孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカでの死刑執行失敗の意外な理由  ブルネイの石打ち刑に国際的批判

2014-05-11 22:38:51 | アメリカ

(ブルネイの親子 ブルネイは立憲君主制ではありますが、国王の権限が強く、絶対君主制の一種であるとされています。“死刑制度は存在しているが、1957年以降、執行が行われていないため事実上廃止の状態となっている。”【ウィキペディア】とのことですが・・・・  写真は“flickr”より By H.L. TAM https://www.flickr.com/photos/hltam/6111876691/in/photolist-bEvswN-m3jCG2-mdKEDu-7dR33E-nozDFw-akXhYZ-bjUeZS-hitDjR-8Jg2ps-iatUhL-hnucts-khA1nk-bKPBLP-9YRLbT-3tgEZ-nca6TL-hpYHH5-aSy2ee-hLcSDM-hnvpXF-ab33Ut-54Nrf9-fu7S1v-bTq94k-aj5Y1k-noKBBE-41u6Vy-iejvMS-8cw1yF-hvgsEq-hpYcC6-mSdSST-5HFQAN-2RgMn-7HHtVH-aiQS5Q-bxoiXJ-fofRLK-79VbTw-7HMpH9-bxodTC-6xGTGP-5PsHAA-asbFQG-efJVE7-7HHugV-aSy1SX-5PsHoG-fpJEW1-brwcPj)

死刑制度の現況
【ウィキペディア】によれば、2012年1月時点において
あらゆる犯罪に対する死刑を廃止 ・・・97か国
戦時の逃走、反逆罪などの犯罪は死刑あり。それ以外は死刑を廃止 ・・・7か国
法律上は死刑制度を維持。ただし、死刑を過去10年以上実施していない。もしくは、死刑を執行しないという公約をしている国・・・48か国
過去10年の間に死刑の執行を行ったことのある国・・・42か国
となっています。

国別にみると、“西洋文化圏であるヨーロッパ、南米、カナダやオーストラリアなどの国で死刑は廃止され、またこれらの国が中心になって自由権規約第2選択議定書(死刑廃止議定書)が国際連合総会で採択された。
一方で、日本を含むアジア諸国や宗教的に応報が原則とされる中東およびアフリカ諸国の大部分、そして欧米文化圏では例外となるアメリカ合衆国の32州などで死刑制度が存置されている。”【ウィキペディア】となっています。

日本は死刑制度を維持し、実際に刑を執行している少数派になりますが、国連では日本など死刑制度がある国に執行の一時停止や死刑に関する情報公開を求める決議案が採択され、圧力も強まっています。

もっとも、内戦などで日常的に犠牲者が出ているアフリカの国が“死刑を過去10年以上実施していない。もしくは、死刑を執行しないという公約をしている国”に入っていたり、犯罪による犠牲者が多い南米諸国が死刑廃止国になっていたりと、その社会における命の重さと死刑制度の現状とは必ずしもリンクしていないようです。

日本などで死刑が支持されている理由としては、犯罪の抑止効果、罪に対して等しい責任を取らせる応報、被害者遺族の感情などが挙げられます。

死刑制度の是非については多くの議論があるところですから、最近見たトルコの死刑制度復活に関する記事だけあげて、それ以上はここではパスします。
なお、死刑の犯罪抑止効果については統計上証明されていないとされています。

****子どもの殺害事件増、死刑復活を求める声 トルコ****
トルコでは子どもが犠牲となる残虐な殺人事件が相次いだことを受け、廃止された死刑制度の復活を求める声が強まっており、子どもを殺害した犯人に対する刑の厳罰化に政府が乗り出している。

トルコでは欧州連合(EU)加盟を目指し、加盟条件の1つとして求められていた死刑廃止を10年以上前に決定し、その2年後に憲法に反映させたが、残虐な殺人事件が続いていることからその復活を望む声が上がっている。

同国のイスラム系政党、至福党(のユスフ・イギタルプ副党首は、死刑を廃止したことによって犯罪が急増しており、死刑制度の復活は「絶対必要」だと語った。(後略)【5月6日 AFP】
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薬物注射による死刑執行の失敗の背景に欧州製薬会社の輸出規制
今日取り上げるのは、死刑の方法に関する話題です。

****死刑執行の薬物注射に失敗、40分もだえ苦しみ死亡 米国****
米オクラホマ州で29日、死刑執行の薬物注射に失敗したため刑の執行中止が命じられたが、死刑囚は苦しみながら約40分後に心臓発作で死亡した。

殺人と強姦の罪を犯したクレイトン・ロケット死刑囚に対する刑の執行は、3種類の薬物を段階的に注射する方法で行われたが、試験が行われていなかった新しい薬物の組み合わせが用いられていた。

同州矯正局の報道官によれば、注射は29日午後6時23分に開始されたが、その3、4分後「静脈に障害」が起きたため、矯正局のロバート・パットン局長が執行中止を命じた。
しかしロケット死刑囚は、約40分後の午後7時6分に「ひどい心臓発作」によって死亡した。

薬物は鎮静剤、麻酔剤、致死量の塩化カリウムの3種類すべてが注射されたが、体内に吸収されていかなかったという。

現場にいた地元紙タルサ・ワールドの編集者によると、すでに意識不明となったことが宣言されていた執行開始から約13分後、ロケット死刑囚はもだえ苦しみ始め、時に理解できない言葉を発し、死刑用の担架に縛られた体が動くなどした。

「非常に苦しんでいるように見えた。時々、担架から逃げ出そうとするかのように、頭や肩が担架から起き上がっていた」という。その後、死刑執行室のブラインドは閉められたという。

この日はオクラホマ州で80年ぶりに1日2回の死刑が執行される予定だったが、ロケット死刑囚の刑執行の失敗を受け、次に控えていたチャールズ・ワーナー死刑囚の刑の執行は14日後に延期された。

ワーナー死刑囚を担当するマデリン・コーエン弁護士は声明を発表し「クレイトン・ロケット氏は拷問されて死んだ。今夜起きた事態が究明されるまで、オクラホマ州では死刑の執行は許可されない」と述べ、独自調査と検視による原因究明を訴えた。【4月30日 AFP】
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この事態を受け、オクラホマ州最高裁は5月8日、死刑執行を今後6か月間、停止することに同意しました。
この判断に、州当局も同意しています。

アメリカでは、死刑執行の失敗例が数多く報告されています。

****米国の死刑、執行失敗例では中世並みの悶絶****
米国の死刑といえば、医学処置による人道面にも配慮したものだと思われているが、ときに中世の拷問とも違わぬ陰惨な最期を悶絶しながら遂げる死刑囚もいる。

絶叫、体が焦げる匂い、あまりの残酷さに立会人たちは気絶する・・・「犬猫の殺処分のほうがもっと人道的です」。1992年にアリゾナ州で死刑に立ち会った記者カーラ・マックレーンは語った。

このとき刑を執行されたドナルド・ユージーン・ハーディング死刑囚は、ガス室のなかで死ぬまで10分以上、のたうちまわり、もがき苦しんだ。(中略)

デービス死刑囚は、約160キロの彼の体躯(たいく)にあわせてしつらえられた特製の電気椅子にくくりつけられていた。処刑が執行され死を宣告されるまでに、口からあふれ出した血が白いシャツにぐっしょりとこぼれ、電気椅子に彼を縛り付けていたストラップのバックルの穴からもしたたっていた。(中略)

「それじゃ、効かないよ!効かないって」。ジョセフ・クラーク死刑囚は2006年5月、執行官が22分かけて探し出した静脈が、注射が始まったとたんに破裂すると、すすり泣きながら叫んだ。(後略)【2009年10月18日 AFP】
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この話題を取り上げたのは、その非人道性云々の話ではなく、薬物注射による死刑執行が最近失敗した背景に、意外な理由があるとの記事を見たからです。

****死刑大国アメリカをEUが締め上げる****
死刑反対のEUが死刑用薬物を輸出規制 その場しのぎの薬で死刑囚が苦しむ事態に

相手国の政権に政策変更を迫るため、経済制裁という手段に出るのは果たして有効か・・・ロシアやシリア、イラン情勢のおかげで、最近そんな議論が盛んだ。

こうした制裁を発動する側であるアメリカだが、死刑という人権問題に関してはアメリカもある意味「制裁下」に置かれている。

それは先週オクラホマ州で死刑が執行された際に起きたひどい失態のせいで、自明のものとなった。

クレイトン・ロケット死刑因に薬物注射が行われたが、薬物が効かなかったために中断された。だがロケットはもだえ苦しみながら40分後に心臓発作で死亡。注射には前例のない薬物の組み合わせが用いられていた。

同州が新たな薬物を使用したのは、ここ数力月でアメリカのさまざまな州が、薬物の供給先確保に苦心しているせいだとの指摘もある。

というのも、死刑反対を叫ぶ製薬会社(多くが欧州の企業)が販売を拒否しているためだ。薬物の人手が難しく
なり、銃殺やガス室など昔の処刑方法を検討する州まで現れた。

足並みがそろわないことも多いEU諸国だが、死刑反対では結束している。死刑に用いられる薬物に対し、EUは05年に輸出規制を開始した。(中略)

こうした輸出規制がアメリカの死刑の現状に影響を及ぼしているのは確かだ。何しろ数々の州が、効果にばらつきのある新たな混合薬物に頼らざるを得ない危険な状況に追い込まれているのだから。

一方でこの規制が、アメリカでの死刑制度廃止という最終目標のために効果を挙げているかは疑問が残る。(中略)
 
アメリカは今でも世界の民主主義国の中では執行数トップの死刑大国だが、年間の執行数は99年以来おおむね減少を続けている。国民の問では死刑支持が多数派を占めるものの、その支持率は死刑制度が復活した76年以降で最低に落ち込んでいる。

そんななか、死刑を廃止するべく打ち出された輸出規制のせいで各州が未試験の危険な混合薬物を使わざるを得なくなり、これまで以上に残酷な死刑を招いているというのは、なんとも皮肉なことだ。(中略)

欧州に倣い、アメリカが近々死刑廃止の道を選ぶ可能性は低い。それでも、EUの規制で結果的に「残酷な死刑」への注目が高まったことで、死刑減少に向けた動きは加速しそうだ。【5月13日号 Newsweek日本版】
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アメリカの薬物注射による死刑の失敗が、欧州製薬会社の輸出規制の影響・・・実に意外な話です。

ブルネイ国王 シャリアに基づく刑法を導入
死刑方法に関して、世界の注目を集めている国があります。
ボルネオ島の小国ブルネイです。

****ブルネイがイスラム刑法施行、手足切断や石打ちも****
ブルネイは東アジアの国として初めて、イスラム教のシャリア法に基づく刑法を導入した。
強姦や姦通、同性間の性行為などの罪に問われた者に対し、むち打ちや手足切断、石打ちによる死刑などの厳罰を定めている。

シャリア法に基づく刑法は、ボルキア国王が4月30日の式典で第1段階の施行を宣言した。同国ではこれまでにも、アルコールの販売禁止などイスラム教の厳格な教えに基づく民法が施行されていた。

新しい刑法の大部分は、イスラム教徒だけでなくキリスト教徒や仏教徒にも適用される。ブルネイは人口の約70%をマレー系のイスラム教徒が占める。

同法は2013年10月に発表され、各国の人権団体や同性愛者団体が強く反発してきた。国連難民高等弁務官事務所の広報は先月ジュネーブで開いた記者会見で、「国際法の下では石打ちによる死刑は拷問などの残虐な処罰に当たるとして禁止されている」と指摘した。

さらに「女性に対する根深い差別や偏見のため、石打ちによる死刑を言い渡されるのは女性の方が多いことが分かっている」との懸念も示した。【5月2日 CNN】
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イスラム社会でのシャリアに基づく石打ち刑は、しばしば問題になります。
特に、姦通罪に問われた女性が対象になることが多いためでもあります。

****ブルネイ系ホテルをボイコット、イスラム法導入に著名人ら反発****
・・・・原油産出で潤うブルネイの財務省傘下の政府系ファンド「ブルネイ投資庁」は、英ロンドンなどで展開する高級ホテルグループ、ドーチェスター・コレクションを所有しているとされるが、ヴァージン・グループのブランソン会長は前週末、スルタンが基本的人権を尊重するようになるまで、自社の従業員はドーチェスター系列のホテルを利用しないと宣言した。

また英俳優スティーブン・フライ氏や米国のコメディアンでテレビ司会者のエレン・デジェネレス氏も、ドーチェスター系ホテルの利用のボイコットを呼び掛けている。

女性の権利団体フェミニスト・マジョリティ財団も、ブルネイ王家が事実上所有する米ロサンゼルスのビバリーヒルズホテルで予定していた国際賞の授賞式をキャンセルすると発表した。(中略)

イスラム法の施行については第1段階として、わいせつ行為や金曜礼拝の欠席、婚外関係で妊娠した場合などに罰金または禁固刑を科すとしている。
また第2段階として年内に、泥棒や強盗などに対する刑の厳罰化を予定している。この中には手足の切断や公開むち打ち刑が含まれている。
さらに同性間の性行為や不倫をした者に対し、石打ちによる死刑を科すことを含む刑罰を来年末までに導入するとしている。【5月6日 AFP】
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なお、ブルネイ国内においてもソーシャルメディア上ではまれな激しい批判の声も上がっていましたが、ボルキア国王がそうした批判の中止を命じた後、批判の声はほぼなくなったそうです。

なお、日本のネット上では、ブルネイの石打ち刑を支持して「日本もこれぐらいやるべきだ」との声が溢れています。
西部劇で「吊るせ!吊るせ!」とリンチを求めて叫ぶ群衆のようです。
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インド総選挙  宗教対立など、いろんな問題は抱えつつも、待たれる16日の開票結果

2014-05-10 22:43:07 | 南アジア(インド)

(苦戦の国民会議派にあって、存在感を見せているガンジー家令嬢プリヤンカ・ヴァドラ氏 “flickr”より By Pressbrief .in https://www.flickr.com/photos/28101929@N08/13909864498/in/photolist-ncaG6Y-ntHH4f-ntE5bK-ncawtF-nxAdKk-nvR5VL-nrzZxY-nrzRBN-nc8LJ8-nc8FUk-nvpjsX-ntEwj5-nc8Z8j-nc8STU-nc8DMV-nc8Xs3-nvpj7B-nc8EYF-ncc4go-nejGyH-nc8Kt2-ntkNMa-npmHbg-nboK1j-ndrmXz-nboLch-ndr6wB-nboHr7-nboGoq-nvTdG3-ntNL69-nvTegu-nemRb8-nen1UN-nemKNH-ntNKgo-nssQb6-noDUko-noDLxQ-noDD9b-nst4yZ-nssVGX-nqJKRf-nqpSPj-nqq3E1-nqpZxj-nqpW3x-nqJBSu-nqq2Gj-nqq1Ww)

多数派ヒンズー教徒と少数派イスラム教徒の亀裂が拡大
インドでは、有権者約8億1459万人の「世界最大の選挙」が4月7日に始まりましたが、投票は5月12日まで国内各地で9段階に分けて順次行われ、5月16日にまとめて開票されます。

ということですから、現在進行中で結果はまだわかりません。
投票時間終了と同時に、各TV局の結果予測が一斉に流される日本とは随分異なります。(開票率0%で当確が打たれる日本の“早すぎる”選挙速報にも違和感がありますが)

4月10日ブログ「インド 「世界最大の選挙」実施中 新首相の可能性が高いモディ氏の危ない側面」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140410)でも触れたように、“ネール・ガンジー王朝”の与党・国民会議派が敗北し、ヒンズー至上主義的な野党のインド人民党(BJP)がおそらく勝利するものと見られています。

その場合、グジャラート州の州首相として経済運営で実績がある、人民党の党首モディ氏が首相になることが予測されますが、そのヒンズー至上主義的な姿勢に危うさもあることを、前回ブログで取り上げました。

