付で伝えたところによると、サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事は、「中国当局が同国初となる新型コロナワクチンを承認したことを受け、パキスタンやハンガリーなどの国々が、中国ワクチンを注文するための列に並んでいる」とした。

そして、ラテンアメリカ、中東、アジアの少なくとも10カ国が、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)や康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)を含む中国のワクチン開発業者と調達契約を締結しているとし、各国の状況について次のように伝えている。

パキスタン政府は20年12月31日、シノファームの新型コロナワクチンを60万人(120万回)分購入することを決めたと発表した。同国でワクチン調達が公式に確認されたのはこれが初となる。

ハンガリーも中国の新型コロナワクチンへの関心を表明した。政府高官は、中国から直接または欧州連合(EU)の調達メカニズム経由での入手を計画していると述べている。

ウクライナは、シノバック・バイオテックから180万回分を調達する契約に署名している。シノバック・バイオテックはシノファームと同様に、20年7月に中国で緊急使用許可を取得している。

記事はまた、専門家のコメントを引用し、「ワクチンの供給は、中国の国際的地位を測る上での重要なベンチマークの一つ」(シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院のDrew Thompson氏)、「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利であり、世界の公衆衛生の勝利でもある」(オーストラリア国立大学の客員研究員、Dominic Meagher氏)とも伝えている。【1月5日 レコードチャイナ】

*****************************

 

「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利」という状況で、アメリカ・トランプ大統領がやっているのは「アメリカのワクチン需要を満たさない限り、ワクチン輸出を認めない」というアメリカ第一主義。

 

これでは勝負になりません。もし「覇権」が中国に移るとしたら、その最大の功労者はトランプ大統領でしょう。

(日本の「中国嫌い」の方々は、中国に厳しい対応を見せているということでトランプ支持のようですが、現実は逆でしょう。コロナ蔓延を放置してアメリカ経済を疲弊させ、中国の国際的地位を高めているのがトランプ大統領です。)

 

中国共産党はうまく機会をとらえたとも言えますし、そうしたワクチン外交を推進できる技術力・経済力を中国が有しているということでしょう。(もちろん、中国ワクチンが実際に有効性を発揮し、安全面でも欧米産にひけをとらなければ・・・という、今後の条件付きの話ですが)

 

中国のお膝元、東南アジアASEAN諸国はワクチン外交の格好の舞台ともなっています。

 

****中国外相がASEAN歴訪 米新政権にらみ「ワクチン外交」展開か****

中国の王毅(おうき)国務委員兼外相は、11日からミャンマーなど東南アジア諸国連合(ASEAN)4カ国を歴訪。米国の新政権発足を目前に控え、経済関係や新型コロナウイルスのワクチンをてこにASEANに対する影響力拡大を狙う。

 

国営新華社通信によると、王氏は11〜16日にミャンマー、インドネシア、ブルネイ、フィリピンを訪問する。南シナ海問題で対立が続くフィリピンやインドネシアとは、同問題が議題となる可能性がある。

 

中国としては、今月20日に予定されるバイデン米次期大統領の就任を前に、米国の「対中包囲網」を切り崩すためにもASEAN各国との距離を縮めておきたいとの思惑がある。

 

昨年11月には、中国やASEANなど15カ国が地域的な包括的経済連携(RCEP)に署名しており、王氏は貿易関係の強化を呼び掛ける見通しだ。

 

コロナ禍に直面するアジア各国にとってワクチン確保は喫緊の課題であり、中国は「ワクチン外交」も展開するとみられる。

 

王氏は、今月4〜9日にはナイジェリア、コンゴ民主共和国、ボツワナ、タンザニア、セーシェルのアフリカ5カ国を訪問した。中国外務省によると、1991年から中国の外相は毎年最初の訪問をアフリカとしてきた。

 

中国の通信社「中国新聞社」が10日に配信したインタビューで、アフリカ歴訪を終えた王氏は「ワクチンを必要としているアフリカの国とともに協力したい」と強調した。【1月11日 産経】

*************************

 

****中国外相がミャンマー訪問、関係強化を議論 ワクチン供与も約束****

中国の王毅外相はミャンマーを訪問し、同国の当局者らと協力関係の強化について議論したほか、新型コロナウイルスワクチンの供与を約束した。ミャンマーの国営テレビが11日伝えた。

王外相は、ミャンマーのウィン・ミン大統領、アウン・サン・スー・チー国家顧問と会談。12日には首都ネピドーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官と会談する予定。

国営放送局「ミャンマーラジオTV局(MRTV)」によると、外相とミャンマー当局者らは、安全保障や域内の協力強化のほか、ミャンマーの和平や、ロヒンギャ難民の帰還問題における中国の役割について協議した。

外相はまた、中国製の新型コロナワクチン30万回分の供与をミャンマーに約束したという。

外相は5日間の予定で東南アジアを歴訪しており、ミャンマーが最初の訪問国。ほかにインドネシア、ブルネイ、フィリピンを訪問する。【1月12日 ロイター】

*********************

 

次の訪問国インドネシアでもワクチン接種が始まっており、まずジョコ大統領が第1号として接種しましたが、そのワクチンも中国製。

 

****インドネシアでワクチン接種開始、ジョコ大統領が第1号****

インドネシアで13日、新型コロナウイルスワクチンの接種キャンペーンが始まり、ジョコ大統領が最初に接種を受けた。

使用するのは11日に緊急使用を承認した中国シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)製ワクチン。集団免疫を獲得するには人口2億7000万人の3分の2が接種を受ける必要があるとして、1億8150万人への接種を目指している。

2月までに約150万人の医療従事者に接種する予定。

ジョコ大統領は、大規模なワクチン接種は感染拡大に歯止めをかける上で重要で、経済回復の加速を助けると述べ、国内各地で直ちに接種が始まるだろうと述べた。

シノバックからは2022年1月までに追加で1億2250万回分調達する見通しで、今年第1・四半期中に約3000万回分が届く予定。

このほか、英アストラゼネカや米ファイザーのワクチンを約3億3000万回分調達することになっている。

インドネシアでは12日に1日あたりのコロナ死者が302人と最多を記録し、累計で2万4645人となった。累計感染者数は84万6765人。【1月13日 ロイター】

**********************

 

インドネシアと並んで感染拡大が深刻なフィリピンでも、中国・シノファームが今週、緊急使用許可を申請する予定とされています。

 

また、タイでも。

 

****タイ、中国からコロナワクチン200万回分購入****

タイのラチャダー政府副報道官はメディアに対して、内閣が中国から新型コロナウイルスワクチン200万回分を調達するための13億バーツ(約44億9000万円)の予算を承認したことを明らかにしました。最前線の医療従事者や慢性疾患のある高齢者などへの接種を優先する予定です。(後略)【1月13日 レコードチャイナ】

*********************

 

この状況で中国製ワクチンが奏功すれば、東南アジア諸国における中国の存在感は格段に高まりそうです。

 

もちろん、中国の「ワクチン外交」は中国の思惑に沿ってなされるものですが、「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利であり、世界の公衆衛生の勝利でもある」(オーストラリア国立大学の客員研究員、Dominic Meagher氏)ということになるでしょう。

 

ワクチン囲い込み・争奪戦に終始している欧米が、そのことをとやかく言う資格はないでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする