孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナワクチンなどをめぐる日本の事情、世界の事情

2021-01-12 22:46:45 | 疾病・保健衛生

(中国・石家荘市1000万人のPCR検査のため、河北体育館テニス館に設置された「火眼実験室」 設置に10時間、その11時間後には稼働【1月11日 AFP】)

 

【ワクチンには慎重、「健康より世間の目」という日本社会】

1月8日ブログ“新型コロナワクチン 急く様子がない日本の世論と政府 欧米では効率的接種の方法が議論”でも書きましたが、自粛大嫌いの私個人の新型コロナ対策への不満は、一人暮らしの気楽さもあって、乱暴に言えば「自粛・三密回避ばかり言うじゃなくて、出口戦略としてのワクチン接種を急げよ! 副作用? そんなものどんな薬にだってあるだろうが!」というもの。

 

ただ、こうした声は少数派のようで、「ワクチン不安 自粛を続けたい」という自粛大好きの慎重派が多数です。

 

****コロナワクチン、「接種したくない」約3割 民間調査****

調査会社のクロス・マーケティングのネット調査によると、新型コロナウイルスのワクチン接種について「したくない」と答えた人が29%だった。副作用を理由に挙げる人が目立った。行政による副作用の説明が重要になる。

 

同社は18日に全国の20~69歳の1100人に調査した。「接種したい」の回答は「すぐにでも」が8%、「様子を見てから」が50%だった。

 

「接種したくない」は「あまり」が22%、「絶対に」が7%だった。すぐに接種したい人を除いて、接種に慎重な理由を尋ねたところ「副作用が怖いから」が56%に達した。【12月28日 日経】

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先ほどNHKのニュースでもワクチンに関する調査結果を報じていました。数字は忘れましたが、やはり慎重な姿勢の方が多いみたい。

 

世論調査ついでに、もうひとつ興味深い調査結果を。

 

世の中「コロナ、コロナ」と大騒ぎですが、その実態は病気による健康への不安そのものより「世間の目」が怖いというもののようです。

 

****「健康より世間の目」67% コロナ感染で心配なのは―― 朝日新聞社世論調査****

朝日新聞社は、新型コロナウイルスをテーマに郵送方式の世論調査を行った。

 

「感染したら、健康不安より近所や職場など世間の目の方が心配」。この気持ちに「とても」26%と、「やや」41%を合わせて67%が「あてはまる」と答えた。「あまり」23%と「全く」9%を合わせた「あてはまらない」は32%だった。

 

「世間の目の方が心配」な人は現役層に多く、50代以下では74%。一方、60代以上では60%だった。世帯構成でも温度差があり、18歳未満の子どもがいる人だと75%に達した。

 

新型コロナに感染して重症化する不安は「大いに」42%と「ある程度」45%を合わせて87%が「感じる」と答えた。ただ、重症化の不安を「大いに感じる」人でも、66%が「世間の目の方が心配」で、全体との差は見られなかった。

 

背景には、感染者への厳しい視線があるようだ。「自粛要請された外出をして感染したら責められるのは当然」との気持ちがあてはまるのは「とても」27%と、「やや」50%を合わせて77%に上った。

 

マスク着用についても、自分の意識と、他人への視線に分けて尋ねた。自分がマスクをする理由は「感染対策より人の目が気になる気持ちの方が大きい」は、「とても」11%と、「やや」24%を合わせて35%が「あてはまる」と答えた。30代以下の若年層で高めで4割を超え、30代の男性に限ると47%だった。(後略)【1月10日 朝日】

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これはよくわかりますね。

私も、コロナ自体は「まあ、感染したら仕方ないね・・・重症化しても死ぬかも? それは運が悪かったって諦めるしかないね。病気なんてそんなものでしょ。」ぐらいにしか感じませんが、周囲が大騒ぎになるであろうこと、職場などにかける迷惑などの方がはるかに危惧されます。

 

マスクの「感染予防より人目対策」という意識を含め、日本社会が気にしているのはコロナそのもより、「世間」のほう・・・という「いびつ」で息苦しくなるような構造・本音が見えます。

 

こんな「いびつ」な状況を抜け出すために、一日も早くワクチンを・・・と思うのですが、国民の過剰な不安と、万一の場合の責任を回避したい政府の姿勢が絡んで、まったく急ぐ気配がないのは冒頭のとおり。

 