もっとも、BJPが第1党になっても、過半数に届かない場合は各政党間の連立ということになりますが、議席数によっては第1党のBJPが組閣できない場合もあり得ます。

今日は、進行中のインド総選挙に関する様々な話題をとりあげます。

最大の懸念は、BJPのヒンズー至上主義的な姿勢がもたらしている宗教間の緊張の高まりです。
多宗教国家インドにとっては、国家の根幹にかかわる問題です。

****相次ぐヘイトスピーチ=顕在化する宗教の亀裂―印総選挙****
4月7日に始まったインド総選挙が後半戦に突入する中、他宗教の住民を敵視するヘイトスピーチ(憎悪表現)が相次いでいる。

選挙管理委員会が問題発言をした政治家らを処分して沈静化を図るが、憎しみは憎しみを呼び、多数派ヒンズー教徒と少数派イスラム教徒の亀裂が広がっている。

「イスラム教徒に報復を」。ヒンズー至上主義を掲げる野党インド人民党(BJP)のアミット・シャー幹部はこのほど、昨年8~9月に宗教間暴動が起きたウッタルプラデシュ州ムザファルナガルでの演説で、有権者をこう扇動した。

BJP首相候補のナレンドラ・モディ氏の右腕とされるシャー氏の発言に、暴動で60人以上が死亡したイスラム教徒は色めき立った。慌てた選管はシャー氏の選挙活動を一時的に禁止した。

それでも、ヘイトスピーチに歯止めはかからない。別のBJP幹部は東部ビハール州で「モディ氏を批判する者はパキスタンに行け」と発言。さらに、ヒンズー過激派「世界ヒンズー評議会」幹部が、ヒンズー教徒居住地域からイスラム教徒を退去させるべきだと話す映像も流出した。

一方、イスラム教徒の支持を受ける社会党幹部も「暴動の殺りく者の手にこの国を渡すな」と発言し、選管から処分を受けた。【5月1日 時事】 
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こうした流れは予測された事態であり、宗教間の対立からムスリム票は反BJPに殆ど流れるのだろう・・・と思っていたのですが、必ずしもそういうことでもないそうで、やや意外です。

*****インド:総選挙で割れるイスラム教徒 次期首相候補に賛否****
インド総選挙で勝利が予想されるヒンズー教至上主義政党・インド人民党の支持を巡り、人口の1割強を占めるイスラム教徒が割れている。

その多くが人民党の過激思想に警戒心を抱く一方、インテリ層を中心に党の次期首相候補、ナレンドラ・モディ氏(63)の経済手腕に期待が高まっているためだ。

16日の開票を前に、「ムスリム(イスラム教徒)票」の行方が注目されているが、政治アナリストのK・G・スレーシュ氏は「ムスリムは今回の選挙で両極化するだろう」と分析している。

「モディは良くない。危険だと思う」。首都ニューデリー南部のモスク(イスラム礼拝堂)近くの市場で、織物屋の店員、ムシームさん(23)は声を潜めた。

モディ氏は党の支持母体である極右団体「RSS」(民族奉仕団)出身。2002年に自身が州首相を務める西部グジャラート州でヒンズー教徒とムスリムが衝突した際、適切に対応せずヒンズー教徒による虐殺を黙認したと批判されている。だが、世論調査では人民党の大勝が予想され、次期首相に最も近い人物だ。

こうした中、一部の社会活動家らは人民党以外に投票を呼びかけるキャンペーンを展開。だが、与党・国民会議派は失政で支持が伸び悩み、腐敗一掃を掲げる新党・一般人党も浸透しているとは言えない。

結果的にムスリムの「反モディ票」は分散するとみられている。イスラム教の聖職者イジャーズ・フセイン師(70)は「ムスリムの指導者さえまとまっていない」と嘆く。

一方、州首相としてグジャラート州を発展させたモディ氏に期待するムスリムも多い。
インド映画の国民的スター、サルマン・カーン氏は人民党の選挙運動を支援。脚本家の父もモディ氏の公式サイトをつくった。モディ氏の伝記漫画を出版した人気漫画家、ハニフ・アズハルさん(46)は「グジャラート州のムスリムは発展の恩恵を受けた。インテリ層はこのことに気づいている」と話した。【5月9日 毎日】
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“州首相としてグジャラート州を発展させたモディ氏に期待するムスリムも多い”・・・・ヒンズー対イスラムという不毛の宗教対立の枠組みを脱した、建設的な発想と見るべきか、それとも、カネさえ儲けさせてくれれば、その政治姿勢は問わないという無責任さと見るべきか・・・・。

選挙で煽られたマイノリティ同士の対立
一方、インド北東部アッサム州西部では、モンゴロイド系ということでインド社会において差別の対象となってきた少数民族ボド族(大半がヒンズー教徒で一部はキリスト教徒)と、多数派ヒンズーから差別を受けるイスラム教徒・・・というマイノリティ同士の対立が選挙によって噴出しています。

****インド:少数民族がイスラム教徒虐殺34人死亡****
インド北東部アッサム州で今月、少数民族ボド族がイスラム教徒を襲撃し、少なくとも34人が殺害された。

先月に投票があった総選挙でイスラム教徒がボド族の候補を支持しなかったことが背景にあるとみられ、16日の開票を前に治安当局が警戒を続けている。

報道によると、1日夜から2日にかけて、同州コクラジャルなどでボド族の集団がイスラム教徒を無差別に銃撃し、家屋に放火した。被害者には女性や子供も含まれるという。

コクラジャルでは先月24日に総選挙の投票があった。地元紙によると、イスラム教徒の8割はボド族の対立候補に投票したとされ、今回の衝突の要因になった可能性がある。

治安当局者は4日、ボド族の独立国家創設を主張する過激派組織「ボドランド民族民主戦線」が虐殺を主導したと指摘した。

ボド族は州人口(約3100万人)の1割弱を占めるとされ、バングラデシュの公用語・ベンガル語を話すイスラム教徒を「不法移民」と批判している。同州では2012年にもボド族とイスラム教徒の衝突があり、約100人が死亡した。

総選挙で勝利が予想されるヒンズー至上主義政党・インド人民党の次期首相候補、ナレンドラ・モディ氏(63)は4日、隣接する西ベンガル州で移民について「インドの若者の生計手段を奪っている」と演説し、強硬姿勢を示した。【5月5日 毎日】
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****イスラム教徒を少数民族が殺害 インドアッサム州でマイノリティー間の衝突再び****
・・・・コクラジャルは、ボド族が主導して自治を行う「ボド地域自治区」(約88万人在住)の中心都市だ。

付近では、ボド族とイスラム教徒というインドにおける民族と宗教の“マイノリティー間”の衝突がたびたび起きてきた。12年に103人が死亡した事件の以前にも、08年10月に64人が殺害されている。

 ■総選挙で対立再燃
対立の根は、もともとボド族が多く住んでいた地域で、ベンガル系などのイスラム教徒住民が増えてきたことにある。この地域には、03年に「ボドランド地域評議会」と呼ばれるボド族中心の自治組織と、ボド地域自治区が作られた。しかし、現在はボド族の占める割合は30%程度しかないとされる。

多数派からの陥落で自治を主導する立場を脅かされているボド族は、イスラム教徒の人口増はバングラデシュからの不法移民のせいだと訴えてきた。

今回の襲撃は、総選挙でイスラム教徒らがボド族候補に投票せず、別の独立系候補を支持したことにボド族住民が腹を立てたのが原因とみられ、現地の警察はボド族居住地域の解放を訴える反政府武装組織ボドランド民族民主戦線(NDFB)の仕業とにらんでいる。

イスラム教徒側は、NDFBだけではなく、ボドランド地域評議会を主導する地域政党のボドランド人民戦線(BPF)が関与したと主張している。(後略)【5月10日 産経】
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ミャンマー西部ラカイン州において、ミャンマー全体においては少数民族の立場にある仏教徒・ラカイン族が、バングラデシュからの不法移民であるとしてイスラム教徒ロヒンギャと激しく衝突している状況と似たような感もあります。

BJPモディ氏がバングラデシュからの不法移民取締り強化の主張を繰り返していることが、アッサム州での対立を煽っているという点に関しては、“国民会議派も「モディ氏はインドを分断させるモデルだ」(カピル・シバル連邦政府法相)と非難を強めているが、BJP側は「法と秩序を維持せず、武装集団の取り締まりをできない国民会議派のせいだ」と反論している。”【同上】とのことです。

苦戦の国民会議派の救世主になれるか?ガンジー家「令嬢」】
苦戦が予想されれている国民会議派については、“ネール・ガンジー王朝”の“御曹司”ラフル・ガンジー副総裁(43)の迫力不足については前回ブログでも触れました。

その際に、ラフル・ガンジー氏の妹であるプリヤンカ・ヴァドラ氏が政治的資質の評価が高く、祖母譲りのカリスマ性もあって「インディラ・ガンディーの再来」とも言われているということも紹介しましたが、選挙戦でもこの“ご令嬢”が存在感を見せているようです。

****ガンジー家「令嬢」が救世主に=兄押しのけ、存在感増す―インド総選挙****
インド総選挙で与党国民会議派の敗色が濃厚となる中、名門ガンジー家の「令嬢」プリヤンカ・ガンジー・バドラさん(42)の存在感が増している。

対立する野党インド人民党の首相候補ナレンドラ・モディ氏(63)との舌戦にも一歩も引かず、会議派の「救世主」との呼び声が高い。同党の実質的首相候補の兄ラフル・ガンジー氏より指導者にふさわしいとの声すら上がっている。

「リーダーに必要なのは力ではなく、大きな心だ」。プリヤンカさんは4月下旬、こう言い放った。次期首相有力候補とされるモディ氏が自らを指し、「経済発展には胸囲56インチ(約142センチ)の胸が必要だ」と発言したことを受けたものだった。

ネール初代首相ら3人の首相を輩出したガンジー家出身。祖母と父はいずれも元首相で、母は会議派総裁を務める。実業家と結婚し、政治の表舞台には立たなかった。

しかし、会議派の歴史的大敗が予想される今回の総選挙では各地を行脚し、モディ氏と真っ向から対決。モディ氏がラフル氏の演説におけるミスを指摘し「コメディアンより面白い」とやゆした際には、「何を子どもじみたことを言っているのか」と一蹴し、兄をかばった。

メディアへの露出度はラフル氏を上回る勢いで、会議派巻き返しの原動力になっている。【5月8日 時事】 
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敗戦必至と言われる国民会議派も、負け方次第では選挙後の連立工作で息を吹き返す余地がありますから、ご令嬢の活躍は重要です。

選ぶ側、選ばれる側の資質の問題
****インド:総選挙に映画スター 過去最多24人の候補者****
7日に投票が始まったインド総選挙(改選数543、5月16日開票)で、映画スターの候補者が乱立している。インドでは独立以降、元女優の州政府首相が誕生するなど映画界から政界入りする例は珍しくない。

だが、今回は映画界からの候補者数が前回(2009年)の約5倍に上っており、「セレブに貧困問題が理解できるのか」などと批判も上がっている。(後略)【4月19日 毎日】
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このあたりは、日本の選挙でも“タレント候補”がしばしば問題になるように、インドだけの話ではありません。
もっと手厳しい批判もあります。

****インド総選挙の争点は政策より女性関係****
インド各州で総選挙の投票が進むにつれて明らかになってきたのは、今回の選挙は激しくも醜い戦いだということだ。ついには政治家の私生活まで争点になり始めた。

国内メディアは、政治家の私生活の暴露や中傷に走り、レベルの低さをさらけ出している。政党間の争いから浮
き彫りになっているのは、インド社会の暗部-偽善、女性蔑視、時代錯誤な国民性だ。
(中略)
インド国内はこうした論争に終始し、肝心の政策論争は下劣なものにすり替わってしまった。
メディアは関係者のプライバシーを顧みずに写真を垂れ流し続けている。

一方の国民も、普通の人間なら誰でも行うようなことをあげつらう。卑しさをむき出しにして相手の女性を非難す
るのは、その女性が自分の人生を選ぶ権利を無視する行為と言っていい。(後略)【5月13日号 Newsweek日本版】
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まあ、このあたりについても、日本も似たり寄ったりのところで、あまりインドをとやかく言える立場にありません。

女性関係が焦点になるのは、昨今のインドにおける女性問題への意識の高まりが関係しているのかもしれません。

****インド選挙の「ウーマニフェスト」 女性の権利が争点に****
インドの首都ニューデリーで2012年12月に女子学生(当時23)がバス車内で集団レイプされ死亡した事件を転機として、インド国内では女性の権利を巡る議論が一気に活発になった。事件後に全国規模で抗議運動が起こり、政治問題と化したのである。

インド最高裁弁護士のカルナ・ナンディ氏によれば、抗議運動がこれほど盛り上がったのは、インド中の女性による「もうたくさんだ」という意思表示に他ならない。
こうした思いは、今回のインド総選挙でも多くの有権者に共有されている。

最近の世論調査によると、90%以上の有権者が、選挙で優先されるべき争点として、女性への暴力の根絶をあげた。さらに、75%の有権者が、政治家が示した女性の権利擁護の公約を不十分だと考えていることも明らかになった。

ナンディ氏は「政治家はこの状況に対処しなければならない」と述べ、政治の側での対応を促す。(後略)【5月4日 CNN】
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インドの場合、メディアや一般国民だけでなく、議員自身の資質にも大きな問題があります。
選挙目当てのばらまきは言うに及ばず、04年総選挙で当選した543人の国会議員のうち、犯罪の嫌疑をかけられた経験のある人物が128人(殺人が84件、強盗が17件、窃盗及び恐喝が28件)いたそうで、犯罪とのかかわりを指摘される議員が多すぎて議会が混乱状態に陥ったとか。【2009年3月18日号 Newsweek日本語版より】

いろんな問題は抱えつつも、まずは16日の開票結果が待たれるところです。
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南シナ海でにらみ合い続く中国・ベトナム 中国漁船拿捕のフィリピン 注目されるASEAN議長国ミャンマー

2014-05-09 22:34:47 | 南シナ海

(「石油空母」とも称される中国石油業界にとっての「戦略兵器」である新型オイルリグ「海洋石油981」
http://www.worldoe.com/html/2014/Platform_0506/8652.html

中越 友好演出も根深い警戒感
南シナ海・西沙諸島(英語名パラセル)近海(ベトナム中部沖約221キロの海域)での中国の掘削活動をめぐる中国とベトナムの艦船同士のにらみあいは依然として続いています。

中国船は「中国海警」と書かれた巡視船や軍の船舶など約80隻で、ベトナム側は海上警察の巡視船や漁業監視船など30隻前後とされています。

****南シナ海 ベトナムは先に撤収しないと反発****
南シナ海で起きた中国とベトナムの当局の船どうしの衝突について、ベトナム側は中国が話し合いの前提として要求した船の撤収に、先に応じることはないと反発し、対立の長期化は避けられない情勢となっています。

中国とベトナムが領有権を争っている南シナ海の西沙諸島周辺の海域では、今月、中国の国有石油会社が海底の掘削作業を進めようとしたのを発端に、両国の当局の船どうしが複数回にわたって衝突しました。

ベトナム当局によりますと、9日は衝突は起きていないものの、依然双方のにらみ合いが続いているということです。

中国政府は、ベトナム側が先に船を撤収させるのが話し合いの前提だと要求していますが、ベトナム政府の関係者は9日、NHKの取材に対し、「中国の主張は受け入れられない。ベトナムの主権を守るため掘削装置の撤去を求め続ける」と述べ、船を撤収させる考えはないと強調しました。

また、ベトナムの国営テレビは、中国の船との衝突で破損した巡視船がベトナム中部の港に戻り、船の前の部分を修理している映像を放送し、修理を終えれば再び現場海域に向かうと伝えています。

ベトナム側が中国側への反発を強めるなか、対立の長期化は避けられない情勢となっています。【5月9日 NHK】
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問題の海域は、ベトナム側が「完全にベトナムの排他的経済水域(EEZ)と大陸棚に属する」としているのに対し、中国側は「中国の領土から17海里の接続水域だ」としています。

“中国は南シナ海の大半を占める「9段線」という国際法にはない独自の概念を根拠に同海での実効支配を強化。背景には南シナ海には豊富な地下資源があることや、海底が深く潜水艦が航行しやすいなど軍事的要衝に適していることがあり、領有権を主張するベトナムやフィリピンなど周辺国に対し、軍事力を背景に強硬姿勢も辞さない。
石油の掘削も2012年6月、南シナ海の9鉱区にわたる開発計画を発表するなど、着々と進めてきた。”【5月8日 朝日】

西沙諸島は、旧宗主国フランスが去った後は、西半分を南ベトナムが、東半分を中国が占領して対峙していましたが、ベトナム戦争末期の1974年、中国側が武力で南ベトナムを排除(西沙諸島海戦)し、そのすべてを実効支配しています。

こうした西沙諸島の領有をめぐる経緯や、近海での漁船妨害の問題で、ベトナムは一時フィリピンと同様に中国と厳しく対立もしましたが、最近は関係を緩和させていました。

“中国は昨年10月、李克強(リーコーチアン)首相が就任後初めてベトナムを訪問し、トンキン湾外での共同開発に向けた作業チーム立ち上げに合意するなど、対立するフィリピンとは異なり、友好的な関係を演出してきた。”

基本的には、ベトナムにとって中国は国境を接する経済関係も強い大国であり、また、1979年にはカンボジアへのベトナムの侵攻を巡って実際に戦火(中越戦争)を交えたこともありますので、中国に対する強い警戒心はあるものの、中国批判デモをときには容認したり、再び抑え込んだりと、対中国関係には慎重で過熱しすぎないような対応をこれまでもとってきました。

“友好的な関係を演出してきた”最近の状況から、今回の衝突については、双方とも“意外感”を表しています。

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中国当局がベトナム沖での掘削活動を行うと表明したのは3日。ベトナム外務省は4日に「許可のない外国の行為は違法であり無効」とする声明を発表。ファム・ビン・ミン外相兼副首相は6日に楊潔チー(ヤンチエチー)・国務委員と電話で会談。報道によると「受け入れられない。国民感情にもダメージ」と訴えた。最近は友好ムードだっただけに、外務省関係者は「なぜいま……」と戸惑う。【5月8日 朝日】
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“「正常な企業活動に対しベトナムが激しく妨害する事案が発生したことは大変意外であり、驚きだ。この海域での掘削作業は10年前から行っている」(中国国境海洋事務局の易先良副局長)

もっとも、両国の間には根深い警戒感が存在しています。

“今年は中国がパラセル諸島を実効支配するきっかけとなった西沙諸島海戦から40年、中越戦争から35年という節目のため反中感情が高まっていた。
一方、中国の専門家が「ベトナムが西沙を釣魚島(尖閣諸島の中国名)のように争いのある国際問題にして突破口を開くことは可能だ」と話すなど、中国側はベトナムに対し警戒心をあらわにしていた。”【5月7日 NHK】

石油開発をめぐる状況を一変させるものになる可能性がある新型オイルリグ
中国側は“の海域での掘削作業は10年前から行っている”としていますが、今回中国が投入したオイルリグは「海洋石油981」と呼ばれ、中国海洋石油が約750億円を投じて建造し、2011年に完成。海上移動が可能なことから「石油空母」と称されるものです。

****中国、南シナ海で周辺国と米国の出方を探る****
・・・・・このリグはありきたりのリグではない。高さ138メートルのプラットフォームは中国初の深海リグで、水深3000メートルでの作業ができる。2年前に鳴り物入りで完成したこのリグは、中国石油業界にとっての「戦略兵器」と言われる。

このリグは、石油開発の大幅な拡大という以前からの中国の目標を実現可能にすることで、石油開発をめぐる状況を一変させるものになる可能性がある。

シンガポール国立大学エネルギー研究所のフェロー、クリストファー・レン氏は南シナ海での中国の石油掘削について、「その意図は以前からあった」とし、「今やそれができるようになったということだ」と述べた。

しかし、安保問題のアナリストは、紛争は石油リグ、それに南シナ海の天然資源の開発をめぐって起きているが、問題はこの対立がもたらす結果がどのような先例として残るかであり、中国の周辺国と米国が、中国に対し紛争海域の戦略資源をほしいままにすることを認めるかどうかだ(と指摘している)。

専門家らは、アジアの一部の同盟国がオバマ政権のアジアでの軸足がぐらついていると不安を抱いている時に、中国は、米国がこれらの同盟国に対する支援の約束を守るかどうかを試しているのだと指摘した。(後略)【5月9日 ウォール・ストリート・ジャーナル】
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対アメリカで言えば、アメリカ国務省のサキ報道官が「中国が争いのある海域で一方的に掘削を始めた。挑発しているのは明らかだ」と述べたことに対して、「最近のアメリカによる事実を顧みない無責任で誤った一連の発言が、一部の国の危険な挑発を助長している。アメリカにはこの問題で言動を慎むよう求める」(中国外務省の華春瑩報道官)と強くけん制しています。

また、菅官房長官や岸田外務大臣が「境界が未確定の海域における中国の一方的かつ挑発的な海洋進出活動の一環だ」と指摘したことに対しても、「日本があわてて出てきて、こんな発言をするのは、事の是非を混同し火事場泥棒をたくらんでいるからだ」と強く反発しています。【5月9日 NHKより】

フィリピン:国内法に基づいて手続きを進める方針
一方、これまで中国と激しく領有権を争ってきたフィリピンが、南シナ海の係争地域である南沙諸島(英語名スプラトリー)付近でウミガメの密猟をしたとして中国漁船を拿捕した件も、対立が深まっています。

****中国船員逮捕 中国と比の対立激化か****
南シナ海でフィリピンの警察が中国の漁船を拿捕(だほ)し、これに中国側が反発している問題で、フィリピン側は逮捕した乗組員についてあくまで国内法に基づいて手続きを進める方針を示し、身柄の即時解放を求める中国側との対立が深まりそうです。

この問題は6日、南シナ海の南沙諸島付近でフィリピンの警察が中国の漁船を拿捕(だほ)し乗組員11人を逮捕したのに対し、中国側が、一帯の海域の主権は中国にあるとして乗組員の即時解放を求めているものです。

フィリピンの国家警察は、8日首都マニラで会見して逮捕の経緯について明らかにし、不審なフィリピンの漁船を見つけ追跡した結果、中国国旗を掲げた漁船に近づき、国際的な取引が規制されているウミガメを洋上で受け渡したことから、中国の漁船の乗組員11人を含む双方の乗組員16人の逮捕に踏み切ったと説明しました。

警察は、現在フィリピンのパラワン島の施設で乗組員を取り調べており、今後の身柄の取り扱いについては、あくまで国内法に基づいて手続きを進める方針を示しました。

フィリピン政府は、警察による一連の行為はフィリピンの排他的経済水域内で行われた正当なものだと主張していますが、中国側は強く反発しており、今後両国の対立が深まりそうです。【5月8日 NHK】
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中国に対し慎重な対応をとってきたベトナムと異なり、フィリピンは中国への一貫した強硬姿勢をとってきました。
フィリピンは南沙諸島の領有権をめぐり国連海洋法裁判所に仲裁を申し立てています。

また、フィリピンは中国との対立にあたりアメリカの後ろ盾を求める姿勢も明らかにしています。

****米軍、比に再駐留へ=新協定調印、中国けん制****
米国、フィリピン両政府は28日午前、新軍事協定に調印した。
フィリピン国内基地の共同使用など米軍の事実上の駐留を認める内容。1992年に全面撤退した米軍が再び拠点を構築することで、軍事力を背景に南シナ海への海洋進出を強める中国をけん制する狙いがあるとみられる。

調印式は、マニラ首都圏の国軍本部(アギナルド基地)で、フィリピンのガズミン国防相とゴールドバーグ米大使が署名。同日午後にはアジア歴訪中のオバマ米大統領がマニラに到着し、アキノ大統領と南シナ海問題などについて話し合う。

協定期間は10年で、フィリピン国軍施設の共同使用や米軍の一時的施設の建設、合同軍事演習の強化などが柱。フィリピン憲法は外国軍の駐留を禁止しているため、米軍はローテーション形式で駐留し、協定にも「常駐」ではないことも明記された。
 
軍の展開地域については、一部の国軍基地内としたが、具体的な場所は付属文書で定めるとした。ただ、これまでの交渉では、対象に冷戦時代に米軍が拠点とし、現在国軍施設があるスービック地区も含まれている。【4月28日 時事】 
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アメリカ側からすれば、フィリピンとの協定は“オバマ政権が掲げるアジア太平洋地域を重視する「リバランス(再均衡)」政策の一環。東西冷戦期にアジア最大の戦略拠点としていたフィリピンに米軍が「回帰」し、南シナ海でフィリピンを含めた周辺国を威圧する中国を強くけん制する。”というものになります。

中国はフィリピンに対し、“華報道官は「ただちに無条件で乗組員と船を解放し、二度と同じようなことを起こさないよう重ねて要求する。中国側はさらなる行動をとる権利を留保する」と述べ、フィリピンに対する報復の可能性を示唆しました。”【5月9日 NHK】と、強い姿勢を見せています。

ASEAN 今年の議長国ミャンマーにとって最初の大舞台
豊富な天然資源が眠るとされる南シナ海では、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張していますが、対立回避のため東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は2002年に行動宣言を結んで自制と協調を目指しました。
しかし、中国側の規制に対する消極的な対応と現場海域での強硬な姿勢で、実効をあげていません。

明日から開催されるASEANの会議では、当然にこの南シナ海問題が焦点にると思われます。

****ASEAN:議長国ミャンマー融和へ重責 11日首脳会議****
ミャンマーの首都ネピドーで11日、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が開かれる。10日には外相会議もあり、今年の議長国ミャンマーにとって最初の大舞台となる。

2015年末に控える「ASEAN共同体」創設や領有権争いが続く南シナ海の緊張緩和に向け、重要なかじ取りを担う。

ミャンマーは1997年、ASEANに加盟し、06年に議長国就任が予定された。だが当時の軍政は、民主化勢力への弾圧などを理由に米欧から批判を受け、辞退した。11年の民政移行を受け、今年の議長国就任が決まった。

テインセイン大統領は昨年のブルネイでのASEAN首脳会議で、域内統合の深化を目指すASEAN共同体の実現に向け「他の加盟国と一丸となり取り組む」と決意を表明。国内では「(民主化)改革の良い手本を加盟国に示し、国際社会に国家の威厳を示す千載一遇のチャンスだ」と演説している。

だが、南シナ海を巡り、中国と対立するフィリピンやベトナム、多額の経済支援を背景に中国寄りの姿勢を示すカンボジアなど、加盟国の間で立場に違いがある。

米国と新軍事協定を結んだばかりのフィリピンは先日、「違法操業」を理由に中国漁船を拿捕(だほ)し、中国と非難合戦。ベトナムは中国の石油掘削を巡って中国と艦船同士の衝突を招くなど、緊張が再び高まっている。今回の一連の会議で、フィリピンやベトナムといった反中派が中国への危機感共有を強硬に訴える可能性もある。

12年のASEAN外相会議では、当時のカンボジアが加盟国間の調整に失敗、共同声明を出せないという異例の事態を招いた。

ミャンマーは軍政時代、米欧の経済制裁を受けて中国との関係を強化したが、国際社会との協調外交に転じた今、各国の利害対立をどう乗り越え、ASEAN統合を主導するか注目される。

ミャンマーでは今年1月の非公式外相会議を皮切りに年内に240以上の関連会議が予定される。8月には米中に北朝鮮も参加するASEAN地域フォーラム(ARF)、11月には日米中露印などが出席する東アジアサミットが開かれる。【5月8日 毎日】
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民主化の努力が国際的に認知され、ようやく手にした“最初の大舞台”で、議長国ミャンマーがどのような議事運営を見せるか非常に注目されます。
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タイ  インラック首相失職・弾劾で、長引く混乱 解決の糸口は?

2014-05-08 22:54:22 | 東南アジア

(5月7日 バンコク郊外で、支持者に手を振る憲法裁から失職を言い渡されたインラック前首相 【5月7日 AFP】)

想定内の首相失職
周知のように、3年前の政府高官人事を巡るタイ憲法裁判所による7日の違憲判決で、反政府デモの辞職圧力に抵抗してきたインラック首相がついに失職しました。

タクシン元首相の実妹であるインラック首相は、タイ初の女性首相として2011年8月に就任。
その直後、タクシン氏の元妻の兄を国家警察本部長官に起用する一方、玉突き人事的に、反タクシン前政権によって起用されていた国家安全保障会議事務局長のタウィン氏を更迭しました。
これが憲法の禁ずる公務員人事への不当介入だと認定されました。

タウィン氏は行政裁判所に地位保全の訴えを起こし、今年3月7日、最高行政裁が手続きに違法性を認めて同氏の復職を命じ、政権も従っています。

また、国家汚職追放委員会(NACC)も、インラック政権の看板政策でもあり、バラマキ政策との批判もあるコメ担保融資制度に絡んで、インラック前首相の弾劾請求を決定しています。

****インラック前首相の弾劾請求=タイ国家汚職追放委****
タイ国家汚職追放委員会(NACC)は8日、インラック前首相について、コメ担保融資制度に絡む職務怠慢で上院に弾劾請求することを決めたと発表した。

インラック氏は、政府高官の更迭人事をめぐる憲法裁判所の7日の違憲判決で首相失職となった。上院がインラック氏の罷免を決議すると、政治職や公職に就くことが5年間禁じられる。

NACCは弾劾請求の理由に関し、首相兼国家コメ政策委員会委員長だったインラック氏はコメ担保融資制度で多額の損失や不正が生じる恐れがあると警告を受けていたのに、制度をやめなかったと説明した。【5月8日 時事】 
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反タクシン派は街頭行動ではインラック首相を辞職に追い込むことはできませんでしたが、憲法裁など反タクシン勢力の牙城とも言われる司法・独立機関によって法的に失職に追い込むという戦略が奏功した形となりました。

ただ、与党・タクシン派もこれまでの司法判断などを踏まえ、失職の判断は想定してところで、直ちに首相代行にニワットタムロン副首相兼商業相が就任すると発表、現選挙管理内閣を存続させて7月20日に予定されているやり直し総選挙を実施する構えを見せています。

“憲法裁による政権排除は初めてではない。2008年、当時のサマック首相は料理番組出演が閣僚の兼職にあたるとして失職判決を受けた。後継のソムチャイ首相(当時)の政権は選挙違反を認定した憲法裁の与党解党命令を受け崩壊した。
現在の憲法裁判事は、06年にタクシン首相を失脚させた軍事クーデター後にできた暫定政権下で選任された。そのため、タクシン派は「中立性を欠くタクシン排除の機関」としてきた。”【5月8日 朝日】

インラック前首相にとっては、就任直後の、右も左もわからない頃の人事問題で、道半ばにして失職を命じられるのは不本意ではあるでしょう。

ただ、かねてより辞意を漏らすなど、精神的に限界に近いのでは・・・という感があり、周囲がなだめすかしてここまでもってきたという状態でしたので、内心は“やっと解放された”という安ど感もあるのでは?
あくまでも個人的な推測ですが。

与党側としても、政権を投げ出されるよりは、今回のような形で中立性を欠いた司法判断でやむなく身を引くことになったという形の方が都合がいいのでは?
担ぐ神輿も、批判が集中するタクシン親族以外の方が担ぎやすいのでは?