「早ければ2月下旬開始? やれやれ・・・」といった感じ。

ワクチン怖いから自粛していたいと言う人の邪魔はしませんが、接種したい人は早くできるようにしてもらいたいな・・・。

 

【今後課題となる「ワクチンパスポート」】

ワクチンの接種が始まると、接種した人と、まだの人をどう区別するのか、あるいは区別しないのか・・・そのあたりも問題になります。

 

端的に言えば「接種した人だけ飛行機に乗れます、入店できます・・・」ということになるのか、ならないのか。

接種したことを証明するのは「ワクチンパスポート」

 

****「ワクチンパスポート」が航空業界で進行中だが、一筋縄でいかなそうなワケ****

アメリカやイギリスなどで新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まり、日本でも2月下旬からワクチンの接種を開始する目標を掲げています。

 

これに関連して議論されているのが、もしワクチン接種を証明する必要があるとしたら、どうやってすればいいのか? そこで注目されているのが「ワクチンパスポート」という構想です。

 

新型コロナのワクチンが普及すれば、映画館、イベント会場、レストランなどの公共の場所への入場には、もしかしたらワクチン接種が必要条件になると考えることができます。

 

そうだとしたら、ワクチンの接種を証明したり、接種状況を管理したりするものが役に立つでしょう。それがワクチンパスポートです。

 

新型コロナによって多大な影響を受けた航空業界・旅行業界では、ワクチンパスポート構想に早く着手しました。世界の約290の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は、「IATAトラベルパス」のアプリの開発しています。(中略)

 

すでにオーストラリアのカンタス航空やマレーシアのエアアジアなど、国際線の搭乗客にワクチン接種を義務付ける意向を示している航空会社が出始めており、このような航空会社がこのアプリを利用していく可能性もあります。

 

個人情報管理への懸念

しかしワクチンパスポートでは、ワクチン接種のような健康情報を取り扱うものだけに、個人情報の管理に懸念を抱く人もいるでしょう。ワクチン接種に懐疑的な人も少なくありません。

 

またワクチンパスポートによって、「ワクチンを接種した=コロナ前のように自由に生活できる」といった安易な考えが人々の間で生まれると、社会の不公平を浮き彫りにする可能性があるという指摘もあります。

 

このような反論があるため、ワクチンパスポート構想は一筋縄ではいかないでしょう。【1月12日 GetNavl web】

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「ワクチンを接種した=コロナ前のように自由に生活できる」といった安易な考え・・・別にワクチン接種したからと言って予防をなおざりにする気もありませんが、さりとて、「自分の意思で接種しない人」と一緒にされて、いつまでも活動の自由が制約されるのは御免だね・・・という気も。

 

【危機的感染状況、政治的思惑もあってワクチン接種が進むイスラエル】

海外に目を転じると、ワクチン接種が一番進んでいるのはイスラエル。

イスラエルなどで接種が進んでいるのは、それだけ危機的状況が深刻だ、日本のように悠長に構えていられないという現実もあります。

 

****イスラエルのワクチン接種、世界最速ペース 3週間で国民の2割に****

中東のイスラエルが、世界最速のペースで、新型コロナウイルスワクチンの接種に突き進んでいる。

 

昨年12月20日に3週間の間隔で2回必要とされる米製薬大手ファイザー製のワクチン接種を開始。約3週間で国民の約2割が1回目の接種を終え、今月10日には2回目の接種が始まった。

 

旗振り役は「パンデミック(世界的大流行)を克服する最初の国になる」と強調するネタニヤフ首相。その理由とは――。

 

人口約900万人のイスラエルは、医療従事者や介護従事者、高齢者、感染すると重症化するリスクのある基礎疾患を持つ人たちへのワクチン接種を積極的に展開。すでに約200万人が1回目の接種を終えた。

 

英オックスフォード大が運営する統計サイト「Our World in Data」によると、100人当たりの摂取数は19・55で、先にワクチン接種を始めた英国1・94、米国2・02の約10倍だ。

 

背景にはいくつかの理由がある。ロイター通信はその一つとして、早期にワクチンを入手するため、製薬会社と高値で契約を結んだことを挙げた。

 

政府は支払額を明らかにしていないが、当局筋は1本当たり約30ドルとし、他国の2倍に当たる額で購入しているという。さらにハイテク化された流通網があるイスラエルは、他国のモデルケースになると製薬会社に申し出て、情報の迅速な提供も約束したとされている。