内閣総辞職は避けた憲法裁
憲法裁判断の焦点は、首相失職はともかく、内閣総辞職が命じられるかどうかにありました。
下院はすでに解散された状態にあり、更に内閣も総辞職となると「完全な政治空白」が生じることになります。

ステープ元首相らの反政府勢力は、こうした「完全な政治空白」になれば、「憲法解釈により選挙によらない暫定政権を樹立できる」と主張しており、これが政権側が警戒する「司法クーデター」でした。【5月7日 毎日より】

****内閣排除なら決起」 タイ、赤シャツの前議長****
憲法裁判所がインラック内閣を排除する判断を示した場合は決起する――政治危機が続くタイで、政府を支持するタクシン元首相派(赤シャツ)のティダ・タウォンセート前反独裁民主同盟(UDD)議長がこのほど朝日新聞の取材に応じ、今後の展開について語った。

政治危機の焦点はいま、憲法裁判所などが、インラック首相の違法行為を問う訴えにどんな判断を示すかに移っている。
特に注目されているのが、3年前の政府機関人事に関する憲法裁の判決。反政府派は首相だけでなく内閣総辞職にあたると主張している。

ティダ氏は「昨年末の下院解散で内閣はすでに総辞職しており、首相の人事が違憲と認定されても、現内閣は副首相を暫定首相代行に置いて存続しなければならない。首相の失職だけならば私たちは動かない。
しかし、全閣僚を辞職とする判断は法を踏み外しており、その時はバンコクでの抗議デモを開始する」

「法に従うというのが赤シャツの大原則だ。法から逸脱するものとは徹底的に戦う。抗議デモは10万人規模を目指し、平和的に行う」と語った。

憲法裁判決は5月上旬にも出る可能性がある。【4月26日 朝日】
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今回の憲法裁判断は首相と人事を承認した9閣僚が即時失職というものではありますが、全閣僚失職・内閣総辞職という極端な判決は避けたものとなっています。
憲法裁は「抜き差しならない対立を避けた」(政治学者のユタポン氏)とも指摘されています。【5月8日 朝日より】

政権側にとっては態勢立て直しが可能な判断とも言え、赤シャツ隊も司法判断批判の行動はとるにしても、決定的な行動は自制するものと思われます。

****タイ:7月20日総選挙…首相ら失職で実施も混とん****
タクシン元首相派と反政府側の対立による政治混乱が続くタイで7日、インラック首相と9閣僚が憲法裁判所の違憲判決で失職した。

内閣総辞職には至らずタクシン派政権は存続するが、憲法裁など政府・行政をチェックする「独立機関」を巻き込んだ反政府側の攻勢は続く。

政権与党はあくまで総選挙実施による対立解消を目指すが、再び反政府デモ隊が選挙を妨害すれば同じ混乱が繰り返されるのは必至で、タイ政治の正常化への道筋は見えないままだ。

法律の専門家らは判決前、内閣総辞職の可能性もあると指摘していた。その場合、反政府側は現在空席の下院に加え政府も存在しない「完全な政治空白」が生じるため、選挙によらない暫定政権の樹立が可能だと主張。これが政権側の最も警戒していた「司法クーデター」だった。

最悪のシナリオを回避した与党・タイ貢献党のポンテープ副首相は「(7月20日に予定される)総選挙の作業を進める」と強調し、首相失職による選挙日程への影響などについて近く選挙管理委員会と協議する意向を示した。しかし、選挙を正常に実施できるかは、反政府側の動きにかかっている。

反政府デモ隊の報道担当者は7日、「現内閣に正統性はなく、政府は国民に権力を返すべきだ」と改めて政権移譲を要求。2月の総選挙と同様、デモ隊が投票を妨害すれば、選挙が再び無効となる恐れがある。
反政府デモ隊と同調する最大野党・民主党も再度選挙をボイコットする可能性を否定していない。

選挙に弱い反政府側が、議会制民主主義の根幹である「選挙」を拒む構図だ。さらに、仲裁役となるはずの「独立機関」は、タクシン派から政治的中立性を疑われている。

タクシン元首相をクーデターで追放した軍政は2007年に新憲法を制定し、憲法裁判所など「独立機関」の権限が強化された。

また、政党政治に影響されないよう、憲法裁判事は上院が選出し、上院の半数は憲法裁長官らによる委員会で選ぶシステムになっている。こうした「選挙による民意を反映しない」(貢献党幹部)仕組みにより、憲法裁などは軍や官僚らエリート層が支える反タクシン派(反政府側)の「牙城」となっているとも指摘される。

インラック首相は同日、テレビ演説で「民主主義にのっとって選ばれた首相として取り組んだ仕事に誇りを持っている」と語った。【5月7日 毎日】
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“政権与党のタイ貢献党は憲法裁判決について、「政権の力を奪おうという陰謀だ」との声明を発表。支持者に平和的デモを呼びかけ、7月20日に予定されるやりなおし総選挙で形勢逆転を狙う。”【5月8日 産経】

反政府・反タクシン派にとっては、首相を失職に追い込んだものの内閣総辞職とはならず、物足りない判断だったと言えます。

****反政府派、「新政権」へ行動=タクシン派は反発―タイ****
タイで反政府デモを続けるステープ元副首相率いる反タクシン元首相派組織「人民民主改革委員会(PDRC)」は8日、「新政権」樹立を目指して9日に行動を開始する方針を明らかにした。
タクシン派は断固反対する構えで、混乱が広がりそうだ。

PDRC報道官は取材に対し、憲法裁判所の違憲判決でインラック首相が失職したのを受け、「正統性のある政府は存在しない。9日に『人民政府』の任命に向けた最初の措置を取る」と語った。PDRCは9日にバンコクで大規模デモの開催を予定している。

ステープ氏は先に、インラック氏が失職した場合、PDRCが独自に新首相を指名し、閣僚名簿をプミポン国王に提出し承認を求める考えを示していた。

これに対し、タクシン派組織「反独裁民主統一戦線(UDD)」は、反政府陣営による新政権樹立は違法であり「拒否する」(チャトゥポン代表)との立場。UDDは10日にバンコク郊外で大規模集会を開くことにしている。【5月8日 時事】
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解決への糸口は?】
今後も混乱が続くであろうことは皆が予測しています。
どういう出口があるのか、誰も知りません。

“タクシン派は、反タクシン派との対立をエリート層と貧困層が対峙(たいじ)する「階級闘争」と位置づける。しかし、反タクシン派は政権の腐敗体質を正す「改革」のためのデモだと主張。タクシン派を「反王室」と断じ、問答無用に敵視する。主張はかみ合わず、憎しみだけが募る。”【4月27日 毎日】

一連の混乱のなかで、タクシン元首相が一族の政界引退の可能性に言及していましたが、インラック首相の失職、更には弾劾となって、あまり意味はなくなったのでしょうか?

****タクシン一族「政界引退も」=元首相が言及―タイ****
反政府陣営から辞任要求を突き付けられているタイのインラック首相の兄タクシン元首相は、長期化する政治対立を打開するため、タクシン一族が政界から身を引く可能性に言及した。タクシン氏の法律顧問を務めるノパドン元外相が21日、記者団に明らかにした。

ノパドン氏によると、タクシン氏は「(タクシン一族は)犠牲になるのをいとわない。政治家としての役割に終止符を打つ用意がある」と強調。一方で、反政府デモも同時に中止すべきだと主張し、総選挙が問題を平和的に解決する唯一の手段だとの考えを示したという。

インラック首相が憲法裁判所や国家汚職追放委員会(NACC)の判断次第で失職や職務停止となる可能性に直面する中、タクシン氏としては、一族の政界引退にまで言及することで、ステープ元副首相ら反政府陣営に妥協を促した形だ。

しかし、ステープ氏は21日夜の反政府集会で行った演説でタクシン氏の発言に触れ、「われわれは過去、何度もうそをつかれ、だまされた」と指摘。「タクシンはうそつきだ」と述べ、タクシン氏との取引には応じない意向を強調した。【4月22日 時事】 
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反タクシン派の側では、最大野党党首でもあるアピシット前首相がステープ元副首相が主導する反政府デモに一線を画する姿勢を見せていましたが、今後はどのように動くのでしょうか?

****政情混迷打開で協議開始へ=独自の解決案―タイ前首相****
タイ最大野党・民主党党首のアピシット前首相は24日、長期化する政情の混迷打開に向け、25日から関係当事者との協議を開始すると発表した。対立する政府と反政府デモ隊関係者のほか軍首脳らと意見交換し、独自の解決案を提示して事態収拾への道筋を探る。

アピシット氏は民主党のフェイスブックに掲載されたビデオ声明で、現状のままでは政府・与党側が求める総選挙の実施や、ステープ元副首相が主導する反政府デモも事態の解決にはつながらないと主張。これまで同調してきたステープ氏と一定の距離を置く立場を示した。

その上で「選挙プロセスも改革プロセスの一部であるべきだという点を考慮に入れつつ、憲法に沿って民主的手段で改革を進めなければならない」と指摘。「誰もが参加可能な改革プロセスへと導く提案」を行う意向を示した。【4月24日 時事】 
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何らかの改革を行ったにしても、基本的には総選挙で民意を問うしかないでしょう。
選挙や、貧困層を含む民意を否定するような反政府勢力の主張には同意できません。

長引く混乱のなかでも、人々の生活は営まれています。
政治が機能しなくても生活には支障はない・・・とも見えますが、本来政治が機能していたら手当されていたはずの問題が放置されたままになっており、それによって犠牲を強いられ続ける人も少なからず存在します。
当然のことではありますが、一刻も早い政治の正常化が望まれます。
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ナイジェリア  ボコ・ハラムの女子生徒連れ去り事件 ビデオ映像発表で国際社会の関心高まる

2014-05-07 21:59:00 | アフリカ

(ボコ・ハラムのビデオ映像 【5月6日 AFP】)

【「彼女たちは奴隷だ」「アラーが私に売れと言っている」】
自分の身の回りの常識・価値観では理解しがたい出来事が世界各地で頻発しているというのが現実ですが、ナイジェリアのイスラム原理主義組織“ボコ・ハラム”によるおぞましい犯罪行為もそのひとつです。

今日は、タイ・インラック首相の失職とか、中国・ベトナムの南シナ海でのゴタゴタとかの話題もありますが、どうしてもボコ・ハラムの蛮行は看過できません。

****女子生徒「売り飛ばす」、拉致グループが宣言 ナイジェリア****
ナイジェリア北東部ボルノ州の学校から200人以上の女子生徒が拉致された事件で、犯行を認めたイスラム過激派「ボコ・ハラム」の指導者とされる人物のビデオ映像が5日、明るみに出た。生徒たちを「売り飛ばす」と宣言している。

ボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウ容疑者を名乗る人物が、現地の言葉で「私が誘拐した。娘たちを売り飛ばす」「人身売買の市場がある。アラーが私に売れと言っている」などと話している。

ビデオは先にAFP通信が入手していた。米国務省の報道官は「本物のようだ」との見方を示した。

ボコ・ハラムの名前は、「西洋の教育は罪」という意味。ビデオの人物は1時間近い演説の中で、女子生徒たちは教育を受けるのをやめて「結婚しなさい」と繰り返している。

ナイジェリアの大統領報道官はCNNとのインタビューで、この発言を強く非難し、「何があっても生徒たちを取り返す」と宣言した。

ジョナサン大統領自身も4日、同様の決意を表明したが、一方で生徒たちの父母が警察の捜査に協力的でないと批判した。父母らは娘が報復を受けることを恐れ、報道陣の取材も拒否している。

事件の報道を受け、生徒らの救出を求めるデモが世界各地で実施されている。ロンドンのナイジェリア大使館前には4日、約100人が集まって「生徒たちを連れ戻せ」「売り物ではない」と訴えた。

インターネットのツイッター上で展開されている運動には同日、クリントン米国務長官も加わり、「教育を受けることは基本的人権であり、罪のない少女たちを狙う理由としては到底受け入れられない」とツイートした。

ボコ・ハラムは近年、国際テロ組織アルカイダの関連組織から訓練を受けているとされ、欧米やナイジェリア政府の施設などを狙った大規模な攻撃を繰り返してきた。

ナイジェリアの首都アブジャでは7日から、世界経済フォーラム(WEF)アフリカ会議が開催される。【5月6日 CNN】
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事件については4月21日ブログでも取り上げましたが、ビデオ映像では、「彼女たちは奴隷だ。奴隷を売る市場で彼女らを売る」「神の指示に従い、少女たちを売り飛ばす。イスラムを信じぬ者の血でこの地が埋め尽くされるまで…。イスラム教を信仰しない者は殺す、殺す、殺す。キリスト教徒との戦争だ」とも発言しているそうです。

また、“AFPによると、彼女たちは、隣接するカメルーンやチャドのブラックマーケットで花嫁として売られているという。1人1200円。ボコ・ハラムは活動資金にしている。”とも。【5月7日 毎日、Jcastより】

“ボコ・ハラムは2002年にボルノ州の州都マイドゥグリで結成されたイスラム過激派。現地語で「西洋の教育は罪」の意味で、政府やキリスト教会、教育機関などへのテロ攻撃を強めてきた。先月14日に70人以上が死亡した首都アブジャ郊外のバス停付近での爆発もボコ・ハラムの犯行が疑われている。”【5月7日 毎日】

別に先月14日のテロだけでなく、キリスト教徒が多い南部とイスラム教徒が多い北部が対立するナイジェリアで全土にシャリーア(イスラム法)を導入することを目指す彼らは、これまでもキリスト教徒を狙った数十人規模の死者が出るテロ事件を頻繁に繰り返しています。

クリスマス・ミサのため教会に集まった住民を爆破・襲撃するようなことも。
今年2月25日には、ボコ・ハラムとみられる武装集団が公立の寄宿学校を襲撃して寮に火を放つなどし、少なくとも男子生徒58人が死亡する事件がありましたが、このときは女子生徒には手を出さず、家に戻って結婚し、西洋式教育を捨てるよう命じたとされています。

ゆがんだ経済成長
ボコ・ハラムのこうした凶行については、これまでも何回も取り上げてきていますが、ナイジェリアは、4月21日ブログ「ナイジェリア アフリカのイメージを払拭する経済成長 それでも“アフリカ的な”テロの横行」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140421)でも紹介したように、経済成長著しい国です。

人口は、2050年にはアメリカを抜いて世界第3位になると予測されています。
先月には、国内総生産(GDP)を再計算した結果、南アフリカを大幅に上回り、アフリカ最大の経済となったと発表されています。
その経済規模は2050年までにカナダやイタリアを抜き、ドイツに迫るとの予想もあります。

にも拘わらず、こうしたテロが繰り返されるのは、経済成長の恩恵が一部の者だけに集中しており、深刻な貧困と格差が存在していることを示していると思われます。

また、治安を維持すべき国家機能が腐敗・汚職で十分に機能していないことも想像されます。

今回の事件が起きた4月14日からすでに3週間以上が経過していますが、なんの進展も見られていません。
進展しないどころか、今月に入ってもからも、新たな連れ去り事件が起きています。

****ナイジェリア、新たに拉致された少女は計11人****
ナイジェリア北東部ボルノ州で4日夜にイスラム過激派「ボコ・ハラム(Boko Haram)」とみられる武装集団に拉致された少女の数は計11人だったことが分かった。地元当局者が7日、明らかにした。

同州グウォザ地域にあるワラベ村の住民たちは先に、銃で武装した集団が4日夜に村を襲い8人の少女を連れ去ったと証言していた。

グウォザ当局のハムバ・タダ氏はAFPの取材に、武装集団にワラベ村が襲撃された事実を認め、さらに同じ集団がワラベ村から5キロほど離れたワラ村も襲い少女3人を拉致したと語った。【5月7日 AFP】
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何十人も死亡するようなテロが頻発する状況では、連れ去り事件などは大した問題ではないのでしょうか?
石油利権にまみれた政府には、住民の命など大した問題ではないのでしょうか?
そういうことではないとは思いますが、「政府はいったい何をしているのか?」とも言いたくなります。

国際社会に衝撃
拉致した女子生徒を奴隷として売り飛ばすという今回のビデオ映像は、国際社会に大きな衝撃を与えています。

****ナイジェリアの生徒解放願う書き込み相次ぐ****
西アフリカのナイジェリアで200人以上の女子生徒が武装集団に連れ去られた事件を受けて、インターネット上では生徒たちの解放を願って世界中から書き込みが寄せられています。

このうち、イスラム過激派から銃撃を受けながらも女性や子どもの権利を訴えているパキスタン人のマララ・ユスフザイさんはツイッター上に「女の子たちを取り戻せ」というメッセージを記した紙を掲げたみずからの写真を載せ、生徒たちの早期解放を求めています。

また、アメリカのクリントン前国務長官もツイッターで「教育を受けることは基本的な権利であり、何も悪くない女の子たちを標的にする理由には決してならない」と書き込み、テロに立ち向かうべきだと主張しています。

さらにユニセフ=国連児童基金の親善大使を務めるプエルトリコ出身の人気歌手、リッキー・マーティンさんもツイッターで生徒の解放を求めたほか、アメリカの俳優で映画「大統領の執事の涙」で主演したフォレスト・ウィテカーさんらハリウッド映画の俳優も相次いでツイッターやフェイスブックなどで事件を批判しています。

インターネット上には生徒たちの解放を呼びかける専門のウェブサイトも立ち上げられ、世界中から生徒たちの無事を願うことばが寄せられ早期の事件解決を求めています。【5月7日 NHK】
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これまでアメリカ、イギリス政府が生徒救出の支援を申し出ていましたが、ナイジェリア政府はほとんど動いていないとも言われていましたが、騒ぎが国際的に大きくなって、ようやく支援を受け入れることになったようです。

****ナイジェリア女子生徒救出へ、米国が特殊チーム****
米国務省のサキ報道官は6日の記者会見で、武装勢力がナイジェリア北東部の学校から100人以上の女子生徒を拉致した事件の解決に協力するため、現地に特殊チームを派遣すると発表した。

ケリー国務長官が同日、ナイジェリアのジョナサン大統領と電話で会談し、協力に合意したという。

チームには、 諜報 ( ちょうほう )活動や人質救出交渉の専門家らが参加する。オバマ米大統領は6日、米NBCテレビのインタビューで、女子生徒を救出するため「必要な協力は何でもする」と語った。

拉致はイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が実行犯とされる。米国内では、拉致された多数の女子生徒が、武装勢力に「花嫁」として売られていることなどが大きく報じられ、「少女の救出を」と訴えるデモが起きるなどしている。【5月7日 読売】
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オバマ大統領は、事件を「痛ましい出来事で、言語道断だ」と非難。その上で、女子生徒らを救うために国際社会が団結すれば、この恐ろしい組織に何かできるかもしれないと述べています。
ただ、すでに隣国カメルーンやチャドのイスラム武装勢力の戦闘員たちに売られているとも思われ、救出は困難が予想されます。

****ナイジェリア少女拉致、身元確認にDNA鑑定を****
ナイジェリアでイスラム過激派「ボコ・ハラム(Boko Haram)」に拉致され、近隣国に連れ去られた可能性のある200人以上の少女たちの身元を確認するために、米国とスペインの科学者らが6日、DNA鑑定技術を無償提供するとAFPに語った。

この技術は、人身売買の防止と家族再会を目指して10年前から活動する「DNAプロキッズ」に協力する米国の北テキサス大学人物同定センターが開発した「M-FISys(エンファシス)」と呼ばれるソフトウエアシステムを用いてる。

親族の唾液または血液からDNAサンプルを採取しておき、拉致された少女と疑われる人物と出会った際に少女の唾液または血液を採取して照合する仕組み。

DNA情報を暗号化するため、国境をまたいだ事件でも潜在的な外交問題を回避しやすい。またナイジェリアにDNA鑑定を行う設備がない場合にも、サンプル採取用の道具一式が提供され、採取したサンプルを米国またはスペインの研究室に送り鑑定を行うことができる。

米国務省は、4月14日にチボクから拉致された少女たちが近隣諸国に連れ去られた可能性があると発表。地元指導者らも、16~18歳の少女たちが、カメルーンやチャドのイスラム武装勢力の戦闘員たちに花嫁として売られたと述べていた。

もしこれらが事実であれば、身元確認を行う上で重要な(サンプル採取などの)部分は、連れ去られた地域の住民などの協力が鍵となるかもしれない。(後略)【5月7日 AFP】
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200人もの大人数を連れ去った訳ですから、事件発生と同時にナイジェリア当局が適切な対応をしていれば、その居場所等は確認できたのでは・・・と悔やまれます。
その意思も能力もないということであれば、仕方ありませんが。

ナイジェリア政府のために付け加えれば、当局もこれまでボコ・ハラムを放置していたわけでもなく、1年前には激しい掃討作戦も実施しています。
2013年5月24日ブログ“ナイジェリア イスラム過激派「ボコ・ハラム」に対する大規模掃討作戦が進行”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130524

この掃討作戦は良い結果を出せずに終わったようです。
また、一般住民を巻き込んだ強引な軍のやり方は、結果的に住民の協力が得られないという問題も引き起こします。
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アフガニスタン  数百人を呑み込む地滑り 発生後2日目で捜索救助活動打ち切り

2014-05-06 21:47:06 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタン地滑り現場  重機も1台は入っているようです。 見守る大勢の人々・・・他にやるべきことはないのかという気もしますが、事情が全くわかりませんので。もちろん、人々がシャベルで救助作業をしている写真もあります。 【5月4日 The Huffington Post 】http://www.huffingtonpost.jp/2014/05/03/afghanistan_n_5261246.html

韓国の旅客船セウォル号沈没事故で隠れる形となっていますが、12人の乗員を含む239人を乗せて南シナ海上空で8日未明に消息を絶ったマレーシア航空MH370便の捜索は、機体を発見できないままインド洋南部で続けられています。

****マレーシア機捜索 「次の段階」を協議、60億円規模****
消息不明となっているマレーシア航空370便の捜索を巡り、オーストラリアとマレーシア、中国の当局者らが7日に今後の方針を協議することが分かった。次の段階の捜索作業には約6000万ドル(約61億円)の費用がかかる見通しだ。

3月8日に失踪したマレーシア航空機の捜索にはこれまで26カ国が参加。航空機の飛行は300回、延べ3000時間に上り、対象範囲は460万平方キロに及んだが、何の手掛かりも見つかっていない。

オーストラリアなど3カ国の協議は同国の首都キャンベラで、2つのグループに分けて実施される。

オーストラリアのトラス副首相によると、一方のグループはこれまでに収集された情報を分析し、衛星データの解釈が正しかったかなどについて再確認する。もう一方のグループは、今後の捜索に必要となる費用や装置、人員を検討するという。費用をどのように分担するかも議題となる見通しだ。

これまでの捜索は、衛星データやブラックボックスから発信された可能性のある信号などに基づき、インド洋南部の一定範囲を対象に進められてきた。

中国の閣僚が5日に語ったところによれば、今後の捜索は「対象範囲が広がり、さらに困難な作業になる」とみられる。

対象となる海域はこれまで海底の調査を実施した例がなく、分かっているのは非常に深いということだけ。トラス副首相は、新たなソナーや潜水艇を1~2カ月のうちに投入したいと話す。

マレーシアのヒシャムディン運輸相代行は、次の捜索にはこれまで参加していなかった企業や国も加わる機会があると強調した。トラス副首相も、必要な装置を民間企業に提供してもらう必要があるとの見方を示した。

2009年のエールフランス機墜落事故では、大西洋の海底で機体が発見されるまでに約2年かかった。トラス副首相は「エールフランス機の捜索作業は何度も長期にわたって中断した」と指摘し、「今回の作業ではこれを避けるため、次の段階へ進むための検討をただちに開始する」と強調した。【5月6日 CNN】
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4月16日に沈没したセウォル号の方も、行方不明者の捜索が懸命に行われていますが、朴政権への政治的影響も云々されるなかで、潜水士が死亡するといった事故も起きています。

****韓国旅客船沈没:海中捜索の潜水士が死亡****
韓国南西部、珍島沖の旅客船セウォル号沈没事故で、船内の捜索に当たっていた民間企業所属の50代の潜水士が6日朝、海中で意識を失い、搬送先の病院で死亡が確認された。捜索作業に当たる潜水士が死亡したのは初めて。

事故発生から約3週間となり、潮流の速い厳しい条件下で長期間の捜索作業を続ける潜水士の安全があらためて懸念されている。

一方、朴槿恵大統領は同日、ソウル市内で開かれた釈迦の誕生日を祝う行事でのあいさつで「遺族らをどう慰めたらいいか、申し訳なく心が重い」と述べた。

事故では6日、新たに1遺体が収容され、死者は263人、行方不明者は39人。【5月6日 毎日】
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いずれも痛ましい事故で、捜索活動の進展を願うものですが、これほどの国際的注目を集めることもない大きな災害は世界各地で起きています。

アフガニスタンでは、5月2日に大規模な地滑りが発生し、当初は犠牲者は2000人とも、2500人とも言われましたが、その後死者数は500人に訂正されています。

それでも、痛ましい悲劇であることに変わりはありませんが、大量の土砂を取り除くことは不可能と判断され、事故発生の翌日3日には捜索救助活動が打ち切られています。

****アフガン地滑りの捜索打ち切り、死者数は推計500人に修正****
アフガニスタン北東部のバダフシャン州アーブバリーク村で2日に発生した大規模な地滑りは、少なくとも300人が短時間で土砂にのみ込まれて死亡した。

地元の住民や救助隊はシャベルで土砂を堀り、生き埋めになっている生存者の捜索に努めていたものの、成果はなく、捜索救助活動は3日に打ち切られた。

シャー・ワリウッラー・アデエブ同州知事は、地滑りの現場で記者団に対し、「住宅300棟が土砂の下敷きになった」との報告を明らかにした上で、「死亡が認定された300人前後のリストがある」と付け加えた。

その上で、「家屋が何メートルもの土砂に埋まっているため、捜索救助活動をこれ以上続けられない」と述べ、犠牲者に哀悼の意を表明するとともに、一帯を集団墓地とする考えを示した。

当初2500人が死亡した可能性があると発表していた当局は、死者数は最終的に500人との新たな推計を示した。

グル・モハマド・ベダール同州副知事はAFPに対し、2500人死亡との情報が同州の専門チームではなく、地元住民から入手したものだったと説明した上で、「死者が500人を超えることはないと考えている」とコメントした。 

今回の地滑りでは、イスラム教の金曜礼拝で2か所のモスクに集まっていた大勢の住民がまず土砂にのみ込まれ、人々が救援に駆けつけたところを2度目の地すべりが襲った。【5月4日 AFP】
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“深さが50メートルに及ぶ場所もある”とか、“2日に土砂が崩れ落ちたのとは別の箇所でも斜面に大きな亀裂が見つかり、2次災害の危険が高まっている”【5月4日 毎日】といった困難な状況があることも報じられていますが、事故発生翌日に捜索救助活動打ち切りというのは、あまりに早すぎる感があります。

****捜索終了のアフガン地滑り現場、悲しみに暮れる住民たち****
2日に大規模な地滑りが発生し、少なくとも300人が死亡したアフガニスタン北東部バダフシャン州アルゴ地区のアーブバリーク村では5日、悲しみに暮れる住民らが自発的に土砂を掘り続ける姿が見られた。

捜索活動は3日に打ち切られており、死者数は数百人規模で増えるとみられている。 この地滑りによって700家族が家を失った。【5月6日 AFP】
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バダフシャン州はアフガニスタンでも最も険しい山間地に位置します。

ただ、もっと尽くせる手立てはなかったのか?国際的支援を仰ぐことはできなかったのか?・・・事情はわかりませんが、マレーシア航空MH370便やセウォル号の捜索活動が国際協力のもとで、あるいは政権の命運を懸けて、継続して行われているだけに、その違いが気になります。

タリバンとの内戦で日々犠牲者が出ているアフガニスタンにあっては、自然災害の犠牲者に構っている余裕はないということでしょうか?
命の重さが軽くなっていることでしょうか?

****政府、アフガン地滑りに1100万円当の支援****
日本政府は4日、アフガニスタン北東部の大規模な地滑りによる被災者を支援するため、テントや毛布など1100万円相当の緊急援助物資の供与を決めた。

安倍首相は同日、カルザイ大統領に哀悼とお見舞いのメッセージを送った。【5月5日 読売】
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1100万円・・・・・。
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ラオス  「ビエンチャンがASEANの新たなハブ(中心軸)になる」

2014-05-05 22:11:56 | 東南アジア

(ビエンチャン メコンの夕暮れ こういう光景を美しいと思うのは、観光客の勝手な思いでしょう。 “flickr”より By Juan Manuel Agudo https://www.flickr.com/photos/juanmaagudo/13640705144/in/photolist-mMobps-nfess2-nfenAP-nfepP7-jTWbqq-kifEDL-nfekqh-nhh87c-nfeoGB-jMrwNd-dqyh3F-jMpfKr-ksJZbL-k4SLyy-kKUV7x-4FtXF7-jMrxnj-msmm8T-keC4J6-n7Fb24-kdnWEv-jRE4q7-jVEKJi-kbHtZ6-mshFtX-kfLH7u-6KtzRi-n5xKaC-n5vdyx-n5ucPr-n5okji-n5uSTD-n5noAx-n5p7re-n5wn4g-n5yJiq-n5zpYN-jULWcr-k8Crt4-n5BdQS-jS9NxT-nckMJq-kfK2Ve-jSbmC3-kBy2g4-jULdUi-msnDFC-msnNqm-msmjdc-mskEqP)

増える車、追いつかないインフラ整備
経済成長著しい東南アジアのなかでは、社会主義国ラオスという国は普段注目を浴びることも少なく非情に地味なイメージです。

観光的にも、世界遺産ルアンバパーン以外には目立った観光資源が少ないことから、訪れる観光客もあまり多くありません。

個人的にも、他のアジアの国々には何回か足を運んでいますが、ラオスはルアンバパーン行った1回きり。正直な感想は「本当に何もないところだね・・・」といったところ。
そうした「何もない」ところが好きだという、コアなファンはいるようですが。

東南アジアなどの途上国を旅行して最初に強い印象を受けるのは、観光名所でも、気候風土でも、食事でもなく、おそらく無秩序とも見える道路を埋め尽くす車・バイクの群れではないでしょうか。

想像に難くないところですが、「何もない」ラオスにもモータリゼーションの波は押し寄せているようです。

****ラオス、交通インフラ限界 自動車登録急増、渋滞や事故増加****
ラオスの現地紙ビエンチャン・タイムズなどによると、首都ビエンチャンで自動車が急増している。
2013年の二輪車を含む新規自動車登録台数は6万6500台で前年の登録台数より5300台増加した。

今年1~3月の登録台数も1万6000台を超えた。内訳は、二輪車が9850台で約6割を占め、ピックアップトラックが2620台、乗用車が1492台などだ。

一方で、増え続ける自動車に交通インフラ整備が追い付かず、道路渋滞が悪化するなど深刻な問題を引き起こしている。

同国政府によると、ビエンチャンで自動車登録台数が急増する背景には、経済成長により消費者の購買力が高まっていることに加え、分割払いで購入できるようになったことなどが挙げられる。

自動車の急速な普及は深刻な渋滞や交通事故の増加をともない、同国政府は対策に苦慮している。
ビエンチャン市交通警察局は、道路の交通規則を十分に理解せずに自動車を購入する人が多いため、歩行者を含めて交通安全知識の向上を早急に進める必要があると指摘した。

また、ビエンチャンには狭小な道路が多いことから、都市計画を含めた交通インフラ整備が必要で、同国政府は本格的な取り組みが求められている。【5月5日 SankeiBiz】
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“増え続ける自動車に交通インフラ整備が追い付かない”状況は、途上国に共通した現象です。
道路は渋滞するわ、駐車スペースは見つからないわ・・・こうした国で車を利用するのもなかなか大変です。

それでも皆、車やバイクを欲しがります。
公式の経済統計から見る所得水準ではとても購入できそうにない高価な車・バイクをどうしてこんなにも多くの人が保有しているのか・・・非常に謎でもあります。

記事にもあるように、“分割払いで購入できるようになった”ことが大きく、親せきなどからお金を借りてなんとか工面するのでしょう。

インフラ整備がなされないまま、狭い昔からの道路に車・バイクが押し寄せる結果、人・車・バイク、ときには牛などが入り乱れてのカオス状態となります。ネパールのカトマンズなどがいい例です。

少し広い幹線道路は車の洪水状態で、信号もろくにないうえに、ドライバーには歩行者優先といった意識も全くないので、慣れない外国人観光客にとって道路の横断は一大決心を要する危険な難行となります。

つい先日もパキスタンを旅行したのですが、目の前に見えている店舗に行きたかったのですが、道路が渡れずあきらめて帰った・・・ということもありました。

温和で奥ゆかしい国民
この種の話をしているときりがありませんので、先に進めます。
地味なラオスと、タイ・ベトナムといった隣国との比較について、面白い記事が以前ありました。

****ラオスの隣人評 タイとベトナムは“お兄さん****
・・・・隣国というのはどこでも微妙だ。ラオスとタイも例外ではない。

「ラオス人にとってタイは長兄。時々おこられるし、たたかれることもある。それでも血を分けた兄弟だから最後はわかり合える関係」だと、解説してくれたのは、サワナケット大学のアドバイザーで、国際協力機構(JICA)客員専門員の宮田伸昭氏だ。