 

また、汚職疑惑の裁判が進行中のネタニヤフ氏にとって、パンデミックからの早期脱出は自身の政治的な生き残りと直結する問題でもある。

 

ネタニヤフ氏は3月23日投開票の総選挙をにらみ、ワクチン接種の開始を2度も前倒しし、さらに当初計画の1日6万人の接種を2・5倍増の15万人へと大幅に拡大した。

 

これに伴い、ワクチンの在庫不足問題が生じると、自ら製薬会社に掛け合うトップセールスを仕掛けるなど、ワクチンの早期納入に躍起となっている。(中略)

 

ワクチン接種が順調に進む一方で、新型コロナ流行の第3波は深刻だ。1日の新規感染者数が8000人(日本の人口で換算すると11万人に相当)を超える日が続き、感染者数は50万人に迫る。英国由来に続き、南アフリカ由来の変異株も見つかった。

 

こうした状況を踏まえ、政府は12月下旬からの都市封鎖(ロックダウン)をさらに強化して延長。この余波で13日に予定されていたネタニヤフ氏の汚職事件の公判は無期限延期された。【1月11日 毎日】

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イスラエルでワクチン接種が早く進んでいる理由としては、上記の他“危機意識の強い国民性に加え、個人情報を把握する国民皆保険制度が奏功している。”【1月12日 共同】とも指摘されています。

 

ネタニヤフ首相は、ファイザー社CEOとの個人的パイプを使って供給を急がせている「政治力」を、汚職疑惑みそぎの総選挙に向けてしきりアピールしているとか。

 

汚職疑惑云々はともかく、個人的には、菅首相にもそういう政治力を期待したいのですが・・・。

 

【接種を急ぐイギリス なかなか進まないアメリカ】

欧州で比較的早いのがイギリス。変異型ウイルスの蔓延で状況が切迫している事情があってのことです。

 

****英国で200万人がワクチン接種 「秋までに全成人に」****

英国でこれまでに新型コロナウイルスワクチンの接種を済ませた人は、約200万人に上っていることが分かった。ハンコック保健相が10日、英スカイ・ニュースとのインタビューで語った。

 

ハンコック氏によると、1月に入って直近7日間に接種を受けた人数は12月全体の合計を上回った。1日当たりの接種人数は20万人に達する勢いだという。

 

同氏は「すでに81歳以上の高齢者のうち約3分の1に接種した」と述べ、最もリスクの高いグループへの接種は「2月半ば」までに完了するとの見通しを示した。

 

また英BBC放送とのインタビューでは、19歳以上の全国民に接種できるだけのワクチンをすでに発注していると説明。「秋までに全員が接種を受けることを切に願っている」と述べた。

 

一方で英政府の医療責任者、ウィッティ主席医務官は10日付の英紙サンデー・タイムズへの寄稿で、感染力の強い変異種による感染が全国で拡大し、「悲劇的な結果」を招いていると指摘。感染者と死者、入院患者が急増し、一部地域では医療体制が未曾有の危機に直面していると訴えた。

 

ハンコック氏とウィッティ氏はそれぞれ、政府によるロックダウン(都市封鎖)措置のルールを守ることが重要だと強調した。ハンコック氏はさらに、「あらゆる違反行為は死を招く恐れがある」「これらのルールは必要最小限のラインだ」と語った。

 

米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、英国は西欧で初めて感染者が300万人を突破し、死者は8万1000人に達している。【1月11日 CNN】

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“感染拡大が深刻な英イングランドで、ワクチン接種のための大型センターが今週中に7カ所開設され、多くの人々への接種が加速される予定となった。”【1月11日 BBC】とも。

 

深刻な感染状況にもかかわらず、なかなかワクチン接種が進まないアメリカでは、NY州クオモ知事が怒っています。

“「ワクチン打ったらボーナス」「打たなかったら罰金」接種進まぬアメリカで対応に「アメ」と「ムチ」”【1月11日 FNNプライムオンライン】

 

罰金は、NY州のワクチンを使いきれなかった病院に対するものです。

ボーナスは、テキサス州の病院で、ワクチン接種した職員向けのもの。

 

アメリカでもワクチンの安全性を不安視する人は多く、年末、バイデン次期大統領やハリス次期副大統領が、カメラの前でワクチンを接種してアピールするパフォーマンスも。

 