ラオス人のベトナム人に対する見方についても聞いた。「タイ人が実の兄だとすると、ベトナム人は隣に住む大学卒のお兄さん」だとか。そのココロは「勉強もできるし、働き者で偉いと思うが、自分はそこまでやらないし、所詮は他人という関係」(宮田氏)という。

両国政府は同じ社会主義国家で開放経済を進める国同士、「特別な関係」と強調するが、国民の本音とは微妙に違うようだ。

ただ、共通しているのは、ラオス人はタイ人もベトナム人も兄で、自分より上だとみていること。メコン各国を回ってみると、ラオス人が最も温和で奥ゆかしい国民だと感じるのは、私だけではないだろう。ラオス人らしい隣人評といえる。

ラオスの人口は651万人とメコンの中で最も少なく、ベトナムのわずか7%、タイの9%しかない。カンボジアでさえラオスの2倍強の人口だ。メコンで唯一、海に面していないことも目立たなかった理由だ。

ただ、2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)発足で、ラオスの位置づけは変わるだろう。
ラオス人もそのことを意識する。「ビエンチャンがASEANの新たなハブ(中心軸)になる」(ポンサワン銀行のオド・ポンサワン会長)と力強い。

一方、大陸部ASEANを縦に貫く南北経済回廊は、中国雲南省昆明からラオスを経てタイへ抜ける。

しばしばラオスはカンボジアと並んで、中国に近いと言われるが、同時に熱烈な親日国でもある。
だからこそ、日本が中国包囲網を意識する余り、各国に日本か中国かの二者択一を迫ることには無理がある。
彼らは日本以上に中国の脅威を知っている。押し付けがましいのは、嫌われるだけだ。【2013年12月18日 SankeiBiz】
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“ラオスとタイは民族的には同根とされ、歴史的、文化的な共通性もあり、通訳なしで会話ができる”【同上】というのは、タイとカンボジアの関係でも同じです。

ただ、カンボジアのフン・セン政権とタイが領土問題などでしばしば揉めるのは周知のところで、ラオスのように“実の兄”とは考えていないようです。

また、カンボジア一般国民にとってベトナムは宿敵のような存在であり、穏やかならざる感情を持っています。
ただ、ベトナム人は自分たちよりよく働く・・・という思いは有しているのではないでしょうか。

“ラオス人はタイ人もベトナム人も兄で、自分より上だとみている”というのは、ラオスの人々の奥ゆかしさを表していますが、同時にのんびりした、あまりあくせくしない、悪く言えば、やる気のない性格をも表しています。

ラオス・ルアンバパーンを観光した際に、土産物屋さんで非常に驚いたことがあります。
東南アジアは暑い国ですから、ひんやりした店の床に人が寝ている・・・というのは、ときどき経験します。

ルアンバパーンのお店でも、店の人は床に寝そべっていたのですが、普通は客が来れば起きます。しかし、その店の人は、ちらっと私を見て、寝転がったまま。私が商品を手に取ってみても、寝転がったまま。
結局、私が店をでるまで、起き上がることはありませんでした。

たまたまのことだったのでしょうが、「ラオスの人はあまり働く意欲は持っていないようだ」という思い込みを得ました。

道路網整備で変わるASEAN経済
こうしらたラオスの経済も、今大きく変わりつつあります。
中国雲南省昆明からラオスを経てタイ・バンコクに抜ける、大陸部ASEANを縦に貫く南北経済回廊は、内陸国ラオスに大きなチャンスをもたらしています。

南北経済回廊の他、ベトナムのダナンからラオスのサワンナケットを通り、タイのムクダハンからミヤンマーのモーラミャインに達する東西経済回廊も整備されています。

また、南北経済回廊の終点バンコクは、第2東西経済回廊で東にカンボジア・プノンペン、ベトナム・ホーチミンへ、西にはミャンマー・ダウェーへと繋がります。

なお、南北経済回廊が中国支援に対し、東西経済回廊は日本支援ということで、インドシナ半島における日中競争の舞台でもあります。

こうした陸路の整備によって、ラオス経済の拡大が期待されています。
日本も本腰を入れて・・・といったところのようです。

****ジェトロ、ラオスの首都に事務所開設 ****
日本貿易振興機構(ジェトロ) ラオスの首都ビエンチャンに事務所を開設し、28日にソムディ計画・投資相や茂木敏充経済産業相らが出席して式典を開いた。地場の中小企業育成支援や日系企業誘致を強化する。

ビエンチャンの事務所は、日本人2人を含む4人体制で7月に正式稼働する。ジェトロの海外事務所としては56カ国74カ所目。東南アジア諸国連合(ASEAN)では、ブルネイ以外の9カ国全てに事務所を置いたことになる。

ソムディ計画・投資相は「2020年までの経済成長計画には70億~80億ドル(約7千億~8千億円)の民間投資が必要。日系企業の貿易や投資の増加を期待する」と述べた。

茂木敏充経済産業相はラオスがタイやベトナム、中国など5カ国と国境を接する「ASEANの要所」とし、「進出する日系企業数は100社未満だが、昔は米国やタイもそうだった」と今後の成長に期待を示した。【4月28日 日経】
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観光客的視点からは、経済成長でラオスののんびりした風情が失われるのは寂しい話ですが・・・。

南北・東西経済回廊の整備によって、沿線に大規模業団地がつくられ、原材料・部品・製品も道路で陸送される・・・ということになると、東南アジア全体の経済・物流も大きく変わっていきます。

これまで東南アジアの“ハブ”として経済成長を実現してきたシンガポールなどは、上記大陸ASEANにおける経済拡大からはずれてしまうことにもなります。

そのあたりの話は長くなるので、また別機会に。
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回帰するエジプト 混乱のリビア 進展を見せるチュニジアも経済に不安

2014-05-04 22:27:44 | 北アフリカ

(チュニジア 4月15日 2011年の革命で亡くなった人々の遺族の集まり “flickr”より By Tunisia Live https://www.flickr.com/photos/tunisialive/13870826463/in/photolist-n8HBsp-n8LRo5-mPxvem-ncGvYd-mPtThD-naQRnt-6p7cTf-mPwm1U-mPs2qV-mPt9Uw-mPrp1F-mPrkXX-mPrhHn-mPraRr-mPro6B-mPt6KA-mPt53Y-mPtqKt-mPv67h-mPv4t7-mPv7QC-mPtxBg-mPtfpR-mPtoYe-mPvaVW-mPeTED-mPrrh6-mPrsYT-mPteLf-mPtsjS-mPvg1f-mPrQPr-mPrnxF-mPrNz6-mPtwME-mPtvgy-nrXTqt-nkVFVZ-mPxBR9-mPvLP2-mPvH9t-mPvHpr-mPxA9m-mPvUsP-mPxnkA-mPxyB3-mPvNo4-nptHeN-nptiLd-mPxDkb/)

エジプト:混乱より安定と経済回復
エジプトでは大統領選挙が始まっていますが、軍部を背景としたシーシ前国防相の当選が確実視されています。
ムバラク政権の崩壊とモルシ政権がもたらした政治・社会の混乱を嫌気した国民が安定と経済回復を希望し、軍部がこれに応えるという形ですが、「アラブの春」で手にしたと思われた民主化が、軍部を中心とした統制に回帰することになるようにも見えます。

****エジプト再建」軍の影 復権へ前国防相支援 大統領選始まる****
昨年のクーデターでイスラム系のムルシ政権が倒れたエジプトで3日、大統領選挙の選挙戦が始まった。投票日は26、27両日で、候補者は2人。

軍はシーシ前国防相を切り札に3年前の「アラブの春」から続く混乱の幕引きを狙う。シーシ氏の当選が確実視されるなか、革命を主導した若者たちの勢いはない。

「偉大なるエジプト国民よ。二つの政権を倒したのは政治家でも軍でもなく、あなた方だ」。3月末、軍服姿で出馬を表明したアブドルファッターハ・シーシ前国防相(59)は低く穏やかな声で国民に語りかけた。治安を回復して国を立て直すため、ともに働こうとも呼びかけた。

「アラブの春」でムバラク政権が倒れた2011年の革命以降、治安の悪化はエジプト経済に打撃を与えた。警察を狙った爆弾テロが頻発。主要産業の観光は停滞が続いている。

ムバラク政権の腐敗した政治、ムスリム同胞団系ムルシ政権の失政により、国は混乱した。シーシ氏はそれを再び正しい道に戻し、繁栄を取り戻すのが自らの使命と位置づける。

シーシ氏の背後に控える軍は、表向き「革命の擁護者」として脇役を演じてきた。だが、昨年7月のクーデター後、軍主導の暫定政権は強権色を強めた。ムルシ派デモ隊の強制排除、デモ規制法の導入……。再び軍を柱とする旧体制の権力構造を回復するのが狙いとみられる。

治安回復や経済発展を望む経済界や富裕層などはシーシ氏を支持する。11年の革命に参加した大学生ハサン・アフマドさん(21)は「ムルシ政権は雇用創出など、私たちの要求を達成できなかった。国の統治には強い指導者が必要だ」と話した。

 ■若者、革命の熱気薄まる
シーシ氏の対立候補として出馬したのが、若者層に支持されている左派リベラルの政治家ハムディン・サバヒ氏(59)だ。サバヒ氏は3日の演説で「腐敗した権力から、国民の権利を取り戻す。革命の志を実現する」と訴えた。

言葉の節々に「軍政回帰」への懸念をにじませながら、革命の原動力となった若者にアピール。「軍出身の大統領では公正な社会は望めない」と支持者でカイロ大3年のアフマド・サメフさん(22)は話した。

選挙公約では若者の雇用創出に重きを置く。エジプト政府の統計によると、11年第1四半期まで9%前後だった失業率は革命を境に上昇し、14年同期は13・4%。うち6割は20歳代だ。

ただ、若者たちに以前のような熱気はない。革命の「聖地」タハリール広場では横断幕などは撤去され、デモも起きていない。食堂店員のイブラヒム・セディクさん(30)は「みんな疲れた。選挙にもデモにも期待しない」。選挙戦が始まった3日、カイロでは目立った集会もなく、候補者のポスターも時々見かける程度だ。

革命を主導した若者グループ「4月6日運動」に対し、裁判所は4月末、「エジプトのイメージをゆがめた」として活動を全面禁止する判決を出した。サバヒ氏が若者の組織的な支援を受けられるかは不透明だ。

一方、ムルシ政権の母体となったムスリム同胞団は「大統領選に正当性はない」とボイコットを決めた。(後略)【5月4日 朝日】
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リビア:首相選定の議会に武装グループ乱入
カダフィ政権が崩壊した隣国リビアに至っては、内戦を主導した民兵組織の武装解除ができず、また、東西間の地域対立もあって、新たな政治体制を樹立することができていません。

新首相は「家族が自身が襲撃された」として組閣を断念、新たな首相を選んでいた議会に武装グループが乱入して発砲・・・と、殆ど政府が機能していないような混乱状態が続いています。

****リビア新首相が組閣断念=「襲撃された」と声明****
リビアのサニ新首相は13日、声明を発表し、政権発足に向けた組閣を断念すると表明した。「12日に家族や自身が襲撃されたため」と説明している。次の首相候補が決まるまで暫定的に職にとどまるという。

リビア議会は3月中旬、指導力不足への批判が高まっていたゼイダン前首相を解任。その後、サニ氏が首相に指名され、組閣を進めていた。【4月13日 時事】
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****リビアで新首相選出中の議会襲撃****
カダフィ政権崩壊後も混乱が続くリビアの議会で新しい首相を選ぶ投票を行っていたところに武装グループが押し入り、銃を乱射して投票を中止させ、政治の中心部ですら治安を維持できない状況が改めて浮き彫りになりました。

リビアの首都トリポリで29日、議会で新しい首相を選出する投票が行われていたところ、突然武装グループが議会の建物に押し入り銃を乱射したということです。

議会の報道官によりますと、この襲撃で数人がけがをし、議員らは投票を中止して建物の外に避難したということです。

武装グループは、決選投票に残っていた2人の首相候補者のうちの1人を支持する勢力と見られ、地元のメディアなどは、この候補者が事前の予想で劣勢とされていたことから襲撃を行ったとの見方を示しています。

リビアでは、3年前に激しい内戦の末にカダフィ政権が崩壊した後、暫定政府が発足しましたが、各地に割拠する武装勢力を抑え込むことができず、石油の積み出し港を支配されたり、政府の高官が頻繁に襲撃を受けたりするなど混乱が続いています。

今回、厳重な警備体制が敷かれているはずの首都トリポリで、議会の開催中に襲撃を許したことで、暫定政府の統治能力が一層低下し、政治の中心部でも治安を維持できない状況が改めて浮き彫りになりました。【4月30日 NHK】
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チュニジア:民主化に向けて選挙法成立
こうした両国に比べれば、「アラブの春」の発端となったチュニジアは、試行錯誤しながらも前進しているように見えます。

新憲法制定に至ったことは、1月29日ブログ「チュニジア 政治混乱を乗り越えて、国民融和に向けて新憲法制定」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140129で 取り上げました。

その後も、非常事態宣言を解除、新選挙法の成立が報じられています。

****チュニジア、非常事態宣言を3年ぶり解除****
チュニジアのマルズーキ大統領は6日、3年あまり続いていた非常事態宣言を解除する大統領令を出したと発表した。交流サイト「フェイスブック」上の公式ページで明らかにした。

チュニジアは2011年の民主化運動でベンアリ独裁政権が崩壊、民主化運動「アラブの春」の先駆けとなった。非常事態宣言はこの時に出されていた。
同国政府は昨年11月、非常事態宣言の期限を今年6月まで延長したが、今回予定を繰り上げて解除した。

大統領令によると、非常事態宣言の解除後も、軍の作戦に関係する地域や国境地帯などで治安当局が適時に軍の支援を求める権限は制限されないという。

チュニジアではベンアリ政権崩壊以降、政治的混乱や政治家を狙った暴力事件が続いており、民主化の妨げになることが懸念されている。【3月7日 CNN】
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****チュニジアで新選挙法成立、政党に男女同数の擁立義務付け****
「アラブの春」の発端となった民衆蜂起「ジャスミン革命」から3年、チュニジアの制憲議会(定数217)は1日、2014年内の大統領選と総選挙の実施を定めた選挙法を賛成132、反対11、棄権9の賛成多数で承認した。

最大の争点となったのは、ジャスミン革命で追放されたジン・アビディン・ベンアリ元大統領の独裁政権で高官を務めた政治家らの出馬を禁止する条項だったが、1票の差で盛り込まれなかった。
一方、選挙法には、政党が男女同数の候補者を擁立することを義務付ける条項が盛り込まれた。

2011年のジャスミン革命後、政治危機や社会的対立、過激派勢力の台頭などに悩まされてきたチュニジアは、大統領選と総選挙によって正式な政権と議会の成立を目指している。

ただ、選挙管理委員会を務めるISIEにはまだ予算がついておらず、事務所や運用根拠となる法律もない。ISIEは、選挙実施には選挙法の成立後6~8か月の準備期間が必要だと指摘している。【5月2日 AFP】
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1票差で成立を阻まれた旧政権関係者の政治関与禁止法案については、“表決直後から議会およびその外では大きな混乱が見られ、賛成派からは「裏切り」との声が上がり、また議会前では女性2名が自らに火を放った由(死亡したとの報道はなくまた負傷の程度は不明) 興味があるのは、この条項を非常に積極的に推進したのが、議会議長の党と大統領が名誉会長を務める党の2で、ナハダ党は分裂したと報じられている点です。”【5月2日 中東の窓】(http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/cat_73690.html)ということですから、政治混乱がない訳ではありませんが・・・。

高い失業率の若者層のエネルギーをどう制御するかがチュニジアの大きな課題
チュニジアが民主化を前進できるかは、経済立て直しができるかにかかっているように見えます。

****チュニジア ベンアリ後、後絶たぬ焼身自殺 強くくすぶる経済への不満****
2010年12月、失業中の男性が焼身自殺したのを発端とする民衆デモでベンアリ政権が転覆し、「アラブの春」の引き金ともなったチュニジアで、今も焼身自殺者らが後を絶たずにいる。

その数は、未遂を含めると過去3年余りで約190件。何が彼らを追い詰めたのか、「ベンアリ後」の同国で死を選んだ1人の青年の足跡を追った。
                   ◇
13年3月12日、アーデル・ハズリーさん=当時(27)=は、首都チュニス中心部でガソリンをかぶり、自ら火をつけた。「ジャスミン革命」と呼ばれたベンアリ政権崩壊から2年以上たってからの出来事だった。

アーデルさんは5人兄弟の2人目として、チュニスの西約150キロの寒村スークジュムアで生まれた。未舗装の道を登った丘の中腹にある家には、かろうじて電気は通っているものの、上下水道はない。寝床は薄暗い台所の片隅にあった。

現金収入の道がほとんどない村を15歳で出て、チュニスの建設現場で働いた。アーデルさんと、すでにチュニスで働いていた兄の仕送りが、家族の生活と弟たちの学費を支えた。

しかし数年後、作業中に腕を負傷したアーデルさんは、転々と仕事を変えるようになる。末弟のオマルさん(18)は「(隣国の産油国)リビアやアルジェリアへ出稼ぎもしたが、満足な仕事はなかったようだ」と語る。自殺したとき、アーデルさんの仕事は路上でのたばこ売りだった。(中略)

 ◆「少しでも豊かに」
チュニジアでは10年末、中部シディブジドで、失業中だったムハンマド・ブアジジさん=当時(26)=が、路上で野菜などを売っていた際に当局者から商品を没収され侮辱を受けたとして抗議の焼身自殺を図った(後に死亡)ことが大規模デモにつながり、11年1月、当時のベンアリ大統領が亡命した。

その後、第一党となったイスラム政党アンナハダと世俗的な野党勢力は対立しつつも歩み寄りをみせ、今年1月には、信教の自由や男女平等をうたった民主的な新憲法がおおむね平和的に制定された。

国民1人当たりの所得は年約4千ドルと、「アラブの春」以降、不安定な状態が続く地域大国エジプトなどよりは高い水準を維持してもいる。

しかし、国民には経済への不満が強くくすぶる。特に人口の約半数を占める29歳以下の失業問題は深刻で、アーデルさんの仕送りで大学を出た弟2人も定職には就けていないという。

チュニジアからは11年以降のシリア内戦に数千人が義勇兵として参加しているとされるが、そこには、反体制派から支払われる「給与」が大きな誘因として作用しているとみられる。小型ボートで欧州への不法移民を試み、転覆事故に遭う者も後を絶たない。

他のアラブ諸国同様、若者層のエネルギーをどう制御するかがチュニジアの大きな課題であり、新憲法が若者を「国造りの原動力」と特記したのも、その危機感のあらわれだ。

「少しでも豊かに暮らしたい気持ちが革命につながったが、実現してない」
アーデルさんの友人のタクシー運転手、ムハンマド・アリーさん(38)はこう語り、命懸けで国外へ出る者と、焼身自殺を選ぶ者との間に「大きな違いはないんじゃないか」とつぶやいた。【2月28日 産経】
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チュニジア経済支援のためアメリカが5億ドルを支援したとも報じられています。

****米国:チュニジアに5億ドル支援 不安定化防止****
オバマ米大統領は4日、ホワイトハウスで北アフリカ・チュニジアのジョマア首相と会談し、不調が続く同国経済を支援するため総額5億ドル(約516億円)の融資保証を供与すると発表した。

チュニジアを起点に3年前に始まった民主化要求運動「アラブの春」は、シリアで内戦化、エジプトでも軍の政治支配が事実上復活しつつある。

このため米国は、経済援助でチュニジアの不安定化を防ぎ、周辺地域の民主化への動きにつなげたい考え。チュニジア政府は今年度だけで約20億〜30億ドル(約2060億〜3100億円)の財政赤字に陥る見通し。【4月6日 毎日】
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“過去3年余りで約190件”の焼身自殺というのは尋常ではありません。
チュニジアも経済動向如何では、政治が混乱する可能性もまだ残っています。
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ロシアの圧力に直面するNATOの実態

2014-05-03 22:58:34 | 欧州情勢

(エストニアに配備されたNATO戦闘機 【5月1日 NHK】)

バルト3国に戦闘機12機
ウクライナ東部をめぐる欧米とロシアの緊張状態は依然として続いていており、東部での親ロシア派住民とウクライナ政府軍の衝突などの如何によっては、国境付近集結する4万人とも言われるロシア軍の動向など、更に緊迫化することが考えられます。

ただ、アメリカ・NATOにとっては、国際関係に与える影響は別として、突き放した言い方をすれば、NATO加盟国でもないウクライナを防衛する責務はありません。

ぎりぎりの話としては、そういう事情もあって、ロシアの強い圧力にも拘らず、アメリカ・NATOはウクライナへの直接的な軍事関与を行う姿勢は見せていません。

しかし、もしロシア・プーチン大統領がNATO加盟国でありロシア系住民の多いバルト3国などにも手を伸ばすという事態となれば、話は違ってきます。

****NATO バルト3国の防衛強化****
ウクライナ情勢の緊張を受けて、NATO=北大西洋条約機構は、ロシアと国境を接するバルト3国の防衛力を高めるため、加盟国から派遣され警戒飛行に当たる戦闘機の数を通常の3倍に増やすなど防衛態勢を強化したことが分かりました。

NATOによりますと、NATOに加盟するバルト三国の1つエストニアに30日、デンマークから派遣された戦闘機4機が到着し、警戒飛行の任務に当たることになりました。

NATO関係者によりますと、これにより、ウクライナの緊張を受けてロシア軍の動きに警戒感を強めるバルト3国に派遣された戦闘機の数は合わせて12機となり、通常の3倍の態勢になったということです。

これは、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国の安全を保障し、NATOとして集団的な防衛態勢を強化するためで、少なくともことし末まではこの態勢を維持するとしています。

またNATOは、ウクライナと国境を接するポーランドとルーマニアにAWACS=早期警戒管制機を派遣したほか、新たに戦闘機10機を派遣しました。

これとは別に、アメリカ軍は加盟国の間の合意に基づいてバルト3国とポーランドに合わせて600人の兵士を派遣しています。

NATOは、ロシア軍がウクライナとの国境に4万人規模の部隊を集結させているという状況に今のところ変化はないとみており、警戒・監視態勢を今後も強化する方針です。【5月1日 NHK】
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ロシアがバルト3国に軍事侵攻するような事態は考えたくもありませんし、いかなプーチン大統領と言えども、新たな世界大戦の引き金にもなりかねない無謀な行動をとるとも思えませんが、もともとバルト3国は戦車も戦闘機も全く保有していないことを考えると、戦闘機12機でどうなるのか・・・という感もあります。

ただ、NATO軍が存在するだけで一定の抑止効果はあるのでしょう。

NATO加盟国で進む軍縮・軍事費削減
バルト三国にすれば、ロシアを相手にして多少の軍備を持っていても何の足しにもならないという話はあるでしょうが、NATO加盟国の軍事費・軍備は最近著しく低下しており、行動基準が異なるロシアなどの軍事行動に対応しきれない状況になっているとの指摘があります。

****NATOは終わった ロシアがあざ笑う「無力な同盟****
ウクライナをめぐる危機は連日、北大西洋条約機構(NATO)の無能ぶりを白日の下にさらし続けている。

米国と西ヨーロッパは、ロシアに近接する東ヨーロッパ諸国を防衛するだけの軍事力も、政治的意思も持ち合わせておらず、NATO条約が義務付ける「加盟国が攻撃された場合の集団的防衛」は空文化している。

ブッシュ、オバマ両大統領が「米国の安全」を最優先して、欧州の安全保障を軽視し続けた上に、ヨーロッパ諸国も軒並み歴史的な軍備縮小を行って、戦闘力を削ってしまった。

その結果、ロシア近隣のNATO加盟国には、巨大な安全保障の空洞が生じている。
米欧には、プーチン大統領による旧ソ連諸国への介入を止める手段がないばかりか、NATO加盟国の防衛さえ危うい状況だ。

「最も成功した軍事同盟」と自画自賛するNATOは、終焉のふちに立っている。

プーチンに怯えるバルト三国
もはやこれしか手段はない。エストニアのトーマス・イルベス大統領は、そんな覚悟を決めたかのように、世界のメディアに登場して、自国の危機を訴えている。(中略)

「NATO地上軍の物理的展開が必要だ。もっと演習も必要だ」「クレムリンのプロパガンダは、一九五〇年代以来、見たことがない類のもの。(プーチンの)頭の中がどうなっているのか分からない」(いずれもCNN会見)と、歯に衣着せずロシアを批判し、NATO軍の地上配備を求める。

エストニアのロシア系住民は人口の二五%で、隣国ラトビアでは二七%。両国とも「エストニア語(ラトビア語)の試験に合格しなければ国籍を与えない」と法律で定め、ロシア語に固執するロシア人は、国籍を失った。エストニアでは約十万人、ラトビアでは約三十万人が「無国籍者」だ。

だが、ロシア人たちは立ち去らない。エストニアの首都タリン、ラトビアの首都リガとも、ロシア語話者はほぼ半分を占め、完全なロシア語圏だ。ユーロ圏に属し、居心地のよい両国の首都は、ロシア人富豪の遊び場、資金洗浄(マネーロンダリング)の舞台でもある。

エストニア東部の町ナルバはロシア系が九割以上。ナルバ川をはさんで対岸のロシア領イヴァンゴロドとは四百メートルの距離だ。ロシア軍が「ロシア人保護」を名目に出兵して、エストニアの相当部分を制圧するのは、プーチン大統領の決断ひとつである。(中略)

「モスクワと和平交渉した方がよい
米欧はウクライナについて、「NATO加盟国ではない」として軍事的支援を拒んだ。
四月十七日に行われた米、欧州連合(EU)、ロシア、ウクライナの四者協議では、クリミア半島問題には触れず、「編入」を既成事実扱いにした。

これに比べ、バルト三国は〇四年以来のNATO加盟国だ。米国には忠実で、アフガニスタン戦争、イラク戦争にも出兵した。エストニアはアフガニスタンで九人の死者を出している。しかし、三国を現実に防衛できるとの見方は専門家の間でも乏しい。

NATOとロシアは一九九七年に結んだ「基本文書」(協力協定)で、新加盟国には、大規模戦力を配備しないことで合意した。このため、バルト三国も含む旧共産圏には、米軍は実質的に駐留していない。

実戦形式の演習が行われたのは、昨年十一月の「ステッドファスト・ジャズ二〇一三」が初めてだった。ロシア軍は〇九年に大規模演習「ザパード(西)」を実施し、以後毎年のように軍事的威嚇を繰り返していた。やむを得ず対抗措置に踏み切ったのだが、米国はロシアを気遣い、二百人が加わっただけだ。

米軍が緊急展開できる態勢ではない上に、東欧諸国の防衛体制も整っていない。
最前線のバルト三国は、兵員が三国合計でも二万人超。戦車、戦闘機は一つもない。ロシア本土からの大規模侵攻を待たずとも、リトアニアとポーランドに挟まれた飛び地、カリーニングラードからバルト艦隊の一部が出撃すれば、ひとたまりもない。

ウクライナと国境を接するNATO加盟国は、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアの四カ国。このうちポーランドとルーマニアこそ、数百両の戦車と相当数の戦闘機を有しているが、ソ連時代に国土を蹂躙されたハンガリー、スロバキアはともに、戦車は三十両程度しか持っていない。戦闘機はハンガリーが十四、スロバキアが二十と、戦力としてはほとんど使えない。

「東欧諸国は共産政権時代に、軍事費の重圧に苦しんでいた。『NATOの傘』ができれば、軍縮を進めるのは当然。ここ数年はEUから『財政緊縮』も厳しく言い渡されていた」と、東欧外交筋が言う。

結果的には、バルト海から地中海までの広大な地域に、軍事的な空白が生まれた。
米政府当局者は、「新加盟国に配備しないという合意は、今回の事態で再考せざるを得なくなった」と公言するものの、米軍には「ない袖は振れない」事情がある。

軍関係者によると、十一隻ある米海軍の空母のうち、即座に動けるのは三隻のみ。四隻目を動かすには、一カ月かかる。南シナ海で中国海軍から嫌がらせを受け、シリアとリビアがある地中海東部にも目を配らなければならない状況で、大規模展開は不可能。

「バルト海、黒海は、ロシア軍にとって『我らが海(マレノストルム)』の状態が続く」と前出の東欧外交筋は言う。NATOは、加盟国が攻撃を受けた時、集団的自衛ができなければ軍事同盟としての命運が尽きる。

英デイリー・テレグラフ紙の論評員コン・コーリンは、「プーチンの新たな軍事攻勢にきちんと対応できないのなら、同盟を解散して、モスクワと和平交渉した方がよい」と断じる。
「NATO終焉」の瞬間を決めるボタンは、プーチンに握られている。

加盟国の防衛費は減る一方
今回のウクライナ危機では、米欧政治家やメディアはしきりに「ベルリンの壁崩壊以来、最大の危機」という言葉を使った。だがこれは、ひどい健忘症か、ご都合主義的な歴史解釈である。

NATOは今から二十年以上前の一九九〇年代、旧ユーゴスラビア内戦の泥沼で、無作為と無能にあえぎ、存在の意義を問われていた。

内戦の死者数は十四万人で、紛争の中心地サラエボは、キエフよりずっとパリやローマに近い。複数の歴史家は、ユーゴスラビア内戦こそ、プーチンの教科書になったと指摘する。

第一の教訓は、NATOという組織の決断の遅さ、逡巡である。
この時の悪役は、セルビアのスロボダン・ミロシェビッチ大統領。恐る恐る空爆に乗り出したのは、内戦勃発から四年もたった、九五年のことだった。

第二の教訓は、「非正規軍」の役割だ。
九五年には、国連の任務として現地派遣されたオランダ軍が、スレブレニツァでセルビア民兵勢力に翻弄され、イスラム系住民八千人以上を見殺しにする大失態を演じた。
今回のウクライナ危機では、「非正規」武装勢力が衝突もせずにウクライナ軍を追い払った。

第三の教訓は、国際法の原則も国境線も、力で変えられるということだ。
ボスニアをイスラム教徒、セルビア人、クロアチア人に三分割したのは、当のアメリカだった。プーチンは内戦時、クレムリンの地味な官僚として、クリントン政権の傲慢な高官たちの取次役だった。
NATOは結局、九九年のセルビア空爆でミロシェビッチ政権を屈服させ、最後は帳尻を合わせた。だが、この時にも地上軍を配備しなかったことを、プーチンは見逃さなかった。

ウクライナ危機を経てNATOは、有効な軍事同盟に自らを作り替えることができるのだろうか。統計を一瞥すれば、流れが不可逆的であることが分かる。

NATOは防衛費の目安として、「各国の国内総生産(GDP)の二%」をあげている。

だが、加盟国二十八中、この基準を満たすのは、アメリカ(四・四%)と、エストニア、経済危機のギリシャ、英国(それぞれ二~二・三%)の四カ国だけ。

アナス・ラスムセン事務総長の出身国デンマークは一・四%で、二%まで上げる計画など、どこにもない。ユーロ危機で緊縮財政が求められる中、EU加盟国で防衛費を増やすところはない。

兵員数で見れば、米軍は冷戦ピーク時に四十万人を欧州に駐在させていたが、今は合計で六万七千。
ドイツは旧東独軍を吸収したにもかかわらず、五十四万人から十八万人まで減らした。
英国は三十万人から十七万人に、フランスも同時期の五十五万人から十八万人に減らした。

欧州各国は過去十数年、このうちの精鋭部隊をバルカン半島やアフガニスタン、イラクに送っていた。ウクライナ危機勃発後も、流れは変わらない。
フランスのマヌエル・バルス新首相は、NATO大使級会合があった四月十六日に、五百億ユーロの新たな歳出削減計画を発表した。防衛費を増やすのは論外だった。

「国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は四月にモスクワを訪問して、『ロシアを悪者にしてはいけない』と、NATOやEUの対露、対ウクライナ政策を批判して、国民の厭戦気分を見事に反映した。

オランド大統領自身も、ロシアから注文があったミストラル級強襲揚陸艦の契約を気にしてばかりいる」と、在パリ特派員は言う。
欧州各国はウクライナより、財政・経済、ロシアとの契約が大事なのである。