【ワクチン大国インドでは】

欧米先進国だけでなく、“あの”インドでも。

“感染者2位のインド、16日から接種開始 ワクチン大国も国内普及に「壁」”【1月12日 産経】

 

“インドの感染者は1千万人を超えて増え続けており、政府はワクチンを感染対策の「切り札」(政府関係者)と期待する。国内では昨年11月以降、農政改革に反発する農業従事者による抗議活動が拡大し、政権には逆風が吹いている。モディ政権としては、新型コロナの押さえ込み抑えこみを成功させ、政権浮揚につなげたい局面でもある。”【同上】という事情も。

 

なお、“あの”インドという失礼な言い方をしましたが、ワクチンに関して言えば、インドは世界で流通する感染症ワクチンの6割を製造した実績を持つワクチン大国で、今回使用している2種のワクチンも、ひとつは国産、もうひとつのアストラゼネカとオックスフォード大が共同開発したワクチンも、国内でライセンス契約を結んでいる地元企業が生産しています。

 

【「やる」と決めるとトコトンやる中国】

接種者の人数で言えば、やはり中国。

 

****国内で900万人が接種完了=国家衛生健康委****

中国国家衛生健康委員会の曽益新副主任は9日の記者会見で、去年12月15日から、国内でコロナワクチンの大規模な接種作業が正式に始まり、これまで合わせて900万人近くがコロナの予防接種が完了したことを明らかにしました。

また、大規模な接種作業を行うため、全国で2万5392カ所の接種ステーションが設置されたということです。【1月11日 レコードチャイナ】

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中国という国は、政治体制の違いもあって、「やる」と決めるとトコトンやります。

 

****河北省石家荘市で全住民を対象とした2回目のPCR検査実施へ、2日で完了目指す―中国****

河北省石家荘市が10日に開いた新型コロナウイルス対策をめぐる6回目の記者会見によると、今回の感染拡大が判明して以来、同市で確認された感染者と無症状感染者は合わせて369人で、間もなく全住民を対象とした2回目のPCR検査が始まるという。中国新聞社が伝えた。(後略)【1月11日 レコードチャイナ】

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石家荘市ので1回目の検査人数は1025万1875人です。

 

対応には最新技術も駆使されています。

 

****石家荘の防疫の正念場、PCR検査の「火眼」がわずか21時間で稼動****

(中略)8日、PCR検査プラットフォームの「火眼」実験室(エアドーム型)が、わずか10時間で河北体育館テニス館に建設され、完成から11時間後に運用を開始しました。この「火眼」は、1日最高100万人分のサンプルを測定できるということです。

「火眼」実験室は、幅4〜5メートル、高さ3〜4メートル、長さ約10メートルの半円筒状で、12の実験室(エアドーム版)と3つの負圧硬質エアドームで構成されています。エアドームを膨らませるのに約50分しかかからず、内部はモジュール化されています。【1月11日 レコードチャイナ】

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【「時間が止まった世界」「デジタル時代の生きた化石」】

一方、日本では・・・

 

****日本の外出自粛呼び掛け方法、中国で驚きの声****

中国SNSの微博(ウェイボー)で、(中略)投稿者が取り上げたのは、東京都や新宿区の職員らが9日夜、新宿の繁華街に出て、「緊急事態宣言発令中」「不要不急の外出自粛」などと書かれたプラカードを掲げて道行く人に夜間の外出自粛などを呼び掛けるというもの。

投稿者はその様子を伝えた動画を添えて、「日本式だ」と感想をつづった。

ウェイボー上では、埼玉県の大野知事らが「おうちに帰ろう」などと書かれた横断幕を持って駅前の商店街で呼び掛けを行う様子も伝えられている。

これについて、ウェイボーユーザーからは「形式主義」「まるで中国のどこかの村。でもこれほどじゃない」「宣伝カーを何台か走らせれば済む話」「時間が止まった世界」「デジタル時代の生きた化石」などの声が上がっていた。

また、「緊急事態宣言下なのに人出が多いな」との感想も寄せられていた。【1月11日 レコードチャイナ】

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もちろん、「強制はしない」という日本の事情(政治的に誇るべき点)によるもので、中国の政治体制を賛美する気はさらさらありませんが、自粛を訴えるだけでない検査態勢などについては参考にすべき点は多いようにも。

 

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