経済大国ドイツには、米国が「責任を果たしてはどうか」と働きかけているが、この国の障害は国内に蔓延する平和主義だ。
イラク戦争では、当時のシュレーダー首相が、シラク、プーチン両大統領とともに反対。リビア内戦への介入には、メルケル首相が反対した。

「国内の平和主義世論に抗しても責務を果たすという気持ちは、年々薄れている。ドイツの指導者は今や、世論に追随するだけだ」と、ドイツの外交専門家ウルリヒ・シュペックは指摘する。
独世論は、ロシアのクリミア編入について、過半数が「やむを得ない」と答えた。

最大の責任は米国にある
もちろん、最大の責任は、NATOの柱・米国にある。
防衛費の支出でNATO全加盟国合計の七割超を占める国が、財政危機により猛烈な軍縮を進めているのだ。

米国のGDP比の防衛費は、現在の四%超から三年後には二・九%まで下がる見通しである。
オバマ大統領はその上で、日本や韓国に対し「アジア重視」を公約し続けるのだから、欧州駐留軍を増強しようがない。

オバマ政権はクリミア危機発生からほぼ二カ月後の四月下旬、ウクライナにバイデン副大統領を派遣し、ポーランドには演習のため六百人を送った。
あまりに遅く、かつ乏しい内容で、プーチン政権はNATO厭戦気分を改めて見たはずだ。

四月十四日には黒海で監視活動をしていた米艦船に、露軍機が急接近し、あざ笑うかのように挑発した。

加盟国の安全を、「まさか攻撃はしないだろう」と、仮想敵の善意に委ねる時点で、NATOは終わっている。【選択 5月号】
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“加盟国の安全を、「まさか攻撃はしないだろう」と、仮想敵の善意に委ねる時点で、NATOは終わっている。”という評価は、日本のいわゆる平和憲法への評価にも通じるものでしょう。

ロシア・プーチン大統領の“力”による国境変更が国際秩序全般を脅かしているというというところからの発想ですが、より全体的に見れば、冷戦終結によりソ連・ロシアはロシア系住民が多い地域を含めて地滑り的にその勢力圏を失い、ウクライナについても欧米とロシアの綱引きの結果、ロシアは兄弟国ウクライナまで失った。さすがに、プーチン大統領としてはこれを受け入れることはできず、禁じ手の“力”を行使して、せめてクリミアだけでも取り返した・・・結果、ウクライナ本体は欧米が、クリミアはロシアがその影響下に置く形となったというのが現状であり、ロシアの影響力はウクライナ問題以前より、更に狭まっているというのが実情でしょう。

長期的には、欧米各国は禁じ手を使うようなロシア離れを進め、ロシアは更に苦境に陥ることになるのではとも考えられます。

問題が先鋭化している局所のみに着目して軍備を増強して有事に備える態勢をとることが賢明な対応策であるとは思いませんが、上記記事はNATOの現状を知る上では参考になる指摘かと思います。

加盟国に国防費増額を求めるアメリカ
軍事費軽減はアメリカも同じであり、“内向き”が常に指摘されるのもアメリカですが、こうしたNATOの状況にヘーゲル米国防長官が苦言を呈しています。

****米国防長官:NATO諸国に国防費増額要求****
ヘーゲル米国防長官は2日、ワシントンで講演し、ウクライナ情勢について「冷戦終結後、欧州で国家による侵略という危険性はなくなったという神話を打ち砕いた」と語り、ロシアへの懸念を改めて強調、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に国防費の増額を求めた。

ヘーゲル氏はまた、「米国のGDP(国内総生産)はNATOの他の27加盟国の合計より小さいが、国防費はその3倍だ」と述べ、国防費負担が偏っていると指摘。こうした「不均衡」を是正するため、NATO全加盟国が新たな財政負担を約束しなければならないと呼びかけた。【5月3日 毎日】
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もっとも、国際情勢に及ぼす影響としては、欧州各国の軍事費・軍備の話よりは、「アメリカは世界の警察官ではない」といった、アメリカの“内向き”とも言われる国内重視政策の影響の方が大きい訳ですが、その話は長くなるのでまた別機会に。
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中国  ウルムチ南駅での自爆テロを受けて、習近平主席は「重要指示」

2014-05-02 21:55:43 | 中国

(事件のあったウルムチ南駅の様子を遠くから見守るウイグル族女性 【5月1日 Backchina.com】http://www.backchina.com/news/2014/05/01/295467.html)

高圧的な政策に噴出す暴力事件
中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ市のウルムチ南駅前で4月30日夜に起きた爆発は、刃物を持った犯人2名が駅出口付近で無差別に人々に切り付けて殺害、爆発装置を起爆したとのことで、自爆した犯人2名を含む3人が死亡、79人が重軽傷を負っています。

今回事件は、“習近平国家主席の新疆訪問日程の最終日というタイミングを狙った計画的な犯行の可能性が高い。2013年3月に発足した習政権は少数民族に対し高圧的な政策を実施し、ウイグル独立勢力の動きを力で封じることを目指してきたが、逆に新たな暴力事件が次々と発生しており、裏目に出たことを印象づけている。”【5月2日 産経】

09年7月の大規模暴動以降も、新疆ウイグル自治区では以下のように事件が頻発しています。

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09年7月 ウルムチでウイグル族の大規模暴動。当局発表で197人が死亡、1600人以上が負傷
10年8月 アクス市で群衆に爆発物が投げ込まれ、7人が死亡
11年7月 ホータンでウイグル族が警察署襲撃。武装警察が容疑者14人を射殺
12年2月 カシュガルでウイグル族が13人を殺害。容疑者7人は射殺
13年4月 カシュガルで治安当局が民家で武装集団を発見。衝突で武装集団6人が射殺され、警官側も15人が死亡
   6月 トゥルファン地区でナイフを持った集団が警察署などを襲撃、警官ら24人死亡。警察側は容疑者11人を射殺
  11月 カシュガル地区で武装集団が警察派出所を襲撃し、警察関係者2人が死亡。武装集団9人も射殺される
  12月 カシュガル地区で9人の武装集団が警察署襲撃。うち8人は当局側に射殺される【5月1日 朝日】
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新疆以外のエリアでも、世間の注目を集める事件が起きています。

2013年10月28日には、中国共産党の象徴でもある天安門前に車が突入・炎上し、乗っていたウイグル人男女3人を含む5人の死者と数十人の負傷者を出しています。
事件の詳細は明らかではありませんが、当局はこの事件を「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」と呼ばれるグループの犯行と断定しています。

2014年3月1日には、雲南省昆明市の昆明駅広場や乗車券販売所などで、刃物を持った集団が通行人らを無差別に襲撃し、29人が死亡、140人が負傷。当局は新疆独立勢力による犯行としています。

習主席は今回の新疆訪問でテロ対策部門を激励すると同時に、学校や農村のウイグル族らと交流する習主席の姿をメディアでアピールし、「生活の改善」や「民族の団結」などウイグル族に配慮する立場も強調していましたが、今回事件で“習主席は完全にメンツをつぶされた形”【5月1日 毎日】ともなっています。

当然ながら、事件を受けて、ウルムチだけでなく、首都北京などでも厳しい警備体制がとられています。

個人的には、新疆ウイグル自治区はシルクロード観光で3回訪れたことがあり、特にかつてのトルファンはオアシスそのもで、お気に入りの街でもありました。

ウルムチについては、置き引きでパスポートや現金などすべてを盗まれるという、とんでもない体験をしたこともあってあまりいいイメージはありませんが、まったく個人的な話です。

ただ、そのウルムチでの体験を漢族中国人にすると、“ウイグル人が多いあそこは、そういうひどい所だ。連中はそういうやつらだ”といった反応が返ってきたことは記憶にあります。

新疆ウイグル自治区の概況については以下のとおりです。

****新疆ウイグル自治区****
中国に五つある自治区の一つで、総面積は約166万平方キロメートル。カザフスタンなどと国境を接し、希少金属など鉱物資源が豊富とされる。

住民はイスラム教を信じるトルコ系住民「ウイグル族」が多い。清朝時代に征服され、その後独立の動きもあったが、新中国成立を経て自治区となった。新疆とは「新しい土地」の意味。

同自治区の統計によると、総人口約2200万人(2011年末)のうち、漢族以外の少数民族が6割を占める。

新中国成立以降は漢民族の移住が増え、文化や宗教が抑圧されていると訴えるウイグル族との対立が激化。
1990年代以降はソ連崩壊に伴う中央アジア諸国の独立を受け、ウイグル族の独立運動も活発になった。

こうした動きに対し、中国政府は武装警察を投入するなどして締め付けを強めているが、不満を持つウイグル族による武器や爆薬を使った襲撃事件が後を絶たない。背景には、漢族との経済格差や就職差別も指摘される。

爆破事件のあったウルムチは、自治区中部に位置する最大都市(区都)で、人口の大半を漢族が占める。09年にはウイグル族の学生らと治安部隊が衝突する大規模な騒乱があり、2千人近い死傷者が出た。【5月2日 朝日】
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増加する東南アジアへ逃れるウイグル族
当局の力による封じ込めの限界云々は毎度の話ですが、興味深かったのは、新疆から近隣国へ不法入国する事例が多くなっているという下記記事です。

****国境越えるウイグル族 東南アジア密入国、銃撃戦も****
新疆ウイグル自治区で頻発する衝突事件の背景には、ウイグル族に対する中国当局の厳しい抑圧政策があると指摘されている。

宗教活動に対する制約や、経済格差など中国社会に絶望したウイグル族が、はるか中国南部の国境を越えて東南アジアへと逃れている実態が明らかになった。

ベトナムの首都ハノイから北東へ車で約7時間半。クアンニン省ハイハの山道を抜けた先に大きな「門」のような建物が現れる。中国南東部・広西チワン族自治区に通じる国境検問所だ。

「事件」は4月18日未明に起きた。車で検問所付近の国境線を越えようとしたウイグル族16人が国境警備隊に捕まった。4人の女性は頭に布を巻いていた。2人は子どもだった。

同省幹部によると、同日正午ごろ、警備隊員が送還手続きのため16人を建物内で移送中、数人が警備隊から自動小銃AK47を奪い、乱射を始めた。女性たちはナイフを振り回した。警備隊が応戦して発砲、2人が死亡した。

3人はビルから飛び降りて自殺。警備隊員も2人が撃たれて死んだ。ベトナム紙トイチェによると、生きて中国に送還された11人は「ベトナムを経由して第三国に逃れようとした」と供述したという。

タイでも、今年に入ってウイグル族とみられる不法入国が急増している。
同国東部、カンボジア国境の町アランヤプラテートでは4月24日夜、密林に隠れていた不法入国者が見つかった。拘束されたのは子ども6人を含む男女16人。入管警察はウイグル族と見ている。

この町でウイグル族と見られる不法入国者が発見されたのは今年4回目で、計70人にのぼる。タイではほかに、南部で約300人が見つかっている。

タイは人身売買などのネットワークの結節点として知られ、これまでも北朝鮮の脱北者らの逃避ルートとなってきた。だが、ウイグル族は昨年後半の事例が初で、「不明な点が多い」とタイ東部を管轄するサケーオ県の入管担当者は言う。

ただ、移動ルートの輪郭は見えてきている。
カンボジアと国境を接するサケーオ県が「入り口」だ。密林地帯で国境を越え、密林で2~3日過ごして迎えの車を待つ。
陸路でバンコクを経由して南部のマレーシア国境地帯まで移動する。幹線道路から離れたゴム農園などに潜んで迎えの車を待つ。
その後、陸路か船でマレーシアに密入国し、偽造トルコ旅券を入手。「トルコ人」になって空路トルコに向かうとみられる。【5月2日 朝日】
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上記記事にもある、“タイではほかに、南部で約300人が見つかっている”というのは、下記のことと思われます。

****人身売買の被害者?脱出ウイグル族? タイで不法入国者220人拘束****
AP通信によると、タイ南部ソンクラー県の山岳地帯で14日までに、子供82人を含む身元不明の不法入国者220人が拘束された。

人身売買の被害者とみられているが、米政府系放送局ラジオ自由アジアは、中国新疆ウイグル自治区を脱出したウイグル族だとしている。

タイ警察が13日未明、ゴム農園近くの秘密キャンプを捜索して、潜んでいた集団を発見した。不法入国者はトルコ系イスラム教徒を自称しているが、身元が確認できる書類は一切所持していなかった。

タイは人身売買の中継地として利用されており、昨年1月にはミャンマーのイスラム系少数民族800人以上が同県で発見されたという。警察当局は人身売買組織が第三国への移送を計画していたとみている。

一方、同ラジオは不法入国者の親族からの情報として、不法入国者はウイグル族で、中国への送還を恐れて「トルコ人」を装っているとしている。報道が事実ならば、雲南省の昆明駅で起きた無差別殺傷事件以降、同自治区内でのウイグル族への締め付けが強化されている可能性もある。

中国外務省の洪磊報道官は14日の定例記者会見で、「関連する状況について聞いていない」と事実確認を避けた。【3月14日 産経】
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3月の昆明駅での事件も、海外への出国を計画していた犯人グループが、計画が頓挫して犯行に至ったと説明されています。
一方で、国境近くに居住するウイグル人の当局による強制移住も行われているようです。

****中国・雲南省の町「消えた900人」 当局、新疆へ移住強要か****
雲南省昆明市の昆明駅で3月1日、170人以上が死傷する無差別殺傷事件が起きた。当局は「新疆の分裂主義勢力による犯行」と断定した。

雲南省の秦光栄・共産党委員会書記は、昆明の無差別殺傷事件のいきさつをこう語る。
容疑者らは、雲南省から第三国に逃れるのに失敗。広東省でも出国できず、ベトナムに接する雲南省紅河ハニ族イ族自治州に行き、出国できなければ昆明などで「聖戦を決行する」と計画していた。

自治区では今、漢族を中心とする共産党政権に対しかつてないほど反発や絶望が高まっており、それが東南アジアへの人の流れを加速させているとみられる。

一方、外交筋によると、東南アジアに抜けたウイグル族が最終的に向かう先は、パキスタンだという見方がある。中国政府は、ウイグル族がパキスタンで国際テロ組織と結びつく動きを懸念しているという。

多数のウイグル族が東南アジアに流出する中、国境近くではウイグル族を締め出す動きも出ている。

昆明の事件の容疑者たちが潜伏していた可能性のある紅河ハニ族イ族自治州の個旧市沙甸に4月30日、記者が入った。中国当局が、ウイグル族の東南アジア出国の中継点とみて警戒していた町だ。

沙甸には約900人のウイグル族がいたとみられる。沙甸の人口の約9割は回族。「イスラム教を信仰する回族が多く、同じくイスラム教を信じるウイグル族の宗教活動に寛容だから」。住民はウイグル族が住みついた理由をそう語る。しかし、この街から、ウイグル族の姿は消えていた。

昆明の事件を受け、沙甸の地元当局は「沙甸の住民の安全のため、新疆人を全面的に移住させる計画を進める」との文書をネット上に掲載した。

沙甸の住民によると、事件後の数日間、ウイグル族がイスラム礼拝所前の広場に集められ、バスに乗せられた。故郷の新疆ウイグル自治区に送られた模様だ。【5月2日 朝日】
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変わらぬ力による封じ込め
“微博では「(3月に起きた)昆明の事件と同じだ。政府は新疆ウイグル自治区に大量の軍を投入しているが、何の効果もない」「政府は反テロ闘争を叫ぶが、これは本当にテロ組織に打撃を与えれば解決する問題なのか。少数民族政策に過ちがあるから爆発は止まらないのではないのか」など少数民族政策に疑問を示す書き込みも出ている”【5月1日 毎日】とのことですが、中国当局の力による封じ込めは当分変わらないものと思われます。

****新疆ウイグル爆発事件「犯人を厳罰に****
・・・・新華社通信は1日未明、習近平国家主席の「重要指示」を伝えました。
この中で習主席は、「新疆の分裂と反分裂の闘争が、長期的で複雑で先鋭化していることを深く認識すべきだ」として、事件は、自治区の分離独立を目指す勢力によるテロだという見方を示しました。

そして、「反テロ闘争は片ときも揺るがせにしてはならない。果断な措置を取り、のさばるテロリストを断固、抑え込め」と述べ、捜査を迅速に行い、犯人を厳罰に処すよう命じました。(後略)【5月1日 NHK】
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